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大西良雄ニュースの背後を読む

2007年3月

2007年3月29日 09:20

同じ証取法違反、なぜ「量刑」が異なるのか(1)

(07年3月29日筆)
 
ライブドアと日興コーディアルの処分についてですが、粉飾であれ、不正会計処理であれ、同じ有価証券報告書への虚偽記載という証券取引法違反に問われたにもかかわらず、なぜこんなに大きく「量刑」に差がついたのでしょうか。

ライブドアは即時上場廃止になった上、前社長の堀江貴文被告、宮内財務担当常務らには2年6ヶ月のきびしい実刑判決が下されました。これに対して日興コーディアルは、当時の金子会長、有村社長、山本財務担当常務、平野取締役(日興プリンシパルインベストメント社長)は現経営陣から31億円の損害賠償訴訟を起こされたものの、刑事告発はされず、上場も維持されたのです。

この謎を解くのは、容易なことではありません。両者の一つ一つの会計上の操作や処理は、当時の会計処理ルールからいえば、必ずしも非合法とはいえないものだという判断も成り立ちます。前回述べたように、投資事業組合や特別目的会社を非連結にして利益を水増ししたと言う手法は、非合法というより当時の会計原則に従った適法のものだったのです。ライブドアの場合、株式分割やTOBなどの制度を「悪用」して株価を吊り上げたことも重い量刑の背後にあるようですが、これも、当時の証券取引法・取引所の規則からすれば、非合法とは言い切れません。

私は法律の専門家ではありませんので良くわかりませんが、「ひとつひとつの行為はそのときのルールから見て適法でも、それらを積み重ねて総合的に判断すれば違法になる」という当局の判断はありうるのでしょうか。もしそれがありうるのなら、ライブドアと日興コーディアルの「量刑」の差はある程度推測はできます。

実形を受けたライブドアの堀江被告に対する東京地裁の判決要旨(量刑の理由)はこのようになっています(日経新聞07年3月16日夕刊より)。
「本件犯行は、損失額を隠ぺいするような過去の粉飾決算事例とは異なり、投資者に飛躍的に収益を増大させている成長性の高い企業の姿を示し、投資判断を大きく誤らせ、多くの市井の投資家に資金を拠出させたもので、粉飾額自体は過去の事例に比べて必ず多額ではないにしても、犯行の結果は大きいと見ることができる。一般投資者を欺き、その犠牲の上に立って、企業利益のみを追求した犯罪で、その目的に酌量の余地がないばかりか強い非難に値する」
つまり、「わが社は儲かっています」とウソの宣伝して市井の投資家を欺き、株を買わせ、企業利益(あるいは堀江被告個人の利益)を追求した、その行為が実刑に値するといっているのです。

しかし、この判決要旨を読んでもよくわからないのは、肝心の「粉飾」という法律違反の認定です。同じ判決要旨によるとこの部分は「業績向上を仮装した粉飾の手口は、LD株を連結売上げに計上するために、企業会計の潜脱を図ろうとして計画されたもの」となっています。「潜脱」などという漢和辞典にも国語辞典にも載っていない用語を使っているところに法律家の知恵が伺われますが、「会計原則の盲点をかいくぐって」という意味なのでしょうか。法律違反とは言い切っていません。

私には、この裁判官は、粉飾かどうかはグレーだが、そんな法律判断より「一般投資者を欺き、その犠牲の上に立って」金儲けをした生意気な「ほりえもん」をこの際牢屋につなぎ、反省を促したい、そうすることが日本社会に蔓延するなりふり構わぬ野放しの「金儲け主義」を排除しておきたい、といっているように思えます。「粉飾額は過去の事例に比べ必ずしも多額ではないにしても、犯行の結果は大きい」という「犯行の結果」総体を問う文言もそれを表しています。

ライブドア、そして堀江被告が、いろんな(当時は合法的な)手を使って株価を吊り上げたことは事実です。その胡散臭さはわれわれジャーナリストの六感に届いていました。私も、心情的には、裁判官の意見と同じです。たぶんライブドア株を買った個人投資家も「胡散臭さ」は十分心得ていたと思います。そう思っていてもライブドア株の値動きのよさや値上がり期待に投資家は賭けたのではないでしょうか。個人投資家も、金儲け主義だったはずです。

