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大西良雄ニュースの背後を読む

2010年3月

2010年3月31日 10:12

郵貯改悪で民主党の参院選敗北は決定的?

2010年3月31日筆

自らを歴史上の人物に擬して恍惚状態にある政治家ほど滑稽なものはありません。鳩山邦夫議員の坂本龍馬しかり、亀井静香大臣の大塩平八郎しかりです。

大塩平八郎は天保の大飢饉のとき、米を買い占めて儲けようとした豪商を取り締まらない大坂町奉行に抗議して武装蜂起した元与力の儒学者です。亀井「平八郎」さんは、現代の銀行経営者を江戸の豪商のような悪者に見立ててこれを取り潰そうと目論んでいるようです。

現代のメガバンク、地銀、第2地銀、信用金庫、信用組合、農協など民間金融機関は金融庁、日銀、経済産業省などの監督下、銀行法や信用組合法、預金保険法、金融商品取引法などもろもろの法律にもとづいて経営されているのです。現代の銀行経営者は、法と監督が杜撰だった江戸の悪徳商人と同じであろうはずがありません。彼らは人間の体でいえば静脈にあたる金融循環を担っている、経済に欠くことのできない大切なプレーヤーなのです。

ところが、「全国特定郵便局局長会」と「日本郵政グループ労働組合」という「郵政一家」の代貸しを任じて恥を知らない亀井親分というか、特定の業者への利益誘導の見返りに票をいただく「利権政治屋」ともいえそうな悪徳代官に、いま大切なプレーヤーである民間金融機関は押し潰されようとしています。

鳩山総理はこの「郵政一家」の「亀井代貸し」が提案した郵政改革案を丸呑みしてしまいました。「とにかく内閣が紛糾した状態では参院選挙で負ける」というまったく下らない理由から、鳩山総理は、郵便貯金の預け入れ限度額を1000万円から2000万円に、簡保生命の保障限度額を1300万円から2500万円に、それぞれ引き上げるという亀井案を了解してしまったのです。

民主党は、小沢・鳩山両トップの政治資金疑惑を抱えたうえ、この「亀井代貸し」案の丸呑みによって民間金融機関を完全に敵に回し、今夏の参院選挙で大きく負けることは疑いありません。その理由を書きます。

郵貯限度額と簡保保障額の引き上げで郵便局に資金を奪われ押し潰されかねない中小金融機関の業界団体(地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、JA全中、生命保険協会)のすべてがいっせいに「引き上げ案」に反対声明を出しています(全国銀行協会は反対の意見書を提出済み)。小生の身近にいる若い地銀行員に聞きますと、郵貯限度額引き上げに対して従業員、経営者を問わず怒り心頭に達していると言っていました。

参考までに、金融機関の役職員・従業員の数を上げておきます。メガバンク、地銀、第2地銀、信用金庫合わせて約40万人です。農協、信用組合が合わせて23万人です。生命保険は日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命のトップ4だけで生保レディーを含む職員数は20万人になるのです。これらの民間金融機関の役職員・従業員数はおそらく100万人近くに達するでしょう。「亀井代貸し」に引きずり回された民主党はこれらの民間金融機関票を失う恐れがあります。

「亀井代貸し」の郵政一家の票数は、特定郵便局局長2万人に全郵政グループ組合員23万人合わせて25万票です。郵政の非正規従業員の中で正規社員化を希望している10万人を含めても35万票です。郵政一家票は、民間金融機関の票数の3分の1に過ぎません。郵政一家の票をいただくために民主党は利益誘導政党に成り下がっただけでなく、巨大な民間金融機関票を敵に回すという計算違いをしてしまったのです。

もうひとつ、日本共産党だけは指摘していますが、新聞などがあまり書かない点に触れておきます。今回の郵政限度額の引き上げや簡保の保障額引き上げは、一般庶民のためではなく資産家や金持ちの優遇(あるいは資産隠し)に間違いなくつながるという点です。

例えば郵便貯金の預け入れ限度額を2倍の2000万円に引き上げることで、喜ぶのは資産家・金持ちです。日銀の調査によると、金融資産を保有している所帯の平均金融資産保有額09年末で1478万円です。保有額が最も多い所帯の保有額は800万円(中央値)です。これだけで2000万円まで預け入れ限度額を引き上げて、これに応じられるのは平均以上の資産家や金持ちに限られることは明らかです。

