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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

欧州事情

2017年5月15日 23:59

なぜ、マクロン大統領と大統領夫人の年齢差は許容されるのか?

5月7日のフランス大統領選挙の結果を受けて、14日、エマニュエル・マクロン氏がフランス第25代大統領に就任しました。

当ブログ(5月8日)でも記しました通り、格差化し、社会が分断されているフランスの大統領として前途多難のマクロン氏ですが、その奥様の存在が注目されています。

1953年4月生まれのブリジット・マクロン夫人は、現在、64歳であり、1977年12月生まれのマクロン大統領とは24歳8カ月年上です。

米国のドナルド・トランプ大統領も、1946年6月生まれの70歳、1970年4月のメラニア・トランプ夫人との年齢差は24歳2カ月年下です。

男女の違いはあるとはいえ、24歳の格差婚が批判されるのでしたら(マクロン大統領は批判されていないのですが)、フランス大統領と米国大統領も同じであるでしょう。

更にマクロン夫妻の場合は、2人の出会いが、当時、39歳のブリジットさんが高校の演劇の教師、15歳のエマニュエル・マクロン氏がブリジットさんの学生という関係だったことが特異ではあります(BBC 5月9日)。

その時、ブリジットさんは既婚であり、3人のお子さんがおられ、当然、マクロン氏の両親から関係を大反対されます。

それでも、両者は愛を貫き、2006年にブリジットさんは離婚し、2007年にマクロン氏は29歳、ブリッジさんが54歳の時に結婚します(CNN 4月25日)。

そして、今日、大統領夫人となるブリジットさんの存在は批判されるどころか、好感を持って受け止められています。世論調査会社「YouGov」によると、49%が彼女に好印象を抱いていると回答したのに対し、悪いイメージを抱いていると答えたのは26%に留まっています(HuffPost France, 5月12日)。

このようなブリジットさん人気を、青山学院大学・羽場久美子教授は「フランスは自由恋愛の国。個人が好きな形で恋愛することに社会が何か言うことはない。むしろ一途さが評価され女性票が集まったことは事実ではないか」と分析していますが、マクロン大統領にとってもプラスになっているのは確かです(J-Cast 5月15日)。

しかしながら、もし、24歳下の女性と再婚した男性(前妻との間に3人の子供がいる)がフランスの大統領もしくは大統領候補となった場合、ファーストレディに対して、たとえそれが「一途な愛」であっても同じような結果がでるのでしょうか。

それでは、米国のトランプ大統領や英国のチャールズ皇太子は、なぜ批判されてきたのでしょうか。

それが、フランスと米国(英国)との恋愛観、家族観の違いなのでしょうか。

もちろん、ブリジットさんの場合、個性が人々を魅了している点もあると思われますが、もう少し考えていきたいテーマです。

2017年5月 8日 14:30

フランス大統領選挙の結果を考える

フランス大統領選の決選投票が5月7日にありました。大方の予想通り、エマニュエル・マクロン氏(無所属)が66.1%の票を集め、マリーヌ・ルペン氏(国民戦線)を破り、第25代フランス共和国大統領に選ばれました。

しかし、得票率を単純に捉えることはできません。

国民戦線のルペン氏は(得票率33.9%で敗北しながらも)第1回投票よりも10ポイント近く票を伸ばしました。

第1回投票では、極右のマリーヌ・ルペン氏は7,678,491票(21.30%)でしたが、対極でありながら政策が似ている、極左のジャン=リュック・メランション氏が4位ながらも、7,059,951票(19.58%)を得ていました。

当ブログ(2017年4月28日付)でも言及しましたが、私は、共産党を中心とするメランション氏の票が、極右のルペン氏へ流れることは難しいと感じていました。

実際、それは、12%という歴史的な白票の多さとなって顕在化しました(「フランス大統領選で無効票・白票が50年ぶりの多さ「どちらの候補も信条に合わなかった」の声」HuffPost France, 5月8日)。

投票者7,752人を対象にしたOpinion Wayの調査によると、第1回選挙でメランション氏に投票した25%、共和党のフランソワ・フィヨン氏に入れた21%が白紙投票あるいは無効投票を行ったとされています(同上)。つまり、マクロン氏にもルペン氏にも入れられない有権者が多く存在したということになります。

マクロン氏の得票率66.1%は、ルペン氏に対するアンチ票と考えられ、実際の支持率は15%程であり、マクロン氏の支持基盤は極めて脆弱であると報じられています(マクロン氏、フランス大統領選に勝利 しかし残る「敗北の後味」HuffPost France, 5月8日)。

