QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




大西良雄ニュースの背後を読む

2017年4月17日 11:18

韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか

(2017年4月17日筆)

 原子力空母・カール・ビンソンを中核とする空母打撃群が朝鮮半島近海に到着、一触即発の緊張状態の中、北朝鮮が中距離弾道ミサイルの発射実験を強行した。だが、本当の失敗なのか意図的な失敗かわからないが、実験は幸いにも失敗した。

 訪韓途上のペンス米副大統領は「失敗したミサイルに対処する必要はない」といい、米軍の北朝鮮への先制攻撃は回避された。何をするかわからないトランプ米大統領だけに、ほっと胸をなでおろした人も多かったに違いない。

 トランプ米大統領は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や核実験再開など自国の安全保障に直結する実験を行えば先制攻撃に踏み切るとする報道が多いが、本当にそうなのだろうか。これに関し、いくつか見過ごされている事実に触れておきたい。


全面戦争で火の海、韓国の大統領候補は米先制攻撃に反対

 まず先制攻撃について、北朝鮮から強烈な反撃を受け最も大きな損害を被りかねない韓国の本音がどこにあるかだ。はたして韓国は先制攻撃に同意するのか、米軍は韓国との事前合意なしに先制攻撃を行うことができるのだろうか。

 韓国では現在、5月9日投票のスケジュールで大統領選挙が争われている。支持率トップを競う最大野党「共に民主党」の文候補は「我が国の同意のない先制攻撃はあり得ない。米大統領に攻撃を保留させる」と主張、有力な対抗馬である「国民の党」の安候補も「トランプ大統領に戦争は絶対だめだと伝える」と語ったという(朝日新聞デジタル4月16日)。

 韓国の知識人も懐疑的だ。韓国国民大政治大学院長(元陸軍大佐)の朴氏は、日経新聞のインタビューに答え「空母3隻が朝鮮半島周辺に集中しても米軍の軍事攻撃が不可能だと北朝鮮はわかっている。韓国の首都圏には2千万人の人口が密集し、在韓米軍は2万8千人が駐留している。実質的に北朝鮮の人質と同じだ。」と述べている(日経新聞4月17日朝刊)。

 ちなみに、在韓米軍を含む在韓米国人は30万人もいる。在韓邦人は3万8000人、韓国に観光で訪れている外国人も少なくないだろう。戦争になればソウルとその近郊の2000万人の韓国人、そして米国人が最も負い在韓外国人の生命が危うい。北朝鮮は韓国民と在韓外国人を人質に取っているようなものだというのだ。


開戦90日で米国人8万~10万人含む100万人の民間人死者

 北朝鮮は韓国との国境線である38度線に数千もの旧式野砲やロケット砲を配備している。最近では国境線沿いに1万発のロケット弾を瞬時に発射できる小型ロケット砲を300基配備したという報道もある。ほかに北朝鮮は300キロ離れた地点から発射できる短距離ミサイルを保有している。

 北朝鮮の崔・党副委員長は4月15日、「全面戦争には全面戦争で」と演説した。米軍が先制攻撃に踏み切れば、北朝鮮のこれら野砲、ロケット砲、短距離ミサイルが一斉に火を噴き、全面戦争に突入、38度線から40キロしか離れていないソウルとその近郊は火の海になりかねない(横田、横須賀、岩国、沖縄など在日米軍基地への北朝鮮のミサイル攻撃による日本の被害も予想される)。

 1994年、クリントン大統領が北朝鮮核施設への先制攻撃を検討したことがある。この時、米統合参謀本部が出した戦争シミュレーションでは「戦争が勃発すれば開戦90日間で5万2000人の米軍が被害を受け韓国軍は49万人の死者を出す。戦争費用は最終的に1000億ドル(約11兆円)を越す。在韓米国人8万~10万人を含め100万人の民間人死者を出す」(辺真一コリア・レポート編集長のブログ「米国は北朝鮮を攻撃できるか」)という結論だった。

