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大西良雄ニュースの背後を読む

2009年4月

2009年4月29日 10:00

世襲新人も世襲現職も「お国替え」で出直せ

2009年4月28日筆

国会議員の世襲制限が総選挙の争点の浮上しようとしています。その是非を論じる前に、社会がエスタブリッシュメント(既成階級)によって支配され、日本社会から活力が奪われている、その原因について考えてみたいと思います。

戦後64年、大空襲の廃墟から立ち上がり、わが国が世界第2位の経済大国にのし上がったのは、官僚がしっかりしていたからでも政治家が優れていたからでもありません。経済人、ひいては市民、労働者が優れていたからだと私は思っています。この優れた経済人と市民・労働者を育てた装置が、誰でも社長になれる、誰でも学者になれる、誰でも官僚・政治家になれるという「機会の平等」の社会装置だったと私は考えてきました。

崩れた「機会の平等」という社会装置
平等には「機会の平等」と「結果の平等」があることを皆さんも良くご存知だと思います。いま盛んに求められているのは、所得格差の是正をはじめとする「結果の平等」です。「結果の平等」を求め過ぎると、怠けものが税金で救われる、いわゆるタックス・イーター(税金のただ食い人)を産むという批判もあります。たとえば、外車を乗り回しているのに生活保護費を貰っている人たちや働く気がないのに仕事先を変えて何回も失業給付費を貰っている人たちのことをタックス・イーターといいます。

しかし、いま起きている所得格差などの「結果の不平等」は、どうやら怠けた結果ではなさそうです。タックス・イーターたちの問題でもなさそうです。いまの所得格差は、経済学でいう「所与の」所得分配の格差から生じる「所得獲得機会の不平等」によってもたらされているといえます。たとえば、親に資産・所得がないために子供が勉学の機会が得られない、成績が良くても進学できない。その結果、まともに就職できない、職を得ても短期の単純労働でスキルが身に付かず正式社員になれないという不平等です。

親に資産・所得があるか、ないか、は子供にすればどうしようもない「所与の」問題です。その所与の所得分配格差で生涯所得が決まるとすれば、こんな理不尽なことはありません。よく指摘されることですが、東大、京大、一橋、早慶などエリート大学の学生の親の平均年収は、それ以外の大学の親の平均年収よりはるか高いというではありませんか。親に資産・資力がなければ、入試学力を身につけることができず、エリート大学には入れない時代になりました。

私の学生の頃は、親が貧乏でも子供が優秀であれば親類縁者が学資を出し合うような助け合いもあって、教育機会が子供たちの間で平等に与えられていたように記憶しています。貧乏人の息子・娘でも勉強ができれば最高学府に入学でき、官僚・政治家あるいは経営者、学者になれたのです。親の資力とは別に親類縁者の支援や奨学金で学び立身出世できるという「機会の平等」の社会装置があったから、誰もが夢を持つことができ、努力を重ねることもできたのです。その市民・労働者の努力と一所懸命さが日本に活力をもたらしたのです。

まるで貴族院のような衆議院
しかし、それも遠い昔のことになりました。いまや「機会の平等」は薄れ「機会の不平等」がどんどん膨らんで来ているように思えます。その膨らむ「機会の不平等」の典型例が世襲議員の跋扈です。世襲候補は親族から地盤(後援会)、看板(知名度)、鞄(金脈)を与えられ最初から有利な選挙戦を戦うのです。親族から譲られるものが何もない対立候補者よりずっと有利であることは疑う余地がありません。それでも落選するとすればよほどのぼんくらなのでしょう。

世襲議員支配には、眼を覆いたくなります。麻生内閣の閣僚17人中12人、つまり7割が世襲議員です。現職の自民党衆議院議員303名のうち107名、つまり3人に一人が世襲議員で「石を投げれば世襲に当たる」という状態です。野党(現職)にも16人と少数ですが世襲議員がいます。民主党代表の小沢一郎をはじめ党幹部には鳩山由紀夫、横路孝弘、赤松広隆、羽田孜と世襲議員がたくさんいます。国民新党代表の綿貫民輔も世襲です。少ないからといって胸を張れる状態ではありません。

