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大西良雄ニュースの背後を読む

2009年12月

2009年12月24日 11:25

2010年は「寅千里を走る」

2009年12月24日筆

7月1日から始まった「山形新聞」の小生のささやかな連載コラム「マーケットナビ」(火曜日から土曜日まで毎日掲載)が、早いものでもう6ヶ月が経過しました。

小生のような週刊誌上がりの長考・遅筆記者が、午前11時過ぎに執筆テーマを決め、午後2時までに調査取材・分析を終え、3時過ぎまでに一気に書き上げるという短考・速筆記者に化けての連載です。ちょっと無謀な試みでしたが、何とか6ヶ月書き続けることができました。山形新聞の担当者から「もう要らない」と言われない限り、新年も新聞記者のまねごとを続けるつもりです。

前置きが長くなりましたが、その「山形新聞」の12月18日付朝刊に、2010年の干支にちなんで次のように書きました。

『兜町には干支にちなんだ格言がある。09年は「丑(うし)つまずく」、10年は「寅(とら)千里を走る」、11年は「卯(う)跳ねる」だ。
 「丑つまずく」の格言どおり、戦後5回の丑年の平均騰落率は▲11・4%
と十二支の中でも最悪だった。09年の丑年も3月には日経平均が7057円とバブル崩壊後の再安値をつけた。
寅年は戦後5回の平均騰落率が+4%となっている。勝率は1勝4敗と下げた年のほうが多いが、下げはいずれも小幅で、86年のプラザ合意後の金融相場が貢献して平均騰落率はプラスになった。
日銀予測によると日本経済の実質成長率は、09年度が▲3・2%、10年度+1・2%、11年度+2・1%と尻上がりに良くなるという。
過去を紐解けば寅年に千里を走るほどの勢いはない。それでも兜町は格言どおり09年が陰の極、「寅千里を走る」10年以降は相場尻上がりと大いに期待している。』

はたして2010年の相場は「寅千里を走る」という格言どおりになるでしょうか。日経新聞12月23日朝刊によると、証券会社の株価予測のなかでいちばんの強気派は大和証券です。大和は「円安基調に転換、業績回復期待で夏場に高値」と見て、日経平均で高値1万3000円、安値9000円と予測しています。強気派は、リーマンショック前の株価を上回ると予測しています。

いちばんの弱気派は三菱UFJ証券で、高値1万1500円、安値8000円と予測しています。三菱UFJは大和証券とは逆で「円高リスクやデフレ、割高感で上値は限定的」と読み、2010年もリーマンショック前の株価を越えることはできないと見ているようです。

小生は「寅千里を走る」というほど相場に勢いはないでしょうが、強気派の大和証券に近い見通しを持っています。強気派と弱気派の判断の分かれ目は、2010年には為替が円安基調に転じるのか、円高リスクが残るのか、どちらの見通しを持つかに掛かっているといえます。小生は円高が一服し、今年前半は円安に転じると考えているからです。

為替の基調が円安に転じる理由は、政府・日銀の間にマクロ経済政策運営に当たって協調体制ができたことです。鳩山政権100日にしてようやく、本ブログでたびたび指摘してきた「マクロ経済政策が重要であること」が理解され、民主党政権が「市場の意見に少しは耳を傾けるようになったこと」が、円安に転じるきっかけになりました。

第一に、市場は、「円高容認論者」と受け止められていた藤井財務相が「1ドル85円以上の円高は容認しない」という姿勢を明確に打ち出したと評価し始めています。1ドル85円を上回れば、国際的な協調介入がなくても断固としてドル買い介入を行う姿勢を示せれば最高だったのですが......。

第二に、日銀が、10兆円規模の新型オペに踏み切り「広い意味の量的緩和政策」に踏み切ったことです。新型オペは、日銀が民間金融機関に対し国債などを担保に0.1%という翌日物並みの安い金利で3ヶ月間の貸出を行うというものでした。これで翌日物から3か月物までの金利が0.1%に下がり、ロンドンの金融市場で日本円の短期金利が米ドルの短期金利より高いという状態が解消しました。その結果、日本の金利が高いことに目をつけた円買いドル売り(円高ドル安)が収束することになったのです。

