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大西良雄ニュースの背後を読む

2018年4月23日 14:12

財務官僚の弱体化で財政再建が絶望的になる恐れ

(2018年4月23日筆)

 財務省では森友文書の改ざんで事務方ナンバー2の佐川国税庁長官、女性記者へのセクハラでナンバー1の福田事務次官の首が飛んだ。この後、文書改ざんをめぐる財務省の調査、森友学園への国有地払下げをめぐる大阪地検特捜部の捜査が終わり、新たな財務官僚の処分が発表されるに違いない。

 財務官僚の不始末を糾弾するのはたやすいが、財務官僚は官庁の中で唯一、世界最悪の日本の財政状態を心配している官僚だ。この財務官僚の力が弱体化すれば予算は政治家たちのつかみ取り、歳出膨張に歯止めがかからず財政再建は絶望的になる恐れがある。海外投資家も日本の金融機関も日本国債を敬遠、買い支えるのは日銀だけとなり、日本財政の信用は失墜することになる。


麻生財務相辞任より財務官僚の弱体化のほうが影響深刻

 佐川氏、福田氏の任命責任、財務官僚の監督責任を問われ、麻生財務大臣まで辞任すれば財務省は完全崩壊すると心配する向きもあるが、財政再建にとって麻生氏はさほど重要な存在ではない。

 麻生氏は一見、財政再建に強い使命感を持つ財務官僚の味方に見える。しかし実際は、歳入の足枷になる消費増税先送りや軽減減税率導入を最終的に容認、さらに補正予算を乱発するなど歳出抑制には腰が引けている。頼りにするは日銀の国債購入と国債のゼロ金利政策という財務大臣という風に見える。

 そして麻生氏は2020年度基礎的財政収支の黒字化という国際公約を反省もなく放擲した。基礎的収支黒字化は2025年度へ5年先送りする方針のようだ。だが2025年度でも黒字化が実現できると思っている識者は少ない。

 だいいち、2025年度には安倍総理も麻生財務相もその座にはない。麻生氏は財政再建などうでもよいと思っている安倍総理と同類なのだ。財務官僚たちは、部下に責任を取らせ自分は責任を逃れる麻生氏、財政再建は見せかけだけという財務大臣など辞めてもらって結構と内心思っているのではないか。


2019年度本予算は消費増税対応の景気対策込みで100兆円突破

 それはさておき、7月の定期人事が終われば財務官僚は2019年度予算の編成に取り組むことになる。この予算編成は2019年10月の消費税率の2%引き上げを控え、財政再建にとってことのほか重要な予算編成になる。

 安倍総理はこの2月、関係閣僚に消費増税に伴う景気後退に備えた景気対策の検討を指示した。安倍総理には14年4月の3%消費増税時の景気対策(2013年度補正予算5.5兆円)が小さ過ぎ消費の反動減を補えなかったという後悔から対策規模をこれよりさらに大きくしたい、という意向があるという。

 しかも、その景気対策を補正予算として打つのではなく、2019年度の本予算に組み込んで打つという。5.5兆円以上の景気対策を本予算に組み込めば、歳出削減がなければ、2019年度の本予算は103兆円を上回ることになる。(2018年度の本予算97.7兆円に景気対策を上乗せして計算。)

 本予算と補正予算合わせた決算ベースの歳出総額の最大はリーマンショック後の2009年度の101兆円だが、これを2019年度は軽く上回る。

 消費税2%引き上げによって財源が増えるというが、その増収効果は約5兆円強にすぎず5.5兆円以上の本予算上乗せ分を下回り、財源には足りない。しかも期待の消費増税による増収分は、その使途がすでに変更されている。


膨らんだ歳出は常態化、無責任な財政運営続けば市場の反乱も

 増収分5兆円強のうち1兆円は「税と社会保障の一体改革」当時からの約束で社会保障の充実に充てることが決まっている。財政赤字の削減に充てるはずだった残り4兆円のうち1.7兆円は新たに教育の無償化の財源となった。軽減税率導入による税収減1兆円の手当てもまだ完全についていない。