世襲議員はさらに増殖しそうです。300の衆院小選挙区には、与野党含め実に184名もの世襲議員及び世襲予備軍がひしめいていると「週刊ポスト」(5月8/15日号)は指摘しています。大変な数です。次の総選挙で彼らがすべて当選するようなことになれば衆議院が戦前の華族世襲の貴族院のようになってしまいます。「機会の不平等」によって選出された貴族のような世襲議員が、教育や就業の「機会の平等」を守り「機会の不平等』から生じる所得の格差を是正するというのですから、なんとも滑稽、面妖ではありませんか。

世襲新人も世襲現職も「お国替え」
かといって世襲現職は放っといて、小泉進次郎さんのような世襲新人の立候補だけを禁止するというのも公平さを欠きます。どうせやるなら世襲現職も世襲新人もすべて国替えさせたらどうでしょう。イギリスでは、「下院議員は親子が同じ選挙区から出馬することを規制している」「政治家の子供が立候補する際、親と違う選挙区に送り込む」(「週刊ポスト」同号)そうです。小泉進次郎さんを小泉純一郎さんの神奈川11区からではなく小沢一郎さんの岩手4区から出馬させたらどうだろうとも「週刊ポスト」は言っています。

確かに名案です。世襲だからといって世襲新人の立候補を禁止すれば、25歳以上であれば誰にでも与えられる被選挙権を奪い、職業選択の自由を侵す憲法違反になりかねません。しかし、党が所属候補者の選挙区を変える、つまり「お国替え」をさせれば、地盤も看板も鞄もない対立候補との機会の不平等はなくなります。選挙区世襲が地域利権世襲に直結する弊害もなくなります。何より立候補禁止による憲法違反が避けられます。

残る問題は世襲現職の取り扱いです。総理経験者、閣僚、与党の派閥領袖、野党のリーダーなど日本の統治を担う政治指導者のほとんどが世襲現職です。世襲現職がとぐろを巻いて日本の政治を支配しているのです。彼らは、選挙区に利益を誘導するのを民主主義と勘違いしている利権民主主義者たちです。彼らの利権政治が日本国民に莫大な借金を残しました。そのざんげの気持ちがあるなら、この際、彼らに利権民主主義からの離脱を宣言させ、その証しとして党主導のもといっせいにお国替えをさせることです。

残念なことにこの名案は、世襲現職たちによっていとも簡単に葬り去られるでしょう。われわれのできることは、唯一、世襲新人、世襲現職問わず、「世襲候補者」には投票しないことです。ですから、選挙区世襲と地域利権世襲の関連を断ち切る覚悟さえ選挙民にあれば、世襲政治家は次の総選挙から直ちに消えてなくなります。これまで世襲を許してきたのは選挙民ですから。


 

2009年4月22日 09:53

私もアルチュウ(歩き中毒)になりたい

2009年4月22日 筆

めでたくもないのですが、小生、4月19日、64回目の誕生日を迎えました。多少メタボ気味ですので、誕生日のちょっと前から、12キログラムの減量を目標に食事と間食を減らし歩く量を増やすことにしました。

なぜ12キロ減量なのか。その理由は単純です。得意先の常務だった方から「学生時代の体重に戻して(12キロ減量で60キログラム)退職を迎えました」というお手紙をいただいたせいです。小生、結婚以来、たいした病気もせず、家内の「おいしい」手料理をたっぷりいただき、体重は高度成長をつづけました。学生の頃は49キログラムでしたが現在80キロにまで膨らみました。

とくにこの半年で8キロ太って80キロに達したのです。小生、寒がりで、春になっても股引が欠かせません。いま着用しているのは足首まである黒いタイツ風の股引ですが、これを着て上半身裸で鏡の前に立つと腹だけ突き出て「空手チョップの力道山」のようです。腹がつかえて靴の紐も容易に結べません。12キロ減量しても得意先の常務のように学生時代の体重にはとうてい戻りませんが、減量への熱い思いをこの目標値に込めたつもりです。