第三に、デフレ容認と見られていた日銀が「消費者物価上昇率のマイナスは許容しない」と宣言した上で、物価安定の理解水準を「消費者物価上昇率0~2%程度」から「2%以下のプラス領域」と変更したことです。日銀は、消費者物価が現在のマイナスから0%近辺に回復しても金融引き締めには転じない、消費者物価が2%以下のプラス領域に安定的に復帰しなければ金融引き締めに転じないと言っているのです。
消費物価の持続的な下落、つまりデフレーションは、日米の物価上昇率の格差を原因とする「円高ドル安」をもたらし、その円高がデフレをさらに進行させる危険性があることを12月2日の本ブログ「円高とデフレのスパイラルを止めよ」で論じました。その円高とデフレのスパイラルが日銀のデフレ認識の変更によって止まると思います。日銀は、デフレ退治のために必要なら3ヶ月よりさらに長期の金利を引き下げる追加的な金融操作を行うと言っているに等しいからです。場合によっては長期国債の買い切り購入を増額するかもしれません。日銀の姿勢変化からそういう期待すら出来るようになりました。

市場も、ようやく採られた日銀・政府が協調した「円高デフレ対応」を評価し、円高から円安への基調転換を予測するようになっています。小生の敬愛する友人でもあるモルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマン氏は、円安が1ドル100円まで進む可能性があるとロイターのインタビューに答えています。日本経済にとって最大の重荷だった円高が一服し円安に転じるなら、景気回復が続く中国やアジア、そして欧米への輸出回復が素直に日本経済の景気回復を牽引することができるようになります。

次の市場の懸念材料は22年度予算での新規国債発行高ですが、市場の許容範囲である44兆円以下に収まるかどうか、その結果と評価については新年の1月6日の本ブログで書くことにします。いまの段階では多分44兆円以下に収まり財政の節度に対する市場の評価が得られ、年初から長期金利が急騰するようなことは避けられると思われます。

こうした判断から小生は、日経平均株価は春先までにリーマンショック前の株価1万2000円台を回復、年央には1万3000円に達しても不思議ではないと考えています。

2009年12月16日 09:07

「柚子の大バカ」が実りました

2009年12月16日筆

「桃栗3年、柿8年、柚子(ゆず)の大バカ18年」といいまして、ゆずは種を播いてから実がなるまで10数年掛かるそうです。わが家の庭にもゆずの木が植わっているのですが、深緑の硬い葉っぱを一年中つけて無愛想に突っ立っているだけで、実がつくなどすっかり忘れていました。

ところがこの秋、わが庭のゆずの木が、レモンにも負けない鮮やかな黄色い実を、初めてしかもたわわに付けたのです。ゆずの木はこの2、3年、白く咲いた花の数だけ深緑色の小さな実をたくさん付けていたのですが、すべて未熟のまま落ちてしまうか、大きくなっても黒ずんで落果してしまっていました。小生は、この木ははたしてゆずの木なのだろうか、と疑っていました。

正直申し上げますと、小生、「ゆず」「カボス」「すだち」の区別がまったく付かないのです。家内の実家の庭にも「ゆず」に似たような木が植わっていて、その実も小さく深い緑色でした。家内は緑の実のうちにそれをもいできて焼いた秋刀魚の脇によく添えてくれました。小生が育った大分県では深い緑色の小さな実の柑橘類は「カボス」と決まっていましたので、家内が添えた実はてっきり「カボス」ではないかと思っていました。しかし、ぎゅっと絞って秋刀魚にかけた果汁は、子供の頃に味わったあの独特の「カボス」の風味とは少し違っていました。家内に「これはカボスですか」と聞きますと、「いいえ、これはすだちです」という応えでした。

