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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年7月18日 10:23

「支持なし(無党派)層」が65%強 ――安倍一強の受け皿を築く時

(2017年7月18日筆)

 安倍内閣の支持率低下が止まらない。都議会選後の7月9日までに実施された世論調査では安倍内閣の支持率は読売新聞36%、NHK35%、朝日新聞33%,NNN(日本テレビ)31.9%と政権維持の危機ラインとされる30%に急接近した。不支持率も軒並み50%前後に急上昇した。


ついに危機ラインの30%を割り込んだ内閣支持率

 7月7日~10日に実施された時事通信による最新の世論調査では内閣支持率は29.9%とついに危機ラインの30%を割り込んだ。その後、15日~16日の実施されたANN調査でも内閣支持率29.2%と割り込んでいる(下表)。安倍内閣の支持率は戦後最低となったトランプ大統領の直近の支持率(36%)をも下回った。この調査結果に安倍内閣は震撼したに違いない。

2017年7月世論調査で安倍内閣の支持率が大幅低下、30%割れも
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 このうち時事通信の世論調査は個別面接方式で読売、朝日などの電話調査とは違い精度が高いといわれている。その時事調査の7月世論調査によると、2か月前の5月調査に比べ「支持なし(無党派)層」がさらに増加、実に65.3%に達している。「支持なし層」は歴史的な高率、大勢力となった。

 この2カ月で、通常国会で繰り返された森友学園、加計学園、共謀罪をめぐる安倍総理と自民党による反対論敵視、異論無視の強引な国会運営に嫌悪感が高まり自民支持層ですら安倍政権に愛想を尽かしたようだ。自民党のコア支持層の20%~30%が「支持なし層」に転じたとみられる(下表)。

自民支持が急落、支持なし(無党派)層が急増―時事調査では支持なしが65%超
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「とりあえずの受け皿」を得て「支持なし層」の山が動いた

 7月2日の東京都議選では「都民ファースト」という安倍一強に対する「とりあえずの受け皿」を得てこの巨大化した「支持なし層」の山が動いた。その結果、自民党は歴史的惨敗を喫した。

 今回の都議選は国政の代理選挙として戦われた感がある。その党派別投票数(下表)をつぶさに見ると、今後の国政選挙をめぐる自民党に対抗する「受け皿」勢力への期待が浮かび上がる。

都議選・得票大幅減の自民・維新と民進―受け皿は都民ファと無所属、共産
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 今回の都議選では自民党とその補完勢力の維新が約69万票減らすと同時にかつての受け皿政党・民進党が30万票減らした。国会の与党の主軸と野党の主軸がともに得票数を減らした。その一方で「とりあえずの受け皿」となった「都民ファースト」とそれに近い「無所属」が214万票も得票を増やした。

 都民ファーストなど「とりあえずの受け皿」勢力は、投票率上昇に伴う得票総数の増加分(106万票)と自民・維新、民進の既成与野党の得票減約100万票のすべてを吸収し大勝利したことになる。ちなみに投票率は13年6月選挙の43.50%から51.28%へ上昇した。


「受け皿」は安倍総理の国権優先、分配軽視に対抗する旗を

 与野党の既成政党が大敗、できたばかりの新党が地滑り的勝利を収める構図は、6月に行われたフランスの国民議会選挙に酷似している。選挙直前に創立されたマクロン新大統領の新党「共和国前進!」は既成政党である共和党、社会党を打ち負かし、577議席中308議席を獲得、過半数を大きく上回った。対して与党・社会党系は283議席から30議席へ泡沫政党並みに転げ落ちた。

 「共和国前進!」の候補者は既成政党からの鞍替え組も少なくなかったが中心は政治経験の少ない新人たちだった。小池百合子新都知事の「都民ファースト」にも民進党、自民党からの鞍替え候補者が含まれていたが多くは選挙経験のない新人だった。マクロンは社会党、小池氏は自民党、いずれも与党を飛び出し新党をつくった。国政と地方の違いはあれ、既成政党を忌避した点はよく似ている。

 日本の最大勢力である「支持なし層」は、国政レベルでも手垢がついていない清新な政治家、政党を求めている。都議選の投票結果はそれを明らかにした。こうした清新な「受け皿」を求める「支持なし層」の期待を取り込む与野党再編が始まると予想される。

