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大西良雄ニュースの背後を読む

2010年7月

2010年7月29日 09:24

無責任な政党ほど高くなる名目成長率目標

2010年7月29日筆

最近はマニフェストだのアジェンダだの横文字が横行していますが、横文字であればあるほど政党と選挙民との契約がどんどん軽薄、無責任に思えてきます。その典型が、先の参議院選挙で各党が掲げた「名目成長率目標」というマニフェスト、アジェンダです。

選挙で掲げた「名目成長率目標」は、民主党が3%、自民党と「みんなの党」が4%、国民新党が5%でした。小政党ほど存在を誇示したいのでしょうか目標が高くなります。高くなればなるほどその政党は、軽薄、無責任と言わざるを得ません。できもしない高い名目成長率を設定することで国民に税の自然増収を期待させる一方、消費税増税を回避すると言い募って票をかき集めようという魂胆が丸見えです。

名目GDPは過去10年間で、504.5兆円(2000年1-3月期)から481.2兆円(2010年1-3月期)に23.3兆円(-4.9%)減少しています(下表参照)。年平均にしますと0.49%減少したことになります。過去10年間、平均0.49%下落してきた名目成長率を年平均3~5%のプラス成長に引き上げるのです。

100729表.jpg

過去10年間、政府は何もしなかったわけではありません。それでもマイナス成長でした。それを各党が主張するように3~5%のプラス成長に持っていくのは、至難の技といえます。

マイナス成長の原因は投資総額の減少です。消費総額は増加しています。

その理由を説明するには、上表に従って名目GDPの中身の変化を語らなければなりません(上表では官、民の在庫投資は割愛しました)。
         
名目GDPの需要項目の過去10年間の変化(上表)を見ますと、民間消費は1.1兆円、政府消費は10.8兆円増加しています。両者を合わせた消費総額の増加は11.9兆円です。これに対して政府投資が15.5兆円、民間設備が8.3兆円、住宅投資が7.8兆円それぞれ減少し、投資総額の減少は31.6兆円にのぼります。

これらの数字が表現しているのは、過去10年間、消費が拡大(特に政府消費)する一方、投資が大きく減少しているという事実です。名目GDPの減少、つまりデフレ原因は消費総額の減少にあるのではなく、投資総額の減少にあると言えるでしょう。

消費は、所得が増えるか、貯蓄を取り崩すか、すれば増加します。貯蓄を取り崩す最大の契機は、所得が減少する時です。いずれにしても消費は所得の従属変数で、単独で増えたり減ったりしません。消費を増やすには所得を増やす(あるいは減らさない)、つまり経済成長を高めなければならないのですが、それが経済成長戦略ということになります。

本コラムでも何度か説明しましたが、経済成長は、(1)労働力供給が増えるか (2)機械装置など資本ストックが増えるか (3)イノベーション(技術革新)が起こるかによって高まるというのが経済学の常識です。

戦後日本の経済成長は、この3つの成長要因が重なって起きましたが、特に(2)の投資の増加による資本ストックの増加が成長を牽引してきました。投資の増加によって労働生産性が高まり、賃金が増え所得が増加し消費拡大に火をつけるというのが、戦後日本の典型的な成長サイクルでした。投資が拡大しなければ所得は増加しません。その投資総額が、過去10年間、大きく減少していることは上述しました。これが経済成長を阻害し、デフレをもたらしたのです。

各政党は、デフレ経済に陥った原因をどう捉えているかを聞きたいものです。民主党及び民主党政権が書かせた「経済白書」によると、デフレの原因は、「需要不足にある」といっているようです。需要にも色々あります。「需要不足」と表現するのなら、正確には「投資需要不足」と言うべきでしょう。

日本経済は十分消費主導ですが、残念ながら政府消費主導です
皆さんの感覚からすれば消費総額が増大していることには意外感があるかも知れません。日本は消費主導経済ではないと間違ったプロパガンダが民主党などから流されているからです。名目GDPに占める消費総額(民間消費+政府消費)の割合は2000年の73.0%から2010年には78.6%に上昇しています。GDPの8割近くが消費なのですから、日本はすでに十分、消費主導の経済なのです。