 社会保障の充実と教育の無償化を合わせ2.7兆円は恒常的な歳出になる。加えて景気対策としていったん本予算に計上された歳出は既得権益化するのが民主主義の悪弊だ。安倍総理がトランプ大統領の取引外交に屈し、防衛兵器の追加購入や農畜産物輸入の拡大に対応する予算計上を迫られる懸念も残る。

 安倍政権は2020年度も東京五輪後の景気後退に備えた景気対策込みの本予算を組むという。103兆円にも膨らんだ本予算が常態化する可能性が高く、その削減は容易ではない。

 安倍総理と麻生財務大臣は6月に作成される経済運営の「骨太方針」でどのような絵を描くのか。恒常的な歳出の膨張にどのように歯止めを掛けるのか、不確かな成長下、税収の安定的拡大ができるのか、基礎的財政収支の黒字化はいつになるのか、が問われる。

 9月の総裁選挙で3選を実現、安倍総理続投となっても任期は2021年9月までだ。在任中だけよければいいという無責任な財政運営になっては困る。財務官僚が弱体化した現在、安倍政権による財政再建軽視の姿勢がその「骨太方針」に現れれば、国内外の金融市場のプレーヤーたちが反乱を起こす可能性がある。

 そうなると市場では日本国債が売られ長期金利が急上昇、国債利払いの急増から財政破たんが現実のものとなる。これを防ぐには投資家に売られた国債を日銀が買い続けるほかない。そうなると量的緩和の出口がなくなってしまい、日銀はインフレ転換時の引き締め手段を失うことになる。

2018年4月 9日 13:36

安倍総理はトランプの「取引外交」に対峙できるか

(2018年4月9日筆)

 安倍総理は「日米はこれまでもこれからも100%共にある」「日米同盟はかつてないほど強固だ」と繰り返し述べてきた。米国民の半分以下の支持しかなく、何をしでかすか分からないトランプ大統領を相手にそんなことを言って「安倍総理、大丈夫ですか」と心配していた国民も少なくなかっただろう。


突然の米朝首脳会談、鉄鋼の対日制裁関税と2度の「裏切り」

 その国民の心配が現実のものとなった。3月9日、安倍総理と歩調を合わせ北朝鮮とは「対話のための対話はしない」と言っていたトランプ米大統領が突如、金正恩委員長と初の米朝首脳会談を5月に開催すると表明した。安倍総理がこれを知ったのは発表の直前だったようだ。

 さらに3月22日、米通商法301条(不公正な貿易慣行への制裁)に基づく中国への制裁関税を発表した日、トランプ大統領は日本にも言及した。「日本の安倍首相らは『こんな長い間、米国をうまく騙せたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」とツイッターに書いたのだ。

 同じ日、トランプ氏は米通商拡大法232条(米国の安全保障を脅かす恐れに対する制裁)による鉄鋼・アルミの関税引き上げを発動した。その対象国として残ったのは中国、ロシア、日本の3か国だった。明らかに米国の潜在敵国である中国、ロシアならわかるが、米国と「かつてないほど強固な同盟関係にある」はずの日本が制裁関税の対象国に残ったのだ。

 米朝首脳会談の発表直前まで安倍総理は「対話のための対話をしない」という盟約を違えることの説明を米国から受けられなかったという。鉄鋼・アルミ関税では中国、ロシアと同じ制裁扱いという仕打ちをトランプ氏から受けた。

 安倍総理は「100%共にある」と信頼したはずのトランプ大統領に2度にわたって裏切られた格好だ。


在韓米軍撤退、鉄鋼制裁関税で脅し通商で利をとったトランプ

 ただトランプ大統領は、安全保障と通商の二つの外交手段を絡めた二国間の取引(ディール)を重視、手段を選ばず自ら支持者のための「アメリカ第一」を貫く。知日派のジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授が「トランプ氏は同盟関係を重視する第2次大戦後の歴代大統領とは大きく異なる。明確な戦略より取引を重視する」(「朝日デジタル」2017年10月27日)と評した異形の大統領であることはよく知られている。