 クリントン大統領はこのシミュレーションに衝撃を受け、さらに金泳三韓国大統領(当時)の強い反対もあって、先制攻撃を踏みとどまったという。

 北朝鮮の戦争準備がさらに進んだ今日、韓国軍・韓国人および米軍・米国人が被る全面戦争の損害は1994年のシミュレーションを大きく上回るに違いない。韓国政府も韓国大統領選挙の候補者だけでなく、米国が被る全面戦争での人的・物的損害を知れば米国民も先制攻撃に簡単には同意しないだろう(日本政府は事前同意を与えるのだろうか)。


米国は「体制転換をめざさない」、中国は「石油輸出停止」のシグナル

 そのことをトランプ大統領も知っているのだろう。トランプ政権は「先制攻撃を含むあらゆる選択肢を準備する」という一方、「北朝鮮の体制転換をめざさない」という方針を決定したという。北朝鮮が米国に第一に求めているのが金正恩体制の維持・承認だ。トランプ氏は「体制転換をめざさない」と決め、北朝鮮が米中2国間協議、あるいは米・中・韓、日・ロとの6か国協議に応じやすくなる誘導路を用意したといってよい。

 北朝鮮・金体制の崩壊を恐れ制裁に2の足を踏んでいた中国も、ようやく動きはじめたようだ。中国は2月中旬から北朝鮮からの石炭輸入を停止(1~3月期の石炭輸入量は51.6%減と発表)した。4月中旬には中国国際航空がすべての北京・平壌便を運航停止、中国のすべての旅行社が北朝鮮観光を中止したと伝えられる。中国は核・ミサイル開発の原資となる外貨獲得源を絶つ方策を積極化させている。

 残るは中国の対北朝鮮向け石油の輸出禁止措置だ。中国の共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は「中国政府は北朝鮮に、国際社会の反対を顧みなければ中国は大半の石油の供給を停止すると態度表明するべきだ」(朝日新聞4月17日朝刊)と書いた。「環球時報」の報道は、中国共産党の内部で北朝鮮への石油の供給停止が議論されている証拠になる。事実なら中国も北朝鮮問題の解決に本腰を入れていることになる。

 偶発的な戦争突入のリスクはなお残るが、こうした中国の新しい動きが、トランプ政権に先制攻撃の停止につながり、核・ミサイル開発をめぐる北朝鮮との外交交渉再開に結び付く可能性に大いに期待したい。

2017年4月 3日 13:50

トランプ暴走止めた司法と議会、米国の「三権分立」健在なり

(2017年4月3日筆)

 トランプ大統領の2つの看板政策、イスラム圏からの入国を制限する大統領令、オバマケア(医療保険制度改革法)代替案が挫折した。トランプ氏の政策遂行能力に大きな疑問符が付き大統領支持率は就任後歴代最短で30%台に低下、熱烈にトランプ氏を支持してきたコア支持層も逃げ出し始めている。


入国制限の大統領令を2度差し止めた連邦地裁

 イスラム圏からの入国制限の大統領令は2度にわたって挫折した。1度目の(2017年1月)の旧大統領令は西部ワシントン州の連邦地裁が差し止めの仮処分を命じた。大統領側は上訴したが連邦高裁はこれを棄却した。

 2度目(3月)の新大統領令は入国制限対象をイスラム圏7か国からイラクを除き6か国としたうえでビザや永住権保有者に入国を認めるなど修正を施した。だがハワイ州、メリーランド州の連邦地裁から差し止めの仮処分を命じられ再び頓挫した。

 大統領側は2度目も連邦高裁へ上訴する予定だが、「大統領令はイスラム教徒に対する差別にあたる」とする連邦地裁の判断が覆る可能性は低いという。いずれにせよ大統領令という強力な行政権力が連邦地裁など司法によって止められたことになる。

 大統領令の差し止め命令は、米国では行政権力への司法のチェック機能が働き、行政、司法、議会の三権分立が健在であること示した。うらやましい限りだ。


オバマケア代替案を葬った「党議拘束」なき与党・共和党員

 オバマケア代替案はトランプ氏の与党・共和党内部の強い反対で撤回を余儀なくされた。トランプ政権の与党・共和党は上下院で過半数を保持、トランプ氏の政策執行を支えると思われていたが、これが機能しなかったのだ。