 その「受け皿」の旗は、安倍総理とその周辺による歴史修正主義、国権・軍事優先、成長至上・分配軽視、金融放漫・財政均衡無視に厳しく対抗する旗になるはずだ。それを新保守リベラルと呼ぶか、中道リベラルと呼ぶか。いずれにせよ、遅くとも来年12月には衆院選挙が実施される。それに向け、かつての日本新党や新党さきがけのような清新な「受け皿」が誕生することを「支持なし層」の一員として小生は大いに期待する。

2017年7月 3日 12:20

安倍一強への嫌悪感が噴出――都議選で自民が歴史的惨敗

(2017年7月3日筆)

 東京都議選挙で自民党が現有57議席から34議席減らし過去最低だった38議席を大きく下回る23議席にとどまった。自民党は歴史的な惨敗を喫した。一方、小池都知事の「都民ファーストの会」は50候補中49候補が当選、無所属候補の追加公認を含め55議席を占め都議会第一党となった。


強引な国会運営と後進国顔負けの縁故主義に不満が積み上がり

 この結果をもって、「古い議会を新しく」と訴えた都民ファーストの会に「風が吹いた」と分析するのは誤りだ。都民の安倍政権に対する嫌悪感がここへきて一挙に表面化、「安倍一強」に逆風が吹きすさび自民党が敗れたといってよい。

 改めて言うまでもないが、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪をめぐって強引な国政運営が繰り返された。いずれも国論を2分するテーマだったが、反対意見は安倍政権に完全無視された。こうした不満が選挙民に積み上がっていた。

 さらに、後進国顔負けの縁故主義(ネポティズム)への嫌悪だ。まず森友学園、加計学園をめぐる安倍総理による支持者、友人への「えこひいき疑惑」がある。さらに総理側近への優遇も反感を集めた。総理は度重なる失態にもかかわらず稲田防衛相を罷免しない、加計学園「選定疑惑」の萩生田官房副長官、加計学園からの闇献金疑惑の下村幹事長代行(元文科大臣)を断罪しない。稲田、萩生田、下村の三氏は総理の側近中の側近だ。「側近優遇」も目に余ると映った。


「安倍総理の他に代わる人」はとりあえず小池百合子氏

 前回も述べたが安倍内閣の支持率が高かった最大の理由は「他に適当な人がいない」「他に代わる人がいない」というものだった。選挙民は、「他に適当な人」「他に代わる人」が出てくれば安倍総理を取り換えることも厭わないという姿勢で一貫していた。量的緩和を含むアベノミクスはあまり評価されていない。

 「他に代わる人」は野党第一党の民進党であるべきだったが、民進党から魅力的なリーダーが出ない。そればかりか相変わらず内紛が絶えない。その弱みを突いて安倍総理は民進党(旧民主党政権)に対する「こきおろし・いびり」作戦が展開してきた。それが奏功して民進党は「他に適当な人」になれなかった。

 だが、今回の都議会選挙では都政の小池都知事が国政の民進党に代わって「他に代わる人」「他に適当な人」になった。都政と国政は異なるし、選挙民は小池都知事や都政ファーストの会の政治能力に多少疑問を抱いている。しかし、安倍総理への批判の受け皿にとりあえずなってもらいたいと思ったに違いない。


次の衆院選でも自民党が危うい―考えられる3つの仮説

 こうした中、来年12月の任期切れまでに予想される次の衆院選に対する影響を考えると、都議選の結果にはいくつか気になる点がある。ひとつは公明党が自民党と離れ都民ファーストと組んで都議選を戦った結果のことだ。

 これまで公明党票は当選ラインにある自民党候補者を支える役割を果たしてきたが、今回はこれがなく当選ラインすれすれの自民党候補者の落選につながった。公明党票のかさ上げを失った自民党の議席数を知る試金石になった。

 もうひとつは日本共産党が大健闘したことだ。共産党は複数選出区で最終議席をめぐって公明票の支持を失った自民党と競り合い、競り勝って19議席(2議席増)を獲得、自民党の23議席に次ぐ勢力になった。都議会では共産党は自民党と肩を並べる政党になったのだ。

 都民はよく見ていた。安倍総理の傲慢な国政運営に最も精密で、厳しい批判を投げかけていたのは共産党だった。それへの共感が議席増につながったようだ。朝日新聞の出口調査によると無党派層の投票先は都民ファースト35%、共産党17%、自民党13%、民進党10%、公明党8%だった。無党派層では共産党と民進党への投票率が自民党と公明党を上回った。

 民進党は現有7議席を2議席減らし5議席になった。ただ民進党から立候補予定だった15名が「都民ファーストの会」から公認ないし推薦を受けて立候補、そのほとんどが当選している。民進党という劣化した政党名を衣替えするだけで旧民進党議員が当選できたという点にも注意が必要だ。