当局もジャーナリスト(私もそうですが)も、自らは清く正しく美しいピューリタン(清教徒)で、「金儲けに走る下々は卑しい、民間企業は金儲けのためなら国家道徳や正義に反しても平気だし、それに反抗的ですらある」といつも考えているようです。彼らは、一般国民や企業がその「道徳」や「正義」を踏み外すと、超法規的に彼らに厳罰を下し、一罰百戒、教訓をたれ、自分たちが考えている社会秩序を守ろうとするのです。

しかし、経済の自由化をどんどん推し進め(このことは官僚・政治家を始め権力者の力を殺ぐという意味も含め結構なことですが)、その自由な経済を公正に行うためのルールを整備してこなかった政治家や監督当局、取引所など、つまり、一罰百戒、教訓を垂れたもう権力者たちは、どのように責任を取ってくれるのでしょうか。

もう紙幅が尽きました。次回は日興コーディアルがなぜ上場廃止にならなかったのか、について述べたいと思います。

2007年3月22日 10:42

日興コーディアルとライブドアは似たもの同士

(07年3月22日筆)

株式が絡んだ、よく似た二つの利益水増し事件に対して、対照的な判断が下されました。

ひとつは、日興コーディアルの「不適切な会計処理」に対する東京証券取引所の判断です。日興コーディアルは有価証券報告書の虚偽記載に問われ、5億円の課徴金は課せられましたが、大方の予想に反して「上場を維持する」という判断が東証から下されました。もうひとつは、ライブドアの堀江貴文元社長に対する東京地方裁判所の判断です。堀江被告は、計上の許されない自社株の売却益などを連結売上げに計上し有価証券報告書に虚偽記載した、いわゆる「粉飾決算」を行ったとして2年6カ月の実刑判決が下されました。ライブドアはすでに上場が廃止されています。

この二つの利益水増し事件は、実によく似ています。下図を見てください。事件の核心部分を図示しておきました。
日興コーディアルの場合、子会社の日興プリンシパルがその子会社である「特別目的会社」が発行したEB債(他社株償還条件付転換社債)を引き受け、その評価益(140億円)を連結利益に計上し、連結利益を水増ししたというものです。
ライブドアの場合、ライブドアが発行した自社株を引き受けた傘下の投資事業組合がそれを外部に売却して得た売却益(37億円)を、連結売上げに計上してライブドアの連結利益を水増ししたというものです。

利益水増しの道具立てに使われたのは、日興コーディアルの場合は、SPC法にもとづく「特別目的会社」、ライブドアの場合は商法にもとづく「投資事業組合」でした。詳しい説明は避けますが、いまやブームになっている「不動産ファンド」や株式などの「投資・買収ファンド」「再生ファンド」などいわゆる「ファンド」は、この特別目的会社や投資事業組合の形をとっていることが少なくありません。

「特別目的会社」とか「投資事業組合」とか、一般の人には何のことかさっぱり分からない、あるいはその実態が投資家からはよく見えない仕組みです。事件を起こした日興プリンシパルの平野社長(辞任)もライブドアの堀江、宮内被告も、村上ファンドの村上被告も、この仕組みをいとも簡単に使いこなし、カネのなる木に仕立て上げるのですから、私は彼らの貪欲・獰猛な感性にほとほと感心してしまいます。しかも彼らは、これらを使って合法か非合法か、ルールが極めて曖昧である隙間を狙って利益を水増しする技術も持っていました。

日興プリンシパルの平野社長はじめ専門家グループは、連結会計の例外事項、いわゆるベンチャーキャピタル条項を使って特別目的会社を非連結とし、特別目的会社が発行したEB債を引き受けた日興プリンシパル側にその評価益を計上して日興コーディアルの連結利益を水増ししたのです。特別目的会社の側には同額の評価損が発生していたのですから、もし連結していれば、相殺されて連結利益は増やせませんでした。しかしこの会計処理はベンチャーキャピタル条項にそっており、非合法とはいいきれないのです。