 トランプ大統領のオバマケア代替案は、保険加入の義務化を廃止し低所得者向けの医療制度を縮小するなどの下院共和党案をベースに作成されたものだ。

 しかし中立機関の米議会予算局は、代替案が実行されると10年後には無保険者が2400万人増えるという試算を出した。これを受け共和党内のリベラル派が反発する一方、「オバマケアの完全撤廃」を主張する共和党内の「フリーダム・コーカス(下院自由議員連盟、超保守の茶会グループ)」が猛反発、下院の過半数賛成が望めず大統領側は代替案の撤回を余儀なくされた。

 米議会では共和党、民主党とも議員に対する「党議拘束」がない。議員は自らの良心と政策思想に基づいて議案に対する賛否を表明することができる。

 フリーダム・コーカスは40名前後の議員で構成される共和党の少数派だが、共和党237議席、民主党216議席の下院の議席差は21議席しかない。少数派でもフリーダム・コーカス議員が一致して反対すれば議案は否決される。彼らはキャスティングボートを握っているのだ。

 「オバマケアの完全撤廃」の是非は別にして、与党共和党内フリーダム・コーカス議員の反対によって代替案が葬り去られた事実は、大統領の行政権力に対する議会のチェック機能が働いたことの証左になる。行政に対する議会の牽制という形で米国の三権分立が健全に機能した。これもうらやましい。


翻ってわが国の司法、議会のチェック機能はどうか

 翻ってわが国の司法はどうか、議会はどうか。原発の安全性、沖縄の普天間基地移転、各種の違憲訴訟、一票の格差など訴訟が高裁、最高裁へ上るにつれ司法が安倍一強の行政権力へなびき、権力寄りの判断が下されているように思えてならない。米国のような行政権力への司法のチェック機能は十分に働いていないように思える。

 わが国における議会の行政権力に対するチェック機能は見るも無残な状況だ。民進、共産、自由、社民などの野党の議席数は衆参両院で過半数に遠く及ばない。安倍政権の少数派軽視に抗せず野党はチェック機能を果たせていない。

 頼みは自民党内議員の良心と政策思想に基づく反対票だが、彼らは「党議拘束」に縛られて動けない。「党議拘束」に反して反対票を投じれば党から離党勧告などの処分が下される、あるいは次の選挙で自民党公認を得られないからだ。

 自民党内にも議員個人に聞けば、特定秘密保護法、集団的自衛権をめぐる憲法解釈、南スーダンの「戦闘状態」とPKO派遣5原則の問題、今国会提出のいわゆる共謀罪、それと森友学園の愛国小学校への総理夫人の関与疑惑など、安倍主導の政治案件に疑問を持つという人物はいるはずだ。安倍総理の国家主義や歴史修正主義、戦前回帰(戦後レジュームからの脱却)路線に抵抗するリベラル派がいるはずだ(と信じたい)。

 IR法案(いわゆるカジノ法案)をめぐって公明党が「党議拘束」を外し、山口代表らが反対票を投じた。自民党内にも「党議拘束」を外せば反対票を投じる議員がいたに違いない(と信じたい)。

 しかし彼ら自民党議員は「党議拘束」に縛られたまま動けない。議員の良心と政策思想を揺すぶる法案について与野党とも「党議拘束」を外し自主投票させることで、米国議会のように行政権力に対する議会のチェック機能を回復させる必要があるのではないだろうか。

2017年3月21日 14:09

若年層減少がもたらした過去最高の就職内定率

(2017年3月21日筆)

 文科省・厚労省調べによると、今年3月卒業の大卒就職内定率(2017年2月1日現在)が90.6%となり2000年の調査開始以来の最高を記録した。高校生の就職内定率も94.0%と24年ぶりの高水準となったという。


若年人口は10年間で14.6%の大幅減、長時間労働規制も事態を加速

 実質経済成長率は1991年度~2015年度平均で0.9%(安倍政権下の歴年4年間でも1%)にとどまっている。にもかかわらず大卒、高卒内定率が記録的な高さになっているのは労働力候補である若年人口の急減が最大の原因だ。

