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大西良雄ニュースの背後を読む

2006年4月

2006年4月20日 09:10

早稲田大学と東洋経済の浅からぬ関係

最初に早稲田大学と東洋経済新報社との浅からぬ関係に触れておきたいと思います。「早稲田ウィークリー」の3月25日号に早稲田大学の白井克彦総長が卒業生に与える言葉として「湛山に学ぶ」を書いておられます。
「卒業生諸君、時代は組織だけに依拠するのではなくて、個人の力が重要になる世の中に転換しつつあります。『独立不羈の志』が、ますます求められています。リベラリスト湛山は理想を忘れぬ一方で、現実をつぶさに見つめ、問題から目をそむけることをしませんでした。また己を律することでしか精神の自由は勝ち得ないことをよく分かっていました」と。
 
「リベラリスト湛山」とは、早稲田大学(文学部哲学科出身)から初めて総理大臣になった石橋湛山翁のことです。「湛山」は、われわれ東洋経済新報社にとっては5代目の主幹(社長)であり、自由主義ジャーナリズムの思想的基盤を築かれた大先輩です。ちなみに湛山の先輩にあたる2代目の主幹・天野貞祐先生は、後に早稲田大学学長になられました。湛山と社内で腕を競った高橋亀吉翁(商学部出身)は、日本で初めて「評論家」の肩書きで生計を立てたことでも知られていますが、その『大正昭和財界変動史』は現在でもデフレ―ション研究に欠かせない一級の文献になっています。
 
白井総長が紹介されている湛山の自主、自律、自由そして「個の確立」という考え方は、内には徹底した民主主義、自由経済主義(市場経済主義)、外には植民地放棄を説く「小日本主義」、国際協調、外交重視の平和主義として知られ、その言説は『石橋湛山全集全十五巻』(東洋経済刊)結実しています。15巻もの自筆論稿を持っている総理経験者はいません。私自身もこれを読み、事に遭遇した時、「湛山記者ならどう考えただろうか」と判断の基軸をいつも湛山思想に求めてきました。このブログでのニュース解説もその手法をとります。
 
「民主党の黄門様」と湛山
「民主党の黄門様」として急浮上している渡部恒三国対委員長(第1文学部大学院卒、雄弁会)も湛山思想を判断基軸にしているように思えます。恒三さんは、石橋湛山記念財団が発行している「自由思想」(05年5月号、写真)で「不世出の哲学政治家との出会い、選挙を手伝った思い出」を語っています。政治家をめざして早稲田大学に入学し、恒三さんが最初に出会った政治家が湛山でした。湛山は、勢い込んで自説を述べる恒三青年に、「汝らのうち首たらんと欲するものは、汝らの僕たるべし」と自著の扉に書き、贈ったといいます。リーダー(政治家)は常に国民の下僕であるとべしいう意味でしょうか。恒三さんはこの書を家宝としているそうです。私も、渡部恒三議員が湛山を師と仰いでおられることを聞きつけ、『政治家につける薬』(95年、東洋経済刊)という本を書いていただいたことがあります。
 
湛山総理は、残念なことに200日で退陣されました。引け際だけがよく、何もなにもしなかった総理と湛山を評する評論家もいるようですが、『湛山全集』を読めばその評が誤りだったと気がつくに違いありません。それはさておき、湛山は総理就任してから全国遊説に歩くのですが、その最後に早稲田大学大隈会館での祝賀会に望みました。司会は院生だった恒三さんでした。しかし、その日はあいにくの冬の雨、それをものともせず演説していた湛山は、風邪をこじらせ入院、国会の予算審議に出席できなくなったのです。湛山は「国会に出られない以上、私は自分の政治的良心に従う」といって、総理を辞したのです。慰留につとめたのが野党の浅沼稲次郎社会党書記長(当時)だったといいますから、湛山が党派を超えて期待されていたことが分かります。
 
偽メール事件で自ら辞職しようとしなかった永田寿康・民主党議員に対して、ひとり恒三さんが「会津の白虎隊」をたとえに辞職を迫ったのは、湛山の引け際を脳裡に焼き付けていたからでしょうか。哲学政治家と駆け出し議員を量りにかけるのは、湛山に失礼かも知れません。恒三さんは、永田議員のみならず、大物を含む引け際の悪い不徳政治家すべてに湛山総理のことを告げたかったのではないかと私は推測しています。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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