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大西良雄ニュースの背後を読む

2009年7月

2009年7月29日 14:57

民主党を勝たせる異様な「空気」

2009年7月29日筆

最近、民主党の前原誠司、鳩山由紀夫両氏が、当落選線上にいる民主党候補を応援するために小生が住む選挙区に相次いで訪れました。家内はそのたびに「見に行こうよ」と私を誘います。家内には前原さんも鳩山さんも、日ごろはテレビでしかお目にかかれないイケメン政治家です。いやテレビタレントなのでしょう。

こんな家内を苦々しく思っていても小生は高齢フリーターという自由の身、時間はいっぱいあります。結局、家内の運転する車に乗ってあちらの公民館、こちらの駅前とまるで民主党タレントの追っかけのように振舞ってしまいました。今日も夕方、市のホールに渡部恒三さんがきます。家内は「東北弁の水戸黄門が来るから行きましょうよ」といいますが、小生、本日は久しぶりのお仕事、早稲田大学オープンカレッジの講義があります。「かってに1人で行きなさい」と家内をはねつけました。エヘン。

小泉郵政選挙と同じ右向け右の「空気」が支配
しかし、いやいや選挙の個人演説会に付き合った成果はありました。前原さんが演説した公民館は農業も盛んな自民党が地盤の土地にある公民館ですし、民主党新人の演説会ですから30人も聴衆が集まっていればと公民館に遅れて到着しました。ところが、公民館のさほど広くない講義室になんと500人の聴衆が詰め掛けているではありませんか。小生も家内も立ち見です。そばにいた主催者(昨年9月に結婚した候補者の奥さん)が言っていましたが、驚くほど、想定外の聴衆だったそうです。

駅前で行われた鳩山代表の演説会も午後1時半の真っ昼間、公示前なのに、ロータリーには動員も掛けずになんと1500人が集まっていました。聞いていたのは小生夫婦のような退職後の中高年齢が多かったように思います。

小生は、痩せても枯れても「経済ジャーナリスト」です。前原さんのような経済合理性に配慮したクレバーな政治家であれば拍手を惜しみませんが、経済などそっちのけ、人気取りのポピュリストであるハトポッポ兄の演説に拍手するようなことはありません。しかし、横にいた老夫婦は「そうだよな。こんどは政権が変わったほうがいい」などと言い交わしながらハトッポポ兄の演説に盛んに拍手しているではありませんか。

小生、4年前、郵政選挙の時、小泉純一郎さんが小生の住む街の駅前を訪れ、構造改革派の新人候補を応援した際も家内に連れられ小泉さんを「見学」に行きました。私には、この郵政選挙の時に小泉さんに集まった熱気と今回の鳩山代表に集まった駅前の熱気がまるで同じように異様なものに思えてなりません。テレビや新聞が作り上げた右向け右の「空気」が駅前をふたたび支配しているというデジャビュ(既視感)に捉われたのは、小生だけでしょうか。

思い出して下さい。小泉さんは「郵政の民営化に賛成して欲しい」という一点で民意を問うて駅前の熱気を駆り立てたのです。これに応えて狂気(?)に走った選挙民が300議席を上回る大勝を小泉自民党にもたらしたのです。民営化の細かい内容など知らなかったといっても、言い訳にはならないほどの自民党の議席獲得数でした。

当時の選挙民は、利権団体である特定郵便局長会などの存在に嫌悪感をもち、郵政の民営化に賛成したから小泉自民党に一票を投じたはずです。皆さんの郵便貯金や「かんぽ」の掛け金のほとんどが日本国債の購入に向けられ、それが政官業の利権トライアングルにばら撒かれる資金源になっていることへの反対票が小泉自民党を勝たせたはずです。

ところが今度はまったく逆の主張の民主党に「右向け右」の空気が醸成されているのです。同じ選挙民なのに、何でこんなに真反対の政策に熱狂するのでしょうか。

郵政資金の国債購入と「税金の無駄づかいと天下り根絶」の矛盾
昨日出された民主党のマニュフェストには「日本郵政、ゆうちょ銀行、簡保生命の株式売却を凍結し、郵政事業の4分社化を見直し、郵政3事業の一体的サービス提供を保障する」と書かれています。株式売却を凍結するといいますが、郵政3事業一体で株式を公開し民営化するのですか、それとも郵政3事業一体で国営に戻すのですか、どちらでしょう。