新緑の所沢を「メタボ」が歩く
早速、散歩を始めました。所沢には散歩の名所がたくさんあります。その筆頭が所沢航空記念公園です。小宅から車で5分、自転車で15分、歩いて30分のところにあります。ここは「春のうららの隅田川河畔」にひけを取らない桜の名所ですが、今は桜が散ってあたりは白緑、黄緑、眼に鮮やかな、柔らかな新緑が燃え盛っています。野生のタンポポやスミレも公園の野原のあちこちを占領しています。ウィークデイは老人と犬と幼児の天国です。

航空公園にはメタボ対策上は歩いていくべきなのでしょうが、いまは早く行って新緑の地を歩きたいと思う一心から家内運転の車に乗って公園に行きます。着いてすぐ2キロのアンツーカー・コースを新緑の風を吸い込みながら早足で歩いて一周、これで25分です。コースから外れて公園をぐるり一周すると小一時間掛かります。歩き終えて、お昼のおにぎりを2個いただきます。このおにぎりが実にうまいのです。

土曜日、日曜日は、歩いては行けませんが小宅から車で20分、早稲田大学の人間科学部とスポーツ科学部がある所沢キャンパスが散歩に絶好です。ここには一周400メートルの本格的な陸上グランドがあります。思わずグランドで軽くジョギングといきたくなるのですが、我慢します。土、日とはいえ名門早稲田陸上部の選手がカモシカのような足で走っています。小生のような腹の突き出た「豚足人」が一緒に走ることなど許されるはずもありません。ですから小生は、グランドの周囲を取り囲むマラソン選手用のコンクリート・コースをてくてく歩くことにしました。一周歩いて15分ですから、3周もすればメタボ対策完了です。歩き終わってここでもおにぎりを軽く2個いただきます。

早稲田大学所沢キャンパスは、この2月、甲府での講演の帰りに行った森の中にあるリゾートホテル「小淵沢リゾナーレ」よりも美しいかもしれません。キャンパスを取り囲む雑木林は、小高い山並みに連なり宮崎駿が名付けた「トトロの森」のある村山貯水池に隣接します。ロフトスタイルの校舎・講義室が雑木林の新緑に溶け込んでなんともいえない雰囲気です。森林浴しながら講義が受けられる学生など日本のどこにもいないでしょう。しっかり勉強しなさい。

キッコーマン・茂木会長の散歩道にあやかる
 ここまで書いて筆休め、届いたばかりの夕刊に眼を通すと、キッコーマンの茂木友三郎会長(74歳)のコラムが眼に飛び込んできました(日経新聞09年4月20日夕刊コラム「こころの玉手箱」)。茂木さんは散歩の大ベテラン、ご自身のことを「今は、アルチュウ、つまり歩き中毒」といっておられます。毎日歩かないと気が済まない、雨の日は傘を差し、雨が強ければゴルフの雨具(レインコート?)を着て出かける、のだそうです。

茂木さんは財界の知性派として知られ、お体はスリムで頭はシャープ。これも自ら「アルチュウ」と評するほどの散歩の賜物なのですね。小生もそんな茂木さんにあやかって「スリムな高橋亀吉」になるべく散歩道に邁進するぞと心に誓いました。(高橋亀吉さんは小生が在職した東洋経済の大先輩、わが国初の経済評論家です。80歳過ぎても健筆をふるわれました)

今後いっさい、寒いときは心臓に悪い、雨の時は濡れてうっとうしいなどと散歩を休む言い訳はしません。歩き終わっておにぎり2個がメタボの元凶と心得、おにぎりは1個で我慢します。なるべく家内運転の車に載せてもらわず、航空公園や早稲田大学所沢キャンパスには徒歩か自転車でいきます。
なお、小生、この誓いが三日坊主にならないことを願ってやみません。今から散歩に出掛けます。