もう少し詳しく言いますとこの平均金融資産保有額1478万円の内訳は、預貯金が814万円、保険(貯蓄)396万円、株式212万円、その他56万円となっています。預貯金814万円のうち銀行預金は610万円前後、郵便貯金分は200万円超と推定されます。郵便貯金の保有残高は平均200万円超ですから、限度額2000万円への引き上げは一般庶民には関係がないということになります。
 
現状での限度額1000万円を資産家はどのように利用しているのでしょうか。亭主の預け入れ額が1000万円の限度額を超えると、かみさん名義で1000万円、子供名義で1000万円と限度額が1000万円を超えるたびに積みまして行くのです。その貯金が実際にだれの貯金か、名寄せなどしませんので分かりませんし、預金の出所が脱税資金であっても明らかになることはありません。預貯金金利が民間と余り差がない現状において資産家が郵貯に預ける理由は、「資産隠し」のほかになにかあるのでしょうか。「全国特定郵便局局長会」の局長のなかには地方の資産家も含まれていると言われていますから、彼らの家族名義を含めた郵便貯金総額も一度徹底的に調べてみてはいかがでしょうか。

簡保の2500万円への保障額引き上げも民間生命保険の平均保障額810万円強を上回り、民間生保から簡保へのシフトをもたらしますし、庶民は2500万円の保証に掛かるそんな高い掛け金を支払うことはできません。2500万円保証の簡保に入れるのは掛け金を負担できる金持ちだけでしょうね

今回の郵貯、簡保の限度額引き上げは、資産家や金持ちの資産が民間金融機関から郵貯・簡保にシフトする結果をもたらします。亀井大臣は民間金融機関を叩いて借り手の中小企業や個人事業主を守ると言って「大塩平八郎気取り」ですが、資産家・金持ちの「資産隠し」に手を貸すだけでなく、中小企業や個人事業主を窮地に陥れることになります。「郵政一家」と自らの国民新党の利益を代弁した結果、中小企業が大きな犠牲をこうむることになります。「亀井代貸し」は「似て非なる大塩平八郎もどき」なのです。

メガバンクといえども中小企業・個人の融資比率は70%を超えています。第1地銀、第2地銀、信用金庫、信用組合と規模が小さくなり財務も脆弱な金融機関ほど中小企業・個人への融資比率は高くなっています。限度額引き上げによる暗黙の政府保証が付いた郵貯への預金シフトは,経営基盤が弱い小さな金融機関ほど激しいものになります。つまり中小企業・個人への融資比率の高い中小・地方金融機関から収益の源である預金を奪い、融資の原資を奪うことになるのです。その結果、深刻な貸し渋り、貸し剥がしが起きたら、「亀井代貸し」ひいては「鳩山民主党」はどのような責任を取っていただけるのでしょうか。

金融機関の背後に全国の中小企業・個人事業主に票もあることもお忘れなく


もっと書きたいのですが紙幅がつきました。過去にも小生、この件についてたくさん書いています。ご興味がおありでしたら本ブログの2009年9月23日号12月9日号2010年2月17日号2月24日号も覗いて見てください。

2010年3月24日 11:36

民意がもたらした「みんなの党」現象

2010年3月24日筆

下の表をご覧いただきたい。通信社のロイターが3月8日から13日に調査した個人投資家の世論調査(上段)です。1006名の個人投資家に「今夏の参院選で投票したい政党」を聞いたところ、1位は民主党ですがそのあと僅差で2位に「みんなの党」が入っています。3位の自民党を上回っています。共産党は健闘していますが、国民新党、公明党、社民党に対する個人投資家の支持は1%台、すでにこの3党は泡沫政党です。

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「みんなの党」への支持が28%と首位の民主党に肉薄しているのはちょっと驚きです。民主党も自民党も、「みんなの党」への驚異的な支持は調査対象が個人投資家という特殊な集団だからだと思いたいでしょうが、個人投資家は一般の国民より先を見る感度が鋭いという点を忘れてはいけません。

