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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本社会

2018年7月 7日 02:01

悪質タックルをしてまで/裏口入学をしてまで、得ようとしたものは何だったのか?

7月4日、文部科学省科学技術・学術政策局長の佐野太氏が受託収賄容疑で逮捕されました。

同氏が官房長だった昨年5月、東京医科大への支援事業選定(私立大学研究ブランディング事業)で便宜を図った見返りに、今春の同大入試で息子の点数に加算させ合格させてもらったことが容疑とされています(毎日新聞, 7月6日)。

この事件は呆れるしかないのですが、東京医科大の名前が出たことによって学生たちからも怒りと心配の声が挙がっています。

例えば、時事通信は医学部に通う男子学生の声として「ばれないと思ったのだろうが、あまりに軽率。大学のイメージが悪くなる」というコメントを発表しています(時事通信, 7月4日)。

確かに、裏口入学があったとすれば、大きなダメージになると思われます。文科省の各種助成金の獲得も難しくなるでしょう。

しかしながら、西川史子さんが「医学部に裏口があるって思われるのが心外」、「もし裏口で入ったとしても国家試験には受からない」(7月8日, RBB TODAY)と言われるように、個のレベルでは国家試験というハードルがあるため、同大の学生が前途を絶たれるような危機ではないでしょう。

上記の一件は、5月23日に行われた日本大学アメフト部の内田正人前監督と井上奨コーチによる記者会見を思い出させました。

予定の時間を超えても投げかけられる質問に対し、日本大学の広報担当の米倉久邦氏が会見を打ち切ろうとしたため、質問しようと手を挙げた記者から「日大のブランドを失墜させることになる」と批判されます(文春オンライン, 5月29日; 朝日デジタル, 5月23日)。

そして、米倉氏が「(ブランドは)落ちません」「やめてください」と記者に反論したことが、逆に日本大学バッシングの火に油を注ぐことになってしまったのです(同上)。

実際、日本大学の学生さんたちは、この一連の事件と記者会見の後、「就活への影響を懸念している」と報道されています(めざましテレビ, 5月31日)。ただ、実害があったというケースは現段階では出ていないようです(同上)。

2017年5月の段階で、日本で最も在学生数の多く、6万7千人(67,933名)を超える日本大学に属する全学生を(「日本大学」studyplus)、一纏めにするようなことは企業もしないのでしょう。

そもそも、大学名だけで就職できるような時代は終わってしまったのかもしれません。

そう考えますと、裏口入学させてまで息子を医大に入れようとしたり、勝利のために(社会問題化するような)悪質なタックルをさせようとすることは、根本的に世の中の状況を読み違っていたと言わざるを得ません。

2018年7月 6日 00:00

Tea or Coffeeを超える発明か? 文化への挑戦か?

飛行機に乗りますとCAから必ずと言っていい程、食後に「Tea or Coffee?」と聞かれます。

言うまでもなくTeaなのかCoffeeなのかは、大きな「違い」なのです。欧米社会においては、大げさに表現すればTo be or not to beぐらいです。どちらがnotという意味ではないのですが。

非常にラフに申し上げて、ヨーロッパではブリテン島やアイルランド島はTeaの文化圏です(最近、イングランド人やアイルランド人はCoffeeも飲むようになりましたし、スコットランドは異なりますが)。一方で、欧州大陸は概してCoffee文化圏です。

ましてやTeaが日本茶となれば、Coffeeとの「違い」は更に明確になります。

この4月、コーヒーと国産茶葉を掛け合わせた、ペットボトル「ワンダ TEA COFFEE カフェラテ×焙じ茶 PET525ml」がアサヒ飲料から発売されました。

これは文化への新たな挑戦なのではないかと考え、発売直後に飲んでみました。感想としては。「ちょっと変わったCoffee」という感じです。違和感まで行きません。Tea/Coffeeの対決を脳裏から打ち消せば、Coffeeとしていけそうです。

そもそも、製造元のアサヒ飲料によりますと、「飲みやすいCoffee」として商品開発したようです。

「コーヒーに関心が高まり、飲用機会が増える20代を中心とした若年層に対し、コーヒーを楽しむきっかけとなる商品を目指し、若年層の嗜好や飲用シーンに着目して開発した商品です」(「ニュースリリース」アサヒ飲料, 2018年3月5日)

ということで、Tea or Coffeeを意識したものではなかったのですが、この「ワンダ TEA COFFEE カフェラテ×焙じ茶」は賛否両論でした。

私の周りでも、ある中国からの留学生は、買ったけど、不味かったといい、あるベトナムからの留学生は美味しかったですと。ネットでも「2度目を買うことはない」派と「意外に美味しい」派に分かれているようです(全体として、これはCoffeeだという認識が主流です)。

もっとも、このように話題になるだけで、新商品としては十分に成功なのでしょう。先月、アサヒ飲料は第二弾「ワンダ TEA COFFEE ブラック×煎茶 PET525ml」を発売しました。

早速、これも購入して「試飲」しましたが、やはり、新手のCoffeeでした。全商品がカフェラテ味ならば、最新作は文字通りブラック味です。

「ブラック×煎茶」は、Coffeeを飲み易くするためにお茶の使うというアイデアを、どう評価するべきかをより突き付けてきているようにも思えてきました。

どうでもいいといえば、どうでもいいのですが、欧米人にはない感覚であり、日本的であもあります。ヨーロッパに持って行って試飲会を開いたら面白いかもしれません。

2018年6月23日 00:20

壁の崩壊から見えたこと: 分からなければ手を抜くのか?