2009年4月15日 10:00

ぞっとする、長期金利が上昇する時

2009年4月15日 筆
 
 過去最大の15.4兆円の追加経済対策、中身はやはり「ごった煮の大盤振る舞い」でした。小泉構造改革で痛めつけられた反動でしょうか、厚労省、国土交通省、農水省、文科省、総務省(旧自治省)と族議員をいっぱい抱えるお役所が、ここぞとばかり予算を分捕ることになったようです。私の予測より5兆円ほど水ぶくれしてしまったようです。

支出のわりに押し上げ効果が小さい
その効果のほどはどうでしょうか。財政出動額(真水)がGDP比で3%にもなる過去最大規模であるにもかかわらず、GDPを2%押し上げる効果しかないと財務・金融・経済財政担当の与謝野大臣すら認めています。財政出動の乗数効果を計算に入れれば、3%財政出動すれば最悪でも3%以上のGDP押し上げ効果があると考えるのが普通でしょう。

押し上げ効果が薄いのは、成長戦略が不十分だったからです。残念ながら、小生が期待していた将来の経済成長、ひいては税収の増加に繋がる経済対策はきわめて少ないといわざるを得ません。成長戦略にかなったものは、低炭素革命対策として計上された1.6兆円と大都市圏の環状道路整備、羽田空港の滑走路拡張ぐらいのもので、総額2兆円程度でしょう。追加対策の13%でしかありません。

太陽光発電、風力発電の電力買い取り制度や賢い電力網(スマート・グリッド)の展開、非穀物系のバイオ燃料の拡充、燃料電池の開発実用化の助成などほかにもっと予算を投じる成長戦略アイテムはあったはずです。全国30観光地で電線を地中化し景観をさらに高め観光産業を育てるというプロジェクトはどうなったのでしょうか。発光ダイオードーを用いた植物(野菜)工場建設の助成もいいアイディアだったと思いますが、予算化されたのでしょうか。

その一方で、財政支出の効果が雲散霧消して将来の税収増に繋がらず、借金(国債)の残高だけが膨らむ相変わらずの政策が目白押しです。公明党がご執心だった子育て応援特別手当、自民農水族が跋扈して取ったという農地集約化への高齢農家給付金、飼料米などへの転作給付金など1兆円近いバラマキ予算が組み込まれました。国土交通省管轄の公共事業費の積み増し2.1兆円、総務省扱いの国直轄の公共事業に対する臨時地方交付金1兆円、合わせて3.1兆円の公共事業費の追加も相変わらずです。これらにどれぐらいの中期的な税収増効果があるのか教えてもらいたいものです。

金融対策の3兆円、雇用対策の1.9兆円、合わせて約5兆円(追加予算の36%)は経済の底割れ防止策であって成長戦略ではありません。健康長寿・子育て対策の2兆円(追加対策の17%強)は社会保障政策の一環です。これによって内需型成長を起こすなら、この追加予算を恒常化するしかないのですが、そうすると一方で財政赤字が恒常化するというジレンマが発生します。

というわけで、一時的な経済の底割れ対策としての効果はある程度期待できますが、将来の税収増に繋がる成長戦略に乏しい追加対策だったといえます。

国債利払いのために消費税引き上げる?
その一方、この15.4兆円対策の結果、追加される国債の発行額は10兆円以上になり、09年度末には普通国債の発行残高は590兆円に達することになります。(ほかに地方債197兆円、独立行政法人等が発行する財政投融資特別会計国債123兆円の公債残高があり、これらを含めると政府及び政府関連の公債発行残高は910兆円にのぼります。)

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ここでは普通国債だけを取り上げますが、気になるのは、今後の普通国債の金利支払い(利払い費)です。利払い費がもっとも多かったのは91年度の宮沢内閣当時の年間11兆円です。当時、バブル潰しのため金利が高止まりし、長期金利(国債利回り)が高かったからです。当時の利払い利率(上表参照。利払い費÷国債残高。%)は6.41%に達し、国債残高が171兆円と小規模であるにもかかわらず、最大の利払い額になったのです。