ライブドアの財務担当の最高責任者・宮内被告らは、子会社のライブドアファイナンスが作った投資事業組合を非連結の独立した組織に仕立て上げ、その投資事業組合に取得させたライブドア株の売却利益を分配金としてライブドアの連結決算上の売上げに計上しました。その結果、赤字だったライブドアの連結利益は黒字になりました。この場合も、裁判では投資事業組合の非連結とその分配金の連結売上げ計上をめぐって、合法、非合法が争われています。

この二つの利益水増し事件は、特別目的会社や投資事業組合という金融の自由化の新しい金融業態が親会社の決算上の別働隊ないしダミー組織として使われるというリスクを想定していなかったために起きたという側面が強いのです。連結決算は、子会社を使った利益水増しを防ぐために導入されました。しかし、その連結決算ルールの隙間(連結する子会社の範囲をどこで線引きするか)が、金融の自由化にビジネスチャンスを見つけようとする新しい金融の旗手たちによって発見され、悪用されたことになります。

ルールの隙間を悪用した側が悪いのか、悪用されるようなルールの隙間を放置していた当局が悪いのか、そのことが問われた事件だったといえます。それにしても、同じ有価証券報告書の虚偽記載の罪なのに、なぜ日興コーディアルは上場維持となり、堀江被告は執行猶予の付かない実刑判決を受けたのでしょうか。次回に考えてみたいと思います。

2007年3月15日 12:38

株価再下落の犯人は「過食」アメリカ

(07年3月15日筆)
 
世界同時株安からの回復が、まだ本物ではありません。昨日は日経平均株価が501円安と今年3番目の下げを記録しました。先週の底入れ反発で763円上昇し、高値1万8300円からの下げ幅1768円の44%を戻したのですが、昨日の急落で元の木阿弥という状況です。

株価の再下落の犯人は、日興コーディアルの上場維持にあるとするうがった見方もあります。ライブドア以上にひどい利益水増しをしたのだから、ほんらい上場廃止になってしかるべきだ、そんな銘柄をかばう東証、ひいては日本の株式市場は信頼できないと考える外国人投資家が日本株を売っているというのです。

しかしそれはうがちすぎです、日本の景気指標を見るかぎり、日興コーディアルの問題(次回に詳しく論じます)など株価に影響はありません。心配されていた設備投資の先行指標である1月の機械受注は堅調でしたし、1月の経常黒字は前年比46%も増加しました。昨年10-12月のGDPの成長率も、年率換算で5.5%と2%前後とされる日本の潜在成長率を大きく上回るものでした。輸出と設備投資がリードする日本の景気拡大は続いているようです。

株価再下落の犯人は、どうやら前回述べました「過食」経済・アメリカのようです。アメリカは消費と輸出が盛り上がり、それが設備投資を誘発して3.5%の経済成長を続けてきました。ところが、昨年10-12月期に成長率は2.2%に急減速したのです。前FRB議長のグリーンスパン氏が「アメリカは2%以下に減速し、景気後退期を迎える」と発言、これがNY株の暴落につながったとも言われています。

3月13日のNY株急落は、NY証券取引所に上場していたサブ・プライム・ローン大手企業が、住宅ローンの焦げ付きで業績悪化に見舞われ上場廃止となったことがきっかけだったようです。

日経新聞などの報道を要約しますと、サブ・プライム・ローンとは、信用力の低い個人に高い金利で貸す住宅ローンのことで、アメリカの住宅ローン残高の約1割を占めています。この住宅ローンは、最初の2、3年は金利が低いのですが、3、4年ぐらいから金利が高くなり10%以上の金利を支払わなければならなくなります。もともと低所得層が借り手ですから、10%もの金利を支払った上で元本を返済するには無理があります。これまで返済ができたのは住宅価格が上昇をつづけていたからです。価格上昇によって増加した担保価値を使って新たにローンを借り、それでローンを返済していたというのです。

住宅価格は、このような低所得向けの住宅需要の拡大もあって10%以上のテンポで上昇をつづけていました。それが、FRBによる政策金利の相次ぐ引き上げからローン金利が上昇、住宅投資が一気に冷え込みました。住宅価格も昨年央から急速に上昇幅を縮小し、住宅バブルが崩壊したともいわれています。