その一方で民主党はマニュフェストの冒頭で「税金の無駄づかいと天下りを根絶する」と書いています。しかしこの主張と、郵政民営化見直しの主張に矛盾はありませんか。郵政に集まっている膨大な国民の貯金と保険料のほとんどは日本国債の購入に当てられて、財政の規律を奪う役割をしています。財政に規律がないから税金の無駄づかいや天下りが平気で行われるのです。ですから国民が郵便局に預けているお金が国債の購入を通じて「税金の無駄づかいや天下りの温床になっている」のです。この矛盾をどうするのですか。

日本郵政には、ハトポッポ弟によって国民から預かった資金を役人根性丸出しで無駄遣いした象徴のような「かんぽの宿」が残されました。このような無駄づかい子会社・法人が日本郵政の背後にたくさん生息しているのではないですか。民営化見直しは、民主党のマニュフェスト冒頭の主張と明らかに矛盾するのです。選挙に勝つため、政権交代のため郵政民営化絶対反対の国民新党と社民党の主張を丸呑みした咎(とが)が選挙後に表面化するに違いありません。

家内に連れられていった農村部の演説会場(公民館)には、かつて自民党を取り巻く圧力団体だった特定郵便局長会の地域代表も応援に来ていました。この演説会の候補者は日銀の出身者でした。

市場経済の運営にたけた日銀の出身者であれば、膨大な国民の郵貯資金がいかに非効率で無駄な財政に流用されてきたか、よくわかっているはずです。民営化によってこの郵貯資金が国債購入から預金者の住宅ローンや中小企業の営業資金、あるいは農業者の設備資金や農地集約資金などに回され、地域の発展や経済の成長に貢献できるはずだということを日銀出身者なら十分ご存知なはずです。であるのに最前列に座った、これまで国営郵貯でさんざん甘い汁を吸ってきた特定急便局長に媚を売った演説をしているのです。

かつて小泉構造改革に熱狂した駅前の投票者が、テレビや新聞の無節操な報道に煽られて、こんどは構造改革や規制改革すべてが犯罪といわんばかりの成長戦略なき民主党に熱狂しています。予算の組み替えによる利権民主主義から離脱はもはや政策の大前提です。そのうえで、どの政党の政策が経済を成長させ国民の所得を増やし借金を返済する税収増に繋がるのか、もっと冷静になって考えるべきなのですが、後の祭りになるのでしょう。

 

2009年7月22日 09:24

内需を見切った? キリンとサントリー

2009年7月22日筆

ひと昔前、さくら銀行(旧三井と旧東海が合併)と住友銀行が合併するという報道に接して大いに驚かされたことがあります。三井と住友が旧財閥系のしがらみを越えてありえない合併に踏み込んだからです。それと同じくらい驚かされたのが、今回の「キリンHDとサントリーHDが経営統合の交渉を進めている」という「日経新聞」7月13日のスクープ記事でした。

戦前の大日本麦酒で一緒だったアサヒとサッポロが経営統合するのならなんら不思議ではないのです。しかし、日本でもっとも成功した非公開・同族経営といってよい鳥井・佐治一族主導のサントリーがその成功を捨てて、日本最大の飲料・食品メーカーであるキリンとの統合を決意したというのですから、驚かざるを得ません。いったいなぜ統合なのでしょうか。

「なぜ統合するか」について私は、ビールのトップ(キリン)、ウイスキーのトップ(サントリー)という国内市場の2つの覇者が、いずれも国内市場(内需)に見切りをつけ、海外、とくにアジア・オセアニア市場に活路を求めるためではないかと考えています。「内需衰退国・日本」を相手にしていては覇者といえどももはや生き延びることはできないという危機感が、両社トップを統合交渉に向わせたのでしょう。

サントリーは1995年には中国上海でビールの生産を始め、今では「清爽」「超爽」という爽快系ビールで上海ビール市場の50%を占めています。中国の年間ビール消費量は3913万キロリットル(07年)で日本の消費量628万キロリットルの6倍以上もあり、世界最大のビール消費国です。中国の旺盛な経済成長、つまり所得の増加につれさらにビール、飲料マーケットは拡大するはずです。サントリーはそこに布石を打っているのです。中国でもウーロン茶の販売を開始しています。