追加対策後の国債残高は590兆円と91年度の3.5倍に膨らみますが、利払い費は当初予算が前提としていた利率で計算すると9.6兆円に過ぎません。利払い利率が1.62%と極めて低いからです。国債の利払い利率のもとになる長期金利は、欧米諸国では現在3%台です。新規国債発行額が最大になった小渕内閣当時(3.55%)と似たような長期金利です。かりに利払い利率が欧米並みの長期金利水準3%に上昇すれば、麻生内閣の利払い費は590兆円 ×0.03=17.7兆円に跳ね上がります。

17.7兆円の金利支払いは、7%の消費増税分に相当します(消費税の1%値上げ分は2.5兆円)。麻生内閣は3年後に5%の消費増税(12.5兆円)の可能性を今年度予算に潜ませました。しかし、長期金利が欧米並みに上がるだけで5%の消費増税分など利払い費にいっぺんに食われてしまいます。消費増税を社会保障財源に当てるといいますが、そうなると国債の金利は誰が支払うのでしょうか。最後は、禁断の日銀による国債の直接引き受けでしょうね。

このままでは社会保障財源のための消費増税など絵に描いた餅です。国債の金利を支払うために消費税がさらに上がることになります、そうならないように、ただひたすら日本国債が売られ(あるいは民間の引き受け先がなくなり)、利回り(長期金利)が欧米並みに上昇しないことを神に祈るだけです。






2009年4月 8日 10:08

そこは「♪春のうららの隅田川」でした

2009年4月8日筆
 
春は花、ですね。人工衛星か長距離ミサイルかよく分かりませんが、キム・ジョンイルの北朝鮮が「飛翔体」を本当に打ち上げた日、「飛翔体」のことなどすっかり忘れ、銘柄研究会の仲間たちと桜が満開に咲き誇る隅田川の長堤(ながつつみ)を歩いていました。隅田川の下流に架かる佃大橋と勝鬨橋の中ほどにある聖路加タワー前の長堤です。

隅田川上流から勝鬨橋を望むこの川辺の風景は、NHKが天気予報の時間に流す映像でおなじみですが、ここが桜の名所だとは埼玉県・所沢の在には知る由もありません。小生、年に何週間か、聖路加タワーのそばにある中央区明石町区民館で投資仲間の人たちと「初心塾」という名前の銘柄研究会を開いています。明石町区民館を訪ねてはじめて、この長堤の桜の存在を知ったのです。

春の初心塾はこれまでは3月末に終了していましたので、隅田川の満開の桜には出会い損なっていました。今回は4月5日まで初心塾が延びましたので、満開の桜にやっと出会えたことになります。そこで、「初心塾」の仲間たちを誘って聖路加タワーから佃大橋を渡って対岸の佃島・住吉神社へと花見がてらの散歩に出掛けたというわけです。

聖路加タワー対岸の長堤にも桜が咲き誇っていました。佃大橋の上流に吊り橋スタイルの洒落た中央大橋があります。その先にフランス広場と名付けられた川岸があり、そこの桜並木もみごとなもので聖路加タワーの前よりもっと多くの人が花見に興じていました。フランス広場と呼ぶわけは、なんでもセーヌ河と隅田川が姉妹川だからそうです。そう立て看板に書いてありました。

フランス広場がある石川島は、江戸の昔、「火付け盗賊改」の鬼平こと長谷川平蔵が築いたといわれる無宿人の人足寄せ場があったところです。今は、大川端リバーサイド開発によって超高層マンション群がそびえ立ち、隅田川に調和してセーヌ河に負けない(小生、絵葉書でしかセーヌ河を見たことがありませんが)東京の絶景ポイントになっています。東京にもこんな美しい風景があったのですね。

両岸の花の咲きぶりはみごとなものでしたが、そばを流れる隅田川はいつもとちょっと様子が違っていました。いつもは波静かに流れているのですが、この日はなぜか波が高く、荒々しく流れているように思えました。風が強いからかと思いましたが、この日、風はほとんどありませんでした。「飛翔体」のせいかと思ったのですがそうであるはずありません。