普通の世論調査でも「みんなの党」は毎週のように支持率を高めています。3月の初旬に行われた読売新聞と共同通信の世論調査では4%前後でしたが、3月20日~21日に行われた産経・FNNの合同世論調査では「みんなの党」は6.9%にさらに支持率を増やしました。朝日新聞が3月24日朝刊で発表した最新の政治意識世論調査(上表の下段)では「みんなの党」は9%に支持率を増加させています。統計処理が行われた正常な世論調査も、ロイターが示した個人投資家の支持率にどんどん近づいているのです。

過去20年、細川政権が誕生した前後から、わが国の最大の政治勢力は特定の支持政党を持たない「支持なし層」ないし「無党派層」と呼ばれる選挙民でした。朝日新聞の最新の世論調査では無党派層は有権者の50%以上に達しているとしています。投票者の過半数を占める無党派層は、これまで政治改革、行政・規制改革を訴えた日本新党新党さきがけ新生党、郵政民営化を問うた小泉自民党、行政改革やコンクリートからヒトへと訴えた鳩山民主党と、選挙のたびに投票先を変えてきました。今度は、渡辺喜美議員が率いる「みんなの党」へ無党派層はなだれを打って移動している最中だといえそうです。

この無党派層ですが、その場の雰囲気でふらりふらりと投票先を変える行き当たりばったりの「浮動票」でもなさそうです。小生には無党派層の投票行動は、明確な政治理念と意思を持った「レベルの高い民意」にもとづく行動であるような気がしてならないのです。

無党派層が投票行動を変えた政治イシュー(課題)はその時々で違っていますが、ひとつだけ変わっていないものがあります。それは、政治家にまつわる汚いカネの問題への嫌悪、ひいては政治家に汚いカネを提供する既得権益者や利得集団への嫌悪です。この嫌悪感が政治権力と既得権益者や利得集団の関係を破壊しようとする「構造改革」のエネルギー源となりました。この無党派層の「構造改革への強い意志」こそ、小生のいう「レベルの高い民意」にほかなりません。

この無党派層の「レベルの高い民意」が、郵政改革や規制緩和によって族議員と官僚、利益集団の政官業トライアングルから成り立つ「自民党をぶっ壊す」と訴えた小泉「構造改革」路線に支持を与えたのです。昨年夏衆院選での鳩山民主党の地すべり的勝利は、小泉「構造改革」路線によって「ぶっ壊された自民党」の弱体化の賜物です。無党派層が民主党への政権交代を許容したのは、予算の組み替えによる政官業トライアングルの破壊、天下り・渡りに代表される官僚機構の既得権益の破壊という、小泉改革では不十分に終わった「構造改革」の実現を民主党に託したからです。

しかし民主党は、政権を握って6ヶ月、改革を願う無党派層の民意を次々に裏切り続けたのです。ひとつは小沢幹事長(石川議員)、鳩山総理、小林千代美議員と続いた政治とカネの疑惑です。この問題は「レベルの高い民意」にとって耐え難い裏切りです。

法律上は「嫌疑不十分」となりましたが、国民は誰一人、小沢幹事長(石川議員)の長年のゼネコン献金疑惑を無罪だなどと信じていません。小林千代美議員の北教組からの違法な政治献金事件は、労働組合という民主党に巣食うもうひとつの利得集団の存在を明らかにしました。この2つは、民主党も自民党などと変わらない利得集団に寄生した汚い政党だという強い印象を無党派層に与えました。たぶん、鳩山総理が母親から頂戴していた巨額の「贈与として処理された違法献金」が鳩山取り巻きの政治家などにばら撒かれたというようなことがもし明らかになれば、無党派はさらにいっそう落胆するはずです。

もうひとつは、3月3日の本ブログで紹介した長崎県知事選挙などで明らかになった民主党の利益誘導政治です。詳しくは3月3日のブログをお読みいただければ幸いです。結論を申し上げますと無党派の、「コンクリートから人へ」という予算の組み替えによる政官業トライアングルの破壊という民主党への期待は音を立てて崩れ始めています。民主党の利益誘導政治は、公共事業の箇所付け漏洩事件や高速道路予算の復活などでさらに強まってきました。それを主導したのは、地方自治体や利得団体からの陳情処理権限を一手に握った小沢幹事長とその側近が支配する「幹事長室」だったのです。