問題なのは、消費主導の中身が、政府消費主導になっていることです。「政府消費」は、教育、医療、防衛という形で提供される公共サービス、地方及び中央政府に勤務する公務員から提供される各種サービスを国民が消費することから発生します。その公共サービス提供の対価が公務員賃金ですから、政府消費の増加とは、かなりの部分、公務員の人数と賃金の増加を表すといえるでしょう。この「政府消費」増加の財源は社会保障費などの政府歳出の増加です。税収が傾向的に減少しているのですから、「政府消費」の増加が結果として赤字国債の累増につながっていることは疑いありません。

にもかかわらず、各党は競って医療や介護など公共部門、準公共部門を成長部門に仕立て上げ、ここに財政資金を注ぎ込み、公務員サービス、準公務員サービスをさらに増加させようとしています。しかも民主党と国民新党、社民党は、「郵政改革法」によって、政府100%出資のまま、日本郵政の非正社員を正社員化(準公務員化)しようとしています。このような準公務員によるサービス提供の拡大も財政出動による「擬似政府消費」の増大になります。

現状の財政事情では「政府消費」の拡大は、増税によるか、国債発行によるか、でしか実現できません。増税によれば、その増税分は民間消費の減少になり、政府消費の増加と相殺され経済成長にはつながりません。国債発行による「政府消費」の拡大(公務員、準公務員人件費の拡大)はギリシャと同じですから、国家破綻へ歩をさらにすすめることになります。

つまり、「政府消費」の拡大を経済成長の中核に据えるという各党の考え方では、各党が主張するような3~5%もの経済成長は実現できません。

ただし、保険適用外の価格設定が自由な医療・健康サービスを拡大できれば、経済成長につながります。眠っている貯蓄が取り崩されて医療・健康分野に費消され新たな需要が生み出されるからです。介護も教育も同様です。これらの準公共サービスを、政府資金ではなく民間貯蓄の取り崩しによって費消されるように仕上げる知恵(規制緩和)が政府には求められることになります。

ここで紙幅が尽きました。本題の、日本の経済成長を阻害する「投資総額の減少」がなぜ続いているのか、「投資総額」、特に民間投資を増やして経済成長を実現するにはどのような政策が必要なのか、については次回以降に触れます。

2010年7月21日 11:15

一人勝ち「みんなの党」は役に立つのか

2010年7月21日筆

参院選挙が終わっても「みんなの党」の人気は衰えません。選挙の一週間後に行われた各種の世論調査では、「みんなの党」の支持率は第2党の自民党に大きく接近、第3極の地位を固めたようです。

さらにどの世論調査でも民主党政権の連立相手としては「みんなの党」が、自民党、社民党、公明党、国民新党を大きく引き離して第1位になっています。

今回の参院選挙では無党派層の票が民主党から「みんなの党」に流れました。民主党に期待して裏切られた無党派層は、民主党ができなかったことをやってくれることを期待して今回は「みんなの党」に投票したのです。民主党と「みんなの党」への投票者の期待は同質だったと思われますから、民主の連立相手の一番手に「みんなの党」がくるのは当然といえば当然です。

前にも聞いたことがある「増税の前にやることがある」論
無党派投票者の期待という意味では、民主党と「みんなの党」への期待が同質だっただけでなく、実は「自民党をぶっ壊す」と言って勝った小泉純一郎政権とも同質だったと言えます。

無党派層は、小泉政権には、利益団体・業界、それに巣食う族議員と官僚のトライアングルの解体を期待しました。そのためには既得権益を擁護しトライアングルを維持する役割を果たす規制や行政指導は撤廃される必要がありました。郵政族の牙城だった郵政の民営化もその一環でした。鳩山政権には、天下りや渡りを繰り返す官僚既得権益の破壊とその資金源になっている予算や特別会計の洗い直し、天下り先である特殊法人の見直しが期待されたのです。