一方、ルペン氏は、固い支持票の上に、決選投票ではプラス約300万票を獲得しました。

ルペン氏の300万票は、「排外主義を支持する右翼、既存システムを強く憎む中間層のほか、極左と呼ばれる人の一部までもが、ルペン氏を選んだことも示唆する」と分析されていますが(同上)、それでも、全体としてみれば、白票が多かったことからメランション支持者は今回の決選投票においてルペン支持にまでは至っていないと言えるでしょう。

マクロン氏は勝利宣言において「彼らも怒りや不安を表明しました。私はその声を尊重し、国民が今後、極右に投票しないで済むよう、できることはすべて実行します」(NHK, 5月8日)と述べています。

しかし、政策上の類似点を見ますと、今回の多くの白票を、近未来においてマクロン氏が集約すると考えるよりも、ルペン氏とメランション氏の「共闘」によって「動かされる」可能性のほうがより現実的なのではないでしょうか。

そうであったとしても、2017年のフランスの有権者が、第二の「トランプ」現象を阻止したことは事実です。

2017年4月28日 19:54

2017年フランス大統領選挙:イデオロギーの残存が極右政権の誕生を阻止する?

4月23日、フランスの大統領選挙の第一回投票が行われ、独立系候補であるエマニュエル・マクロン前経済相が8,656,346票(得票率24.01%)で第一位、極右政党である国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が7,678,491票(21.30%)で第二位となりました(Ministère de l'Interieur interieur.gouv.fr )。

5月7日に、両者で決選投票が催されます。

注目すべき点は幾つかありますが、米国の大統領選挙のような番狂わせは起こらなかったことが第一でしょう。決選投票でもマクロン氏が勝つ可能性が高まっています。

その要因の一つは、上記の二人ではなく、4位となったジャン=リュック・メランション氏が7,059,951票(19.58%)にあると考えます(ちなみに3位は得票率20.01%の元首相フランソワ・フィヨン氏)。

戦前の「最悪」の予想として、極右で反EU、反グローバル化のルペン氏と極左で反EU、反グローバル化のメランション氏が、1位、2位となって決選投票に残ることが(既成政党支持者からは)懸念されておりました。

当ブログにおいても前回のフランス大統領選挙を分析しましたが(「フランス大統領選挙を振り返る(1):国民戦線と左派戦線の躍進」2012年5月26日付)、ルペン氏とメランション氏は、対立しながらも政策は反EU政策等、共通点が少なくなく、いずれにしても政権獲得後の見通しが不透明(不確実)であるとされていたからです。

しかし、メランション氏が4位であり、同時に、得票率が20%近くあったことはルペン氏にとってはマイナスになった可能性があります。

既に、決選投票においてフィヨン氏がマクロン氏への支持者を表明している通り、既成政党支持者はマクロン氏に流れます。一方、極右とされるルペン氏を、極左を代表するメランションの全ての支持者が決選投票で支持できるでしょうか。

両者は、非常に掲げる政策が似ています。しかし、極右と極左なのです。

この問いは、なぜ米国でトランプ氏が大統領になれたかを示唆しています。トランプは、左翼的であり、右翼的であり、(良し悪しは別として)今までにない民主党的な共和党候補者だったのです。

今回のフランス大統領選挙において、40%以上がルペン氏とメランション氏に投票しています。マジョリティには届きませんが、今回のフランスの大統領選においても、左翼的でかつ強力な民族主義者であるトランプ氏のような統一候補がいたとすれば、EUやグローバル化に不満を抱く下層の票を纏めることで、フランスでもオーソドックスな政治家に勝利したかもしれません。

極右と極左の候補者がいるフランスでは、極右政権が阻止され、極左が見当たらない米国ではトランプ氏が下層票を集約できたとすれば、フランスではイデオロギーの名残が極右政党(もしくは極左政党)の台頭を阻止しているという皮肉な現象となります。

上記から逆説的に申し上げれば、もし、ルペン氏が決選投票で勝つケースがあるとすれば、極左とされるメランションの支持者が、極右であるルペン氏の主張とメランション氏の主張が殆ど変わらないことに「気付いた」時であると考えられます。もちろん、それが良いことかどうかは別ですが。

2017年2月19日 23:59

ミシュランは間違っても「お墨付」

フランス中央部ブールジュの小さなレストランBouche a Oreilleが、同名の高級レストランと「間違われて」レストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」から一つ星を獲得してしまったというニュースがありました(AFPBB News , 2月18日)。

2日後には「間違い」が「修正」されたそうですが、人々が「間違われた店」に押し寄せ、従業員は忙しいそうです(Telegraph, 19 February 2017)。 

ミシュランのレストランガイド本は、極めて高い基準で美味しいお店を紹介してくれるものです。ミシュランの星が付けば、客はそのお店を信用し、そのお店で美味しい食事ができることを信じてでかけるのでしょう(もちろん、お店の雰囲気も兼ねてのはずです)。