一方、キリンHDは、内需から解き放たれ堰を切ったかのように相次いで海外投資(買収)をはじめています。07年に豪州で乳製品ナンバーワンのナショナルフーズを買収したのを皮切りに、08年にはオセアニアの2大ビールメーカーのひとつである豪ライオン・ネイサンを買収、09年にはフィリピンのサンミゲルビールを買収しました。キリンは、人口増加率の高いアジア・オセアニア地域での企業買収で新たな成長を追及する戦略に転じました。

所得が増えず人口減少すれば内需は衰退
ビールなどの大衆向け飲料は鮮度と価格が勝負です。輸出は鮮度が落ち、大量の水を運ぶようなもので価格が安いわりに運賃が嵩みます。輸出には向かない製品です。輸出が無理な分、勢い国内市場でのシェアの奪い合いに経営戦略の重点が置かれ、過当競争が繰り返され低収益ビジネスになりがちです。

しかも、飲料の内需は趨勢的な減少傾向にあります。ビールやウイスキーの国内需要は人口、とくに生産年齢人口の増減と大きな関係があります。一人の人間のアルコールの摂取量は限られています。ビールが安くなったからといって摂取量が増えるわけではありません。

皆さんよくご存知のように、2005年を基点に推計された日本の将来人口は、50年後の2055年には9000万人を割り込み、100年後の2105年には6000万人を割り込むことになっています。日本の2005年の総人口は1億2777万人ですから、50年後には約3800万人減って現在の3分の2になります。100年後には現在の半分以下になる計算です。

恐ろしいのは50年後の年齢人口構成の激変です。65歳以上の老齢人口比率は40.5%、「14歳以下」の年少人口比率は8.4%になり、「働けない、稼ぎがない、飲めない」人口は合わせて49%にもなります(09年は36%)。これらの人口を扶養する15歳から64歳までの「働く、稼ぐ、飲む」生産年齢人口は51%(09年は64%)になってしまいます。

この人口推計の前提は合計特殊出生率1.26です。最近1.37まで回復していますので1.37の出生率が続けば2055年の9000万人割れは数年先に延びることになりますが、人口減少が進むことに変わりありません。飲酒、飲料人口も着実に減っていくのです。減っていくパイ(内需)を奪い合う不毛な競争が繰り返される恐怖をサントリーもキリンも感じているはずです。

パイの切り分けしか考えない国から脱出?
生産年齢人口が減少しても、今後、一人当たり所得が増えれば高価格の高級ウイキーやビンテージ・ワインの消費が拡大して、総量の減少を補って、キリンやサントリーはまだ内需で食って行けます。しかし日本の現状では、国民一人当たりの所得が増える展望は開けません。企業所得も同様だと思います。高級ウイスキーやビンテージ・ワインなどとんでもない、発泡酒や第3のビールなど安価な「ビールもどき」だけが売れているという内需の現実が、その証拠です。

だから彼らは需要がさらに増大する成長市場アジア・オセアニアに手を携えて進出して進出しようとしているのでしょう。

いま日本の政治家たちは、パイ(GDP)を大きくすること(経済成長)より、小さくなっていくパイをいかに切り分ける(所得の再分配)かに夢中になっています。高所得者から低所得者へ所得を再分配すれば内需が拡大すると信じて疑いません。所得を右から左へ移転するだけで内需は増えるのでしょうか。高所得者(日本にはそんなに高所得者がいるようには思えません)の選択消費(ウイスキー)が減り、低所得者の必需消費(第3のビール)が増えるだけです。

私は、まだ本格的な人口減少が起こっていない現段階では、日本は経済成長の可能性を放棄してはいけないと考えています。選択消費も必需消費もともに増える経済成長が必要です。日本は世界に誇れる勤勉で優秀な国民と優れた技術を持っていて、低炭素社会へ向けて高付加価値経済へのイノベーションが起こせる国です。しかし残念ながら、いまや日本は、企業家が国内に資本を投下してイノベーションを起こすという魅力がはなはだ乏しい国になっています。だからキリンとサントリーは「内需衰退国・日本」に見切りをつけたと小生には思えるのです。