しかも、小泉政権は「わたしの在任中は消費税の引き上げはしません」と言ってスタートしました。鳩山民主党政権も「4年間消費税率の引き上げはしない」と言い続けました。消費税率引き上げを否定する小泉、鳩山政権には、その裏返しとして「みんなの党」の渡辺代表が言う「増税の前にやるべきことがあるだろう」という考え方が共通項としてあったのです。

しかし、小泉政権も鳩山政権も「増税の前にやるべきことがある」と言いながら、予算の組み替えは不十分、官僚制度や特殊法人の改革はほとんど手付かずに終わり、財政赤字が拡大。「増税の前にやるべきこと」が行われず、国債の発行残高は小泉内閣発足前の368兆円(2000年度末)から鳩山内閣の終了時には637兆円(2010年度末見込み)に膨れ上がっていったのです。

「みんなの党」は、この小泉、鳩山政権がやらずに積み残した「増税前にやるべきこと」を網羅し、行財政改革に踏み込めなかった鳩山政権に失望した無党派層の受け皿になろうとしたのです。

「公務員の人件費2割カット」で5.5兆円の財源になるが...
選挙公約ではみんなの党は「世界一の少子高齢化社会の日本で、将来的な増税を一切認めないという立場はわれわれもとらない」と慎重に前置きして、「しかしその(増税の)前に、議員や公務員の削減・給与カット、天下りの禁止や『埋蔵金』の発掘、予算のゼロベースでの見直しや議員特権の廃止に取り組むべきである」と書いています。

この公約の中で議員定数の削減、議員特権の廃止などは大いにやってもらいたいと思いますが、その財政上の貢献は微々たるものです。財政上で大きな効果が予想されるのは、公務員の削減・給与カット、予算のゼロベースでの見直し、天下りの禁止や「埋蔵金」の発掘に絡む独立行政法人の廃止、民営化の実施という政策です。

例えば公務員の削減・給与カットですが、「みんなの党」はこれによって「国と地方の公務員の総人件費を2割以上カット」すると言っています。これが本当に実現すれば、財政再建の大きな一助になると思われます。

ちなみに10年度の当初予算ベースで国家公務員数は56.4万人、総人件費は7.6兆円(国家公務員一人当たり約1345万円)にのぼります。国債費を除く一般歳出71兆円の約11%が国家公務員の人件費です。

同じく地方公務員数は235.2万人、総人件費は21.4兆円(地方公務員一人当たり約910万円)、地方政府の一般歳出66.3兆円の実に32%が地方公務員の人件費として支出されています。

国と地方の重複を除いた総人件費は27.6兆円になりますから、その2割をカットすれば5.5兆円という消費税に換算すると2.2%分にもなる大きな恒常的財源が出てくることになります。

6月23日の本ブログ「中期財政フレームで『強い経済』は可能か」で、今後3年間の一般歳出(国債費を除く)の上限を70.9兆円、新規国債発行額の上限を44.3兆円とした場合、2011年度の財源不足額は5.1兆円になると書きました。この財源不足額は、国家及び地方公務員の総人件費2割カットで捻出される5.5兆円によって補填が可能になります。

しかしそれでも「みんなの党」の言うように「今後3年間増税なし」という前提の下では、年間44.3兆円という史上最大規模の国債の新規発行が3年間続きます。その結果、2010年度末で862兆円(GDP比181%)に達している「国及び地方の長期債務残高」が、3年後の13年度末には990兆円前後とGDPの約2倍に膨らむのです。

「みんなの党」は、この3年間を「ムダ遣い解消の集中改革期間」と言って「増税」を回避しています。しかし、かりに20兆円の「埋蔵金」の発掘に成功しても1000兆円にも達する長期債務残高をほんのわずかに減らす一時的な歳入に過ぎません。恒常的な財源として確実に計算できるのは「公務員の総人件費2割削減」や「独立行政法人の廃止、民営化による歳出カット」です。

