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大西良雄ニュースの背後を読む

2008年1月24日 10:23

鳩山兄弟の「兄弟同時損害」

(08年1月24日筆)

法相の鳩山邦夫さんが「今度の世界同時株安で40億円も損した」といわれたそうです。ついでに「兄の由紀夫も同額の40億円損した。兄弟で80億円の損。これじゃ世界同時株安ならぬ兄弟同時損害だ」と洒落て見せたのがまずかった。兄・鳩山由紀夫さん(民主党幹事長)は、大衆の味方でリベラル(友愛)が売りの政治家です。「余計なことを言いやがって」と弟の駄洒落におかんむり、なんだそうです。

由紀夫さんも邦夫さんも、元総理の鳩山一郎のお孫さん(父君・威一郎氏は元大蔵次官)です。二人とも祖父や父親の看板を受け継いだ典型的な「おぼっちゃま政治家」です。受け継いだのは看板だけでありません。株も屋敷も受け継ぎました。祖母はブリヂストンの創業者・石橋正一郎氏(故人)の娘でしたから、孫のご兄弟は、ブリヂストン株を375万株ずつ受け継いだといいます。

こんな時、「他人の懐を勘定するのは、ちょっと気が引けますが……」なんていいながら、すぐ計算してしまうのが私の悪い癖です。ブリヂストンは、昨年10月時点の株価が2660円でしたから、375万株で99億7000万円、兄弟合わせてその倍、ざっくり200億円の時価総額でした。それからどんどん下落、この暴落で1561円(22日終値)まで値下がりしました。時価総額は117億円に目減り、差し引き83億円も含みが減ったことになります。

なけなしの退職金を元手にささやかに相場を張っている「新米・株式評論家」(小生のことです)も、自慢じゃないけど大損こいています。金額は恥ずかしくていえませんが、40%は引かされていると思います。そんな、ささやかな個人投資家に言わせれば、鳩山兄弟には、「親からただでもらった株なのだから、損したわけではあるまい。まだ資産価値は117億円もあるのに」といいたくもなります。

われわれ零細な個人投資家は、「貯蓄から投資へ」という政府の掛け声にうっかり乗って、株を買ったり投資信託を買ったり。その結果、いま18兆円を超える大きな含み損を抱えこんで身動きのできない状態にあります。そんな投資家の気持ちを逆なでする「邦夫ぼっちゃま」の無神経な駄洒落でした。小生はこれを妬んではいませんが、庶民は妬みが講じると、鳩山兄弟のような政治家は、「いかがわしい株式投資などしてはいけない」など正義面して言い張りがちです。お気をつけあそばせ。

わたしはそんな野暮なことは言いません。それより政治家諸君には、この際、全員、日本株を買ってみてください、そして暴落を経験し個人投資家のように大損をこいてみてください、といいたいのです。ただし、あくまで自分の歳費で、です。証券会社のヤミ口座で、他人の金を使ってインサイダー取引をするようなことでは、他人の痛みは分かりません。いや、それは犯罪です。

自分で買って損すれば、日本株が、業績も良く、技術力も高まっているのに、なぜ世界の株式の中で最も値下がり率が大きいのかを真剣に考えるようになるはずです。福田康夫総理、額賀財務相のように「この株の暴落はアメリカ発。サブプライムローン焦げ付きが原因で日本に問題があるわけではない。一喜一憂しない」などと他人事のように言っている暇はないはずです。まさか、「株は博打だ、株価に意味はない」とこの暴落を無視することはないでしょうね。

株価は、経済や政治の先導役、道案内人です。この投資家ボーダレスの時代、一国の株価は他国の株価との比較によって動きます。日本株の株価が上がるかどうかは、他の国々と比べて経済がどれくらいの実力、競争力を持っているのか、日本の政治家たちの程度(質)が他の国の政治家のそれとどれぐらい差があるのか、に大きく依存しています。

日本株が下降トレンドに入ったのは、昨年の参議院選挙後からです。その後、回復も弱々しく、日本株の下落率は世界一になってしまいました。世界の投資家たちは、この参議院選挙の結果、与党、野党問わず日本の政治家が、国民というより一部の選挙民、一部の利益集団のご機嫌取りをまた再開したのではないかと、疑うようになったからだと思います。

日本という国は、輸出競争力がなければ、凍死か餓死しなければいけない国です。エネルギーはもともと自給できません。食糧の自給率は下がっています。しかし、国民から高い代金を徴収して自給率を高めるより、自由な貿易が行える環境を築き、世界から食糧を仕入れるほうが得です。日本は、世界との自由でフェアな輸出入によって、活かされている国なのです。競争力を高め、労賃の安い中国などと競争に勝って稼いだ輸出で、外国から石油や小麦を輸入して生きていくしかないのです。

いまや日本に鎖国は不可能です。なのに、日本の政治家たちは、ボーダレスな競争から取り残された、ボーダレスな競争をののしる一部の選挙民、利益集団に再び依拠し、選挙に勝とうとしています。成長のための改革をサボり国際競争をサボる、そうした鎖国主義の政治家たちの台頭に、投資家たちは失望して日本株をせっせと売っているのです。

鳩山兄弟も、含み損が80億円になったのを嘆くのではなく、いまや世界企業に育った素晴らしいおじいさんの会社、ブリヂストンの株価がなぜ大きく値下がりしたのか、兄弟で一緒に考えてみたらどうでしょう。その結果、値下がりの原因が自分たちに政治家にあることに気がつくのであれば、「おぼっちゃま政治家」などとからかうことはしませんから。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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