 トランプ氏は「取引」のためなら安全保障上の恐れがない同盟国でも容赦がない。韓国との米韓FTAの再交渉がその好例だ。トランプ氏は北朝鮮と緊張関係がある同盟国・韓国に対して、①在韓米軍の撤退をほのめかす、②鉄鋼、アルミ制裁関税の適用除外を餌にするなどして、韓国側から米国基準のまま米車の韓国内販売枠を倍増させるなどの譲歩を引き出した。再交渉の付随文書で韓国側に通貨安誘導を封じる「為替条項」も飲ませたという。

 しかもトランプ氏はFTA再交渉の最終合意を先送りした。合意先送りは、韓国の文在寅大統領が南北首脳会談で北朝鮮包囲網を崩す融和策に踏み切るのを牽制するためだという。トランプ氏には米韓同盟すら取引材料なのだ。


安倍総理もトランプ「取引外交」の餌食になるのか 

 4月17日、18日、マイアミのトランプ大統領の別荘で6度目となる日米首脳会談が開かれるが、ゴルフでのスキンシップを過信すると安倍総理は韓国の文大統領と同様、トランプ大統領の「取引外交」の餌食になる恐れがある。

 3月25日の「ワシントン共同」によると、河野外相が米朝首脳会談開催の前提条件として「日本が射程に入る中距離弾道ミサイルの放棄と日本人拉致問題の解決を北朝鮮に追加で約束させるよう要請した」と報じている。これに対して北朝鮮の実質交渉担当者と見られるポンペオCIA長官(次期国務長官)は「現実性が落ちる」と河野氏の要請を一蹴したという報道もある。

 首脳会談で安倍総理も中距離弾道ミサイルの廃棄や日本人拉致問題の解決をトランプ氏に持ち掛けるのだろう。しかし米国にとって米朝交渉の最優先は「北朝鮮の核と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の米国への脅威除去」だ。米国への脅威にならない中距離弾道ミサイルの廃棄や安倍総理自ら北朝鮮と交渉すべき問題である日本人拉致問題などお門違いだろう。

 それよりトランプ氏にとって重要なのは対日貿易赤字対策ではないか。韓国、中国に続いて日本との2国間通商交渉で成果を上げればトランプ氏は支持率を回復させることができる。苦戦が予想されている「中間選挙」にも勝つことができる。だからこそわざわざ「米国は長い間、安倍総理にうまく騙されてきた」とツイートした。


自動車、農畜産物の市場開放、最先端兵器購入を迫られる

 今回のトランプ・安倍首脳会談では取り上げられなくても、近い将来、中国に対するのと同様、不公正取引の是正を迫る通商法301条の適用をちらつかせ自動車や農畜産市場の開放に焦点を当てた日米の2か国間FTA(自由貿易協定)を迫られるに違いない。

 対日貿易赤字解消という名目で弾道ミサイル防衛システムやステルス戦闘機など米国製の最先端兵器の購入を迫ってくることもあるだろう。韓国に対するのと同様、日本の円安誘導を封じる「為替条項」の設定などが取り上げられる可能性もある。

 トランプ大統領のほうには対日取引材料は豊富にある。鉄鋼、アルミの制裁関税からの適用除外という餌だけでなく、中距離弾道ミサイルの放棄、日本人拉致問題など日本が要請する対北朝鮮対策すらトランプの取引材料になり得る。

 これに対し、安倍総理の側にトランプ氏が持つ取引材料に対抗できる取引材料がどれぐらいあるのか。制裁に対する対抗措置もとらず、スキンシップにだけ頼ってトランプ大統領からお目こぼしを頂戴するだけの安倍外交ではトランプの「ディール外交」に押しまくられるだけになる。

2018年3月23日 12:11

日米株価が再び急落、安倍内閣は支持率を回復できるか

(2018年3月23日筆)

 安倍内閣の支持率が再び急落した。財務省が森友学園への国有地格安払下げに関する公文書(決裁文書)改ざんを公式に認めた後に実施された4社の緊急世論調査では内閣支持率は共同通信を除き軒並み10%以上下落、不支持率が支持率を上回った。朝日調査では第2次安倍内閣発足以来の最低支持率となった。