その「幹事長室」から小沢一郎幹事長に辞任を求める生方幸夫副幹事長という反乱者が出ました。無党派層はこの生方副幹事長の行為に喝采を与えました。無党派層は、高嶋筆頭副幹事長など「小沢側近」が行った「生方解任決議」に対して支持率を急速に引き下げるという反応を示して答えたのです。ゼネコン献金疑惑にほっ被りしたまま利益誘導政治を復活させた小沢幹事長とその取り巻きの政治家たちに無党派層はノーを突きつけたことになります。

たぶん、小沢一郎氏が幹事長を辞職したとしても、民主党から離れた無党派の支持が戻ってくることはないと思われます。輿石幹事長代理(日教組出身)や高嶋副幹事長(自治労出身)など労組出身者が跋扈し、石井一議員のような小沢的な利益誘導型政治家(旧自由党)を抱え込んだ民主党に無党派は愛想を尽かしているからです。

そうなると「レベルの高い民意」は、古くは新自由クラブ、日本新党やさきがけ、現在の「みんなの党」などの、既得権益や利得とは無関係あるいはそれの利害関係の外にあると思われる「清潔な新党」への支持に走らざるを得ないということになります。

「みんなの党」の主張は、渡辺喜美代表の言葉を借りれば、「小さな政府を実現する」「財政赤字の付けを将来世代に回さない」、「経済のパイを膨らます」「官僚依存からも組合依存からも脱却する」ということです。つまり、利益誘導型のバラまきを許さず、政治腐敗の元になる「大きな政府」とその主役である官僚と労組と対決するというのが「みんなの党」の主張です。

「みんなの党」の主張は、わが国最大の政治勢力である「無党派層」の「レベルが高い民意」に見事に沿っていると思いませんか。皆さん。

2010年3月17日 09:18

せめて花を植えて畑を山へ還したい

2010年3月17日筆

最近、「日本がどんどん縮んでいく」という想念や風景が頭の中をぐるぐる巡り、「縮んでいく日本」をどうすればいいのか、悩むことが少なくありません。小生のような何の力もない老齢フリーターが悩んでも何の意味もないと考えると、ますます悩みが深くなります。

「縮んでいく日本」の風景を、とりとめもなく列挙してみます。

空き家や廃屋だらけの山間へき地、看板だけ残って朽ち果てた特定郵便局や農協の建物、萱や雑草に埋もれた耕作放棄地、誰も耕すことない段々畑......。

老人たちの昼寝の場になった公立図書館、入場者より職員の数のほうが多いように見える地方の公立美術館、選挙演説だけに使われる図体だけ立派な市民ホール夜逃げをする地方の土建業者......。

個人商店がなくなった駅前のシャッター通り、高齢者だらけになって空き家が目立つ郊外団地、身寄りのない老人の孤独死が頻発する都心団地......。

まだ引き受け手のない荒れ放題の第3セクターのテーマパーク、リゾート施設、乗り入れる航空会社がなくなり廃港になってしまった地方空港、セイタカアワダチ草が一面に繁茂しコンクリートの裂け目から無数の潅木が生え始めている高速道路、誰も立地してくれない広大な工業団地......。

地方の中には役所、農協(農業)、土建業の3つの産業しか存在しない地域もあります。儲からない農業には後継者がなく、公共工事が減少した土建業には雇用力がない。誰も税金を払えない、払わない。社会保障費だけが膨らむ地方自治体がやっていけるはずがありません。役所産業にも衰滅の危機が訪れます

ではどうするのか。これまでも地方と農業には何度も多額の財政資金がばら撒かれましたが、再生にはまったくつながりませんでした。小生には解決の方法を見出すことができない「縮み行く日本」の寂しい風景が点滅するだけなのです。

そんな風景をぼんやり考えていると、必ずといっていいほど思い浮かぶテレビ番組があります。NHK・BSハイビジョンが放映したドキュメンタリー「秩父山中 花のあとさき ムツばあさんの秋」です。確か2年ぐらい前に再放映されたのを見たと記憶しているのですが、この番組に感銘を受けた視聴者も少なくないようです。小生の記憶も薄れているのですが、他の人がブログに書き残してくれた番組内容紹介の助けを借りて、この素晴らしいドキュメンタリー番組のことを書きます。

余談ですが、NHKのBSハイビジョンは2010年度中に終了するそうですね。92歳まで生きた絵本作家のスローライフを描いた「喜びは創りだすもの ターシャ・テューダ 四季の庭」という美しいドキュメンタリーもBSハイビジョンの再放送で見ました。「花のあとさき」と同じぐらい感銘を受けたのですが、こんな優れたドキュメンタリーが見られなくなると思うと、終了は残念に思います。