2009年7月15日 09:19

世代交代選挙だった東京都議選

2009年7月15日筆

都議選では民主党が20議席も増やして歴史的勝利となりました。民主党の中には「勝ちすぎて不人気の麻生総理が退陣してしまい、総選挙はマスゾエ総理・総裁と闘わなければならなくなる」と心配する向きもあるようですが、それには及びません。

都議会だけでなく自民党はとっくに賞味期限が来ていました。小生は、宮沢喜一総理退陣(細川内閣誕生)を第一波、森喜朗総理退陣を第二波として、国民の自民党への愛想尽かしはどんどん進んでいったと思っています。「自民党をぶっ壊す」とする小泉純一郎総理の自己否定人気で賞味期限は多少伸びたかに見えましたが、それも一時しのぎに過ぎませんでした。

麻生太郎総理の次に「テレビ・タックル」ご出身(東大助教授でもありました)のマスゾエ某が新総裁になっても、流れは変わりますまい。彼は、厚労相の座にしがみつき「やります、やっています」が口癖でテレビ人気が高いようですが、厚労官僚の体質は変えることはできなかった。小生の評価は「そのまんま東」とあまり差がありません。「そのまんま東」と同じいかがわしい「テレビの人気者」を頼りに選挙をするようでは自民党に勝ち目はないのです。

都議選の後、一応、7月21日解散、8月18日公示、8月30日投票という総選挙日程が与党内で合意されたようです。いまとなっては選挙民には、自民党が麻生総理のまま総選挙を闘うのかどうかなどどうでも良いのです。かといって国民新党、社民党、それに「故人献金」付きのハトッポッポ兄総理に政権交代かといわれても困るのです。ハトポッポ兄が総理になればまた政治資金スキャンダルで国会が混乱し、何も決まらなくなることを小生は恐れます。

都議選で追認された「世代交代のうねり」
なんとも悩ましい政権交代なのですが、小生は今回の都議選で日本の政治が良くなる「かすかな光明」を見出すことができました。それは、政権交代だけでなく、政治家の間での「世代交代のうねり」がはっきり立ち現れたことです。私は、小沢や鳩山など旧田中派の手垢にまみれた政治家たちへの政権交代より、自民党にも民主党にも、国民新党、社民党にも頑固に生息する「しがらみ政治家」を吹き飛ばしてくれるこの「世代交代のうねり」に期待します。

千代田区では、26歳、孫のような年齢の民主党新人・栗下善行君が70歳の自民党東京都連のボス・内田茂氏を破りました。目黒区、大田区、世田谷区、中野区、北区、練馬区、江戸川区、武蔵野市、三鷹市、北多摩第一・第三・第四区の12選挙区で30歳台の民主党候補がトップ当選しています。今回当選した民主党議員54名の内訳は、20歳台1名、30歳台20名、40歳台19名となり、50歳以下の議員が40名、75%を占めることになりました。

 これに対して、自民党の当選者38名の内訳は、60歳以上が17名、50歳台が9名、合わせて28名、74%が50歳以上でした。自民党は50歳以下が多数を占める民主党とはまったく逆の老兵集団になっています。過去にまったくしがらみのない若い議員集団と、古くからの利害関係に縛られた老兵集団の、どちらに現状変革のエネルギーがあるか、答えは明らかです。

この「世代交代のうねり」は、地方首長選挙に現れていた傾向を追認するものでした。小生の同僚だった和光市の新市長・松本武洋さんは40歳(当選時)でしたが、彼より若い市長が続々誕生しています。最近、ベテランの対立候補を破って当選した松阪市の山中光茂、横須賀市の吉田雄人、奈良市の仲川元庸の3市長はいずれも33歳です。千葉市の新市長・熊谷俊一君はさらに若く31歳、全国最年少です。

利権やしがらみから無縁の若い政治家たち
彼らのスローガンはいずれも「税金の無駄遣いを止める」「無駄な財政支出を排除する」というものでした。地方自治体は、利権業者とボス議員の癒着による道路やハコモノ投資によって地方債(借金)漬けになり、自治体病院など本来の福祉サービス行政にカネを回せなくなっています。貧しい税収下での高い人件費(地方公務員の俸給)支払いも手伝って、財政赤字は拡大し借金は累増しており、夕張市のような自治体倒産を引き起こしかねない状態なのです。

