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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

アジア事情

2018年5月23日 11:40

ウォシュレット:「トイレ革命」は世界に起こるのか?

前回(5月22日付)、当ブログで記しました通り、タイのバンコクに2泊3日で行ってきました。

ホテルの予約サイトでバンコクの市内の5つ星ホテルが1泊約1万円で特別オファーをしており、そちらに宿泊することになりました。

しかしながら、トイレが日本製ではありませんでした。ウォシュレットがなく残念に思いました。良いホテルなのに、良いホテルだからこそ残念なのです。

昨年末に中国の広州に学会で訪れた際も、トイレ問題がありました(当ブログ, 2017年12月27日付)。

こちらはウォシュレットどころか、トイレにトイレットペーパーがないのです。GDP世界第二の経済大国になった中国で、しかも先進地域の広東省なのに公共トイレに紙がありません(これについては、中国出身の同僚からトイレットペーパーを持ち歩くのが社会習慣となっており、経済発展とは無関係という意見を頂いていますが)。

「紙なし社会論」は別として、私は、ヨーロッパを行き来する生活をしており、欧州各国の公共トイレを利用することが少なくないのですが、ウォシュレットがあるところは殆どありません。

そもそも、ウォシュレットというのはTOTO社のブランドです。2015 年 7 月の段階で同社だけで国内外合わせて累計出荷台数が 4000 万台を突破しています(「ウォシュレット※累計出荷台数4000万台突破」TOTO, 2015年9月1日)。そして、日本におけるウォシュレット型の温水洗浄便座の一般世帯普及率は、何と77.5%(2015 年3 月、内閣府調べ)となっているのです。

中国の一部や欧米でもウォシュレットは徐々に広がっているようですが、これ程、日本で一般化しながら海外とのギャップはありそうです。

しかしながら、外国人が文化的にウォシュレットを受け入れないという訳でもなさそうです。米国の歌手マドンナさんが2005年に来日した時、「日本の温かいトイレシートが恋しかった」と言葉を残していったように(Excite Bit, 2005年12月16日)、日本のトイレの国際競争力はありそうです。

それでも、欧米でウォシュレットが広がらない一つの理由として、トイレとバスタブ(風呂)が一緒になっているため、電源が取れないという構造上の問題も指摘されています。いわば、お風呂にトイレがあるような形のため、日本のように便器の隣にコンセントがないのです。

つまり、家の建築構造を変えない限り、ウォシュレットは欧米社会では広がっていかないことになります。これをどう打破するのか、TOTOさんなどのメーカーは、日々、研究を続けておられると思われますが、ホテル等から攻めて、マドンナのようなトイレ「ファン」を増やしていくしかないのかもしれません。

自分が、トイレ・(和式主義者ではないので)モダン・ナショナリストであることを気付かされた旅になりました。

2018年5月22日 10:13

エアアジア(バンコク線)を利用して

所用があり、週末、タイのバンコクに2泊3日で行ってきました。関西空港発のLCCエアアジア(AirAsia)航空の深夜便を利用して早朝にバンコクのドンムアン空港に到着しました。

今回、エアアジア航空を利用したのは初めてでした。

エアアジアは、2001年にマレーシアで「飛行機の旅行をエリート層から開放し大衆化することを目的」として創設されたLCCであり、現在、200機以上の機体を保有しながらアジアを中心にネットワークを拡大し、20カ国以上、120以上の都市に就航しています(同社HPから)。

関空からバンコクへの飛行時間は6時間弱、通常、飛行機の座席正面にはテレビ画面があるものですが、それもなく、従って映画やドラマは見られませんが、片道2万円台という格安航空券なので納得できました。

食事や飲み物は全て有料で、前もって予約もできます。

私は、今回、深夜フライトだから必要ないと考え予約しませんでしたが、食事をする時間がなく、結局、現金払いで遅い夕食を「購入」することになりました。Nam Ya Tuna Spaghettiという麺ものを頂きましたが、夜の胃にはちょっと刺激が多かったかもしれません(飲み物付きで250タイバーツ、1000円程でした)。

食事が終わり、照明が消されました。

深夜便だったので、早速、休もうとしましたら、凄い鼾をかく男性が隣の隣に座っており、アラームが鳴り続けているような状態となり、寝られませんでした(これは全くエアアジア社の問題ではありませんが)。

何度か、男性の隣の女性がCAに文句を言ったのですが、何度注意されても鼾の男性は自覚症状がないのでどうにもならないようでした(着陸後、その男性はどこかに連れていかれていました)。

このエアアジア、航空サービスを調査するスカイトラックス社による2017年のLCCランキングにおいて世界1位となっています。9年連続ということでアジアならず、国際的競争力で世界のトップを走っています(FlyTeam, 2017年6月22日)。

1 エアアジア(マレーシア)
2 ノルウェー・エアシャトル(ノルウェー)
3 ジェットブルー(米国)
4 イージージェット(英国)
5 ヴァージン・アメリカ(米国)
6 ジェットスター(オーストラリア)
7 エアアジアX(マレーシア)
8 アズールブラジル航空(ブラジル)
9 サウスウエスト航空(米国)
10インディゴ(インド)

