
2010年8月16日 11:10
松下政経塾 研修塾 塾頭 古山和宏(執筆)
「真に国家と国民を愛し、新しい人間観に基づく政治・経営の理念を探求し、人類の繁栄・幸福と世界の平和に貢献しよう」
これは、塾生、職員が毎日、朝会で唱和している、松下政経塾の基本理念を示す塾是です。塾関係者にとってはなくてはならないものであり、いわば空気のような存在ですが、いつも原点に返って確認しなくてはならないものであります。
一般に、松下政経塾は政策や選挙戦略などを中心に研究していると思われている方々が多いようですが、実はそうした研修は極めて少なく、塾是にある人間観や国家観、歴史観といった基本的な理念を学ぶことが多いのです。
松下幸之助塾主は、一期生への最初の講話で「塾生にはまず、人間とは何か、ということを考えてほしい」と強調しています。人間の理解なしで、政治も経営も的確に進めることはできないとの強い思いからです。
よって塾生は、古今東西の衆知を集めつつ、これからの時代にふさわしい新しい人間観を探求自得し、人間の本質について把握するとともに、それに基づく政治・経営などの諸理念を探求していきます。古典に学び、一流といわれる人物に触れながら、自らの人間観を確立していくと共に、現実の人間と社会のさまざまな様相を肌で実感するために、各種の実務体験を重ねていきます。その基礎の上に立って、初めて政治や経営の要諦に近づくことができると考えています。
当然、この作業は在塾数年間の短時間で達成できることはできません。一生を通じて実践の中で自得していくしかありませんが、「人間観」こそ諸活動の基本であることを強く自覚することが大切です。
また、冒頭の「真に国家と国民を愛し」とは、将来のリーダーたるべく研修を積む塾生には当然のことです。この思いと覚悟なしに日本のリーダーとしては失格です。しかし、偏狭なナショナリズムによって自国の利益ばかりにとらわれ「人類の繁栄・幸福と世界の平和に貢献」することを二の次にしては国家は成り立ちません。人類、世界のためになってこそ、はじめて自国の利益にもなることを忘れてはなりません。
世の中では、戦略、戦術や方法論を論ずることが多い昨今ですが、その前に「人間観」や「理念」すなわち「人間とは何か」あるいは「そもそも何のために」ということを真剣に考え、政治や経営のあり方を探求していくことを松下政経塾では基本に置いています。
2010年7月29日 13:10
松下政経塾 研修塾 塾頭 古山和宏(執筆)
修身「人間を磨く」
どのように身を修め、人間を磨いていくべきか、永遠の課題です。松下幸之助は「徳を身につけていくにはどうしたらいいか」という塾生からの質問に対し、「私にもよくわからない。ただ、君がそれに気がついたことはその第一歩である」と答えています。まずは人間的に向上したいと思うこと、問題意識を持つことが大事だということでしょうか。
塾の研修では、古典(儒学、仏教、神道等)、坐禅、剣道、書道、茶道といった日本の伝統を学ぶ機会があります。これらすべてはいかに人間を磨いていくかにつながるものです。全寮制で切磋琢磨することによって、尊敬すべき先輩、同期の姿に啓発される一方、現場に出て研修する機会の多い塾生は、様々な現場で「人物」に出会い、自らの至らなさに気づくことが多いものです。「われ日にわが身を三省す」(論語)という言葉があるように、謙虚に己を振り返り、足らざるところがあれば、反省して変えていく努力が不可欠です。
「古の小学、人を教うるに、洒掃、応対、進退の節、親を愛し、長を敬し、師を隆び、友に親しむの道を以てす。みな身を修め、家を斉え、国を治め、天下を平らかにするの本と為す所以なり」と『小学』にはあります。天下国家を語る前に、松下幸之助塾主が生前、繰り返し塾生に求めていたように、掃除や挨拶ができて、はじめて「人間を磨く」ことができるということを古典は教えています。
立志「志を磨く」
志こそ、研修を進める原点となるものです。それはけっして完成されたものでなくてもよく、余分なものを切り取って、最後にこれだけは譲れないもの。「何のために生きるのか。人生の残り時間を何のために使うのか。」それが「素志」というものです。
「諸君もまず、意志を持つことが大切ですね。自分は政治家なら政治家、あるいは経営者なら経営者になって、人々に喜びを与え、人々に富んでもらおう。そのために自分はあるんだ。自分の仕事はそれだ。自分の目的はそこにあるんだ、というようなことを考え、決意しなければならない。そういう意志を持たずに、ただ勉強して偉い人間になろうとか、大きな経営をして富を得ようというような考えだけだったら、ほんとうの知恵は出てこないと思います。」(松下幸之助『塾長問答集』)
松下政経塾では自分のため、自己の単なる夢の実現を志とは呼びません。「公のため、他者のために何ができるのか。」その目的、志を定めることが研修を始める起点となります。佐藤一斉の『言志四録』には次のような言葉があります。「学は立志より要なるはなし。而して立志もまたこれを強うるにあらず。ただ本心の好むところに従うのみ」
「常に志を抱きつつ、懸命に為すべきを為すならば、いかなる困難に出会うとも必ず道は開けてくる。成功の要諦は成功するまで続けるところにある」(『五誓』の「素志貫徹」)と塾生が毎日唱和するのもそこに意味があるからです。
2010年7月 9日 11:27
「公共経営のゆくえ -課題と展望-」
早稲田大学大学院公共経営研究科、松下政経塾共催により、シンポジウムを実施します。
公共部門の改革を小泉政権下で金融担当大臣として強力に推進した伊藤達也氏。