だから彼ら若い市長候補たちは、「無駄な財政支出を排除する」と主張して、利権業者やボス議員、自治労などとの腐れ縁政治から脱出し、古いしがらみを断ち切ろうとしたのです。市民は、単に若くてイケメン(都議選でもイケメン候補が多数でした)だから若い市長候補に投票したのではありません。市民は、腐れ縁政治や古いしがらみが残した膨大な財政赤字のつけを、行政サービスの切り下げや市民税や消費税の増税によって支払わせられることを知って、本能的に若い市長候補に一票を投じたのです。

8月30日投票の衆議員選挙も同じです。国家財政の状態は地方以上に深刻です。政官業の利権政治は深く浸透し、借金の累積残高も絶望的な大きさです。中央のほうにもっと大量に、「政官業」のしがらみから無縁な若い議員が誕生して欲しいと小生は念じています。その結果、自民党では元総理、元幹事長、派閥の親分、民主党では旧田中派の長老議員、労組出身議員などがいっせいに落選してくれれば、もういうことはありません。

これからの政治は、われわれ世代が残した膨大な借金を支払うことになる若い世代、将来世代に委ねるべきではないでしょうか。多大な税金と社会保険料を負担させられる世代に予算や歳出の処分権を委ねようではありませんか。そして彼らに日本人はこれから何で食っていくのかを考えてもらいましょう。

われわれ老人は、貰うだけで支払うことがないもはや無責任な世代であることを自覚するべきです。いつも料亭から赤ら顔で出てくる元総理の森喜朗さん、もうたらふく食ったではありませんか。若い人に交代されたらいかがですか。

2009年7月 8日 10:50

そのまんま東の有頂天と自民党選対の錯覚

2009年7月8日筆

「そのまんま東」知事にお聞きしたいのですが、もし総理になったら、何日もつと思われますか。神楽坂芸者から「私を3本指(月30万円)で囲おうとした」と告発された宇野宗佑元総理でも2ヶ月余はもちました。しかし「そのまんま東」知事は、宇野総理の在職期間ももたないのではないでしょうか。

総理になれば(候補でも)、ポスト、現代、新潮、文春、週刊朝日、サンデー毎日、ほとんどすべての週刊誌が、お笑い芸人「そのまんま東」時代のご乱行の数々をいっせいに書き立てるに違いありません。そうなると総理の座は1ヶ月ももちますまい。
多分ご本人、そんなことは重々ご承知の上で、「総理総裁候補にする気はあるか」と自民党・古賀誠選対委員長に問うたに違いありません。

もしそうではなく、彼がマジで「総理総裁候補」を口にしているとすれば、この「お笑い芸人知事」をそこまで舞い上がらせ、有頂天にさせてしまったのは誰か、と問いたくなります。

「お笑い芸人知事」を有頂天にさせたテレビ局
その責任の第一は、テレビ局が負うべきです。とくに民放のテレビ局は、公共の電波をこのお笑い芸人知事が演じるパフォーマンスの紹介に大量の時間を割り当ててきたからです。

知事は、公共のテレビ電波をタダで使ってマンゴーやら焼き鳥やら宮崎県の産物を宣伝しまくりました。一方、民放テレビは、お笑い芸人知事の今日を話の種にしようとする視聴者の低俗な関心に乗じて撮りまくり、視聴率を稼ごう、広告収入を得ようとしたのです。
その結果、どこにあるのか日本でもっとも所在地が知られていない宮崎県が多少は知られるようになりました。宮崎県民が90%もの驚異的な支持率を知事に与えたのは、民放テレビが「お笑い芸人知事」に関する情報を洪水のように垂れ流した結果です。

宮崎県民には、知事の登場はもう2度と出逢うことのない僥倖だったのでしょう。隣接の大分県には「一村一品運動」の平松守彦知事(6期24年)、熊本県には「日本一作り」「アートポリス」の細川護熙知事(2期8年、後の総理)という名知事が出ています。彼らの活躍で、大分県には重化学工業、精密機器、熊本県には自動車、電機、半導体、太陽電池などの産業集積も生まれました。

しかし、宮崎県にはついぞ名知事も実力代議士も誕生しませんでした。そのため宮崎県民はいまだに、「高速道路がないから製造業が来ない」と鬱屈した気持ちを吐露しています。宮崎県は牛豚鶏の生産が盛んで第一次産業の所得比率が全国一の農業県ですが、残念ながら目ぼしい製造業はなく、旭化成が立地する延岡市にも往年の力はありません。県民は、知事がテレビに出まくって宮崎県の不遇を跳ね返してくれているかのような錯覚を覚えたのでしょう。

