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大西良雄ニュースの背後を読む

2008年11月12日 13:17

再録「振り込め(オレオレ)詐欺」体験記

(06年12月6日筆)

 今回は、閑話休題。まだ被害が続出しているようですので、2年前に小生が書いた「振り込め詐欺」のブログ記事をちょっと長いですが再録します。
 振り込め詐欺師は、「巧妙な仕掛け」を用意しています。しかし、その仕掛け話もよくよく考えれば不可思議なことばかりです。それでも騙されるのは、息子が不憫、と思う「親心」を突かれるからです。「親心」が、冷静さ失わせる、詐欺師のドツボに嵌まるもとです。
 小生の経験から得た「振り込め詐欺防御法」をお教えします。
 詐欺師から電話があったら、①携帯ないし自宅、会社に電話を掛け、本人からの電話かどうかを必ず確認する、②友人、親戚、銀行の窓口係り、誰でもいいから第3者に必ず相談する、以上です。(08年11月12日記)


最初の電話の内容は、「携帯をなくした」
 まさか自分が「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」に引っ掛かるとは思っても見ませんでした。かみさんの機転がなければ、危うく220万円を振り込むところでした。
 某日、書斎でパソコンに向かって原稿を書いている最中、一本の電話がかかってきました。くぐもった深刻な声でした。
 「もしもしオレ」
 「おう、ダイちゃんか」
 私の息子はダイスケといいます。31歳、勤め人です。
 「お父さん、警察から電話があった?」
 話はこう切り出され、「警察」という言葉に私はドキリとしました。息子が何かトラブルに巻き込まれたのではないかと、不安がよぎりました。
 「お母さんには黙っててね。オレ、風邪引いてボーとしてて、携帯と会社の書類を落としちゃったんだ。警察から連絡はなかった?」
 息子は、私に似て、ひとつのことに集中するとほかを忘れがちで、忘れ物、落し物の常習犯でした。私は、さもありなんと簡単に事態を受け入れてしまったのです。
 「警察から連絡はないが、それより、会社の書類を紛失したというのはまずいな。すぐに会社の書類を作り直せ。徹夜してでも」
 どんな書類なのか、作り直せる書類なのか、そんなことも確かめず、私はダイスケに知恵を授けるのに懸命でした。サラリーマンにとって会社の書類がどれだけ大切なものか、へんにワケ知りだったために、冷静になれなかったようです。
 「わかった。すぐ作り直す。携帯は新しいのに取り替えたから、番号をいうね。警察から落し物が見つかったと連絡があったら、この番号に連絡してね」
 新しい携帯電話の番号は080から始まるものでした。その怪しい携帯番号をだいじにメモして、私は電話を切りました。

数日後「株で穴開けた、会社を辞める」と再び電話
 数日後、ダイスケから再び電話が掛かってきました。かみさんが電話に出ていればその電話声の不自然さに気がついたと思うのですが、また私が電話に出てしまったのです。退職後に備えて、書斎にコピー機を入れ、電話機をすぐ手の届く机の上に置いていたのが災いしたようです。
 「お父さん、警察から連絡あった?」
 同じようなくぐもった深刻な声でした。
 「連絡はない。それよりまだ風邪は治らないのか。声がへんだよ。書類はつくりなおしたのか」
 「ん?(少し間があり)、お父さん、オレ、会社を辞めるんだ。お母さんには黙っててね」
 また出ました「お母さんには黙っててね」が。ダイスケはよほどかみさんが煙たいのでしょうか。どこの家庭でもそうでしょうが、わが家でも煙たい、話をしたくない存在は父親の私です。そんなことはコロっと忘れてダイスケの「会社を辞める」という深刻な打ち明け話をうれしそうに聞いてしまったのです。
 「お父さん,株のシミュレーション・ゲームって、知ってる?」 
 知らないわけがない。私は株式投資のバイブル「会社四季報」を出している会社の常務ですぞ、退職後は、株式評論家と名刺に刷り込もうかどうか、悩んでいるところだ、と言いそうになりましたが止めました。すでに詐欺師のドツボに嵌まっていることも知らないで。
 「ゲームで6000万円も勝った。それで会社の上司と一緒に実践しようということになって株を買ったんだ。そしたら大負けして、穴を開けちゃった」
だろうよ、このところ相場は下降気味、いま株に手を出す馬鹿がいるか、そうダイスケを気持ちで叱っている「株式評論家」がそこにいました。
 「まさか会社の金で穴を開けたんじゃないだろうね」
 「上司というのが経理の人でね。その人が会社の金を流用してオレの分と自分の分の株を買って穴を開けた。だから会社にいられない」
ダイスケの声が深刻だったのはそのためだったのか、私は一人合点して、言ってしまったのです。「穴をあけたのはいくらだ。会社は辞めるな。お父さんが穴を埋めてやる」と。
 
ドツボに嵌まった親ばか
 馬鹿ですね。なぜ、自分の不始末のケツは自分で拭けといわなかったのか。
 ダイスケは、穴を開けた金額は300万円、株を売れば80万円にはなるので、220万円を今日振り込んでくれれば、何とか隠しとおすことができる、とのたまうのです。
 これが1000万円であれば、私も考えてしまいますが、220万円ならなんとかなります。時間は、午後1時30分、いまから銀行に駆け込めば今日中に払い込まれる、ダイスケは会社を辞めなくてもすむ......。
 私の親ばか心を見透かして、敵はすかさずこう畳み込んできました。
「振込先の口座をメモして。〇〇銀行、OO支店、普通口座0000-000、口座名シンボ・ツヨシ」
 「ん? シンボ・ツヨシとは漢字でどう書くんだ」
 当然の疑問を呈しても、軽くいなす感じ。
 「シンボさんの名前? いま会議中で確かめられない。カタカナのままでも大丈夫、振り込めるよ。振り込んだら、携帯に電話してね」  
 そういってダイスケの電話は切れた。なぜ、ダイスケが振込先の漢字名を言わなかったことを不思議に思わなかったのか、いまもって不思議です。