 次の衆院選を占ううえで、3つの仮説を考えてみた。次の総選挙で、まず都民ファーストの会あるいはかつての日本新党のような新党が立ち上がり民進党と選挙協力(あるいは民進党員が新党に移籍)すれば、結果はどうなるか。第2に、新党とではなく民進党と共産党が選挙協力して戦えば、どうなるか。第3に国政レベルでも公明党票が自立、自民党議席の下支えを放棄したら、どうなるのか。

 以上3つの仮説が実現したら、いずれの場合でも自民党議席の大幅な減少は間違いない。場合によっては自民党過半数割れをもたらしかねない。そうなると安倍3選はあるのか、アベノミクスは続けられるのか、安倍改憲はできるのかが大いに問われる。

 どうやら都議選は、「安倍一強」に絡めとられた異様な安定政権の今後を揺るがす結果となったようだ。

2017年6月19日 15:26

安倍総理を信頼できない人が増え、内閣支持率が急落

(2017年6月19日筆)

 安倍総理が自画自賛する高い支持率に異変が起きたのは5月26日~28日に実施された北海道新聞の「全道世論調査」からだった。4月の前回調査に比べ支持率が12%も急落、41%となった。一方、不支持率が12%急騰、57%となり支持率を16%も上回る結果となった。

 北海道新聞は「組織犯罪処罰法改正案(注・いわゆる共謀罪法案)の衆院採決を強行したことや学校法人・加計学園の獣医学部新設をめぐる問題が影響したとみられる」と支持率急落の原因を解説した(6月1日付)。


内閣支持率が急落、支持が不支持を上回った世論調査も

 伝統的にリベラル色が強い北海道での支持率急落だから...と、タカをくくっていた与党関係者もいたに違いない。しかし、共謀罪法案が予算委員会採決を省略し参院本会議で強行採決された後、6月16日、17日から18日にかけて実施された各種の世論調査でも安倍内閣の支持率は急落を続けた(下表)。

安倍内閣の支持率――10%の急落(6月16~18日世論調査、最下欄は5月比下落率)
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ほかにNNN(日テレ)=支持39.8%(- 6.3)、不支持41.8%(+5.4)

 最大部数を誇る読売新聞では5月調査に比べ支持率は12%下落、逆に不支持率は13%も上昇した。読売新聞は安倍総理が自らの憲法9条での自衛隊の明記発言をめぐって野党に問われ「詳しくは熟読してほしい」と述べた新聞だ。安倍シンパの新聞として名高い読売新聞の世論調査で支持率が急落したのだ。

 支持率が1カ月で10%以上急落すれば黄信号、支持率と不支持率が逆転し支持率が30%を下回れば政権に赤信号が灯ったとされる。発行部数3位の毎日新聞の世論調査では内閣の不支持率が支持率を上回り、支持率は36%まで下がった。赤信号寸前だ。

 安倍内閣に批判的な毎日新聞の世論調査とばかり言ってはおれない。安倍総理に近いとされる読売新聞系列の日本テレビ(NNN)でも不支持率が支持率を上回り、支持率は40%を下回った。


今回は「首相が信頼できないから」が不支持理由のトップ

 第2次安倍内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのは2015年夏から秋にかけての一回だけだ。この時は集団自衛権など憲法解釈や安全保障という政策をめぐる反対論の高まりが不支持率の急騰となった。

 今回も国民の人権やプライバシーに関わる共謀罪法案という政策の賛否で世論が2分され支持率が急落した面はあるが、それとは別に安倍総理への信頼の大きな低下という新たな原因が付け加わった。これが安倍内閣の今後の支持率に影響を与えるに違いない。

 日経新聞も安倍政権から比較的中立の姿勢をとるメディアだが、その世論調査によると内閣不支持の理由の第1位は「政府や党の運営の仕方が悪い」だった。公認権をテコに異論を許さない党内運営、官僚を「忖度の塊」にする官邸の強引な行政運営、さらに安保法制に続く共謀罪をめぐる強引な国会運営などに不安を感じる国民が増えているのだろう。

 さらに、読売新聞の調査では「首相が信頼できないから」という理由が48%と内閣を支持しない理由のトップになった。第2次安倍内閣発足以降、最も高いい水準になったという。9日~12日に行われた時事通信(中立的メディア)の世論調査でも内閣を支持しない理由のトップは「首相が信頼できない」だった。

 総理夫人が名誉校長を務めた森友学園への国有地8億円値引き疑惑、総理「腹心の友」が経営する加計学園の獣医学部新設をめぐる「総理ご指示」疑惑が総理への信頼急低下に大きく影響したと思われる。


「他に代わる人」がいれば威張る、おごる安倍総理は要らない?