その改革を行政評価の第一人者である塚本壽雄氏が政策評価します。
郵政民営化や公務員制度改革などを切り口に、現在進行中の行財政改革も俎上に挙げ、時代を見る目を養います。
<開催要項>
日時: 2010年7月28日(水) 開演13:30~15:00
場所: 早稲田大学26号館
参加費: 無料
定員: 先着50名【パネリスト】
塚本壽雄氏 (早稲田大学大学院教授)
伊藤達也氏 (元金融担当大臣/松下政経塾5期生)【コーディネーター】
金子一也 (松下政経塾政経研究所 所長/松下政経塾12期生)協力:国会TV
お申込み、プログラムの詳細は「松下政経塾ホームページ」をご覧ください。
(政経塾HP)
http://www.mskj.or.jp/seminar/gaiyou/20100728_waseda.html
申込締切日: 2010年7月23日(金)17:00
2010年6月16日 15:26
松下政経塾 研修塾 塾頭 古山和宏(執筆)
松下政経塾の研修目的は、以下の三つに集約されると考えています。
一、人間を磨き、志を磨く
松下政経塾を語る時、私はよく「人間を磨き、志を磨く道場である」という言葉を使います。それは立派な政策論やどんな美辞麗句を語ろうとも、指導者自身に尊敬に値する人間性すなわち徳と、忘我利他の止むに止まれぬ志がなければ、人はついてこないと考えるからです。
よって、松下政経塾では、人間としてのあるべき姿、指導者としての生き方の基本について学ぶことが求められます。内外の古典をひもとき、素直な心で先人の教えに耳を傾けるとともに、日本の伝統精神を茶道、書道、剣道などの実践を通じて探求する一方で、朝6時から始まる早朝研修で、掃除に一所懸命に取り組むことを日課としています。
以上の趣旨を踏まえ、研修では、人間観、歴史観、日本の伝統精神などの探求を通じて、人間を磨き、自らの志を磨くことに研修の基本的な目的を置いています。そして一生の残された時間をどう使っていくかを自得していくのです。
二、新しい人間観に基づく政治・経営の理念を探求する
塾是に掲げられている、この研修目的はここで改めて言及する必要はないと思いますが、一般の方々には少々奇異に感じられる方もおられるかもしれません。塾生には、まず古今東西の衆知を集めつつ、これからの時代にふさわしい新しい人間観を探求自得し、人間の本質について把握するとともに、それに基づく政治・経営などの諸理念を確立することが求められます。
衆知を集めるとは多くの人に意見を求める事だけではありません。時間、空間を越えて、古典に触れ、一流といわれる人物に触れながら、自らの人間観を確立していくと共に、現実の人間と社会のさまざまな様相を肌で実感体得するために、各種の実務体験を重ねていきます。その基礎の上に立って、初めて政治や経営の要諦に近づくことができると考えています。
三、国家のビジョンと方策を立案する
塾の設立趣意書では国家、経済、社会の混乱は帰するところ「国家の未来を拓く長期的展望」の欠如に原因があると指摘しています。昨今の政治状況を見るにつけ、長期的視点の欠如が政治の混乱を招いているとの感を益々強くいたします。
それゆえに、国家国民の物心一如の真の繁栄をめざす基本理念を確立した上で、国家百年の安泰をはかっていくビジョンと方策を立案することこそが松下政経塾の重要な使命といっていいでしょう。
研修では同期生が共同して将来の日本構想を立案する「共同研究」、上下の期をまたいで重要課題を探求する「研究会」などで、将来のビジョンと基本的な方策の研究を進めています。こうした一つ一つの積み重ねの上に、日本の「国是」や「国家ビジョン」につながる成果を生みだす努力を続けています。
2010年6月 8日 09:34
丹下大輔塾生(30期生)が発表した朝会所感(要約)をご紹介します。
松下政経塾/丹下大輔(30期生)プロフィール
http://www.mskj.or.jp/profile/tange.html
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8か月前の歴史的な政権交代で、国民の手で作られた鳩山政権。
「地域主権」、「新しい公共」、
「東アジア共同体」、
「行政刷新と国家戦略」...。
国民の期待も大きく、
私自身、鳩山政権が目指す方向性と理念に
共鳴した点も多くあった。
しかしながら
昨日、鳩山総理が辞意を表明し、
政権の座から退いた。
結果として辞意に至った政権運営に対し、
世間的には、
「無能な総理大臣だった」と罵り、
批判を繰り返す声が多い。
しかしながら、
将来指導者の道を歩むべく日々研鑽を積み、
松下政経塾に集っている我々塾生は、
この批判合戦に乗ることはすべきではないと私は思う。
では、我々塾生はどう考えるべきなのか。
なぜ、
鳩山政権は道を誤ったのか?
決断できなかったのか?
実行できなかったのか?
という、政権の失敗と総括を成す視点を、
各々塾生は持つべきだと考える。
政治は、絶えず言論の戦場である。
時として、
自らの理念やビジョンを押し殺してでも、
合意形成を図り、
日本と日本人の幸福と繁栄のために
戦わねばならない。
綺麗事だけでは済まされないのが
政治の世界だ。
我々、政治の指導者を目指す者として、
この戦いの場に身を投じていかねばならない。
政権運営とは「国家経営」である。
まさに、今こそ、
塾主の願いである「国家経営」を力強く成すためにも、
鳩山政権の失敗と総括をしなければならない。
この度の辞意表明につながる鳩山政権8ヵ月の政権運営は、
我々への大いなる生きた教材となるであろう。