「秩父山中 花のあとさき」は、小林公一さん、ムツさんの老夫婦が住む秩父市吉田町太田部楢尾という山間(やまあい)の集落の移り変わりを描いたものでした。楢尾集落は、その昔、炭焼き、養蚕、畑作で多くの家族が生計をたてていたそうですが、その家族が都会に次々に降りて行き、放映当時には5戸9名が残る集落になってしまいました。NHKのプロデューサー兼カメラマンはその9名のうちの2名、公一さん、ムツさん夫婦の段々畑の生活を9年間も追いかけたといいます。

段々畑といっても山の斜面を削り取って開いた農地です。自給用に野菜・根菜類を植えつける程度の畑作しかできません。その段々畑や山間の春夏秋冬の移り変わり、9年間の変化が美しい映像記録になっているのですが、それだけではありません。老夫婦は、もう誰も耕すことのなくなった段々畑にハナモモ、ツツジ、モミジなど1万本以上の花木を植え続けていたのです。ムツさんは、ご主人の公一さんが亡くなった後も花木の剪定や下草刈りに余念がありませんでしたが、そのムツさんの小柄な姿をカメラは追い続けました。

ご夫婦はなぜ畑に1万本以上の花木を植え続けたのでしょうか。ムツさんはこう言っておられました。「使えなくなって畑を放っておくのは申し訳ない。せめて花を植えて山に還したい」と。「畑を山に還す」というムツさんの言葉には、深く考えさせられるものがあります。ご夫婦は、生活のために先祖伝来、山を切り開き自然を人工の畑に代えてきたが、耕作する人がいなくなれば畑をもとの山(自然)に還すべきだといっているのです。畑も田んぼもそうですが農業用地は破壊された自然です。ご夫婦には、畑という破壊された自然から得た恵みに心から感謝しているからこそ、花木を添えて畑を自然に還そうと考えたのでしょう。

ムツさんの土地のような山間の耕作地や段々畑、平野部でも生産性が低く地味の悪い限界農地は、後継者がいなくなった途端に耕作放棄地になってしまうに違いありません。10アール当たり1.5万円の所得保障をもらっても後継者がいない農地はいずれ耕作放棄地になってしまいます

農水省の定義によれば、「耕作放棄地」とは「以前耕地だったが1年以上作物が栽培されず再び耕作するはっきりした考えのない土地」のことだそうです。農家の高齢化によってその耕作放棄地が年々増加し、平成17年には埼玉県の面積に匹敵する39万ヘクタールに達しています。耕作放棄地には萱や雑草が生え、そのうち潅木が根を張り自然の力で雑木林になってしまいます。放っておくと周りの耕作地に病虫害、鳥獣害をもたらします。潅木が根を張り始めると農地に再生するには大きな費用が掛かるそうです。

そんな農地だけではなく、「縮んでいく日本」では、空港、高速道路、駅前商店街、美術館、市民ホール、テーマパーク、郵便局・農協などの跡地、郊外団地などなど日本に至るところに「耕作放棄地」のような土地が生まれることになります。

こうした日本各地の「放棄地」を再生し活用する財政余力は、政府にも地方自治体にも最早ないといっていいでしょう。残るのは、民間経営者や企業家への期待です。例えばこの「放棄地」に最新の病院施設とグリーンツーリズム施設を建設し外国観光客を呼び込むというような投資が起きてくれることを願います。新たな稼ぎを生み出す「アニマル・スピリット(動物的な精神=ケインズの言葉)」を持ったイノベーター(革新者)の投資が起こることを願います。しかし、民主党政権は再分配重視、反企業姿勢が濃厚です。企業にとって再投資の原資にもなる内部留保を取り上げるという共産党の主張に反対できない総理を持っているような国です。イノベーターへの期待も泡のように消えてしまいかねません。

残念ですが、そこで小生、こう思うのです。耕されなくなった、誰も使わない日本中の「放棄地」は、ムツさんがやったように感謝を込めて花を植え、そしてもとの自然に還すのが一番いいのではないでしょうか。