へー、これは「すだち」なのか。何も知らない小生は、「すだち」という言葉を改めて頭に刷り込みました。そして今秋、わが庭の木に深い緑色の小さな実がつき幾分大きくなったとき、小生は家内の実家とおなじ「すだち」が実ったと思い込んでいました。「すだち」ならこの大きさで十分食せるだろうと、実を採ろうと手を伸ばしたのですが、家内は「いま採っちゃだめ」というではありませんか。小生また頭が混乱してしまいました。なぜ「すだち」を採ってはいけないのでしょうか、奥様。

ところが家内は「これはすだちではありません。ゆずです。ゆずはもっと大きくなるし、黄色く色づくまで採るのはお待ちなさい」と言うではありませんか。家内が言うには、およそ22年も前、転勤先の大阪から帰ってきた時、黄色い実がついた鉢植えのゆずの木を580円で「新所沢パルコ」1階にある花屋にて買い求めたそうです。それを2年間、鉢植えのまま育てたそうです、実がなりません。そこで日当たりの良いところに植え替えたそうです。家内はそう言っているのです。へぇー、そうなの。細かいことまでよく覚えていますね。

そんな会話があって2ヵ月後、家内が言うようにゆずの実はひと回りもふた回りも大きくなり、黄色く色づき、果皮もでこぼこになってきました。中身はずっしり重く、ゆずの実の下を通る時、小生のでこぼこ頭にゆずのでこぼこの実がぶつかります。そのたびに匂いをかぎますと、秋刀魚の横に添えたゆず、柚子胡椒のゆず、柚子入り蜂蜜のゆずのあの香りがするではありませんか。小生は、ゆずの香りをかぐために晴れた日は必ず、背丈2メートル足らずの木の下に行き、でこぼこ頭にゆずのでこぼこの実をぶつけ、香りを楽しむようになりました。

香りをかぎながら思ったのですが、なぜわが庭のゆずの木は「柚子の大バカ18年」をはるかに超えて22年間も実をつけなかったのだろうかと。小生は、つい最近まで庭中を日陰にしていたあの桜木のせいではなかろうかと考えています。10月14日付の本ブログ「桜木を伐って"老い支度"」でも書きましたが、桜木を切り落としましたのは、ちょうどわが庭のゆずの実が深い緑色から鮮やかな黄色の変わろうとするときでした。太陽の光を遮っていた桜木がなくなったので、ゆずは黒ずんだり落果したりせず、鮮やかな黄色のでこぼこの実に変ずることができたのではではないかと思っています。

もちろんこんな結論に科学的根拠などまったくありません。桜木を伐ったことを合理化するための小生の心情的根拠に過ぎません。ゆずの実だけではありません。いつもは真っ赤に燃えないまま枯れ果てていた3本の「ドウダンツツジ(燈台躑躅)」の葉が今年はみごとに燃えたのです。桜木で長い間遮られていた太陽の光が今年は「ドウダンツツジ」の葉にふんだんに注ぎ込み、真っ赤な葉っぱに変じさせたと私は信じています。ですから、ゆずの実も太陽の恵みによって黄色く色づいたに違いありません。

わが庭のゆずの木は結局、100個以上も黄色い実をつけました。家内は毎日のようにゆずの果皮を刻んでうどんのつゆや鍋物の付け汁に浮かべています。よほどうれしかったのでしょう。北は北海道から南は九州まで友人、知人、親戚にゆずの実を送っていました。小生も家内が摘んでくるたびにゆずの実の香りを嗅がせていただき、頭がすっきりするのを楽しんでいます。来年もたくさんの実がついて、私たちを喜ばせてくれるようにと、天照(あまてらす)太陽のお光さまにお願いしている毎日でございます。

2009年12月 9日 11:51

民主党が亀井国民新党を離縁する時

2009年12月9日筆

鳩山連立政権の亀裂がどんどん広がってきました。亀裂のひとつの原因は、国民新党の亀井静香代表です。7.2兆円の緊急経済対策をめぐる亀井国民新党の傍若無人ともいえる横車に、菅直人副総理(国家戦略担当相)の堪忍袋の緒が切れたようです。亀井大臣の横車は来年度の予算編成でも繰り返されそうで予算の年内編成に大きな障害が発生する雲行きです。

