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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

留学生日記

2017年9月24日 19:07

2017年 ネパール滞在記(6): 3日目 ネパールの小学校で避難訓練

神戸ユネスコ協会理事/日本経済大学ユネスコクラブ顧問として、9月1日~9月8日までネパールでボランティア活動に従事してきました。個人的には、ネパール地震後に訪問しており、2回目となりました。今回は、私1人ではなく、学生11名、神戸ユネスコ協会理事2名の合計13名の団体です。学生は日本に学ぶ留学生が中心となっており、国籍別としては日本(2名)、ネパール(4名)、ベトナム(3名)、中国(3名)、モンゴル(1名)の5カ国に跨る多国籍チームでした。

名前が長すぎて飛行機乗れなかったモンゴル人の通称エナさんも合流して、3日目が始まりました。

朝食も2回目となりましたので、「昨日と同じものをお願いします」と言ってみたのですが、女性に優しいウェイターに「何だ」と言い返されてしまいました。イングリッシュ・ブレックファーストを改めて注文。

3日のボランティアは、車で約1時間のチッタポールというところにある「寺子屋」を訪れ、避難訓練をすることでした。

私は、このチッタポールの「寺子屋」には2年前も訪れているのですが、その際は地震で建物が壊れており、責任者のマンショバ・スワルさんから建設計画を伺いました。その後も、スワルさんから連絡を頂いており、今回は是非再訪いたいと日本ユネスコ協会連盟のパートナーのNational Resource Centre for Non-formal Education(NRC-NFE)にお願いしました。

このチッタポールの「寺子屋」を再訪したかった理由は、スワルさんとの「友情」もありますが、ここは小学校が隣接しており、「寺子屋」で大人が学び、隣で小学生が学んでいることがとても素敵に思えたのです。

スワルさんと「寺子屋」のスタッフ、そして小学校の先生たちは、私たちを大歓迎して下さり、私のネパール人の学生たちを中心に日本から来た学生たちが小学校の各教室に数人ずつ入り、避難訓練を行いました。

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子供たちと避難訓練

今回、ネパールでの避難訓練のために、私たちは日本でネパール語のパンフレットを作りました。内容は、神戸市が発行している避難訓練の冊子を参考にして、できるだけネパールの現状に合致するように内容を変えました(例えば、ネパールには海はありませんので、津波の説明をしても意味がありません)。

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ネパール語で避難訓練パンフレットを説明する神戸ユネスコ協会青年部のラビンドラさん

私の学生たちは、丁寧にネパール語でゆっくり一つずつ説明し、それを小学生たちは笑いながらも、真剣に聞いてくれていました。結果として、避難訓練は「大成功」であったと信じています。

ネパールで避難訓練をしたかった理由は、やはり、2年前の私の訪問にあります。組織的に避難することなく、多くの命が失われたことを知り、避難訓練の必要性を実感したのです。

同時に、私たちが1995年に阪神大震災を経験した神戸市で生活していることもあります。私は、当時、神戸におりませんでしたが、一緒にネパールに来られた神戸ユネスコ理事の方は、実際に被災されています。

神戸の経験をネパールに伝え、そして、次の地震に備え、命を守りたいと思ったのです。何よりも楽しく。

そして、チッタポールの「寺子屋」と小学校訪問はとても有意義な時間になりました。

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2017年8月15日 23:49

終戦記念日に「消極的平和」のみならず、「積極的平和」を願う

ネパール、インド、バングラデシュの3カ国で、8月11日から豪雨が広い範囲で降り続き、洪水となっています。ネパールだけで111人が亡くなり、3か国合計では犠牲者は221人に至っていると報じられています(AFP, 15 August)。

私のゼミには、ネパールのチトワン出身の留学生が在籍しており、実家から彼に送られてきた洪水の写真を転送してくれました(以下)。

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2015年4月25日のネパール地震から立ち上がり、復興中の同国にとって追い打ちをかけられたような感覚でしょう。

日本では、8月15日は終戦記念日です。

私も参加しております(各地の)ユネスコ協会では、終戦記念日を改めて平和を考える機会にしようと、「平和の鐘を鳴らそう」という活動をしています(当ブログ, 2014年8月17日, 2015年8月19日において紹介しています)。

日本の場合、第一に第二次世界大戦を念頭においています。もちろん、第二次世界大戦を振り返り、平和を願うことは素晴らしいことですが、今日は、それに加えてちょっと異なるアプローチもお考え願いたいです。