詐欺師を見抜いたかみさん
 ここからはかみさんとのバトルです。かみさんはまなじりを決して、ぴしゃりといいました。
「なんで私たちが息子の不始末にお金を出さなければならないの。自分で始末させたら」
 そこが浅はかなんだよ、オンナは(と心で言っているだけです)。
 「流用が発覚すれば、会社からダイスケは告発され警察に逮捕されるよ。そうなると前科一犯、再就職の口などなくなる」
 そういいくるめて、かみさんから預金通帳とたくさんの印鑑を取り上げて銀行に駆けつけました。もちろん、かみさんと一緒です。私は車を運転できませんし、結婚以来、銀行振り込みも預金もしたことがありませんから。
 こわい金庫番のかみさんが横にいるのに、自分で預金を引き出し、自分で振り込もうとしているのです。どうかしています。
 どの印鑑がどの通帳のものなのか、預金の引き出し用紙にどう書き込むのか、振込用紙にどう記入するのか、いちいち案内係の女性のご指導を仰いでいるうちに、時間がどんどんすぎていきました。実はそれが幸いしたのです。
 私がもたもたしている間、220万円が消えてなくなることに憤懣やるかたないかみさんが、ダイスケの会社と詐欺師の携帯に電話を掛けまくっていたのです。案内係の女性もかみさんに同情して、会社に電話を掛けて問い合わせてくれました。それで、ダイスケは出張中であること、会社には「シンボ」なる人物はいないことが分かりました。
 そのことをかみさんが詐欺師に問い詰めると、動じるふうもなく「シンボは会社を辞めた元上司だ、オレは会社にいる」と答え、都合の悪いことを聞かれると黙って応えなかったそうです。
 そして、必ず会話の終わりに、
 「振り込んだらすぐにオレの携帯に電話をくれ」
  と繰り返すのです。
 振り込み先の銀行支店は新潟県でした。ダイスケの会社は東京にあるのになぜ新潟なのか、いま考えるとそれも疑うべきでした。振り込んだと連絡がくれば、たぶん詐欺師の一味が新潟の支店で待っていて、馬鹿親父が振り込んだ220万円を直ちに引き出しトンズラする手はずだったのでしょう。それをいまかいまかと待っていたかと思うと、口惜しいやら情けないやら。

失くしたはずの息子の携帯が通じた
 銀行の案内係の女性は、「いま振り込んでも、引き出せるのは明日です。明日の9時に振り込んでも同じです。まだ時間がありますので、ゆっくり調べて振り込まれたらいかがですか」といってくれました(感謝、感謝)。これで私にも心の余裕ができました。かみさんの仏頂面にも素直に対応できるようになったのです。私の「もたもた」が役に立ったのです。
 私が、「オレオレ詐欺」であることを納得した決め手は、息子の失くしたはずの携帯電話が通じたことでした。息子に電話を掛けさせないために最初に「携帯を失くした」と詐欺師は告げたのです。私が息子とその後連絡を取っていないことを確認して、騙しの次の手を打ったのでしょう。
 かみさんは、息子の携帯に「お父さんが大変です。至急連絡を」とメールをいれたうえ、何度か電話を入れました。本社の会議で発表を終えた息子から、かみさんに慌てて電話が掛かってきました。
 「お父さん、死んだの?」
 それを聞いて私は、いやいや、「死んだのはオレオレ詐欺師のほうだよ」と強がりを言おうとしましたが、かみさんの「あなたにはあきれ果てた」とい言いたげな表情を見て、ことばをそっと飲み込みました。すみません。

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QuonNetコミュニティ | 2008年11月12日 13:30

この記事へのコメント

1. Posted by ロビーの者です 2008年11月17日 17:42

今日はお声を掛けていただきありがとうございます
早速 拝見させていただきました
もうあれから2年 未だになくならない振り込め詐欺
どんどん犯罪が進化しています
先生の体験記がいい喚起なります
ありがとうございます
又奥様とご一緒にお越しください

2. Posted by rei 2008年11月19日 19:37

大西さんのような立派な方をも騙してしまう巧妙な手口…。私の身の回りでも、3人の人が「オレオレ詐欺」からの電話を受けていて、その確率の高さに驚きです。(幸い被害なし。)1日当たりの銀行振込限度額が下がっていくのは、不便も多いですが防御策としては有効なのでしょうね…。また読みに来ます!

3. Posted by 情報懇で、お隣だった55歳 2008年12月 9日 14:24

昨日はお疲れさまでした。「ニュースの背後を読む」
を読ませて頂きました。幾つか読んで、オレオレ詐欺も読ませて頂き、その後、クオンネットの大西さまの星座と血液型が同じというのもわかり、微苦笑。
私がアルバイトさんだった頃は、百瀬さんっ言う人が、営業局長さんだったのを思い出しました。

プロフィール
大西良雄(経済ジャーナリスト)
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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