小生は、「モラトリアム(返済猶予令)」などと叫ぶきわめて粗雑な亀井金融相提案がなされた時、このブログで「亀井大臣には速やかにお引取り願いたい」(09年9月3日筆)と書きましたが、その後も亀井大臣をめぐって小生が恐れていたことが次々と起きてしまいました。

まず亀井静香郵政改革担当相は、民間出身の西川善文氏に代わって元大蔵次官の斉藤次郎氏を日本郵政社長に送り込む人事を強引に行いました。この人事が鳩山総理や菅副総理が知らないうちに行なわれたことは、今回の菅副総理と亀井大臣の言い争いではっきりしました。亀井大臣は「菅副総理が言ってはならないことを言ったのでたしなめた」と言っているのは、斉藤次郎社長人事の件です。

この斉藤次郎人事は、菅副総理(や鳩山総理)からすれば、「官僚の天下り、渡り人事を根絶する」という民主党の金看板マニフェストを反故にさせかねない人事でした。それを「郵政見直しが一丁目一番地」とする国民新党の顔を立て黙って認めたのに、なぜ緊急経済対策の策定に我を張り協力しないのかと菅副総理は怒鳴ったに違いありません。菅副総理は斉藤次郎人事を「黙って認めた」のではありません。民主党は「政治家や官僚OBが任用した人事は天下りや渡りではない」などという、天下りや渡りが尻抜けになりかねない定義をせざるを得ない大きな犠牲を払っているのです。

そのうえでの今回の、予算担当の菅副総理に対する亀井国民新党による緊急経済対策の上積み強要です。菅副総理からすれば、厳しい財政制約にもかかわらず上積みを要求した国民新党に歩み寄って決めた7.2兆円の緊急対策です。小生もきわめて狭い道を綱渡りで決めた賢明な緊急対策だと評価します。菅副総理は、それを協議する3党連立の基本閣僚委員会への出席を亀井代表に再三懇請したのにもかかわらず、亀井代表はそれを馬鹿にしたように無視して欠席したと報じられています。イライラして怒りっぽいので「イラ菅」と仇名される菅副総理ですが、「イラ菅」であろうとなかろうと、この亀井大臣の国民から最大の支持を得ている公党(民主党)を馬鹿にした態度に怒りが爆発しないほうがおかしいと小生は思います。

そのうえ亀井代表は、「3党連立は3党対等だ。民主党主導ではない」などと国民や選挙民を無視したとんでもないことをほざいています。先の衆院選での亀井国民新党の得票数は122万票(得票率1.73%)にすぎません。国民の支持はほんのわずかです。郵政民営化推進派の「みんなの党」(渡辺喜美代表)ですら福島社民党並みの300万票余を獲得しています。小生には亀井国民新党は特定郵便局長会の利益代弁政党としか思えません。ほんの少数の民意しかえていない特殊な極小政党が「3党対等だ」といって、連立政党をかき回すのを選挙民は許すわけがありません。鳩山連立政権は民主党が主導すべきです。

緊急経済対策のさらなる上積みを強要した亀井国民新党の主張そのものにも問題があります。まず亀井静香代表が主張する古臭いケインズ型財政出動は民主党が主張する「コンクリートから人へ」というマニフェストに反するだけではありません。このタイプの財政出動は自民党政権下でこれまでさんざん繰り返されましたが、土建屋と政治家を潤すだけで膨大な借金(国債累増)を国民に残しました。

この国債をはじめとする政府債務残高が累増し、この債務を消化する個人金融資産残高を上回る時期が刻々と迫っていることもこのブログで二度ほど述べました。亀井代表は10年度の予算編成に当たってもさらなる財政拡張(地方へのばら撒き財政)を強要すると思われますが、彼は規律を失った国家財政に対する市場の厳しい鉄槌のことなどまったく考慮しているふうがありません