 安倍総理への信頼低下に関して、中谷元・前防衛大臣がうまい表現をしている。中谷氏は「もりそば(森友学園)、かけそば(加計学園)、忖度したのかという問題がある。政治に公正性がなければ国民の理解は得らえれない」と述べた(朝日新聞6月3日朝刊)。

 そのうえで、中谷氏は安倍総理に「あいうえお」の5文字を贈りたいといった。「あ」は焦らず、「い」は威張らず、「う」は浮かれず、「え」はえこひいきせず、「お」はおごらず、の5文字を贈るといった。正鵠を得た忠告だ。

 安倍総理が「浮かれ」、選挙に弱い少数党と人事を握られた官僚に対し「威張りちらし」、少数者の批判など蹴散らすことができると「おごる」、お友達や支持者、すり寄る官僚、事業家、ジャーナリズムを「えこひいきする」ことができるのは内閣支持率が高かった(次の選挙にも勝てる)からだ。支持率が下がれば威張ることもおごることも、えこひいきすることもできなくなる。

 これまで内閣支持率が高かったのは、安倍総理の手腕が高く評価されたわけでも彼の政策が積極的に支持されたためでもない。各種世論調査を調べればわかるが、「他に適当な人がいないから」「他に代わる人がいないから」「他の内閣よりよさそうだ」が支持する理由のトップをいつも占めてきた。

 世論は、安倍総理に代わる適当な人が見つかり、安倍内閣よりましな内閣ができそうなら、おごり、威張り、少数意見を踏みにじる安倍総理などいつ辞めていただいても差し支えないといっているように思える。

 小池百合子都知事は、世論が「他に適当な人」「他に代わる人」と思い込みたい政治家の役割を担わされているといえよう。その意味で7月2日に迫った東京都議会選挙で小池都知事の「都民ファーストの会」がどの程度の議席を占めるか、それが安倍総理の支持率の今後を占う重大な試金石になる。

2017年6月 5日 13:51

なぜ官僚たちは「巨大な忖度の塊」になるのか

(2017年6月5日筆)

 安倍総理の腹心の友が経営する加計学園・岡山理科大学の獣医学部新設・認可をめぐる「えこひいき」疑惑は、前川喜平・文科省前事務次官の証言によってさらに深まった。と同時に行政における「官邸主導」の実態が明らかにされた。


猛威を振るう「官邸主導」が生んだ?「総理への忖度」

 かつて「官僚主導」か「政治主導」か、が問われた。省益あって国益なし、国益をないがしろにして官僚が自らの属する省庁の利益(省益)のために行政を動かそうとするのが官僚主導だとされた。これに対抗して国民に選ばれた政治家が国益のために行政を動かすのが政治主導だという。

 しかし官僚が省益だけで動くというのは言い過ぎだ。官僚の中には国民に公平に仕える公僕として働いている人も少なくない。一方、政治家が国益を優先して公平に行政を主導するなどとは言い切れない。政治家の中には、自らの当選という利益のために選挙区と特定の支持者の利益のために働く者も少なくない。

 官僚を政治家が制御するという政治主導が行き着いた先が「官邸主導」だ。安倍内閣になってからその官邸主導が猛威を振るっている。強い官邸主導によって抑え込まれた結果、加計学園理事で元内閣官房参与(ユネスコ・世界遺産担当)の木曽功氏の言葉を借りれば、各省庁の官僚たちは「巨大な忖度(そんたく)の塊」(朝日新聞6月1日朝刊)になってしまったのではないか。


官邸主導の主役は総理官邸5階に執務室を構える6人

 官僚たちに「総理への忖度」を余儀なくさせるもとになった官邸主導について少し説明しよう。官邸とは内閣総理大臣が執務する「総理(首相)官邸」をいう。大統領が執務するアメリカの「ホワイトハウス」のようなものだ。

 千代田区永田町にある総理官邸の5階には、総理執務室のほかに総理を補佐する総理秘書官、総理補佐官、総理の女房役である内閣官房長官、それを補佐する官房副長官などの執務室がある。官邸主導とは総理と官房長官、官房副長官など総理官邸5階に執務室を持つ総理スタッフが主導する行政を意味するようだ。