「みんなの党」は帯に短し、民主党とも水と油
しかし、3年間の「集中改革期間」でそのような改革が衆議院5議席、参議院11議席の「みんなの党」単独で実行できるとは到底思えません。与党入りが必要ですが、与党は現在、衆議院で再議決できる3分の2議席に6議席足りません。5議席の「みんなの党」が入っても3分の2には1議席足りません。参議院でも与党は過半数に12議席足りませんが11議席の「みんなの党」と連立しても1議席足らないのです。「みんなの党」は議席数からいえば帯に短しなのです。

与党の中には「郵政改革法案」で「みんなの党」と真反対の郵政族・国民新党(衆院で3、参院3の議席)が含まれており、その国民新党が含まれる与党との連立はどちらかが宗旨替えでもしない限り不可能です。

民主党もまた、「みんなの党」の主張する「公務員の総人件費カット」や「独立行政法人の廃止・民営化」を丸呑みして連立を組むことはできないでしょう。「みんなの党」の主張は、公務員や特殊法人、日本郵政など民主党の支持母体である労働組合の利益に明らかに反するからです。

民主党は「国家公務員人件費の2割削減」を公約していますが、地方公務員の人件費削減には触れていません。地方公務員の労働組合である自治労は民主党の支持母体です。親小沢の高嶋良充参議院民主党幹事長(引退予定)は自治労出身でしたし、反小沢の旗頭・仙石由人官房長官は自治労の組織内候補ですから、民主党が地方公務員の人件費削減に手をつけられるはずがないと「みんなの党」は批判しているのです。

「みんなの党」は「増税の前にやることがあるだろう」と叫んで一人勝ちしましたが、単独では何も実現できません。民主、自民の分裂による政界再編でリーダーシップをとる作戦を急がなければ、いたずらに時間だけが過ぎてゆき「増税なし」の3年間に国債残高を1000兆円まで膨らませてしまう結果に終わりかねません。

小生も公務員人件費の5.5兆円カットには賛成ですが、マクロ経済から言えばその分需要がカットされデフレ要因になります。その矛盾を補うために「みんなの党」は「名目4%以上の成長を実現し10年間で所得を5割アップさせる」と言っています。この成長目標は、ポピュリズム(人気取り)もはなはだしい「絵空ごと」です。

小生、「みんな党」のファンなのですが、次回は「みんなの党」の中でもっとも疑わしいこの「成長アジェンダ」のことを書かざるを得ません。

2010年7月14日 11:50

菅首相の消費増税発言で民主党が大敗したという嘘

2010年7月14日筆

今回の参議院選挙で、菅民主党は本当に大敗したのでしょうか。「大敗」の原因は、本当に菅首相の「唐突な消費増税発言」なのでしょうか。この2点について小生、どうも腑に落ちない点がありますので、書きます。

確かに民主党の獲得議席数は44議席と改選議席を10議席も下回りました。これに対して自民党は51議席を獲得しました。改選議席数という意味では自民党が第一党に返り咲き、民主党は第2党に転落したことになります

これをもって「民主大敗」と報じた報道機関もありました。しかし、支持率が20%を下回っていた「小鳩政権」のまま参議院選挙を戦っていれば35議席も危ういと言われていたのですから、44議席なら御の字、菅民主党はよくここまで挽回したという見方もあります。

それはさておき、下表をご覧いただきたい。今回の参院選での党派別の得票数と得票率です。獲得議席数では自民党が第一党に返り咲きましたが、得票数、得票率いずれも民主党が第一党を確保しています。得票数や得票率が議席に正確に反映されていれば、民主党は議席数でも第一党を維持できたはずです。

20100714表.jpg

なぜ得票数でも得票率でも第一党の民主党が議席数で第2党になってしまったのか、その秘密は選挙区での議席率にあります。議席率というのは選挙区議席総数に対する獲得議席の割合です。自民党は、得票数も得票率も民主党を下回っているのに議席率は53.42%、選挙区73議席のうち39議席を占め、改選第一党になったのです。

選挙区での得票率33.38%の自民党が、なぜ53.42%の議席を獲得できたのでしょうか。その原因は、1人区の中でも当選者の得票数が30万票に満たない12の「小1人区」で自民党が9勝3敗と圧勝したことにあったのではないかと考えています。