 15歳から29歳までを「若年層」とすると、「若年層」はこの10年間で318万人、14.6%も減少している。過去の少子化の影響が顕在化したことになる(総務省「人口推計」)。

若年層(15歳~29歳)は10年間で318万人減少(単位千人)
hyo1.JPG
(注)総務省統計局「人口推計」、006年は10月、2016年は9月確定値 

 15歳~19歳の人口減少は高卒の就職内定率、20歳~24歳の人口減少は大卒の就職内定率の引き上げの原因になった。25歳~29歳の人口減少(労働力不足の深刻化)は高卒、大卒など新卒の採用熱に拍車をかける結果となったと思われる。

 日経新聞3月21日朝刊によれば、主要企業の来年2018年春の大卒の新卒採用計画は今17年春実績(見込み)に比べ9.7%増(文系6.0%増、理工系14.8%)、高卒は4.0%増が見込まれるという。若年人口の減少が続く中、高卒、新卒の就職内定率上昇の勢いは止まらないだろう。

 こうした状態を加速しそうなのは、年間720時間(月平均60時間)を残業時間の上限とする長時間労働規制だ。この規制が確実に履行されるようになれば従業員一人当たりの労働時間は確実に減少、労働生産性の向上がなければ同じ売上、生産を維持するには従業員数をさらに増やす必要がある。


採用意欲旺盛なサービス産業だが新卒はソッポ向く?

 採用意欲が強いのは製造業(17年春実績比6.7%増)より人手不足が深刻化している非製造業(同11.1%増)だ。なかでも「保育、介護を含む外食・その他サービス」(同29.3%増)、ドラッグストアなどその他小売業(16.5%増)、運転手の疲弊が進む陸運などが採用意欲旺盛だという(日経3月21日付け)。

 学生側の売り手市場が続く中、新卒の若者たちの間では賃金、労働時間、福利厚生など労働条件への要求が高まっている。採用意欲が高い保険、介護、外食、陸運などのサービス産業が労働条件面で優れているとは決して言えない。

 サービス産業は世界的に見ても労働生産性は低い。売り手の新卒の要求にこたえるのはサービス産業側の労働生産性引き上げのための体質改革が急務となる。それが実現できなければ、新卒にそっぽを向かれ慢性的な人手不足状態を甘受せざるを得ない。

2017年3月 6日 14:15

「右翼政商」森友学園に利用された?政治家と官僚たち

(2017年3月6日筆)

 安倍総理夫妻まで登場する国有地の格安払い下げ疑惑が国会を騒がせている。テレビの情報番組でも築地の豊洲移転問題、キム・ジョンナム(金正男)暗殺事件と並ぶ頻度で連日報じられ、視聴率稼ぎの目玉になってきた。下手をすれば政権の支持率低下を招きかねない状態だ。


証拠を示さず口先で「払下げは適正だった」と言われても

 なぜ国有地が8億円以上も値引きされたうえ異例の手続きで森友学園に払い下げられたのか、なぜ教育基本法に違反する教育を行いかねない学校法人の設立を認可しようとしたのか、そこに政治家の関与はなかったのか。鴻池祥肇参院議員の秘書が書いた「陳情整理報告書」が明るみに出てから国民の疑惑はますます膨らんできた。

 こうした疑惑に対し、国有地払い下げの責任者である麻生財務大臣は「払い下げ手続きに瑕疵はない。法令に基づき適正な手続きをした」の一点張りで払下げ価格に問題はないという。部下の佐川宣寿財務省理財局長も「隠れた瑕疵(産業廃棄物の存在)を含めて免責するという特約付きで適正に時価を反映した」と適正な払い下げを強調したうえで、「政治家の方々の関与は一切ございません」と断言している。

 払下げの当事者である財務省が、「手続きに瑕疵はない」「適正に時価を反映した」「政治家の関与は一切ない」と断言するからには、その根拠(証拠)があるのだろう。しかしその根拠(証拠)になる森友学園との交渉記録、財務省・国交省間の会議録などは売買契約後ただちに「破棄した」(佐川理財局長)という。

