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大西良雄ニュースの背後を読む

2007年10月11日 14:35

私の遺品整理

(07年10月11日筆)

私の元の職場の同僚というか同志というか、そんな友人がいま雑誌「中央公論」の編集長として活躍しています。雑誌を毎月贈ってくれるのですが、今月の特集のひとつは「おひとり様の正しい老後」という独居老人や孤独死を扱ったテーマでした。

家内に先立たれれば私も独居老人、私が先立てば家内が独居老人になります。
ちょっと気になるもので、読んでいましたら、「天国へのお引越しのお手伝い」をする「遺品整理屋」という職業が日本にあることを知りました。その遺品整理会社「キーパーズ」の社長吉田太一氏と精神科医香山リカ氏が対談しているのですが、その内容には身につまされるものがありました。

独居で亡くなる老人は団塊の世代にあたる男性が多く、中には「せんべいのようにぺっちゃんこで真っ黒な布団の中で孤独に亡くなって」いく男性もいるそうです。その部屋を片付け、遺品整理をするのが「キーパーズ」の仕事で、年間の依頼件数が2500件もあるというのです。

遺品整理の依頼者は子供が半分以下、あとは姪や甥、兄弟だといいます。葬式が終わったあとの遺品整理では、仏壇も位牌も不要だから処分して欲しい、遺骨も捨ててくださいという依頼者もいるようで、吉田氏は仰天したそうです。パソコンが遺品の場合、データ消去を依頼されることもあるそうで、そのデスクトップに「遺書」が現れたりもします。遺族へのうらみつらみが書き綴られた文書も見つかったこともありますが、遺族には渡さずそのまま処分してしまったそうです。

吉田氏は『遺品整理屋は見た!』(扶桑社刊、1260円)という著書も書かれていますので、詳しくはこの本を読まれることをお勧めします。

話は突然変わりますが、遺品整理屋の話をしていたら、家内が遺品と遺産を混同して、「あなたが死んだら息子たちがきっと遺品を引き取ると思う」というのです。息子たちが引き取りたいのは遺産であって、遺品ではないという私との間で「論争」になりました。

「遺産とは誰もが欲しがるもの、遺品とは誰もが欲しがらないもの」というのが私の定義です。むかし、ダイエーが西友の「無印良品」に対抗して「愛着仕様」という独自ショップを展開したことがあります。遺品とは、個人が「愛着仕様」ならぬ「愛着使用」した物品という表現もできます。

そういう私の変な定義に従って、小生の遺品のたな卸しが始まったのです。家内が先立ち小生が孤独死したとき、小生の遺品が、遺品整理屋さんがリサイクルショップに持っていって売れるかどうか、いくらで売れるだろうか、と。

小生の愛着使用の遺品は、なんと言っても学生のころから溜め込んできた書籍です。経済関係や歴史、社会思想、小説、ドキュメント、新書、文庫の類が多いのですが、多くは黄ばんでいて、新しいきれいな本にしか値をつけない「ブックオフ」では無用の長物です。息子たちが置いていった漫画本「駅前派出所」シリーズのほうがずっと高く売れるはずです。

「何でも鑑定団」に出せるような、父親から譲られた書画、骨董、ブリキのおもちゃはわが家には一切ありません。あるのは、平和と自由主義に凝り固まった骨董品のような小生だけです。最近までいた猫のクロ、花子、犬のコロも、血統書など付いていませんでした。生きていても捨て猫の出ですから、価値はありません。

小生の趣味の釣り道具、テニスのラケット、油絵の道具もがらくたです。老眼鏡が二つあります。この老眼鏡の値段は高かったのですが、私の老眼の進みぐあいに合わせて度を調節したもので、他人の目には会いそうもありません。私の部分入れ歯は、保険適用品ですので金(きん)は入っていません。

この文章を書きながら、周りを見渡し、何か価値のある、リサイクルショップや骨董品屋で高く売れるような遺品を捜しているのですが、結局何も見当たりません。わたしが孤独死しても、遺品がすべて市営のごみ処理場行きです。書籍を初め価値のない小生のガラクタは、遺品整理屋の手間を省くためにも、早く片付けてしまわなければならない、ということで、最後は家内との意見の一致を見つけたしだいです。 

ふと思いつきました。家内と二人の息子です。価値があるかどうかは別にしてこれは大切な遺品です。なに、それは遺品とは言わない、遺族というのですか。そのとおりです。しかし、この遺品しか思い浮かばない私の人生とは何だったのだろうか、と遺品整理屋の話から飛躍して考え込んでいるところです。

プロフィール
大西良雄(経済ジャーナリスト)
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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