しかし、県政の実態は何も変わっていないのではないでしょうか。テレビ局や新聞社は、「そのまんま東」知事の誕生後、どの程度実績が上がったのか、たとえば財政赤字は圧縮できたか、平均よりずいぶん多い職員の数は減ったのか、県民の福祉は向上したのか、得意の農畜産物の生産は増えたのか、所得を生み出す新産業は生まれたのか、それらを丹念に調べて報道すべきです。そうしなければ、お笑い芸人知事が出すぎるために、実績をあげていてもまったくテレビに取り上げて貰えない他県の県知事さんたちに申し訳がないというものです。

野党になると「利権なし、仕事なし、献金なし」
自由民主党も「そのまんま東」知事を有頂天にさせた犯人の一人です。自民党は次の総選挙で政権与党の座を失う可能性が極めて高くなっており、野党に転落しかねない恐怖が自民党を狂わせたというほかありません。実は、自民党は一度だけ、細川護熙連立内閣の誕生で政権与党の座を失ったことがあります。この時自民党議員は初めて政権与党のうまみから遠ざけられ、「利権なし、仕事なし、献金なし」の悲惨な状態に追いやられました。古賀誠選対委員長のようなベテラン議員にはその恐怖が脳裏をよぎったのでしょう。

ですから、自民党選対はなりふり構わず、人気の高い「そのまんま東」知事に出馬を要請したに違いありません。知事のほうも、テレビに毎日露出するうちに自分が飛びぬけて能力のある政治家だと錯覚しはじめた頃(あるいは県政の改革に自信が持てなくなった頃?)です。ちょうどその時、「そのまんま東」人気を錯覚した自民党が出馬要請をしたということになります。

人気をめぐる「そのまんま東」の錯覚と自民党選対の錯覚が合体して妄想を生んだというべきでしょう。たとえばテレビ人気が高いというのですが、単に愚かなテレビ・ディレクターの差配でテレビの登場頻度が高くなっているだけだということでしょう。宮崎県民の支持率が高いのも前述のように不遇・宮崎県の怨念の裏返しという特殊事情によるのかもしれません。

古賀委員長が、「そのまんま東はテレビ人気が高いから、大量得票が見込める」という図式を考えているとすれば、選挙民を馬鹿にした話です。知事を出馬させるとすれば、比例区の東京ブロックないし南関東ブロックだというではありませんか。東京ブロックや南関東ブロックの選挙民(無党派層)は、ワイドショー漬け、タレント・コメンテーターだけを見て投票するとでも思っているのでしょうか。

小生は南関東ブロックの選挙民です。小選挙区では、行財政改革に熱心な自民党候補(自民党にもいるのです)に投票しようと思っていましたが、比例区に「そのまんま東」が出るのなら自民党と自民党候補には一切投票しないことにしました。古賀さん、選挙民(小生のことです)を馬鹿にしないでください。

2009年7月 1日 14:02

「ばら撒き財政」の後始末を考える時

2009年7月1日筆

ぶら下がり記者に「選挙はいつかいつか」と毎日問われてはや10ヶ月、衆議院議員の任期切れまであと2ヶ月足らずとなりました。麻生総理には、小泉元総理の口調を真似て「よくがんばった。感動した」といわせてもらいます。

しかし、最近の総理は、その不機嫌な言動や不埒な態度がテレビ画面に映ると票が逃げ自民党が負けると言われて、ぶら下がり記者の質問に「笑って答える」ようになっています。しかし、総理の本心は、何度言っても「選挙はいつか」と聞いてくるぶら下がり記者に、はらわた煮えくり返る思いに相違ありません。総理、衣の下のよろい、「作り笑い」が引きつっていますよ。

政治部記者など、政治の日程表と政治家同士の駆け引き(政局)にしか興味のない輩です。そう哀れんで、小泉総理のようにワンフレーズで洒落のめして放っておけばいいのです。麻生総理も、国会審議では、民主党の経済政策を批判して、「政権交代は必ず景気後退になる」と述べ、「交代」を「後退」に掛けて洒落のめしました。洒落ぐらい言えるじゃないですか。