 官邸に執務室を持つ主要スタッフ、安倍晋三総理と菅義偉官房長官、事務方トップの杉田和博氏(警察庁出身)、政務担当の萩生田光一氏(衆院議員)、野上浩太郎氏(参院議員)の3官房副長官、今井尚哉総理秘書官(経産省出身)の6人は「毎日のように10~20分ほど顔を合わせ、官邸内の根回しを行っている」(日経新聞4月19日朝刊)という。

 この官邸の6人はあらゆる行政課題の相互確認を行ない、それが総理や官房長官、与党の国会対策委員長などの発言に反映されているに違いない。加計学園をめぐる「えこひいき」あるいは「忖度」疑惑に対する菅官房長官の「そうした批判は全く当たらない」という決まり文句も6人で打ち合わせ済みなのだろう。


総理と官房長官に人事を握られ反抗できない幹部官僚

 官僚たちの「総理への忖度」が醸成されるようになったのは、安倍総理下で2014年5月に「内閣人事局」が創設されてからだといわれている。内閣人事局の創設による各省庁から官邸への人事の移行で官僚たちは政治主導への抵抗力を失ったという説が有力だ。

 内閣人事局は内閣官房の内部組織で審議官級から局長、事務次官まで各省庁の幹部職員約600名の人事を担う。3人の官房副長官のうちの一人、政務担当(政治家)の萩生田副長官が局長だ。各省庁から上がってきた人事評価をもとに内閣人事局が適格性を評価し幹部候補者名簿を作る。そこから任命権者である各省庁の大臣が候補者を絞り込み、総理と官房長官と協議して幹部人事を決めることになる。

 かつて幹部職員の人事は任命権者である各省庁の大臣と当該事務次官らが相談して決められた。総理など官邸はそれを追認するものとされた。だが現在は内閣人事局に人事情報が集約され総理と官房長官、つまり官邸の意向に沿う形で幹部登用が行われているという。逆に言えば官邸の意向に反する幹部は冷遇されるケースがあるということだ。

 その例として、毎日新聞6月3日朝刊は「2015年夏の総務省人事で高市早苗総務相がある幹部の昇格を提案したが、菅義偉官房長官が『それだけは許さない』と拒否」、断念に追い込まれたと紹介している。この幹部は菅氏が主導したふるさと納税創設をめぐる規制緩和に反対していたという。

 この例は氷山の一角だろう。他にも安倍総理や菅官房長官の意向に沿わない、反対する人物とみなされ、任命権者である各省庁大臣の推薦があっさり退けられたケースがたくさんあるのではないか。

 自ら国益に叶う正論だと思っても総理や官房長官のご意向に歯向かえば、昇格どころか左遷される。そうなりたくなければ官僚は官邸には面従腹背するしかない。さらにすすめば、正論を捨て、総理、官房長官のご意向を忖度して平然と「黒を白と言い募る」所業に出て恥じない官僚となる...。


幹部官僚の行動を調べ上げ、いざとなれば人格攻撃?

 官邸は官僚に対してさらに過酷だ。それが垣間見えたのが菅官房長官の前川前事務次官の「出会い系バー通い」をめぐる人格攻撃だ。前川氏はこの件で昨秋、杉田官房副長官から注意を受けていたという。恐いのは前川氏の極めてプライベートな事柄を杉田官房副長官が知っていたと言う事実だ。

 事務方トップの杉田副長官は警察庁出身で、公安警察を管轄する警備局長、日本のインテリジェンス(諜報)機関である内閣情報調査室(内調)の室長、これを管轄する内閣官房の内閣情報官などを経て安倍内閣の官房副長官になった人物だ。信じたくはないが、警備局や内調などを動かし前川氏の「出会い系バー通い」を突き止めたのでは...。内閣人事局による幹部職員の適格性評価などにも公安情報が使われているのでは...。そういう疑念を消し去ることができない。

 幹部職員ではないが、韓国釜山の総領事だった森本康敬氏(外務省のノンキャリア)が任期途中で事実上更迭された。その理由が「知人らとの会食の席で(領事館前の慰安婦像設置に関する)自らの一時帰国を決めた官邸の判断を批判したため」と各紙が報じている。官邸は知人との会食での森本氏の会話をどういう手段で知り得たのだろうか、不可解だ。