たまたまですが、アメリカの格付け機関フィッチが、財政悪化の著しいギリシャ政府が発行する国債の格付けを「Aマイナス」から「BBBプラス」に引下げました。これを受け株価は急落、ユーロも下落しました。日本国債は、新規国債発行を30兆円にとどめた小泉財政を評価してアフリカのボツワナ並みに落とされた格付けが「ダブルA」まで回復しました。しかし、財政規律などほとんど考慮しない政党(亀井国民新党)を相手に連立を組み、それに押しまくられている鳩山政権です。世界の格付け機関が10年度の予算編成を見て、ふたたび日本国債をボツワナ並みに格下げする懸念が大いにあります。ギリシャ国債の格下げに際して市場では債務不履行の噂が駆け巡り、ギリシャ国債の価格が急落、一方で長期金利が急騰しました。同じことが日本国債に起こってもなんら不思議はない状態なのです。

菅副総理や藤井財務相がこうした「市場の鉄槌」をおもんばかって10年度予算の編成に当たって「少ない財政出動で大きな景気浮揚効果をもたらす予算」を構想していることに小生は大賛成です。仙石由人行政改革刷新会議担当相のもとで、前回仕分けされなかった概算要求や特別会計の「事業仕分け」も民主党挙げて実行すべきです。緊急経済対策でもようやく取り入れられた、幼稚園・保育園の一元化など財政資金が一銭もかからない規制改革・緩和政策をさらにひろげる必要があります。

かりに亀井代表は10年度の予算編成に当たって「3党対等」などと言い張り再び横車を入れることがあれば、鳩山民主党は国民新党との連立解消も考慮に入れねばならないでしょう。亀井静香国民新党代表は「過半数に満たない参議院議席数」という民主党の弱みに付け込んで思い上がっているのです。民主党は、選挙民のために亀井代表の思い上がりを駆逐する覚悟さえ持てばなんでもできます。民主党は特定郵便局長会の票がなくても過半数を維持できます。しかし国民新党は民主党の選挙協力がなければ消滅することは疑いありません。国民はこのことを良く知っています。

いざという時は民主党には、自民党の改革派、良識派、あるいは「みんなの党」、さらには公明党と部分連合を組む手もありますからね。

2009年12月 2日 10:42

円高とデフレのスパイラルを止めよ

2009年12月2日筆

菅副総理の「デフレ再確認」宣言の後、ドバイ金融不安も重なり1週間で4円も円が急騰、11月27日には一時14年ぶりの高値となる1ドル84円台をつけました。デフレが円高を呼び込んだことになります。

デフレ(物価の持続的下落)とは、製品やサービスの価値が下落する一方、貨幣価値が上昇する現象です。10月の日本の消費者物価上昇率はマイナス2.2%、アメリカはマイナス0.2%です。ともに物価下落ですが、日米の物価差は2%もあります。2%の物価差だけ日本の円はドルより貨幣価値が高まる、つまり円高になって不思議はないということになります。

もうひとつ、2%の物価差は金利にも影響を及ぼします。日本の政策金利は0.1%、アメリカは0%~0.25%ですが、ほとんど同じゼロ金利水準と考えてよいでしょう。しかし物価差が2%ありますから、日本に実質金利は米国より2%高いことになります。日本のデフレがさらに進行すると「日米の実質金利差」がさらに拡大し、実質金利が高い円が買われドルが売られ、円高になるのです。

実質金利差のような一般には分かりにくい円高要因はさておき、円ドルの実際の金利も日本円のほうが高くなっているのです。たとえばロンドン金融市場では、潤沢すぎると言っていいドル資金の供給によって銀行間で取引されるドルの短期金利が大きく下がり、日本円の短期金利を下回っています。投機筋は金利の安いドルを売って金利の高い円を買って利ざやを稼いでいるのです。円を買ってドルを売るのですから円高ドル安になります。