ノルウェーの平和学の第一人者ヨハン・ガルトゥング氏は、平和を「消極的平和(Negative Peace)」と「積極的平和(Positive Peace)」の二つに分けて考えました。まず、「消極的平和」とは戦争のない状態を指します。そして、貧困、抑圧、差別などの構造的暴力がない状態を「積極的平和」としたのです。

北朝鮮と米国の緊張関係が続く中、残念なことに「消極的平和」を維持することも難しくなってきていますが、同時に、洪水や地震等、自然災害がもたらす構造的な暴力がないように(軽減するように)対応しなければならないと痛感します。

自然災害は、不可避でもあります。私たちは、自然災害を完全に防ぐことはできませんが、予期し準備することで被害を最小限に留めるように努力することはできるでしょう。

何はともあれ、ネパールの洪水は、現在進行形の出来事です。今は情報をできるだけ集め、私のゼミ生のように家族がネパールにいるなら、外からの情報を現地に送りながら、被害が少しでも小さいことを願うしかありません。

終戦記念日、様々な平和を祈りました。

2017年8月13日 17:58

課題は、東京の大学の「関東ローカル化」なのでは?

文部科学省は8月12日、次年度から東京23区にある私立大学の定員抑制を実施し、既に23区で施設の整備を進めている場合を除き、原則、23区内での定員増は認めないことを決定しました(読売新聞, 8月13日)。

これに先立ち、岩手県盛岡市にて開催された全国知事会議(7月27日、28日)にて、大学の東京一極集中を危惧する地方の知事たちが23区内の大学の「定員増」を抑制する立法措置を国に求めることを決議しています(東京新聞, 7月29日)。

私は、地方でも東京でも大学の教壇に立っていますが、どちらかと申しますと東京の大学の関東ローカル化が進んでいると感じていましたので、正直、このニュースには驚いています。

代々木ゼミナール教育総合研究所の坂口幸世氏も「以前は首都圏の大学に進学したい地方の受験生が自分の学力に合わせて、いろいろな大学を目指しましたが、今は地元志向の高まりで家の近くの旧帝大や地元の国立大を目指すように変わってきました。結果、首都圏の大学の関東ローカル化が進んでいます」と言われています(夕刊フジ, 2017年7月21日)。

全国の学生が来ることで多様性を維持したい首都圏の大学は、危機感を深めており、地方の受験生確保に躍起になっていると報じられています(同上)。

もちろん、関東ローカル化と定員問題は別ではありますが、地方の大学生を東京の大学が一方的に奪っているという認識は間違っているように思えます。23区の定員が増えようと減ろうと、大半の地方の学生は東京には来ないのではないでしょうか。

むしろ、定員という意味ではより留学生の受け入れ問題のほうが大きいように感じます。文科省は2020年までに日本に学ぶ留学生を30万人にする計画を掲げていますが、留学生の多くは東京や大阪等の大都市で学ぶことを希望しています。

平成28年5月1日現在の留学生数は239,287人であり(「平成28年度外国人留学生在籍状況調査結果」日本学生支援機構, 平成29年3月)、2020年までに30万人を突破するのは難しくない状況ですが、それでも先進国の中では日本は留学生受け入れで後塵を拝してします。

近い将来、他の先進国並みに留学生受け入れ50万人、100万人を目指すとすれば、留学生をどこでどのように受け入れると考えているのでしょうか。

もちろん、それが地方であっても何の問題もありません。むしろ、地方の活性化にもそうあるべきです。そのためにも、留学生にとっても魅力ある地方と地方の大学にしていかなければいけないでしょう。そうではなければ、留学生に、(定員規制があり)東京の大学に行き難いなら、日本に行かないというような選択をされてしまうかもしれません。

いずれにせよ、課題は、23区の定員規制ではないように思われます。

2017年3月15日 01:06

国際交流に思う

3月11日、12日の2日間、神戸市の諸団体が主催する「KOBE国際交流フェア2017」(後援:外務省、神戸市教育委員会、JICA関西、兵庫県国際交流協会)に参加しました。

私が勤務先の大学で顧問をしていますユネスコクラブに所属するベトナム、中国、ネパール、モンゴルの留学生と共に参加したのですが、1日目は外国人スピーチ大会が開催され、2日目は各国料理の模擬店や各国の音楽が流れ、文字通り国際色豊かでした。

この国際交流は○○国料理とか、○○国の音楽とか「国」単位です。

私のゼミには日本出身者の他、中国出身、ベトナム出身、ネパール出身、モンゴル出身が在籍していますが、ベトナム人では、北のハノイ郊外出身者と南のホーチミン出身者では、(昔は異なる国であったので当然かもしれませんが)、かなり文化や風土が異なることが分かります。