2010年3月10日 10:04

いまなぜ、日本の長期金利は低いのか

2010年3月10日筆

「乗数効果と消費性向の違い」も知らない副総理が「新成長戦略」を策定したのですから、空恐ろしくなります。政治主導はいいのですが経済政策の基礎知識のない政治家が経済政策を操るのは困りものです。よほど恥ずかしかったのか当の菅直人副総理はサミエルソンの「経済学」上下2巻を買い求めたそうですが、10ページほど読んだだけで本を閉じたといいます。

民主党にはマクロ経済をきちんと議論できる議員はいないのかと小生嘆息していたのですが、民主党にもいるではありませんか。テレビ中継された3月3日の参院予算委員会で質問に立った岩手県選出の平野達男・民主党議員です。彼は、白川方明日銀総裁と国家財政の持続可能性や債務不履行のリスク、長期金利などの問題について、まともな議論を展開していました。平野議員のことを調べてみたらやはり、大学で講師経験もある農水省出身の「過去官僚」でした。

平野議員は、白川総裁が「財政運営に対する市場の信認を維持することが大切だ」と述べたのに対して、バーナンキFRB議長の言葉を紹介しながら「財政均衡は政治家の仕事だ」と応じていました。政治家は選挙に勝つため財政規律など無視して予算をばら撒くのは何も日本に限ったことではありません。アメリカの下院議員も同じです。だからバーナンキは、「財政均衡は政治家の仕事だ(中央銀行にはどうすることもできない)」と言ったのでしょう。

さらに平野議員は、膨大な政府債務を抱えているにもかかわらず「なぜ日本の長期金利が低いのか」と白川総裁に問い、白川総裁から「理論的には長期金利は、将来の成長率、物価上昇率、それに国債を保有することに伴うリスクを加えて形成される」という見解を引き出しています。

ここでいう長期金利とは10年物指標国債の流通利回りを指します。国債が売られれば国債の流通利回り(長期金利)は上昇します。国債が買われれば流通利回り(長期金利)は下落します。ですから、「なぜ日本の長期金利は低いのか」という問いは、世界最悪の政府債務残高を抱えるのに「なぜ日本国債は売られないのか、価格が下落しないのか」という問いと同じです。

この問いに白川総裁が答えるわけがありません。下手に答弁すれば国債の投売り(長期金利の急騰)を招くからです。白川総裁に代わって平野議員は、以下のような見事な答えを出していました。(平野議員のホームページより引用。一部意訳、編集している)。

日本は景気が悪いために金利が抑えられている。菅大臣は新成長戦略で年平均3%の名目成長率を設定したが、それは結果として名目金利(長期金利)も相当上がることを意味し、現在の国債残高からすると国債の利払い費が急激に増加することになる。今年度の国債発行53.5兆円が国内で賄えたのは、企業の設備投資が20%も減少し、個人消費も落ちて、貯蓄過剰を生み出したからだ。不景気によって財政が支えられていることを国民に説明する必要がある」

平野議員は「日本の長期金利(国債利回り)が低いのは景気が悪いから」で、デフレが克服され景気がよくなると(菅大臣が作成した新成長戦略が目標とする今後10年間平均3%という名目成長率が実現すると)、国債の利払い費が急増すると言っているのです。以下で、平野議員が展開したこの議論を白川総裁が述べた長期金利の決定式に当てはめて説明します。

白川総裁が国会で述べた決定式を方程式にしますと、
長期金利=予想実質成長率+予想インフレ率+リスクプレミアム
となります。予想実質成長率+予想インフレ率は名目成長率を意味します。したがって、方程式は最終的には以下のようになります。
   長期金利(国債利回り)=予想名目成長率+リスクプレミアム
いまリスクプレミアムが変わらないとすれば、名目成長率の高い国は長期金利(国債利回り)が高くなり、名目成長率の低い国は長期金利が低くなるということをこの方程式は示しています。

 

20100310表1.jpg

 

上表は予想名目成長率が低い順に主要国を並べてみたものです。これを見ると確かに名目成長率が高い豪州や韓国の長期金利は高く、名目成長率が低い日本の長期金利がもっとも低くなっています。名目成長率が高かったバブル崩壊以前は日本でも現在の豪州や韓国と同じように4%以上の長期金利でした。つまり、名目成長率が高くなると長期金利も高くなるという方程式は実証されていることになります。

