2011年8月 4日 17:15
研修の基本的な考え方(1)
松下政経塾 研修塾 塾頭 古山和宏(執筆)
松下政経塾の研修目的は「次代を担う指導者としての資質を養い、国家経営の理念とビジョンをまとめると共に、志実現のための方策を探求する」ことです。
研修は、単に一定の知識を習得するとか、ある技能を向上させていくといったことを目的とするものではなく、塾生みずからの努力によって、将来の指導者としてふさわしい人材に育っていくことを目的としています。 松下幸之助塾主が定めた基本方針(設立趣意書、塾是・塾訓・五誓など)に沿って、研修は組み立てられますので、塾生に求めるもの、探求すべきテーマはおのずと定まってきます。将来の指導者たる塾生に対して何を重視しているかを明らかにするとともに、指導者としての資質や見識を磨くためにどのような研修をしていくか入塾時に塾生に問いかけ、塾生自身に研修計画を作ってもらいます。「教えて教えられないこと」を自得することに松下政経塾の研修の要諦があるので、その実施についても基本的には塾生に任せます。繰り返し述べてきた通り、塾はすべてをお膳立てするのではなく、自修自得こそが塾の研修方針だからです。
松下政経塾は、松下幸之助が自ら塾長として指導に当たっていた時代、そして創立10年目に塾主が亡くなってからの時代を通じて、建塾の原点を見失わないよう、試行錯誤を繰り返してまいりました。日本を背負って立つ人物が塾から生まれ、塾が日本の柱となること。日本の国と運命を共にする覚悟をもって、塾を運営していくこと。それが松下幸之助の強い思いであり、塾生に託した願いでした。在塾中、塾生は自らに向かいあい、いやというほど自分の至らなさに気づかされ、ときには落ち込み、迷い、思い悩むこともあります。こうした時にこそ、謙虚に素直な心で自らを振り返り、人間を磨いてこそ、人間としての、指導者としての基礎が築かれます。
「塾生はちゃんと掃除をやっているか」と塾主はいつも確認していたように研修では掃除を重視しています。掃除という一見地味で目立たないことこそ、毎日真剣に取り組み、自分自身に向かい合わなければなりません。また、日本の伝統精神を探求するため、茶道、書道、剣道などに取り組み、全寮制での生活を通して、人間としての、日本人としての基本を身につけることに重点を置きます。「果たして此の道を能くすれば、愚といえども必ず明、柔といえども必ず強なり」(中庸)という言葉があるように、繰り返し行うことによって、自己を鍛錬していきます。掃除や日本の伝統精神を探求する研修を、よき習慣を身につけ、人間を磨く重要な研修の柱の一つとして位置づけているのもそのためです。
ただし、塾の研修は、これまでやってきたことを機械的に繰り返しやっていればいいというものではありません。「自我作古」(我よりいにしえをなす)、「日々新たに」それぞれの塾生が「新しい伝統」を作っていく気概を持って研修に打ち込んでいくことが何より大切なことです。