中国人は、北の黒竜江省出身と福建出身者では南北ベトナム以上に考え方が違います。

ネパールは、人口が約2,650万ですが、多民族国家であり、またカースト制度が民族に絡んでおり、非常に複雑です。

更に世界には「クリエイティブ・クラス」論にあるようにグローバル・エリート層が国境を越えて存在します。

このように単純に「国」では割り切れないのが現状であり、単純に「日本と○○国の友好」という枠組みでは収まらず、国際交流とは何かを考えざるを得ないのです。

どちからと言えば、私は、「国」単位の国際交流よりも、個人として対峙するようなコミュニケーションが望ましいと考えています。

ただ、「KOBE国際交流フェア2017」に2日参加してみると、「個」が重視され、「複雑で多様な時代」だからこそ、1年に1回ぐらいは、留学生たちが○○国出身という「国」単位でアイデンティティを確認し、「仲間」意識を確認するのも良いのではないかと思えてきました。

米国の社会学者ダニエル・ベルが、1980年に「国民国家は、生活の小さな問題をきめ細かく解決するには大きすぎ、大きな問題を処理するには、あまりにも小さすぎる」(慶応国際シンポジウム実行委員会編『地球社会への展望:慶応国際シンポジウム』日本生産性本部、261頁)と指摘したように、現代社会は一国の限界を突き付けて久しいです。

それでも、多様な人々を集約する「国」というアイデンティティも時には有効であり、これから変容することはあっても、重要な単位であることには変わりはないと考えます。

個人や集団が、多様な人々の集団である自分の「国」や「地域」を、私のストーリーとして語り(背負うことはないのですが)、ステレオタイプを越えて交流するのが国際交流の理想なのではないでしょうか。

2016年12月 7日 21:52

2016年カンボジア訪問記(13):総括 フラット化しない世界

昨年に引き続き、11月17日から11月23日まで神戸ユネスコ協会の理事の1人として、カンボジアのプノンペンとシャムリアップを訪問しました。同協会理事は5名、私が教える留学生6名(出身国はベトナム、中国、モンゴル)、合計11名の旅でした。

今回の1週間のカンボジア訪問は、コンポンチュナン州貧困地域のストイックアイトロミア小学校とソカーオン小学校、児童養護施設「夢ホーム」を訪問しました。4日目にシェムリアップに移動してからは、日本ユネスコ協会連盟が運営うるリエンダイ寺子屋復学支援クラスとリエンダイ寺子屋夜間サテライト教室を視察させて頂き、ボランティアの連続でした。

1年ぶりのカンボジアの印象は、イオンモールや自動車の増加に見られるように急激に経済が成長している姿でした。

そのような中、訪れた様々な教育施設は「成長」とは異なる状況にありました。貧しくなっているとは言えませんが、「豊かさ」に大きな隔たりがあります。特にリエンダイ寺子屋復学支援クラスとリエンダイ寺子屋夜間サテライト教室のある地域は、貧困と言って間違いがないと思われます。

私は、グローバル化現象を講義で語る時、トーマス・フリードマン著『フラット化する世界』(2005年)をたたき台として使うことが多いのですが、「フラット化」という言葉は少なくてもカンボジアには似合わないことを実感しました。

カンボジアに限ったことではありませんが、グローバル化で先進国と途上国の間の国家間の格差の「フラット化」が推進されても、各国国内の格差は大きくなるばかりなのです。

むしろ、国家間の「フラット化」が進めば進む程、多くの国家で格差が大きくなっていくように思えるのです。

「フラット化」は、グローバル化の一面でしかありません。むしろ、生活レベルでは「格差化」が著しいのです。

であるとすれば、格差対策はどうすればよいのでしょうか。国際的には「フラット化」している各国が税制などで調整することも大切でしょう。同時に、国を越えた援助が国境をクロスして広がっていくことも効果的かもしれません。

今回のカンボジアでのボランティアには、私が神戸で教える中国、モンゴル、ベトナムからの留学生と一緒に参加しました。

学生たちが言うように、私たちは「格差化」の前で殆ど「無力」でした。しかし、日本に留学している彼らが、神戸ユネスコ協会青年部の一員としてカンボジアでボランティア活動をすること自体が、新しい試みであったように思えます。

ただ、彼らは「先生の解釈はどうでもいいよ」、(泣いたり、笑ったりしていましたが)「楽しかったから」と言うかもしれません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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