12の「小1人区」とは、当選者の得票数が10万票台の高知、徳島、鳥取、山梨の4選挙区、20万票台の福井、島根、香川、佐賀、沖縄、山形、和歌山、大分の6選挙区を指します。このうち民主党が勝ったのは高知、山梨、大分の3選挙区だけです。自民党の9勝3敗でした。ただ、沖縄は民主党の不戦敗ですから、自民党が純粋に勝ったのは徳島、鳥取、福井、島根、香川、佐賀、山形、和歌山の8選挙区ということになります。

この8選挙区はかつてから自民党が強い「保守大国」といわれた選挙区ですが、昨年の衆議院選挙では、風に吹かれた民主党に投票しました。しかし、これらの選挙区の選挙民は民主党に投票しても報われるどころか、踏んだり蹴ったりでした。

これらの選挙区は農業(農協)と公共事業(土建業)への依存度が著しい県です。(小沢)民主党は政権をとった途端、農家の戸別所得保障で農民票を一本釣りする一方で、自民党支持だった農協組織を弱体化させる露骨な作戦を推し進めました。一般の公共事業予算を圧縮するだけではなく、農家の戸別所得保障の財源捻出のために土地改良など農業関連土木予算をばっさり削ったのです。

一寸の虫にも五分の魂です。公共事業が欲しければ民主党に投票しろと言わんばかりの小沢式選挙戦術に、誇り高い保守王国の選挙民は民主党に一撃を食らわす気になったに違いありません

国民新党がゴリ押しした「郵政改革法」も「小1人区」の選挙民を怒らせたに違いありません。郵貯が「国有」のまま預け入れ限度額を2000万円に引き上げるとなると、郵貯と預金獲得面で競合する農協と信金・信組、さらに地銀といった地域金融機関の経営が脅かされることになります。農協、土建業、地域金融機関もこれらの選挙区では大切な職場です。民主党が、郵便局長会やJP労組の票欲しさに国民新党のゴリ押しを見て見ぬフリをし、この大切な職場の危機を見過ごしたことに選挙民は憤激したはずです

これらの「小1人区」では、消費税増税が経済をさらに疲弊させることが民主党への反発を招いたという説もありますが、その説には賛成しかねます。なぜかといえば、消費税を10%に引き上げるという公約を掲げているのは自民党であって民主党ではないからです。これらの「小1人区」では消費増税を高らかに掲げた自民党が勝ったのです。菅首相が消費増税を匂わしたから民主党が負けたとは言えるはずがありません。

選挙後に行われた朝日新聞の世論調査では、菅首相は参院選の責任を取って辞任するべきかという問いに対して、73%が「菅首相は辞任する必要はない」と答えています。さらに、消費税引き上げの議論は進めた方がよいかという問いに対して68%が「進めたほうがよい」と答えています。「菅首相の消費増税発言」で民主党が負けたという説は世論調査で否定されています。

ついでに触れますが、この「小1人区」では都市部の選挙区との一票の格差が歴然としています。徳島選挙区の自民党当選者の得票数は14.2万票でしたが、3人区神奈川の次点(民主党)の得票数は69.6万票、3人区大阪の次点(民主党)は61.7万票でした。神奈川、大阪の選挙民の1票は徳島の4分の1以下の値打ちしかありません

ほかに2人区北海道、5人区東京、3人区埼玉は50万票とっても落選でした。はっきり言えば、「小1人区」の当選人数を削り、都市部の「選挙区」に振り分ければ自民党の獲得議席は大きく減り、民主党は負けなかったはずです。自民党は一票の格差が4倍も5倍にもなる「違憲選挙」のおかげで勝ったといえます。

得票数や得票率で見る限り、選挙区では民主党は自民党に負けていません。議席数で負けたのは「菅首相の消費増税」発言のせいではなく、「小1人区」での(小沢)民主党による農協、土建業、地域金融機関切捨てへの反感、さらには死票が多くなる「違憲選挙」のせいだと言えそうです。