犯人は、隅田川を上下に行き来するエンジン付きの遊覧船や屋形船でした。普段は、浜離宮から浅草へ、浅草から浜離宮へ、川を上下する定期遊覧船が少ない客を載せて走っているだけですが、今日は隅田川から両岸の桜並木をめでる花見客でいっぱいの屋形船が頻繁に行き来し、波を荒立てていたのです。 

一緒に歩いていた家内に教わったのですが、この風景は、今から110年前、明治33年に滝廉太郎が作曲した日本初の合唱歌「花」に謳われた風景とまったく同じでものでした。いや、風景は高層ビルが建ち大きく異なってはいますが、隅田川と長堤の桜並木、それをめでる川舟の構図は110年前とそっくりです。

春のうららの隅田川       見ずやあけぼの露浴びて   
のぼりくだりの船人が      われにもの言ふ桜木を   
櫂のしずくも花と散る      見ずや夕暮れ手をのべて
眺めを何に喩(たと)うべき   われ差し招く青柳を

「花」を作詞した武島文次郎は、「船人」(ふなびと)が春うららの隅田川を上り下りしている、屋形船の櫂のしずくは桜の花びらのように輝き、滴り落ちている。その眺めは喩えることなどできないほど美しい、朝露を浴びて私に語りかけるように咲いている桜木を見ないでどうする、と謳っているのです。

小生、大川端にある超近代の風景の中にあって、いつの間にか手漕ぎの屋形船が行き交う明治の頃の隅田川に入り込んだ幻覚にとらわれたようです。佃島にある住吉神社のしだれ桜も赤い太鼓橋が架かった船溜まりの岸に咲くソメイヨシノも素晴らしいものです。そして、小魚を煮る醤油の匂いが、明治を飛び越して佃煮の江戸に小生を誘うようにも思えました。

ま、心にゆとりのない会社勤めの頃には決して出会うことができなかった「春のうららの隅田川」でした。ご馳走さまでした。

2009年4月 1日 11:49

「バナナ共和国」で予算の叩き売り

 2009年4月1日筆
 
米「ニューズ・ウィーク」(アジア版3月9日号)誌が、「日本はバナナ共和国のように運営されている」と評したと報じられました。バナナ共和国とは、外国資本が支配する農園経済に依存する中南米のような、政治家や官僚の腐敗が常態化している小国を指すのだそうです。記事は日本を小国並みの政治リーダーしかいない国であると皮肉っているのです。

 わが日本は、世界最大の自動車メーカー・トヨタを擁し、衰えたとはいえ世界第2位の経済大国です。一度に4名(一人はアメリカ国籍ですが)のノーベル賞受賞者を出した科学国家です。最近では映画「おくりびと」と何とか言うアニメ作品がアカデミー賞を受賞したばかりですし、WBCでは野球の母国アメリカを負かして世界一になった文化・スポーツの大国ですぞ。そんな大国を「バナナ共和国のような小国」と評するのは、失礼ではないか――。

 そう憤慨するのは、いつものナショナリスト、保守論者にお任せします。多くの日本人は、わが政治家や官僚たちの無節操と腐敗、我田引水の政治にうんざりしており、「バナナ共和国」とは良くぞいった、言い得て妙なりと思っているはずです。その「バナナ共和国」日本で、09年度の追加経済対策の規模をめぐって、バナナ、いや予算の叩き売りが始まろうとしています。

与謝野財務相がガイトナー米財務長官と約束したGDP比2%、今年度10兆円の追加財政出動(すでに7兆円は予算化、残りは3兆円)などかわいいものです。自民党の菅義偉センセイ(選挙対策副本部長)は、第4次追加経済対策の一回だけで20兆~30兆円、経団連は30兆円必要だといっています。

傑作は、国民新党が出した、毎年40兆円、5年間で200兆円の追加経済対策という案です。しかし、さすがにこの案、朝日はじめ多くの新聞社が取り上げませんでした。国民新党の亀井静香さんは書かなかった新聞社に対して「小党を馬鹿にするのか」といって取材拒否を宣言した(その後撤回)そうですが、これこそ荒唐無稽、「バナナ共和国」の規律なき予算の叩き売りの最たるものです。新聞が書かなかったのもひとつの見識です。