 証拠を示さず口先で「払い下げ価格は適正だった」と言われても納得できるはずがない。お上(政府)の言うことに嘘はない、国民はこれに従いなさいと言わんばかりの麻生財務相の傲慢な姿勢に抵抗感を覚える国民も少なくないだろう。


総理と総理夫人の名前まで利用した平成の天一坊

 疑惑劇の登場人物は豪華だ。政治家からはピンは安倍総理夫妻、鴻池参院議員、松井大阪府知事、キリは大阪府議、兵庫県議まで多士済々だ。官僚からは麻生財務相配下の財務省官僚(近畿財務局)という超エリートから石井国土交通相配下の国交省官僚(大阪航空局)、大阪府教育委員会まで多段階に及ぶ。登場人物は今後さらに増えていくに違ない。

 劇の主役は、国有地の格安購入を見事に成功させ、「瑞穂の國記念小學院」新設の一歩手前までこぎつけた森友学園の籠池泰典理事長だ。籠池氏は、安倍総理シンパの保守系政治団体「日本会議」大阪支部の運営委員(代表ではないという。日本会議も迷惑げだ)という肩書を持ち、系列幼稚園の園児に軍歌を謳わせ教育勅語を暗唱させ、「安倍首相がんばれ」と言わせた。

 籠池氏の「森友学園」は一時、安倍昭恵「総理大臣夫人」を名誉校長に担ぎ、この小学校を「安倍晋三記念小学校」とするとして寄付金を集めた。総理と総理夫人の名前を利用して「日本唯一の神道小学校」を設立しようと画策したのではないか。将軍・徳川吉宗のご落胤を騙り騒動を起こした江戸時代の「天一坊騒動」に似ている。名前が利用されたとすれば総理夫妻のわきの甘さが責められる。

 それはともあれ、かりに財務省がいうのが本当で「払い下げ価格に問題はない」という結論になれば、保守系政治家、知識人、官僚らを手玉に取った籠池理事長の大勝利ということになる。


保守系論壇人の講演で箔付け、総理の昵懇財界人の学園も被害に

 勝利への籠池氏の仕掛けは巧妙だった。第一段階は安倍総理シンパの「日本会議」の肩書と教育勅語を暗唱させる超保守教育を携え、系列幼稚園に著名講師を呼び込み、箔をつけることだ。

 森友学園の系列幼稚園に呼ばれ講演した著名人は安倍昭恵総理夫人、鴻池参院議員のほか保守系論壇誌に頻繁に登場する百田尚樹氏、青山繁晴氏(現参院議員)、竹田恒泰氏(明治天皇の玄孫)らだ。

 いくら講演料を払ったのか定かではないが、全国に私立幼稚園は7,076(2016年度)ある。その一つに過ぎない幼稚園にこれだけの講演者を呼びつける籠池氏の才覚は尋常ではない。一方、誇り高い保守論壇のこれら講演者には自らが籠池理事長の箔付けに利用されたという自覚はないようだ。

 最近分かったことだが、森友学園は大阪府に提出した設立申請の中で新設小学校は愛知県蒲郡市にある「私立海陽中等教育学校」への推薦入学枠を持っていると記載した。だがこれが全くのウソ、海陽側は「森友学園と話し合いをしたことは一切なく推薦入学の話は事実無根だ」と完全否定している。

 海陽学園は英イートン校に範をとった全寮制の中高一貫校として有名で、海陽中等教育学校の理事長はJR東海の代表取締役名誉会長・葛西敬之氏だ。葛西氏は安倍総理に最も近い財界人の一人として知られる(安倍政権は大型景気対策として葛西氏が推し進めたJR東海リニア新幹線に3兆円もの財政投融資を決めた)。

 こともあろうに籠池氏は、葛西氏の海陽学園から「推薦入学枠をもらっている」とウソの記載をした。籠池氏は葛西氏が安倍総理と昵懇の財界人であることを見抜き、推薦入学枠をでっちあげて小学校認可の材料にしたのだ。この一事をとっても籠池氏が保守人脈を利用し尽くした、質の悪い「右翼政商」であることがわかる。