今回の場合は、「間違い」だったのです。

「間違い」だったにもかかわらず、多くの人が本来は星がなく、「間違って」星が付けられた店に行きたがったのです。

その理由は何なのでしょうか。いくつか考えてみますと。

○本当に「間違い」なのか行って自らの目(舌)で確認したい
○ミシュランが「間違った」店として訪れたい
○行ったこと自体が話題になる(ミシェランのレストランには高くて行けないけど、「間違い」店ならば値段的に行ける)

もっとあるかもしれませんが、結果的にこの騒動は、ミシュランの影響力の大きさを見せつけることになったのは確かでしょう。ミシュランは間違っても、「お墨付」なのです。

人はなぜ「お墨付き」が必要なのでしょうか。

以前、日本の世界遺産ブームに関して論文を書いた際、私は「お墨付」についても論じざるを得ませんでした(拙稿「日本におけるユネスコ「世界遺産」の受容形態 : 「旅」による「世間」と「権威」の変容からの一考察」『国際日本学』第10号、2013)。

権力の「お墨付」に価値基準を委ねるというのは服従であり、支配関係の確立でもあります。そう突っぱねてもいいのすが、外食産業では、これだけお店が多くなると支配も何も、自分で調べることはできないでしょう。

ただ、それでも、やはり支配構造にどっぷり浸かるのは抵抗があると感じている人が多ければ、この「間違われた」お店を訪れ、自分の目で見て、食べて「ミシュランとは何か」を考えることは健全な行為であるようにも感じます。

もしくは、単なる話題性だけのためだったとすれば、それはミシュランの「支配の構造」から抜け出してはいないことになります。

このような色々な思考をさせて頂けるのもミシュランが間違ってくれたことからであり、これからも時々、間違って欲しいものです。

2017年1月18日 23:59

かつて自由貿易を推進した英国保守党、米国共和党が自ら反動的「保守主義」となる矛盾

1月17日、英国のテリーザ・メイ首相は、英国の欧州連合(EU)離脱(所謂「ブレグジット」)の交渉について演説しました。

要約すれば、「EUの単一市場から脱退」して、その上で、諸国と「新たな包括的で野心的かつ大胆な自由貿易協定」(FTA)の構築を目指しながらも、「EUからの移民は制限」するという内容でした(BBC News, 17 January 2017;日本経済新聞、2017年1月18日)。

また、上記のEU離脱の最終決定は、上下両院の承認のもと行われることも宣言しています(同上)。

英国のEU離脱は2016年6月23日の国民投票の結果を受けて行われていますが、現在、政権を担っている保守党は、国民投票でEU離脱反対を訴えてきましたので、今日、国民の決定としてブレグジットを進めなければいけない立場であるメイ首相と保守党にとっては、非常に苦しい展開になっているのは事実です。

フィナンシャル・タイムズ紙は、自由貿易を推進しヨーロッパの5億人の単一市場への参加を可能としたのは保守党のサッチャー元首相であったことが忘れられていると嘆いています(FT, 1月18日)。

同じ保守党のメイ首相の手によってEU市場から離脱することになったのですが、この流れは米国、メキシコ、カナダの間で結ばれた北米自由貿易協定(NAFTA)と米国共和党の関係に共通しています。

「米国第一」を掲げる新大統領トランプ氏は、NAFTAが米国人の仕事を奪っていると攻撃していますが、実際にNAFTAを作り上げ、1992年12月に署名したのは共和党のジョージ・H・W・ブッシュ元大統領なのです("Trump Is Wrong, NAFTA Was Not Bill Clinton's Creation", PoliticusUSA.com., 13 August 2016)。

今、自由貿易を推進してきた英国保守党、米国共和党は自らの手で「保守主義」へ時計の針を戻そうとしているかのように映ります。フォークランド紛争を戦ったサッチャー氏も湾岸戦争を始めたブッシュ氏もナショナリストですが、経済政策では、より大きな市場を肯定していたのです(二国間貿易の場合はそうとは言えないのですが)。

もっとも、当ブログ2016年11月12日付の「トランプ氏の勝利:グローバル化の鏡としての反グローバル化」でも記しました通り、ブレグジットも、トランプ氏の大統領選勝利も、グローバル化に対する反動として顕在化した現象であり、グローバル化はむしろそれらの「産みの親」なのです。

ですから、私はグローバル化を無視することや、拒否することは、(グローバル化が良い悪い、好き嫌いとは別の次元で)メイ首相の英国保守党にもトランプ大統領の米国共和党にもできないことであると考えます。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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