住宅の担保価値上昇が止まれば、借り換えができなくなった低所得者層はローン返済ができなくなります。いまやサブ・プライム・ローンの延滞率はローン残高の12~13%に達し、ローン会社は不良債権を抱えて窮地に陥るという、かつて日本の金融機関を悩ました不良債権問題とおなじ構図です。

アメリカのGDPに占める住宅投資の比率は数パーセント、サブ・プライム・ローンも住宅ローンの1割にすぎませんから、この焦げ付きの影響は小さいといわれています。しかし、これを機に、住宅価格が上昇率の低下から下落に転ずるようなことになれば、アメリカ経済に大きな影響を与えます。

アメリカの景気を牽引するのは,GDPの7割を占める個人消費です。その個人消費は、住宅ローンの中核を占める中・高所得者によって担われています。彼らも、住宅価格の上昇による担保価値の上昇でローンを組み消費に当てているのです。アメリカ国民が、可処分所得を上回る消費(マイナスの貯蓄率)ができるわけは、この担保価値の上昇にあったのです。住宅価格の下落によって担保余力が縮小し、ローンが組みにくくなくなれば、消費が縮みます。その結果、アメリカ景気の牽引力が失われ景気後退が本物になる危険が浮上します。

それを予兆したような株価急落ですが、その株価急落がさらに消費を縮める悪循環に陥る可能性もあります。これまでは、消費に対する株高の資産効果が住宅価格の下降の逆資産効果を打ち消し、消費は底堅い動きを示していたのです。それが株式という資産にも株安によって逆資産効果が発生することになるのですから、消費はダブルで縮むことになります。

値上がり住宅を担保に借金して、マイナスの貯蓄率でも消費するというアメリカ経済「過食」体質は、資産インフレの収束にともなっていずれ修正されるのが定めです。その定めから脱し、景気を軟着陸させるためにはFRBが政策金利を引き下げる必要があります。3月26日にはFRBの金融政策の決定会合があります。しかし、景気拡大の余熱がありアメリカでは賃金が上昇しコストプッシュ型のインフレが懸念されています。バーナンキFRB議長も引き下げの決断ができないでいます。

かりにFRBが利下げに踏み切れば、日米金利差が縮小して20兆円ともいわれる円キャリートレード(円借り取引)の逆流をもたらし、ドル安円高ひいては元高につながります。割安の為替レートに支えられていた日本と中国の対米輸出は縮小し、輸出に支えられていた日中景気が後退する懸念が台頭します。 

利下げに踏み切るか据え置くか、いずれにしてもバーナンキ議長には難しい判断になりますが、それまでは、株価の不安定な状態がつづくのではないでしょうか。

2007年3月 8日 09:21

株価暴落は「水鳥の羽音」 ?

(07年3月8日筆)

いつも私事で恐縮ですが、小生独立後、初めての著書が今週の月曜日(3月5日)書店の店頭に並びました。タイトルは、「失敗しない株の銘柄選び」(こう書房刊、1400円)です。この本を執筆しているときは、株価は反転、上昇をつづけていました。発売直前の2月26日には日経平均株価は1万8300円の最高値をつけ、これなら本は売れるぞ、と内心ほくそ笑んでいたのです。

ところがどうです。この2月26日、上海で突如、株価が暴落、それがインド・ムンバイ、ドイツ・フランクフルト、ロンドン・シティ、ニューヨーク・ウォール街と地球を一周して伝播し、太平洋を渡ってトウキョウ・兜町にも及んだのです。日本の株価は2月27日の暴落に始まり、5営業日にわたって下げつづけ、小著の発売日の3月5日には1万6532円(日経平均株価)の安値をつけました。なんと、高値比1768円、9.66%も下がってしまったのです。