「右翼政商」に手を貸した?滑稽で哀れな官僚たち

 滑稽で哀れなのは官僚らだ。有力政治家の介入を受けたせいなのか、安倍総理をはじめとする政治家の意向を忖度したためなのか、よくわからない。だが、わざわざ証拠を破棄し、「法には触れない、手続きに瑕疵はない」と言い募って国民の財産である国有地の格安払下げを黙認しようとしているのだ。

 それどころか官僚らはこの「右翼政商」の小学校開校に支援の手を差し伸べているかのような感すらある。官僚たちは、小学校建設に必要な資金のない森友側に対し、国有地払い下げの手続きや法律、事務管理についての合法的な抜け道を教えたのではないか。

 この森友学園疑惑は、会計検査院が調べたとしても、これに関する官僚の内部告発、あるいは地検特捜部の捜査がなければ真相解明には至るまい。結局、「瑞穂の國記念小學院」新設の認可延期、あるいは不認可決定による払下げ国有地の森友学園からの買戻しという決着を経て、事態はうやむやのまま収束することになりそうだ。

2017年2月20日 13:49

消費低迷の原因――可処分所得が勤労者で伸びず、高齢者では減少

(2017年2月20日筆)

 2016年10-12月期の家計最終消費支出(個人消費)は前期比マイナス0.1%と伸び悩んだ。安倍総理ご自慢の「雇用の改善と3年連続の賃上げ」にもかかわらず個人消費は依然伸びず、景気の足を引っ張っている。

 その原因は何か。消費税率の3%引き上げは2014年4月、すでに3年近く経過した。消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動減はとっくに一巡、現状の個人消費の伸び悩みの原因を消費増税に求めていては景気の見通しを見誤る。

 個人消費の低迷は、勤労者所帯での可処分所得(税金、社会保険料支払いを除く所得)の伸び悩み、高齢者所帯での可処分所得の減少が重要な原因だ。

 国民経済計算(内閣府)によれば、2015年度の雇用者報酬(国民所得のうち雇用者の取り分を示す)はアベノミクス前の2012年度に比べ10.3兆円増加(4.1%増)したが家計可処分所得は4.3兆円(1.5%増)しか増えていない。雇用者報酬の増加が税金や社会保険料の増加に食われ、消費のもとになる家計可処分所得が伸び悩んでいることを示している。


勤労者所帯では社会保険料を中心に非消費支出が増勢
アベノミクス下でも消費支出は減少、将来不安から貯蓄

 最新の家計調査(総務省)でも、勤労者所帯では賃上げなどで実収入は増加したものの、非消費支出(所得税、住民税など直接税と社会保険料などの支出)の増加に食われ、可処分所得(実収入-非消費支出)が伸び悩んでいることが明らかになっている。

2人以上の勤労者所帯―社会保険料など非消費支出の増加が痛手(年平均、単位円)
hyo1.JPG
 上表は勤労者所帯(全国、2人以上の所帯)の1か月の収入、支出(いずれも年平均)だ。2016年の実収入はアベノミクス前の2012年に比べ8467円増加(1.6%増)したが、社会保険料、所得税など非消費支出が4775円増加(5.1%増)、可処分所得は3692円の増加(0.8%増)に止まった。

 勤労者所帯で特筆すべきは、賃上げで実収入が増加したにもかかわらず2012年に比べ16年の消費支出が4283円減少(1.4%減)している点だ。勤労者所帯では社会保険料負担の増加などに食われ可処分所得が伸びていない。

 勤労者所帯では平均消費性向(可処分所得と消費支出の割合)も消費支出の減少に伴い1.7%ポイント低下した。消費性向の低下は貯蓄性向の上昇の裏返しだ。現役の勤労者所帯では将来不安が高まり消費支出を減らし貯蓄を増やす傾向が強まっている。社会の軸である勤労者所帯がこの状態では個人消費が伸びるはずがない。