以上が日本のデフレ深化が円高を呼び込むメカニズムですが、一方、その円高がデフレを加速することにつながります。円高とデフレのスパイラルです。

まず円高は輸出企業の輸出利益を減少させ、ようやく回復し始めた企業利益を再び減少させます。企業収益の減少は賃金・雇用の圧縮をもたらし消費を減少させます。一方、企業収益が減っては設備投資どころではありません。消費需要と設備投資が減って景気がさらに悪くなり、物価下落が進みます。

もうひとつ、円高は輸入製品の価格を引き下げることになります。輸入製品の値下がりがこれと競合する国内製品の値下がりを誘発し、物価の下落を加速することになります。輸入製品はグッチのような高価な海外ブランド製品だけではありません。家電製品やジーンズのような人件費の安い途上国で生産している日本製品の逆輸入も含まれますから、円高は日本メーカー同士の値下げ競争に拍車をかけることになります。

円高とデフレのスパイラルを止めなければ、4-6月期、7-9月期と回復してきた日本経済が再び景気の悪化(景気の二番底)に見舞われることになります。円高とデフレのスパイラルを止めるのが、政府(財務省)と日本銀行の今もっとも大切な仕事です。

12月2日(本日午後、ブログ執筆後です)、鳩山由紀夫総理と白川方明日銀総裁が、円高デフレ対策について会談することになりますが、市場は民主党政府と日銀の間に緊密な協調関係が築かれるかどうかを見守っています。

この会談の前日、日銀は緊急政策決定会合を開き、国債、地方債、社債、CP(商業手形)を担保に金融機関に10兆円規模の資金供給を行い、高止まっている3ヶ月物の市中金利を超短期の翌日物無担保コール並みの0.1%に引き下げるという追加緩和政策を決めました。政府の緩和要請がある前に日銀が先手を打ったことになります。

日銀はたぶん、この緩和によってロンドン市場での日本円の短期金利がドル金利並みかそれ以下に下がり、円買いドル売り(円高)が止まるはずだと期待したはずです。しかしその期待は裏切られました。この追加緩和策が発表された後、87円前半まで下落していた円は逆に86円台に戻りました。市場は、この程度の緩和策では、円高を止め円安に転じる力はないと見ているようです。

日銀は、円高の原因になっているデフレは需要不足(35兆円ものGDPギャップ)によるものだと考えているようです。それも事実ですが、政府が巨額の財政出動によってこのGDPギャップを埋めるような対策を採用すると、市場は財政赤字がさらに拡大(国債累増が加速)すると予測し、国債が売られ長期金利が上昇するという結果を招きます。デフレ不況下の長期金利上昇は、悪い金利上昇でデフレをさらに進行させます。

菅直人副総理は週内に需要不足(GDPギャップ)を埋めるための緊急経済対策(第2次補正予算)を取りまとめ発表する予定です。朝日新聞によれば、その規模は当初の2.7兆円から7兆円規模に膨らむようです。財政制約がある中で精一杯の緊急経済対策だといえますが、しかし、実際に需要を膨らませるGDPギャップを埋める効果があるのは、エコカー補助金、エコポイント制度の延長、住宅版エコポイントの導入に伴う追加予算1兆円だけです。残りの雇用調整助成金支給条件の緩和、中小企業の資金繰り支援、地方交付税の補填などは、出血を止める効果はありますがGDPギャップを埋める効果はありません。

政府の緊急対策の内容を吟味しなければなりませんが、まだ円高とデフレのスパイラルの危機が収まったわけではありません。年末年始にはもう一度、市場(マーケット)から円高株安の圧力がさらに強まり、政府と日銀双方に円高を止めるもう一段の対策、たとえば財務省によるドル買い介入(円資金の市中散布による短期金利引き下げ)、日銀の長期国債買い切りの増額(国債買いの増加による長期金利の引き下げ)が求められる段階が来るのではないでしょうか。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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