 信じたくはないが、官邸が警察官僚らを使って他官庁の幹部官僚の挙動を調べ上げ監視しているとすれば...。あるいは前事務次官・前川氏に対するように、いざとなれば激しい人格攻撃を加えて証言つぶしを図ることも辞さないとすれば官僚は「巨大な忖度の塊」にならざるを得ないと思うが、どうか。

2017年5月22日 15:45

トランプの愚挙――科学技術予算の削減に米議会が反抗

(2017年5月22日)

 トランプ米大統領の愚挙は多々あるが、なかでも科学技術予算の大幅削減は将来に禍根を残す愚挙といってよい。その愚挙に議会が反旗を翻したという(日経新聞5月22日朝刊「科学軽視、米議会が反対」)。他山の石としなければならない。


バターより大砲――科学技術予算を大幅削減するトランプ氏
全米の学者・研究者が反発、米議会も与野党問わず反旗

 トランプ氏は3月の予算教書で2018年度の国防総省予算を10%、国土安全保障省予算を7%それぞれ増強する一方、国務省予算を26%、環境保護局予算を31%それぞれ削減すると発表した。バターより大砲を重視する残念な予算教書となった。

 科学技術予算では世界の生命科学研究をリードする米国立衛生研究所予算を18%(58億ドル)削減するとする一方、地球温暖化(トランプ氏は「温暖化はでっち上げ」といって否定)に関わる環境保護、新エネルギー、海洋大気、NASAなどの研究予算を削減するあるいは打ち切ると発表した。科学研究を財政支援する全米科学財団の予算も大幅に削減されるという。

 アメリカは世界一の研究大国だ。研究者が世界から集い、学術論文の発表数もノーベル賞受賞者数も群を抜いて多い。世界の科学技術の進歩やイノベーション(技術革新)の醸成に大きく貢献してきた。それを保証してきたのが豊かな科学技術予算だった。日本の研究者もその恩恵に浴してきた。

 全米の大学教員、研究者が、科学や学術に無理解、無知なトランプ大統領の予算削減方針に対する反対デモに立ち上がったのは言うまでもない。これに呼応して、上院、下院、与野党問わず多くの議員が科学予算の削減に反対する姿勢を明らかにした。

 トランプ大統領下で初の2018年度(2017年10月~2018年9月)の予算案が明日5月23日(現地)に発表されるが、軍事費を増やし科学技術予算を削減する予算案にする方針は変わらない。だが科学技術予算削減の提案はこのままでは与野党議員の反対で議会を通過できないとされている。

 米議会には与野党問わず党議拘束はなく、与党・共和党議員であってもトランプ氏の愚かな科学技術予算の削減案に賛成票を投じることはない。党議拘束がないことで大統領権限に対する議会チェック機能がここでも働いた。

 米国では行政に対する議会、司法のチェック機能の健在で三権分立が機能していることは「トランプ暴走を止めた司法と議会」(本ブログ2017年4月3日)で述べた。安倍一強下、日本でも議会と司法による行政チェック機能の確立が望まれる。


日本でも防衛予算は年々拡大、科学技術関連予算は停滞
このままでは20年後、ノーベル賞新受賞者がいなくなる

 我が国でも防衛予算は年々拡大しているが科学技術関連予算は過去十年以上3兆5000億円前後(当初予算ベース)で停滞している。安倍政権下の過去3年間は3兆4000億円台に下がった。科学技術研究の重要な担い手である国立大学への運営交付金も減少傾向が止まっていない。

 一方、防衛整備庁の軍事研究資金は16年度の6億円から17年度は110億円に急拡大する。日本学術会議は「軍事研究はしない」との声明を出し防衛装備庁の軍事研究資金提供に批判的立場をとったが、大学の研究費不足は深刻だ。軍事研究資金を拡大させる資金があるのなら国立大学運営交付金や私学補助金に回せと言いたいところだろう。

 今や東大といえども大学教員・研究員の過半近くが「特任」という名の非正規雇用者だ。公的、準公的研究機関でも有期契約の非正規ばかりで常勤は天下りの事務方役員と相場が決まっている。

 我が国は近年、自然科学分野でノーベル賞受賞者を輩出してきたが、その研究業績の多くは20年以上も前のものだ。現状の貧弱な科学技術関連予算と大学への補助金、大学を含む研究機関には「特任」「有期雇用」という名の非正規ばかりだ。20年後、日本は新たなノーベル賞受賞者がいなくなる恐れがある。

 人口減少社会の日本を救うのは科学技術によるイノベーションを置いてほかにない。アメリカと同様、与野党を問わない国会議員の科学技術関連予算の積み上げに期待したい。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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