4人家族で2520万円の大借金
突然、話しが飛んで恐縮ですが、小生、借金はまったくないと思っていたのですが、実は知らないうちに抱え込んだ借金がウンとあるのです。その金額は、家内と長男次男の分も含めて2520万円にもなります。この借金は、いずれ税支払いという形で返さねばならないものです。前期高齢者に一歩手前の小生にはこんな大金を払えるだけの税所得はございません。払うのは長男と次男です。彼らが将来、大金持ちになってこれを支払ってくれることを願うのみです。

実はこの2520万円の借金、不景気になるたびに財政支出を大盤振る舞いした政府と地方自治体が積み上げてきたものです。財務省によると2009年度末の国債発行残高は607兆円、地方債は197兆円、国債、地方債合わせて長期債務残高は804兆円(GDPの158%。ほかに政府借入れ58兆円、政府短期証券109兆円を抱えます)になります。これを国民一人当たりに換算すると630万円になります。4人家族ですから2520万円です。

皆さん、この世界最悪の長期債務残高、4人家族で2520万円の借金のことは気になりませんか。わが「バナナ共和国」日本の政治家たちは、そんなことには知らん顔、誰も彼もが財政出動派のケインズ先生に衣替えし、30兆円、40兆円と堰を切ったように大規模な財政出動を提案しているのです。

この30兆円、40兆円の財政出動案には税収という本来財源の裏づけがまったくありません。新規赤字国債の大量発行、つまり借金の積み増しによって賄うほかありません。特別会計の剰余金、いわゆる埋蔵金にも限りがあります。無利子国債の発行も利子はつきませんが返済義務のある国債発行です。政府紙幣発行は日銀券の信頼を揺るがします。いずれも財源としては邪道です。

小生には、今回の財政出動が、バブル崩壊後の130兆円余の財政出動がそうであったように、砂漠に撒いた水の如く、将来に何も残さず消え、膨大な長期債務だけを残すのではないかと心配でなりません。私たちの息子や娘、孫たちは、よほどのイノベーションが起こらない限り、低成長ないしマイナス成長が予想される人口減少国家に暮らすのです。つまり所得が増えない国家に暮らさざるを得ないのです。所得が増えない彼らが、もはや返すことができないほどの規模までに膨らんだ借金を背負い込むのが怖いのです。

無駄遣いできる税金など一銭もない
3年後には予想される消費税率の引き上げ増税は、少子高齢化で膨らむ社会保障歳出の増加を賄うので精一杯でしょう。すでに積み上がっている、追加経済対策で新たに積み上がる長期債務を返す財源はどこにあるのでしょう。国有財産を売っても全然足りません。ほかに財源などありません。将来、借金を返すための、さらなる社会保険料の引き上げや消費・所得増税が必要になることは目に見えています。小生の長男(修士卒)、次男(博士卒)が陥っている現在の低所得ぶりを見ている限り、彼らに新たな社会保険料や税を負担する能力などあるとは到底思えません。

麻生総理は、「景気の底割れを防ぐ」「雇用を確保し国民の痛みを和らげる」「未来の成長力の強化につなげる」ための「新しい経済対策(第4次追加経済対策)を4月中旬までにまとめるといっています。この3つの方針は間違ってはいません。しかし、麻生総理を「バナナ共和国」並みの総理におとしめる国会議員や官僚たちが手ぐすね引いて待っています。

大借金国の財源に乏しい国の経済対策です。ですから、くれぐれも砂漠に水を撒くような選挙区への我田引水型のバラマキ、大盤振る舞いにならないようにしてください。そして一連の予算措置に伴って変わるはずですから、将来の財政収支の見通し、財政均衡化への手段(行財政のムダ削減額の明示を含む)と国債償還のスケジュールを総理自身の言葉で明らかにしてください。

そのうえで、われわれの息子や娘、孫たちが、その持てる能力が十分発揮でき、膨大な借金を返せるだけの高所得(税負担能力)が得られる国家にする「新しい経済対策」にしてください。無駄遣いできる税金など一銭もありません。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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