株本は相場が上昇トレンドでなければ売れません。4月までは何とか株価は上昇をつづけるだろうと読んで発売を急いだ、私の読み間違いなのですが、なんでこんな目に逢わねばならないのか。世界同時株安のきっかけを作った上海の投資家を恨みたくなるのですが、そうも言っておれません。わたしは株本を書いた仮にも「株式評論家」であります。なぜ暴落したのか、下値のメドはどこか、頭を冷やして考えなければなりません。

通常の下げであれば、テクニカルな分析が可能です。移動平均線の下支えを下値メドとします。しかし株価は、トレンドを示す基準線とされる日足の25日線、週足の26週線を軽く突破し、移動平均線の下値メドなど参考にならない勢いで下げてしまいました。残っている下値メドは、長期の52週移動平均線1万6387円と3段高下の法則による半値押し1万6173円だけです。

幸い、3月6日、26週移動平均線を下回った時点から株価は反発しましたが、その反発の勢いは弱く、まだ下値不安が残ったままです。こういう場合は、株価は「水鳥の羽音」と考えるべきです。投資家たちは、株価暴落という「水鳥の羽音」を聞いて、次に来る「景気後退」という怖い足音を察知して市場から逃げ出すかもしれません。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が変調を起こしている可能性を考えておく必要があります。
世界の好景気は、アメリカと中国、ふたつの「過食経済」に支えられていたと考えられます。アメリカの国民は、入ってくる所得以上に消費しています。借金して(マイナスの貯蓄率)消費していますから「過食」状態といえます。世界中から物資を輸入し消費していますから、輸出国、とくに中国や日本は潤っています。中国は、設備投資と建設投資が猛烈な勢いで増え、10%もの高度成長を4年もつづけています。その結果、鉄鉱石からくず鉄、古紙まで世界の資源を「過食」しています。これを輸出する資源国は潤いますし、日本も資本財や部品の輸出で儲かっています。

付け加えるならば、日本の消費過少つまり「清貧経済」にも問題があります。これだけ企業収益が上昇しているのに、賃上げは少なく税金・社会保険料が増え、国民の可処分所得は増えず、消費はいっこうに盛り上がりません。消費が増えないから物価は低迷を続け、政府は、依然としてデフレ経済からの脱却宣言を出せないでいます。日銀は、物価が上がってもいないのに無理やり0.25%政策金利を上げましたが、それでも日米の金利差が4%もある超低金利状態にあることに変わりはありません。

世界の株高には、日本の超低金利も貢献していました。外国の投資家は超低金利の日本で円資金を借り、その資金で世界の高金利の債券、あるいは新興国株や金などの国際商品を買っていたのです。いわゆる「円キャリートレード(円借り取引)」ですが、その金額は数十兆円にもなると言われています。日本の超低金利は、世界の投資家にとって低金利で借り高金利・高利回りの資産に運用し、居ながらにして儲けられる「打ち出の小槌」だったのです。

そこで起きた株価の暴落です。ヘッジファンドなどの投資家は保有株を売り、円資金を返済することになったわけですが、その結果、異常な円安状態から一気に円高に転じる始末です。ドルを売って円に換え円資金を返済するわけですから、ドル売り円買い、つまり円高への転換です。円高は、日本の輸出企業の輸出手取りを減少させ、利益を失う結果になります。日本を代表する輸出企業の利益減額予想を心配して、株価がさらに下落します......。

アメリカはGDP世界第1位、日本は第2位、中国は第3位の経済大国です。その1位と3位が「過食」、2位が「清貧」といういびつな構造に支えられた好景気だったのです。このいびつな構造がどこかで破綻するのではないかと、世界の投資家はいつもびくびくしていたといって過言ではありません。今回の株価暴落は、3国のいびつな構造の修正を迫るものなでしょうか(以下次回続く)

2007年3月 1日 11:47

就社ではなく就職

(07年2月28日筆)
 先週、文化放送キャリアパートナーズが主宰する就職セミナー「文化放送就職LIVE2008」で4月から就職試験を受ける大学3年生を相手にオープニング講演を行いました。

 会場の東京ドームプリズムには午前11時の開場前から真新しいリクルートスーツを身にまとった学生たちが緊張した面持ちで長い列を作っていました。今年は売り手市場で内定を何枚ももらえるはずなのに、その緊張した面持ちは講演が始まっても変りませんでした。今の学生は素直で真面目なんだなと思ってみたり、人生で一番大切な選択場面をこれから迎えるのだから緊張して当然と思ってみたりもしました。