ハーベイロードの前提を欠く「ケインズ政策」
麻生総理はたぶん、民主党政権では「俺がやったような大胆なケインズ政策はやれないだろう」と我田引水して、「(ケインズ政策を知らない民主党への)政権交代は必ず景気後退になる」と考えたに違いありません。しかし、政権交代が起ころうと自民党が居座ろうと、すでに「ケインズ政策」は愚かな政治家たちによって食い散らかされています。日本における「ケインズ政策」は生みの親であるJ.M.ケインズの考えからはるかに遠いところにいっています。

穴を掘って埋めるだけの公共事業でもいい、財政出動によって有効需要の不足を補い景気を下支えするというのがケインズ政策です。このケインズ政策が成功するにはいくつかの前提があります。ひとつは、ケインズが生まれ育った知識階級が住まうハーベイロード6番地をもじった「ハーベイロードの前提」です。知的エリートによる合理的な政策選択が行われるという前提が「ケインズ政策」の前提にあるとケインズの解釈者・ハロッド教授はいっています。

日本の「ケインズ政策」の現実は、知的エリートの合理的政策選択からほど遠いものです。いまや、自民党も民主党もなんら変わるところはありません。「ケインズ政策」は、特定の利益集団(たとえば医師会、特定郵便局長、農協、幼稚園・保育園の経営者など)や特定の業界、特定の職業者から票を得るための「財政の野放図なばら撒き政策」と変貌しています。その点でまだましだと思われていた民主党でしたが、小沢一郎氏が代表になってから、「政権交代」のためなら特定の利益集団へのいかなる利益誘導も厭わないという体質に大きく変わってしまいました。

政権交代のためとはいえ、特定郵便局長会に依存する国民新党、規制緩和絶対反対の社民党など少数党の取り込みを優先するあまり、ますます政策が濁ってきました。民営化や規制緩和の本家は民主党だったと思っていましたが、小生の記憶違いだったのでしょうか。

膨らんだまま減らない歳出、10年度は過去最大
政治家が、納税者(タックスペイヤー)の税金を勝手に使って選挙民の票を買おうとするから、「選挙は必ず財政膨張になる」のです。不況期にはこの傾向はいっそう強まり、ケインズ政策が悪用されることになります。いったん悪用されて膨張した財政を縮めるのは容易ではありません。6月30日合意された政府・与党の2010年度予算の概算要求基準(歳出の天井)が、52兆7000億円と過去最大に膨らんだのがその証拠です。

いまや国家歳出の最大項目が社会保障費です。人口の少子高齢化で放っておいても毎年1兆円以上も社会保障費は増えていきます。医療や介護、年金、生活保護や雇用対策など社会保障費はいくらあっても足りない。しかし、その自然増の5分の1にすぎない2200億円を抑制しただけで、自治体病院の閉鎖、母子加算の廃止と大騒ぎです。

小生は、どの国民にも公平にナショナル・ミニマムとして社会保障が行き渡るのは大賛成です。しかし、社会保障費の自然増1兆円余を上乗せしたまま、他を削らないのは納得できません。農業者やその他特定の職業者(天下り官僚を含む)への所得保障的な支出、あるいは特定の家計にたいする所得控除、さらに企業への優遇税制などを削って、ナショナル・ミニマム実現のための社会保障費自然増1兆円を賄うべきです。しかし、政治家には特定の所得保障的な支出削減は選挙に絡みますから削れない。だから過去最大の一般歳出になってしまうのです。

まともなケインジアンなら、景気が回復過程に入れば財政削減と増税による財政赤字の解消を図るという「出口戦略」を考えて10年度予算を組むはずです。官僚が行政機構の幹部を政治任用するのを嫌う理由は、選挙に勝つために選挙民の歓心を買う政策を乱発しあう政治家の影響力を排除したいからです。その「ハーベイロード」型の賢い官僚の気持ちも半分だけは理解できます。

もう選挙はいつでも結構ですから、選挙の前に自民党も民主党も「ばら撒き」の後始末、つまりケインズ政策の「出口戦略」についての政権公約(マニュフェスト)を明確に示してもらいたいと思います。そうしていただけなければ、小生、投票所に足を運んでも白票を投じるしかありません。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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