上記の通り、ベスト10に日本の会社は入っていません。言うまでもなく、世界の航空業界はその評価は別として、LCCの比重が高まっています。日本初のLCCがなぜ出遅れているのか、考える必要があるのかもしれません。

2018年4月28日 02:18

南北首脳会談の背景としてのグローバリゼーションと機械化

前回、金正恩・労働党委員長と韓国の文在寅・大統領による首脳会談を、金委員長のパフォーマンスにフォーカスして論じました。

そもそも、この時期に首脳会談が行われた理由は何だったのでしょうか。

政治的には、対米関係(米国との軍事衝突の危機を回避したい)という見方があり、経済的には、北朝鮮への制裁が相当な効果をあげているとも言われています(重村智計「南北首脳会談、なぜこのタイミングだったのか」iRONNA)。

特に石油に関する制裁は大きく、昨年の北朝鮮の石油輸入量は最大150万トンとされる中、今年は制裁によって原油と製品合わせて70万トンまでに落ち込むと見られています(同上)。

なるほど、納得できます。

ただ、私はこの歴史的会談をテレビで見ながら、北朝鮮が経済開放を急がないと、現実としてグローバル化、機械化の波に飲み込まれてしまうように感じました。

実際、今回の首脳会談の前の4月20日の北朝鮮労働党中央委員会総会において、金委員長は「経済建設に総力を集中する新たな戦略的路線」を宣言しており、経済発展を重視する姿勢が見られます(毎日新聞、2018年4月27日)。

金委員長は、経済制裁を解除し、経済協力を引き出し、北朝鮮を経済的に発展させることを掲げているのです。そして、早くも朝鮮半島に平和が実現し、北朝鮮が経済開放をすれば、韓国よりも北朝鮮に直ちに莫大な利益がもたらされるだろうという声もあがっています(Bloomberg, 2018年4月25日)。具体的には、北朝鮮国内への投資機会が増え、輸送やインフラ、発電施設への投資ブームが起こり得るだろうと予測されています(同上)。

私はかつて「北朝鮮と安価な労働力:敵はロボットか?」(当ブログ2013年2月20日付)、というタイトルで、北朝鮮が急いで経済開放路線に踏み切らないと、その安価な労働力を活用せずに、世界のロボット化、機械化が先に進んでしまうのではないかと書きました。

あれから数年経ち、2015年の1人当たりのGDPを比較すると、バングラデッシュの3,700米ドル、ミャンマーの5,600米ドル、ベトナムの6,200米ドルに比べ、いまだに北朝鮮の1人当たりのGDPは1,700米ドルに過ぎなく、アジア各国に比べ遥かに低くいのです(CIA handbook)。

つまり、北朝鮮の労働賃金は安いことになりますが、「安価な労働力」自体が重要視されない状況も発生しています。近年、米国では、機械化が進み(それに、トランプ政権の政治介入もあり)、製造業の海外流出が止まり、製造拠点を米国へ戻す傾向が生じています。

もちろん、上記のグローバルな産業状況の変化が、今回の南北首脳会談の直接の理由ではないでしょう。しかしながら、北朝鮮の改革開放路線への転換が遅くなれば遅くなる程、北朝鮮は機械化との闘いを余儀なくされるのではないでしょうか。

そのためにも、まず、北朝鮮は山積する政治的課題を片付けていかなくてはいけないことになります。

2018年4月27日 23:59

金委員長のパフォーマンスを「カリスマ性」として認識すべきなのか?

北朝鮮の金正恩・労働党委員長と韓国の文在寅・大統領が、南北軍事境界線がある板門店の韓国側で会談をしました。3回目の南北首脳会談ですが、過去2回は平壌で開催されており、北朝鮮の最高実力者が南側を訪問したのは初めてです。

世界中から注目された会談は、金委員長のパフォーマンスに南側(西側)が「釘付け」にされたと言っても過言ではないでしょう。韓国の文大統領の存在を、「脇役」にしてしまったように見えました(文大統領は「食われてしまった」感が歪めません)。

会談の政治経済的な分析、歴史的な位置付けは別として、今回は何よりも金委員長がどのような態度で会談に臨むのか、委員長の振る舞いはどうなのかが注目されていました。

そして、今まで独裁者としてメディアに映し出されてきた金委員長は、ジョークも冴えており、カメラ目線も自然だったのです。

韓国の人々も概して好意的に捉え「率直で面白く、話ができる」という印象であったと報じられています(産経ニュース、4月27日)。

考えてみれば、金委員長はスイスでの留学経験があり、ドイツ語、英語などに通じているとされており、西側のメディア操作が上手かったとしても納得できなくはありません。

独裁者には、力だけではなれません。歴史の中の独裁者たちは、初期において、ある種のカリスマがあり、人々を惹きつける魅力があり、国民的な人気があるナショナリストであることが普通です。