悲惨な高齢者所帯、社会保障給付の減少で実収入そのものが減少
社会保障費の圧縮優先で可処分所得の危うい状態は今後も続く

 悲惨なのは「所帯主が60歳以上の高齢者所帯」(下表)だ。2016年の1か月の実収入は2012年に比べ7444円減少(3.5%減)した。主な収入源である年金を中心に社会保障給付が8457円も減少(4.6%減)したことが響いた。この間、賃上げの恩恵に浴せなかった高齢者所帯では社会保障給付の減少で実収入自体が減少したのだ。

 親の世代の高齢者所帯のこの姿を見て勤労者所帯が自らの将来に不安を抱いても不思議はないだろう。

所帯主が60歳以上の無職所帯―社会保障給付の減少が痛手(年平均、単位円)
hyo2.JPG

 高齢者所帯の可処分所得は、社会保障給付減少の結果、この間、6025円も減少(3.3%減)した。消費支出を削って(消費支出は12年比2534円減少)も追い付かず、平均消費性向(高齢者所帯では消費支出が実収入を上回るため消費性向は100%以上になる)は130.8%から133.8%へ3.8%上昇した。高齢者所帯では貯蓄の取り崩し幅が年々拡大していることになる。

 高齢者は消費者としても巨大な存在だ。わが国では60歳以上の高齢人口は4035万人、総人口の約33%を占める。今後、少子高齢化の進展で高齢の無職所帯はさらに増加する。その高齢・無職所帯が、社会保障給付の削減→可処分所得の減少から消費支出を縮小せざるを得ない状態では、個人消費全体が伸びるはずがない。

 安倍政権は公共事業費と防衛費の伸び確保を「聖域」として譲らず、財政の帳尻合わせは社会保障費の圧縮と考えているようだ。そう考える限り、今後も勤労者所帯には社会保険料や税金の負担増がのしかかる。高齢者所帯には社会保障給付の削減が続くに違いない。可処分所得の前途は今後も危うい。

 可処分所得が危うい状態が続くようではアベノミクスの大切なキャッチフレーズである「所得から支出への好循環」など絵に描いた餅だ。中国人の爆買い消費が消えた後、頼りは個人消費だがこれが伸び悩むようでは消費景気の回復は一向に進まないという事態が今後も続くということになる。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
月別アーカイブ
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
2011年2月
2011年1月
2010年12月
2010年11月
2010年10月
2010年9月
2010年8月
2010年7月
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月
2010年2月
2010年1月
2009年12月
2009年11月
2009年10月
2009年9月
2009年8月
2009年7月
2009年6月
2009年5月
2009年4月
2009年3月
2009年2月
2009年1月
2008年12月
2008年11月
2008年10月
2008年9月
2008年8月
2008年7月
2008年6月
2008年5月
2008年4月
2008年3月
2008年2月
2008年1月
2007年12月
2007年11月
2007年10月
2007年9月
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2007年2月
2007年1月
2006年12月
2006年11月
2006年10月
2006年9月
2006年8月
2006年7月
2006年6月
2006年5月
2006年4月

ページトップへ

カレンダー
<< 2017年04月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
最新記事
韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか
トランプ暴走止めた司法と議会、米国の「三権分立」健在なり
若年層減少がもたらした過去最高の就職内定率
「右翼政商」森友学園に利用された?政治家と官僚たち
消費低迷の原因――可処分所得が勤労者で伸びず、高齢者では減少
最新コメント
人権(笑) それを言わね...
Posted by 言ってる人々の信頼
習主席は言っている事...
Posted by まる
何故海外の投資家は日...
Posted by 杉本 小太郎
両者の相殺をしないと...
Posted by Anonymous
大西良雄先生、 時事ネ...
Posted by サカグチ ブンケン
最新トラックバック
【記事】韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか
from QuonNetコミュニティ
【記事】トランプ暴走止めた司法と議会、米国の「三権分立」健在なり
from QuonNetコミュニティ
【記事】若年層減少がもたらした過去最高の就職内定率
from QuonNetコミュニティ
【記事】「右翼政商」森友学園に利用された?政治家と官僚たち
from QuonNetコミュニティ
【記事】消費低迷の原因――可処分所得が勤労者で伸びず、高齢者では減少
from QuonNetコミュニティ