 日経新聞3月21日電子版は、「過去の内閣支持率と日経平均との関係を振り返ると、40%を下回ると株価が下がる傾向がある」として「安倍政権下では15年7月と17年7月に40%割れとなったが、日経平均はそれぞれ直近高値から18%、4%が下落した」という興味深い分析を寄せている。

 菅官房長官は3月19日、支持率急落を問われ「支持率は高い時もあれば低い時もある」と意に介さぬ姿勢を示した。昨年17年7月の支持率急落時と同様、時が過ぎ国民が事件追及に飽きれば支持率は回復するとタカをくくっているのだろうが、今回は支持率40%を回復するのは簡単ではないだろう。


騙された国民が政権に深い不信感、安倍シンパのメディアにも変化

 第一に、国会での議論や選挙での判断の基礎になるデータや公文書が政府機関によって改ざんされ、国民は騙されたと感じ、政府に強い不信感を持ってしまった。今後、安倍総理、財務省などが森友学園への国有地格安払下げに関してどのような弁明を行っても、国民は容易にそれを信じないだろう。

 これまでも、安倍政権のもとで防衛省・自衛隊による南スーダン国連平和維持活動の日報隠蔽、厚労省による裁量労働データの不正作成などの事件が起きている。そのつど安倍政権は容易に事実を認めず担当大臣の責任を問うことがなかった。今回の決裁文書改ざんが、総理はじめ政府、官僚の言葉を国民が信じず、大いに疑い始める決定打となったようだ。

 第二に、読売新聞、産経新聞など安倍政権への支持、擁護の姿勢に終始していたメディアが朝日新聞による3月2日スクープ記事「森友文書、書き換えの疑い」以降、政府批判へ姿勢をやや変化させたことだ。

 安倍総理シンパのメディアといえどもファクト(事実)の確認は生命線だ。その生命線であるファクトが財務省によって歪められた。安倍総理、麻生財務大臣などは改ざんされた偽りのファクト(公文書)をベースに強弁してきた。政権は森友学園への国有地払下げ疑惑に関して味方のメディアも欺いたことになるわけで、彼らの怒りは大きかったのではないか。


安倍総理と親密な右派議員がひいきの引き倒し、足を引っ張る

 第三に、安倍総理を取り巻く自民党の政治家たちの胡散臭さに気づき、国民の多くがそれら政治家と親密な安倍総理にも疑いの目を向けて始めたことだ。

 まず総理の盟友・麻生財務大臣だが、自らの任命責任、監督責任を棚に上げ公文書改ざんの責任を理財局の一部、あるいは佐川宣寿前理財局長に押し付けようとした。傲慢この上ない麻生氏の記者会見での態度と合わせ反発が強まった。

 さらに、森友文書改ざんをめぐる集中審議では、自民党が安倍総理に極めて近い右派議員らによる一方的な官僚叩き(ひいては露骨な安倍擁護)に終始したことだ。右派議員らは誰の指示で質問者に選ばれたのか、知りたいところだ。

 加えて、前川喜平・前文部事務次官の中学校での授業に対する文科省と政治家の介入事件だ。詳細には触れないが、加計学園の獣医学部新設をめぐって「行政が歪められた」と安倍政権を批判した前川氏の言論を封じ込めようとする異常な政治介入といえる。

 文科省に質問という形で圧力をかけた自民党議員は「安倍総理の愛弟子」を自認、これを文科省に取り次いだ議員(自民党文科部会長)も総理出身派閥に属する右派議員だ。この事件でも安倍総理とその周辺の政治体質が現れた。

 自民党の伊吹文明・元衆院議長は「非常に自民党は傲慢だと。役人に対して国会議員になれば何でもできるという風に思っているのが、支持率が下がってきた原因だ」(朝日新聞3月23日朝刊)と語った。自民党の内部からこうした声が噴出し始めており、安倍政権を支える土台が崩れ始めている。


折悪しくNYダウも再暴落、安倍・トランプ「似た者政権」に咎め

 この記事を書いている最中、NYダウが前日比724ドルの急落となったとの報に接した。トランプ米大統領は、中国からの1300品目、年500億ドルもの輸入製品に対する25%関税賦課を表明、米中貿易戦争への突入を懸念してNY株は再び暴落した。