戦間期のドイツにおいて選挙で勝ち上がったヒトラーを持ち出すまでもなく、まず国民が魅了されるのです。

かつて私は当ブログ(2011年9月7日、2016年5月 7日)において「独裁者の法則」を記しました。人気者であった愛国者が、経済政策の失敗等によって自分への国民的支持が維持できなくなると、子飼いの秘密警察を用いて独裁者になっていくのです。

そうやって完成する独裁国家において、実は、最高権力の世襲は易しくないのです。二代目、三代目への継承が難しいのは、独裁者が権力固めに勤しみ、権力や資金を二代目に譲っても、先代のカリスマを世襲できないからです。

三代目となる北朝鮮の権力継承に関しても、当初、私はかなり難しいと考えていました(当ブログ、2011年12月21日付)。

しかしながら、今回の首脳会談で、非常にキャラ立ちしている金委員長を見ると、彼自身に良くも悪くもカリスマ性があるのかもしれません。

そう認識すれば、なぜ、北朝鮮だけにおいて、その独裁制が(3代に渡って)世襲されてきたのかが見えてくるような気がします。

2018年3月15日 01:07

中国国家主席の「任期の撤廃」を考える:格差とミドルクラス

今月初めから開催されていた中国全国人民代表大会(全人代)で、「国家主席、副主席の任期は連続して2期を超えてはならない」とする従来の憲法上の規定が削除され、国家主席の任期が事実上なくなりました。

現国家主席の習近平氏の終身政権の道が開かれたことになり、日本のマスコミでは「独裁化」するのではないかという懸念と批判の声が挙がっています。

任期制の撤廃は民主主義に反する行為ですので、批判は理にはかなっているのですが、ただ解せないのは、経済発展を遂げ、五輪を開催し、名実ともに先進国入りを狙う中国が、なぜ、今、西側からの反発を招くようなことをする必要があるのかということです。

それは、習氏1人の政治的野望であると捉えるべきなのでしょうか(もし、そうだとすれば、中国の政治経済の先行きは明るくなく、その結果、世界経済にも多大な影響を与えることでしょう。

そのような中、吉田陽介氏の「中国国家主席の任期撤廃で習近平は「独裁者」になるのか」『Diamond Online』(3月14日)は興味深く感じました。

吉田氏は全人代の「政府活動報告」に着眼し、特に経済政策と人民中心主義から国家主席の「任期撤廃」を考察しています。

まず、前者の経済政策において、中国はまだ、「経済成長の内生的原動力」が十分ではなく、中国はまだ(独裁的な)大きな政府による積極的な財政政策を行う必要があると見ます(同上)。経済的に、強い上からの「力」が必要であるというのです。

そして、後者の人民中心主義は「人々の獲得感」と表現され、理念的には「民生の最低ラインを断固として守り、人民大衆の獲得感・幸福感・安心感」を不断に高めていくとされます。

具体期には、起業を促進するための措置、農民工の雇用拡大及び、賃金未払い問題の解決、社会の最低賃金基準の調整、農村の児童・生徒の中途退学率の引き下げ、都市部の「大班額(すし詰め教室)」の解消、授業以外の負担が過重な問題の解決、「健康中国」戦略の実施、食品や医薬品の安全確保、大衆の住宅問題の解決などの措置等、非常に細かく項目が挙げられています(同上)。

吉田氏は、中国は、習近平一人に権力を集中させて、経済的には「開発独裁」、政治的には「改革独裁」を目指していると解釈し、それらは「独裁」とは名が付いても、世論による「監督」が機能しており、日本人がイメージするような独裁にはならないと結論付けます(同上)。

中国には現在、約4億人のミドルクラスが出現しており、経済格差対策をしながらも、ミドルクラス対応の経済政策を促進せざるを得ないのです。そして、経済中心主義を敷く限り、政治的な独裁にも歯止めがかかると認識すべきなのかもしれません。

私は「独裁者の法則」(2011年9月 7日付)、「誰もが必ず、独裁者になる可能性があるのか?」(2016年5月 7日付)というタイトルで、当ブログで独裁について書いてきました。

最初から独裁者であった、独裁者はおらず、少なからずカリスマ性を持ち、国民的に人気を誇ったナショナリストである人物が後に独裁化するケースが多いのです。多くは、経済政策に失敗した後、「独裁化」が待っているのです。

ですから、「開発独裁」や「改革独裁」が「独裁化」と無縁であるとは言えないのです。

しかしながら、それでも、現段階のレベルまで国家として経済発展を成し遂げた中国が、即時に独裁化するようにも見えません。むしろ、良し悪しは別として、格差問題などの対策としての「権力の拡大」である可能性が高いように思えるのです(当然、権力を拡大するのは、何かをするために権力が十分ではないと考えているからです)。

ただし、約4億人の中産階級の存在に関してはより詳細なる分析が必要です。米国の社会学者であるシーモア・M・リプセットは、戦間期においてドイツでナチズムを招いたのも中間層の急進化であるとしましたが、中間層は民主化のみならず、独裁も導く存在になり得るのです。

1人の政治家の野望よりも、社会全体の急進化のほうが世界平和には危険かもしれません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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