
2010年9月 1日 12:17
2010年8月25日 12:39
2010年8月18日 09:38
2010年8月18日筆
8月11日、円の対ドルレートが、一時、昨年11月のドバイショック時の高値を10銭上回る84円72銭をつけました。これより高いレートは、15年前、1995年7月の史上最高値79円75銭しかありません。
市場関係者の間では、菅政権と日銀が無策のまま円高を放置すれば、年内には15年前の史上最高値を更新することは間違いないという見方がいまや支配的になっています。
アメリカは輸出倍増計画を打ち出し輸出に有利になるドル安を容認しています。EUはギリシャの債務危機から生じたユーロ安をテコに輸出を増やし景気回復を狙っています。韓国の景気回復もウォン安が助けになっています。どの国も自国通貨安をテコに輸出主導の景気回復を図る政策を選択しているのです。
自国通貨安を望むアメリカやEUは、「日本の円安政策を容認しない」という包囲網を築き、円に対して独歩高を強要しているかのように思えます。

経常黒字、輸出依存度からみて、円が独歩高になる理由はない
為替レートを決定する要因はいくつかありますが、その要因の第一は国際収支の入超、出超、とりわけ経常収支(貿易サービス収支+所得収支)の黒字、赤字の規模です。この要因を見る限り、円が独歩高になる理由を見出せません。
経常赤字国は通貨安、経常黒字国は通貨高という図式から言えば、世界最大の経常赤字国であるアメリカがドルの単独安になっても不思議ではありません。しかし、通貨が高くなるはずの経常黒字国は日本のほかに中国、ドイツ、韓国など多数あります。しかし、円は対ドルだけではなく、対人民元、対ユーロ、対ウォンいずれの通貨に対しても高くなっており、円の独歩高状態です。
経常黒字の規模は、中国は2971億ドル、ドイツは1656億ドルと日本の1415億ドルを上回ります(いずれも2009年)。上表に見るように、中国、韓国、ドイツのGDPに占める経常黒字比率は日本よりはるかに高いのです。経常黒字の規模が426億ドルと小さい韓国はさておき、日本が中国やドイツより通貨高である理由は経常収支面からは見出せません。
中国とドイツが日本より通貨安である理由は他にあります。まず、世界最大の経常黒字国の中国の為替制度は、つい最近まで米ドルリンク(連動)制でした。円が対ドルで高くなれば、円は対人民元でも自動的に円高になる仕組みでした。人民元は6月、アメリカの人民元切り上げ圧力を受けて人民元を弾力化し、変動幅付きフロート制に戻しました。しかし、フロート(変動)制とは名ばかりで、中国当局の、人民元高を抑制する相場管理の姿勢に変わりはありません。
ドイツは、ギリシャの債務危機以降の大幅なユーロ安に便乗して輸出を大幅に増加させ、2010年4~6月期の実質成長率は年率2.2%とユーロ圏では群を抜いた高さになりました。通貨がマルクのままであればドイツ経済はマルク高に悩まされていたに違いありません。ドイツは共通通貨ユーロの恩恵を満喫しているのです。
日本より経常黒字額も経常収支比率も大きい中国、ドイツが通貨安の恩恵を得ているのに、日本が独歩高を迫られているのは理不尽だと言えます。ちなみに日本の輸出依存度(輸出総額÷名目GDP)は上表にあるように、アメリカに次いで低いのです。日本の輸出依存度は15%台ですが、中国は約37%、ドイツ、韓国の輸出依存度に至っては40%を越えています。彼らが輸出主導の旗を降ろしたなど聞いたことがありません。
日本は、輸出の減少による景気後退を避けるために円高阻止政策(円安転換政策)を欧米に遠慮せずにやるべきでしょう。経常収支や貿易依存度から言って、円高阻止策を遠慮する必要はまったくないからです。
「デフレと円高の悪循環」を断ち切るとき
円独歩高をもたらしている理由として無視できない要因は、インフレ率格差です。上表のインフレ率は、2000年末の消費者物価水準を100として2009年末の消費者物価水準と比較したものです。日本だけ100を下回り、9年平均で-0.26%のデフレ状態にあります。他の米、独、中、韓のインフレ率は115~132と上昇し、9年間平均で消費者物価は1.7%~3.6%の上昇率を示し、緩やかなインフレ状態にありました。
物価の下落は貨幣価値の上昇を意味し、物価の上昇は貨幣価値の下落を意味します。これを対外通貨との関係で言いますと、例えばアメリカの物価上昇はドル安をもたらし、日本の物価下落が円高をもたらすことになります。中長期的に見れば、内外の物価上昇率格差が為替レートを決めるというもう一つの為替レート決定方式からいえば、日本は世界の中でも殆ど唯一デフレ状態を続けている国ですから、円が独歩高になっても仕方がないということになります。
日本がデフレ状態を続けているために、円の貨幣価値が高まり円高をもたらしました。その円高が国内の所得減と物価下落(デフレ)に拍車を掛けることになります。
円高によってコスト競争力を奪われた輸出企業は、設備を海外移転せざるを得ません。設備の海外移転は国内投資を縮小させ国内の投資需要を減殺します。さらに円高は、円換算の海外賃金を下落させ競合する国内賃金の下落をもたらします。この賃金の下落が所得の減少、ひいては個人消費の減少につながります。もう一つ、円高が輸入物価の下落をもたらし、それが国内販売価格を下落させ、デフレを深化させるというルートもあります。
こうした円高が進めばデフレを招き、そのデフレが円高をもたらすという「円高とデフレ」の悪循環を早急に断ち切らなければなりません。発表されたばかりの2010年4~6月期名目GDP速報値は年率で-3.7%(前期比-0.9%)となりました。デフレが再びぶり返す形になっています。円高を止めなければ7-9月期以降の名目GDPは連続してマイナスを記録する恐れがあります。
財務省はドル買い介入、日銀は追加緩和を実施せよ
政府は「景気は着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつある」(8月月例報告)と言い、日銀は「国内経済は想定に沿って回復傾向をたどると判断している」(8月日銀総裁談話)と言って、実質GDP(数量ベース)での景気判断を繰り返し、名目GDP(価格ベース)のマイナスを意図的に見過ごしているようです。
しかし、政府、日銀は、4~6月期名目GDPの大幅なマイナスを認知し、デフレを食い止めるための断固とした円高阻止策に取り組むべきです。為替市場の投機筋は、日本政府と日銀が円高阻止の意思も策もないと踏んでいるから、安心して円買い(円高)を進めているのです。政府・日銀は、この投機筋の思惑を断固として打ち砕くべきです。
円高阻止の方法は、二つあります。一つは、財務省のドル買い介入によるドルの押し上げ(円の押し下げ=円安)です。ドルの大量買い上げは円の大量散布をもたらし、金融の量的緩和という副次効果を生み、金利を引き下げます。
もう一つは、日銀による新型オペの拡充、あるいは中長期国債買い入れによる量的緩和の強化です。この量的緩和は中期金利、長期金利の引き下げに寄与するはずです。FRBが住宅ローン担保証券などの償還金を2年物から10年物国債の購入に当て中長期金利の引き下げを行う量的緩和に踏み切ったことに対する対抗策にもなります。
いずれの方法も円金利の低下をもたらします。その結果、ドル金利の下落によって縮小してきた円・ドルの金利差(4月以降、金利差は2.6%から1.6%に縮小)を再び広げ、ドル金利の魅力が増し円売りドル買いにつながり、円高を防止する力になります。善は急げ、です。
2010年8月 4日 16:14

2010年7月29日 09:24