 トランプ大統領は異論をはさむ閣僚や側近を排除する一方、自らを支持する一部の選挙民だけに政策奉仕する姿勢を崩さない異形の大統領だ。関税引き上げによって被害をこうむる大多数の米国消費者の声など簡単に無視する。こうしたトランプ施政に対し株式市場は再び反乱を始めたといってよい。

 安倍総理は「日米は100%共にある」といってトランプに必死に取り入ろうとしたが、米朝交渉開始のトランプ声明を安倍総理が知ったのは発表直前、事前相談はなかったという。さらに鉄鋼、アルミの輸入関税の適用対象から韓国、EUは外れたのに日本は対象外にならなかった。国民から安倍外交とはこの程度のものかという悪評価が出かねず、外交も支持率回復の決め手にはなるまい。

 安倍政権は取り巻きの政治家、共鳴者の意見だけを取り入れ、反対者を叩いて政策を強行してきた。トランプ大統領はフェイク(偽)ニュースをふりまいて異論、反対論を排除、一部の支持を取り付けてきた、両者の政治手法はよく似ているように思える。

 そうした権力者の政治手法が国民に嫌われ、支持率の急低下につながった。その咎めが日米とも株価急落という形で再び表面化してきているように思える。

2018年3月12日 12:23

痛ましい近畿財務局ノンキャリアA氏の自殺

(2018年3月12日筆)

 高級官僚の不始末に絡んで下級官僚が自殺するなど松本清張の小説に出てくる昭和30年代の話だと思っていた。だが、安倍総理夫人が関与したと疑われる森友学園への国有地格安払下げに関連して下級官僚からついに自殺者が出た。

 自殺したのは近畿財務局の下級官僚、いやノンキャリアだった。自殺した日は3月7日だったが、これが報じられた3月9日に佐川宣寿国税庁長官(前財務省理財局長)は突然辞任した。佐川氏本人は否定しているが、理財局傘下のかつて部下の自殺を知って長官を辞任したと思われても不思議ではない。


キャリアを行政実務で支えるノンキャリアの死

 清張の小説に出てくるような高級官僚はキャリア、下級官僚はノンキャリアと呼ばれる。キャリアは国家公務員総合職試験に合格した少数のエリートで、政策の企画・立案、調査・研究を職務とする。キャリア組は最終的には審議官、局長、事務次官にまで昇進することができる。佐川氏はもちろんキャリアだった。

 キャリアはしばしば国会議員や大臣に政策をレクチャーする。時には権力者に都合の良いデータを作成し提供する。裁量労働者の残業時間データで明らかになったが、安倍政権下では官僚によるこの種のデータ作成が目立つ。さらにキャリア国会で無能な大臣の背後に控えて国会答弁を支えているのも彼らだ。

 ノンキャリアは国家公務員一般職試験に合格し採用される。「定型的な事務を職務とする係員」で昇進しても本省では課長止まりの官僚だ。ノンキャリアはキャリアを行政実務面から支え、キャリアは優秀で忍耐強いノンキャリアの支えがなければ出世はおぼつかないとも言われている。

 3月7日、神戸の公務員宿舎で自殺したのは、近畿財務局のノンキャリア、上席国有財産管理官のA氏だ。親族によるとA氏は「真面目で自分に厳しい一方、他人を責めない人柄だった」(朝日新聞デジタル3月12日)という。人柄がしのばれ痛ましい限りだが、A氏はなぜ自殺しなければならなかったのか。遺書があったといわれるが未公開だから、その理由は今のところよくわからない。


「汚い仕事をした人はみんな異動した。自分だけが残された」

 ただ、週刊朝日取材班がA氏の故郷、岡山県内で行われた葬儀場で聞いた遺族の知人の話を伝えている。遺族の知人は「奥さんは「『どうしてこんなことになってしまったのか』「一人で抱え込んでしまって、ずっと休んでいた』『あんな担当になり、巻き込まれてしまった』と泣いていた」(AERA dot.2018年3月11日配信)と語っている。