とすれば、日本の名目成長率が新成長戦略で目標とする3%に引き上げられると、長期金利は現在のアメリカ並みの3%以上になっても不思議ではないということになります。景気がよくなり名目成長率が上昇すれば、税収も増加するから財政赤字の縮小につながると考える人も少なくないでしょう。しかしそうはいきません。

IMFの予測(上表)では、2010年の日本の政府債務残高(借金)は名目GDP(課税対象になる名目所得総額)の2倍近くに達しています。名目成長率上昇と同じテンポで長期金利が上昇するのですから、残高2倍の政府債務の利払いの増加のほうが税収の増加よりが格段に大きくなる計算です。だから平野議員は「名目成長率を高めれば国債の利払いが急増する」と言っているのです。税収増より利払い増のほうが多くなれば財政赤字はさらに拡大します。利払いのための国債発行を余儀なくされます。残念ながら名目成長率3%を主張した菅副総理こそ、財政赤字の累増(発散)の元凶となるのです。

今回は白川総裁の言う「国債を保有することのリスク」について触れる紙幅がありません。上表では、長期金利と予想名目成長率の差をリスクプレミアムとして各国のそれを計算しています。日本は長期金利のほうが予想名目成長率より高いので、その差であるリスクプレミアムがすでに高くなっています。日本のリスクプレミアムはすでに「国債を保有することのリスク」を反映して財政危機が進行しているイギリス並みに高まっているということになります。

しかし政府債務残高がその消化能力を示す純個人金融資産(個人の総金融資産から住宅ローンなど債務を差し引いた純額)をもうすぐ上回る日本において、リスクプレミアムが現状の水準でとどまるという保証はまったくありません。ある日突然、ギリシャのようにリスクプレミアムが急騰し、長期金利が跳ね上がる(国債が急落する)かもしれません。「日本国債の暴落など、来る来ると言って来ない狼少年のようなもの」(菅副総理)などと言ってられないのです。

2010年3月 3日 09:56

「長崎新聞」が噛み付いた民主党の利益誘導政治

2010年3月3日筆

国民が政権交代を選択して1年も経たないのに、長崎県知事選挙、町田市長選挙、石垣市長選挙と相次いで政権与党の民主党候補が大敗しました。総理と幹事長という二人の民主党リーダーが巨額の資金を使って権力を手中にしたという古い金権政治の疑惑が選挙民の頭脳に深くインプットされたためでしょう。

それだけではありません。民主党は政権与党になって予算の配分権を握った途端に露骨な利益誘導政治を始めたのです。それへの失望もあったと思います。

小泉純一郎元総理は「自民党をぶっ壊す」と主張して政権を掌握しました。小生の理解では小泉氏が「ぶっ壊す」という「自民党」とは、自民党の族議員(郵政、道路、農水、文教、厚生の5族)とそれに結びついた圧力団体や業界、この両者の利権構図に協力することで天下り利権を保持してきた官僚機構、この3者の利権トライアングル(小生の言葉では利権民主主義)を意味します。

国民は、民主党が小泉政権でもなし得なかったこの利権トライアングルを小泉氏に代わって破壊してくれることを願って政権交代を選択したのです。仙石由人行政刷新担当相(当時)と枝野幸男議員(現・行政刷新担当相)が行った事業仕分けに対して国民が喝采を与えたのがその証拠です。

しかし、本当に利権トライアングルを破壊してくれるのか、という民主党への疑念が、「郵政族」(全国郵便局長会の利益を代弁して票をもらう議員)そのものの国民新党と連立を組んだ時点から生じ始めていました。その疑念は、斉藤次郎という元大蔵次官を日本郵政の社長に登用してさらに大きくなりました。官僚の天下り(斉藤氏の場合は「渡り」です)を認め利権トライアングルの一角を承認してしまったからです。そのうえ郵貯の預入限度額引き上げ案や郵便局長の定年を改革前の65歳に戻す案が出るに至って、民主党は「利権トライアングルの破壊」など考えてもいないのではないかという国民の疑惑が生じ始めています。