 私は、講演のメインテーマを「10年後すら見通せない―就職した会社が消えてしまう日」にしていたのですが、会場には、学生相手に約40社がブースを持っていました。なかには、もうすぐ社名が消えてしまうと思われる会社もブースを持っており、「会社選びは結婚相手選びと同じ―連れ添ってみて始めて相性が分かる」と言う当たり障りのないテーマに急遽変えました。

 残念ですので、最初に話すはずだったテーマをこのブログで書きたいと思います。

 なぜ会社が消えてなくなるのか。その原因のひとつは、スキャンダルです。富士銀行、日本興業銀行、日本長期信用銀行は不良債権という金融界最大のスキャンダルを引き起こし、再編の渦に巻き込まれいまや社名すら残っていません。含み損を飛ばし決算を粉飾した山一證券、同じく粉飾決算が露呈した鐘紡も解体、社名も消えてしまいそうです。いずれも、私たちが学生のころ就職人気のトップクラスに位置していた名門優良企業でした。

 いまで言えば事故多発の日本航空、粉飾露呈の日興コーディアル、使用期限切れの原料を使った不二家です。これらの名門企業の社名は消えてなくなるかもしれません。ナショナルフラッグの日本航空といえども、再建がうまくいかなければ解体の憂き目を見かねません。

 私も長い経済ジャーナリスト稼業になりますが、いまほどスキャンダルに厳しい時代はありません。昔も粉飾決算には厳しかったのですが、事故や事件などのスキャンダルで会社が消えてなくなるようなことはまずありませんでした。株主も消費者も、自分のことは棚に上げて(?)、他人の過ちは寸分でも許さないと言うのが「市場の時代」なのでしょうか。それはともかく、名門ですら消えてなくなるのですから、中堅・中小の優良企業でもスキャンダルを起こせば、会社が消えてなくなるのは当り前と考えておかなければなりません。

 もう一つの、会社が消えてなくなる原因は、企業再編の嵐です。私は、三井銀行が三井の名前を捨て、東海銀行と合併して「さくら銀行」になった時、企業の歴史が変わる予感がしました。三井銀行は旧財閥の三井グループの中核銀行でした。それがいとも簡単に三井の名前を捨てたのです。ショックでした。ショックはその後もつづきました。その「さくら銀行」がライバルだった旧住友財閥の住友銀行と合併し「三井住友銀行」になったのです。三井と住友が財閥の枠を超えて一緒になるなど、考えもしなかったことです。

 この銀行再編は嵐の序曲にすぎないことが、その後の展開が示しています。百貨店の雄を競ったそごうと西武百貨店は統合した後、セブン&アイホールディングスの持株子会社になってしまいました。村上ファンドの株買占めもあって阪神は阪急に吸収されてしまいました。傘下の阪神百貨店と阪急百貨店は大阪梅田でそれぞれ熱烈なファンを持つライバル百貨店だったのに、です。

 例を挙げるときりがありませんので、ここらへんで止めます。この再編の嵐は、ますます吹き荒れると思われます。株式交換によって巨大外国資本が日本企業を買収することが容易になるといわれている「三角合併方式」はこの5月から解禁されます。その前衛部隊にもなりうる外資系買収ファンドもすでに相次いで上陸を始めています。これに先手を打って企業規模(時価総額)を大きくする国内大企業同士の合併も多々噂されています。

 名門大企業に就職して大喜びしていたら、社名が変り経営者が変り、能力なき社員は去れという事態に陥る――。内定をいくつももらえる幸せな学生諸君ではありますが、会社を選んで「就社」してもその「社」が消えることは覚悟しなければなりません。月並みですが「就社」ではなく「就職」、つまり「職に就く」という気持ちで会社を選んでください。諸君は会社から給料をもらってスキルを身につけることができるのです。いつでも会社を辞することができるように会社から「職」を獲得できるようにがんばってください。
私は、そう話したかったのです。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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