 「あんな担当」とは森友学園との国有地払下げ交渉の担当だ。A氏は、森友との国有地払下げ交渉がほぼ終わっていた時期に前任者から引き継ぎ、上司の総括国有財産管理官に仕え文書の作成・管理など行政実務にあたっていたという。

 3月12日朝の「羽鳥慎一モーニングショー」は、A氏は「汚い仕事をした人はみんな異動になった。自分だけが残された」「自分の常識が壊された」と親族に語っていたと報じていた。

 大阪地検特捜部は、佐川氏の「森友との交渉記録は破棄した」とする国会発言に抗する市民等からの告発状を受理、公用文書毀棄、証拠隠滅、背任などの容疑で捜査に乗り出している。昨年2月の森友問題の表面化以降、異動から取り残されたA氏は局内あるいは対本省との対応、大阪地検の事情聴取などに追われ体調を崩し昨年秋から一時休職に追い込まれていたのではないか。


「天の声にやらされて」という天の声とは誰のことか

 A氏は朝日新聞がスクープした国有地売却の決裁文書「書き換え」にも携わっていたと思われる。同じ週刊朝日は「もしウチ(近畿財務局)が文書書き換えに関与したのなら当然、Aさんの名前が浮かびます。『天の声にやらされて、休職に追い込まれてしまったのか』とずっと噂になっていました」という近畿財務局関係者の声を伝えている。

 決裁済み文書の書き換え・改ざんなどノンキャリアA氏らの独自判断で行えるはずはないし、A氏らには決裁文書を書き換える動機もない。近畿財務局関係者がいうように「天の声」にやらされたと考えるのが普通だろう。

 では書き換えを指示した「天の声」とは誰なのか。近畿財務局上層部なのか本省の理財局幹部なのか、ずばり国会答弁で「行政文書はすべて破棄した」「森友と価格交渉はしていない」「政治家の関与はない」といい続けた佐川理財局長(当時)の指示なのか、それもいずれ明らかになるだろう。

 森友への国有地格安払下げは安倍総理夫人の昭恵氏が一時、名誉校長を務め、「安倍晋三記念小学校」と謳って寄付金集めが行われた小学校での事件である。書き換えを命じた「天の声」は、官僚レベルからさらにその上、政治権力からのものなのか。あるいは官僚が権力者の意向を慮ったのかあるいは忖度したのか。

 この点に関しては、佐川宣寿氏などこれに関わった財務官僚が「昭恵夫人の関与」や「安倍総理への忖度」について口を割らない限り、真相は闇に葬られるかもしれない。

 しかし、決済文書の書き換えに連座した財務省のキャリア、ノンキャリアは懲戒処分を受けることは確実だ。大阪地検の捜査の結果、刑事罰を受ける財務官僚が出てくる可能性もある。麻生財務大臣は、自らが懲戒処分を下し、いつか刑事処分を受けるかもしれない財務官僚を出した任命責任、監督責任を問われる。

 麻生氏は「自分は決裁文書の書き換えを知らなかった」といって辞任を強く拒むだろうが、与党内からも責任を問う声が湧き出ている。麻生氏が財務大臣辞任に追い込まれるのは避けられまい。麻生氏が辞任を余儀なくされれば、安倍総理は菅官房長官と並ぶ政権の双柱の一つを失うことになる。

 小生、ノンキャリアA氏の自死が無駄死に終わらないことを切に望みたい。

2018年2月26日 10:15

「そだねー」のカーリング娘が大人気

(2018年2月26日筆)

 平昌オリンピックに出場した北海道北見市のカーリング女子チーム「LS北見」の人気が沸騰している。最後の試合、3位決定戦でカーリング発祥国の英国に勝ち銅メダルを獲得、日本が獲得した4つの金メダルにもまさる感動を与えた。

 カーリング女子はリード・吉田夕梨花、セカンド・鈴木夕湖、サード・吉田知那美、スキップ・藤沢五月、そしてリザーブでキャプテンの本橋麻里を含め5人のチームだ。吉田夕梨花、知那美は姉妹、鈴木夕湖は姉妹の親戚、本橋麻里を含め4人は北見市常呂町の出身、藤沢五月は常呂町に近接する美山町の出身だ。