しかし、比例区では明らかに民主党は敗北しています。勝ったのは「みんなの党」です。上表をもう一度ご覧下さい。右端の「07年比」は比例区の得票率を前回の07年参議院選挙と比べたものです。公明党が前回並みの得票率で健闘していますが、ほかは民主党が得票率を7.9%下げたのを筆頭に自民党、共産党、社民党、国民新党は軒並み得票率を下げています。その下がった得票率のすべてを「みんなの党」が吸収しています。「みんなの党」の一人勝ちです。

「みんなの党」は、福島社民党党首が選挙中にいみじくも言い当てたように「小泉構造改革路線の継承者」です。小泉家の3姉妹といわれた猪口邦子、片山さつき、佐藤ゆかりも今回の参院選挙で復活しました。「みんなの党」から出馬した小泉政治の推進者・小野次郎も比例で当選し復活しました。

この事実を見る限り、今回選挙の真の勝者は「小泉構造改革路線」だったのではないかと思えてきます。自民党候補の選挙応援で大活躍した小泉元総理のご子息・小泉進次郎議員を含めて「小泉氏の遺産」がバラ撒き財政で票を買おうとした「小鳩」民主党を打ち砕いたことになります。

次回は、「みんなの党一人勝ち」の意味についてさらに考えてみたいと思います。

2010年7月 7日 11:01

三木谷・楽天社長の「ノー・イングリッシュ、ノー・ジョブ」

2010年7月7日筆

日産自動車の場合、親会社がルノーで社長がカルロス・ゴーン氏ですから、英語を社内公用語したのは自然の成り行きだったと思います。しかし、日本生まれ、日本育ち、ドメスティックな会社の代表と思っていたファーストリテイリング(ユニクロ)と楽天の2社が、社内で用いる公用語を英語にすると決めたと報じられ、小生軽いショックを受けました。

楽天の三木谷浩史社長は「ノー・イングリッシュ、ノー・ジョブ」とまで言っています。英語で議論し英語で文書を書く。そんな「国際化、英語化についていけない人は楽天では働き場所はなくなる」(朝日新聞7月5日Globe)という意味だそうです。小生、英語教育が売りの上智大学出身なのに「英会話はからきし駄目」です。楽天に「働き場所」はありません。もう就活しなくてすむ年齢になっているのが、小生には幸いでした。

ユニクロの柳井正社長は、2012年3月から社内の公用語を英語にすると言っています。それに備え店長以上の幹部に英語研修を施し、「TOEIC700点以上」の取得を求めるそうです。通常会話を自由に駆使できる水準にはまだ足りませんが、700点でもかなりの高得点です。昨年暮れにヒートテックの股引を買ったユニクロ店のあの若い女性店長もあと2年で最低700点は取れるように仕事をしながら勉強しなければなりません。店長さんも大変ですね。

ユニクロは全世界に店舗を展開し、5年後には海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業を追い越し、10年後には現在の7倍、5兆円の売上高を目指す計画です。店舗数は2月末現在916店(うち海外125店)を10年後には4000店に拡大させる方針だそうです。総店舗数の4分の3は海外店舗になりそうですから、日本語しか話せない店長など役に立たないということになります。

楽天の計画も壮大です。三木谷社長は現在6ヶ国の拠点を27ヶ国に拡大し、流通総額(ネット上の商品取扱高)を現在の1・8兆円から2020年には20兆円に拡大すると言っています。流通総額に占める日本市場の比率は現在91%と圧倒的ですが、10年後には国内は30%、海外市場の比率を70%に引き上げる計画です。海外サイトの言語は現地語か英語かですし、全世界の電子商取引を結ぶ共通用語は英語になるのですから、英語でコミュニケートできない社員は仕事になりません。三木谷社長が「ノー・イングリッシュ、ノー・ジョブ」というのもその世界戦略からすれば必然だといえます。