その後、国民の疑惑がどんどん深まり、国民には「騙された」という思いが強くなる事件が相次いで起こってきます。10年度予算編成では、民主党に擦り寄ってきた日本歯科医師会には診療報酬で優遇する一方、自民党出身者が支配する土地改良組合の予算をばっさり切り捨てました。戸別所得保障金を農協経由ではなく農家直接にばら撒き、民主党に従わない農協組織を締め上げるという策にも出たと報じられています。他に多くの所得を持つ兼業農家がほとんどの10アールという小規模米作農家にも所得保障は与えられます。これは数の多い兼業農家票を釣り上げるという自民党より悪質な仕掛けです。こんな農家への戸別所得保障は、自給率の引き上げにも農業の競争力引き上げにも、肝心な後継者の育成にもまったく役に立たないことを付言しておきます。

民主党は、予算配分権を使って自民党を支持する利益団体や支持業界に踏み絵を踏ませ、彼らの民主党支持への「転び(転向)」を勝ち取ろうとしているに過ぎません。民主党は、民主党支持に転じた利益団体、地域や業界、それに従来からの民主党支持の利益団体である労働組合、官僚組織(自治労など)という「新たな利権トライアングル」を築こうとしているのではないかと国民は考え始めています。

この民主党の「新たな利権トライアングル」の構築は、自民党時代の「古い利権トライアングル」に熟知している小沢幹事長が主導していると思われます。小沢幹事長は、全国から出てくる陳情を幹事長室で一手に取り仕切るという新しい仕組みを作ることで、予算配分への介入権を手に入れ、この予算配分権を梃子に地域や業界や利益団体の首根っこを押さえ込むことに成功したのです。

その一端は、民主党議員の石井一選挙対策委員長の「暴言」事件で明らかになりました。石井議員は選挙を取り仕切る小沢一郎幹事長の代貸しのような存在です。石井選挙対策委員長は、1月29日に開かれた民主党推薦知事候補の総決起集会で以下のように演説しました。

(今回の長崎県知事選挙挙で)「時代に逆行するような選択を長崎の方がされるのであれば、民主党政権は長崎に対しそれなりの姿勢を示すべきだろうと私は思います。それが政治というものです」

石井議員は、知事選挙で民主党候補が落選するようなことがあれば「民主党政権は長崎に対しそれなりの姿勢を示す」と脅しているのです。「それなりの姿勢」の中身は何か、それは石井議員より前に長崎入りした小沢一郎幹事長が行った民主党長崎県連のパーティー(1月17日)での演説で明らかです。小沢幹事長は「橋本君を知事に選んでいただければ自主財源となる交付金も皆さんの要望通りできます。高速道路をほしいなら造ることもできます」と演説しました。つまり小沢幹事長は、「交付金の配分を長崎県に不利に運び、高速道路を作れなくするぞ」という形で「それなりの姿勢」を示すと言っているのです。

この「選挙に勝つために予算配分権を行使する」とする小沢・石井の露骨な選挙戦略に長崎県民は怒り沸騰でした。その県民の気持ちを2月25日付けの「長崎新聞」の論説欄が代弁しています。

この論説は「石井一議員の選挙演説 有権者への恫喝を許さない」と題した、怒りに満ちた、そして誇り高い主張です。この論説を引用します。

(石井発言は)、「本県有権者が民主党候補を知事に当選させなければ、政権党の力を使って県民全体に不利益を与えると脅した、紛れもない恫喝(どうかつ)発言である。われわれは、断じてこれを許さない。
有権者は憲法で保障された投票の自由がある。政党が有権者に対して、特定候補に投票しなかった場合には報復措置を取ると示唆し脅すのは、この権利を踏みにじる行為だ。民主主義を否定する暴言を吐いた石井氏の政治家としての資質を問わねばならない」

さらに長崎新聞は、(民主党は)「大臣(注・たぶん島原での前原国交相演説)、党幹部(注・石井、小沢発言)が露骨な利益誘導発言を連発した。それはかつての自民党の利益誘導政治となんら代わらないという点で、国民の政権交代への期待を裏切るものだった」とも断じています。

長崎新聞のジャーナリスト魂に敬服します。今回は触れられませんでしたが、公共事業の「箇所付け」疑惑(民主党が地方自治体に情報を漏洩した法令違反だけでなく、陳情を元に行われた公共事業費の上乗せについての疑惑もある)も小沢民主党の利益誘導体質を示す証拠です。国民は、政権交代に托した「利権トライアングルの破壊」という期待をことごとく打ち砕かれ、民主党に深く失望していることを、鳩山さん、菅さん、そして前原さん、ご存知でしょうか。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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