 彼女らが試合中に交わす北海道なまりの「そだねー」という合槌は流行語大賞間違いなしといわれている。ハーフタイムに彼女らが食べていた北見・老舗菓子店のチーズケーキ「赤いサイロ」は完売、注文殺到で生産が追い付かないという。


誰にでもできる、親しみやすいカーリングの魅力

 大人気の秘密は、カーリングという競技の親しみやすさにあるかもしれない。

 冬季五輪の主な競技は、選手がスキー、スケート、スノーボードの用具を強く巧みに使いこなしスピードや飛型、飛距離などを競う。鍛え挙げられた筋力、優れた体力、それに高度な技術が必要だ。誰でもできるというものではない。

 カーリングの道具は20キロのストーンとブラシだけだ。ストーンを氷上に滑らせブラシで掃いて誘導、40メートル先の円の中心近くに置くことを競う。スピードや飛躍力よりショットの正確さ、ブラシのスウィープ力が大切で誰にもできる緩いスポーツと思われ親しみやすい。

 実際はカーリングもまた、陸上選手に劣らない激しいトレーニング、3時間のスウィープに耐える体力と筋力、将棋や囲碁に匹敵する読み、乱れぬチームワークが求められる高度なスポーツだ。しかし外国選手の中には若いとは言えない選手も少なくない。小生も50歳ぐらいであったら挑戦してみたいと思った。


トップカーラーでなくとも「グッドカーラー」であれば

 加えてカーリング女子の選手が魅力に富んでいる。彼女たちは雪国出身のせいか色白で素肌が美しくかわいい。化粧も薄く、健康的で温かい人柄がうかがえる。スタイル、体型もほかの普通の日本人娘と変わるところがない。

 しかも競技中、地元丸出しの北海道なまりで会話し笑顔が絶えず、何としても勝たねばという悲壮感がない。

 スキップの藤沢選手は、昨年のカナダ選手権で現地のファンが敗れたチームの選手を指さし「トップカーラーではなかったが、グッドカーラーだね」といった言葉で気が楽になったという(朝日新聞2月25日朝刊)。「ライバルにも尊敬される善良で好感の持てる」選手がグッドカーラーだとすれば、藤沢選手らはそれを見事に実践して見せた。それが素晴らしい。


北見市、北見市民、地元企業にあげたい金メダル

 もう一つ、彼女たちが故郷の北見市や常呂町の人々に支えられて銅メダルに輝いたのも特筆すべきだ。北見市は小中高校の冬季授業にカーリングを取り入れている。国際規格のカーリング場「常呂カーリングホール」(公益団体所有)もある。オリンピック選手を輩出させる環境を北見市は備えている。

 そして北見市の地元企業・組織の熱い支援だ。吉田知那美選手は自動車販売等の「ネッツトヨタ北見」、藤沢選手は保険代理店「コンサルトジャパン」、吉田夕梨花選手は医療法人「美久会」、鈴木選手は「北見市体育協会」で働いている。いずれも北見市の会社、組織だ。以上の選手の就職先を含む18社が「LS北見」のスポンサーとなり遠征費など選手たちの競技費用を支えているという。

 故郷に帰り地元で働いている普通の娘たちが地元の支援を得てオリンピックという大舞台で活躍した。地域振興、地方創生が叫ばれて久しいが、カーリングというマイナーだが知れば知るほど親しみが増す競技を育て上げ、地域振興の一助とした北見市とその市民に金メダルをあげたい。

 小生、オリンピック期間中、最も長い時間、観戦した競技はカーリングだった。日本選手の試合は予選だけで男女合わせ18試合、一試合3時間以上かかる対戦もある。日本男女の全試合を見たわけではないが、40時間ぐらいは観戦したのではないか。

 小生、普段は午後10時までには就寝する72歳の老人だが、夜8時頃から始まるカーリング観戦のせいで就寝は12時近くになってしまった。しかしそれも、ほんとうにうれしい、愉快な夜更かしになった。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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