柳井社長は世界中にリアル店舗を広げる。三木谷社長は世界中にネット通販網を張りめぐらせる。参議院選挙のマニフェストを見ても明らかなように、日本の政党のほとんどが内政重視、内需傾斜、一国平和主義などというナショナリズムで凝り固まっています。この政治家の愚かさをあざ笑うかのように、これまで内需を中心に成長してきたユニクロや楽天までが国境を越えるグローバリズムに寄り添い、国際展開に耐える経営に大転換し始めたのです。その象徴が、社内の公用語を英語にするという方針だといえるでしょう。

小生、今後もグローバリズムに寄り添って成長を続けようとする内需型企業が輩出することを大いに期待します。しかし、このような革新的な内需型企業が出始めているのを尻目に、日本の若者がグローバリズムに背を向け極めてドメスティック(内向き)になっていることが気になります。

今年4月、ワシントンポスト紙が「昨年秋、ハーバード大学に学部入学した日本人はたった1名」と報じましたが、この報道に衝撃を受けた人も少なくないでしょう。その有様をネットの「YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)」が『「ハーバード大学の日本人激減」の意外な真相』という記事で明らかにしています。

100707表.jpg

上表は「意外な真相」に記載されたデータをまとめたものです。米国の大学で学ぶ日本人学生(学部生と院生の合計)の数は過去4年で半減しています。同じ期間に中国人学生は57%増、韓国人学生は41%増です。人口が日本の半分に満たない韓国ですが、日本人の3.7倍の韓国人学生が全米大学で学び、ハーバード大学では日本人学生の3倍の韓国人学生が学んでいます。ハーバード大学のカッコ内は学部学生数ですが、日本人の5名に対して韓国人は8倍の42人が学部で学んでいます。「日本人の学部新入生は1名」だったのです。

1994年度から97年度まで全米大学の国別学生数の第1位は日本人でしたが、現在の1位はインド人(10万3260人)、次いで中国人、韓国人です。日本人はこの上位3国に大きく離されて4位に転落したというのが現状です。

なぜこんな有様になったのか。記事ではベネッセの海外大学進学塾「ルートH」の藤井雅徳氏はその理由を三つ上げています。

第一に全米の留学生枠は10%前後と制限されており、中国、韓国など他のアジアの国の優秀な高校生の受験生が増え、日本人の合格者数が減少した。
第二に中国や韓国ではトップレベルの高校生は海外の大学に行くのが当然だと考え、日本人が東大を目指す感覚で海外の一流大学が進学先に選んでいる。
第三に、例えばサムスンなど企業が海外の大学卒業者をどんどん採用している。中国や韓国のトップ集団は海外大学卒業者であることが当たり前になっている。

重要なのは第3のポイントだと思います。日本の企業はこれまで海外大学の卒業生を粗末に扱ってきました。戦前日本の軍隊では、英語が話せて海外事情に詳しい海軍エリートより、大和魂があれば英語など必要ないといわんばかりの超ドメスティックな陸軍エリートが幅を利かせ、戦争をひき起こしました。それと日本の企業も同じで、長い間、英語に弱い東大、慶応大、一橋大など国内大学の出身者がのさばり、海外大学の卒業生を冷遇してきました。英語が話せる優秀な海外大学卒業生は、外資系企業に就職するほかなかったといえます。

その外資系企業も、沈滞した社会主義国家のようになっている日本から次々に脱出を始めています。外国の大学で学び英語力を身につけてもそれを高く買ってくれる会社がない。ならば海外の大学など無用、日本の大学を卒業して日本企業に就職して階段を一段一段上がっていこうと若者が考えるようになっても不思議はないでしょう。

そこへ英語を社内公用語にする会社が登場したのです。この会社では社員も日本人だけではなく、インド人、中国人、アメリカ人、韓国人など多国籍になります。この会社では、いままでとまったく逆で、英語を読み、書き、離せなければ「仕事にありつけない」し、店長にもなれないのです。社員同士のコミュニケーションも取れないのです。

中国や韓国のように、英語が話せる海外大学の優秀な卒業生が企業トップに座る時代がもうすぐ来るかもしれません。ユニクロ、楽天など先進的企業が、グローバリズムに寄り添い、グローバリズムを友にして活躍する日本の若者を量産してくれることを、小生、心から願うばかりです。


プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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