大阪で月曜日に発生したM6.1の地震では大阪府高槻市の寿栄小学校でブロック塀が倒れ、4年生の三宅璃奈さんが死亡しました。

高槻市の教育委員会によりますと、倒れたブロック塀は高さが3.5メートルあり、建築基準法では2.2メートルを超えるブロック塀を作ることは原則認められておらず、すなわち違法建築だったそうです(TBS News, 6月19日 6時3分)。

また、高さ1.2メートルを超える塀には、強度を補うための「控壁」と呼ばれる壁を設置する義務がありますが、この「控壁」も設置されていなかったとされています(同上)。

問題が深刻であるのは、この違法建築が寿栄小学校だけに留まらなかったことです。

高槻市の技術職員が目視検査で小中全59校を調べたところ、寿栄小の他に小学校9校、中学校6校で「控壁」のない違反状態の塀が確認されています(時事通信, 6月22日)。高さが基準を超えているとみられる塀も6校あり、同法違反の塀がある学校は全体の約3分の1に至っているのです(同上)。

これは高槻市だけで済むことなのしょうか。早急に、全国的に調査すべきであると考えます。

小中学校は避難場所に指定されているところが多く、避難場所に違法建築があり、災害時に子供たちが避難場所で「被災」してしまうとすれば冗談にもなりません。

昨日、2018 FIFAワールドカップ・ロシア大会から導入されたビデオ副審(VAR=ビデオ・アシスタントレフェリー)制度について言及しました。プロ野球も今シーズンから映像での「リプレイ検証」が用いられ、これらが見えてしまうことによってスポーツが変わるのではないかと書きました。

社会において地震などの災害も、見えなかったところを「露呈」させてしまう力があります。

それは、時に、非常時においても暴動が起こらない日本人の「美徳」も顕します。私は、これは災害時においてさえ、人の目(世間)があるからだと考えています。

それではなぜ、今回、小学校の壁建設において、いい加減な仕事をしてしまったのでしょうか(長らく、日本人は仕事に「拘る」職人的気質が評価されてきたのです)。無名のコンクリ-ト壁は、誰が作ったのかは分からなければ(人の目がなければ)手を抜くのでしょうか。

いずれにせよ、「見えて」しまったのならば、仕方ありません。修正するしかないのです。

そして、次回の地震で見えた時、見えないところまでしっかり仕事をしてきたことを証明しなければなりません。

2018年6月19日 23:20

グローバル化する地震体験

6月18日(月)の午前7時58分頃、大阪府北部でM6.1の地震が発生しました。私は、非常勤で担当しております早稲田大学エクステンションセンターの講義があり、東京に滞在していました。

私が神戸三宮でフルタイムで勤務する大学には多くの留学生が在籍しています。その留学生たちは殆ど全て兵庫県、大阪府に住んでいます。

彼らは、中国、韓国、ベトナム、ネパール、モンゴル、バングラデッシュ、ミャンマー、台湾、ウガンダ、セネガル等から来ており、今回は、初めての地震体験となった人もいたようです。

あるベトナムからきた女子学生が、「先生、余震が終わるまでベトナムに帰国したい」と相談してきました。

「もし、帰るなら何日ぐらいですか」と聞いたところ、彼女は「テレビでは、大きな余震は2日から3日と言っているので、1週間後に日本に戻ってきます」と話すのです。私は、「帰国するのは自由ですけれど、1週間では、あまり変わらないかもしれないですよ」「余震は数カ月続く場合もあります」となだめて落ち着かせました。

一方で、あるネパール人の男子学生は、2015年4月25日にネパールのカトマンズにて、人生で初めて地震を経験した後に、来日したそうです。進学した日本語学校は、熊本。そして、2016年4月14日、熊本で被災します。2つの大地震を経て、今回、また大阪で地震に遭い「地震が自分を追いかけてくるんです」と苦笑いしていました。

ヒト、モノ、カネが国境を超えるグローバル化する今日、地震の体験も国際化しています。

しかしながら、私が2015年9月、2017年9月の2度のネパール訪問から学んだことは、震災対策は十分には共有されていないことでした。日本人なら小学校、幼稚園から何度も経験している避難訓練もネパールではされていなかったのです。

2017年9月に神戸ユネスコ協会の国際ボランティアとしてネパールの首都カトマンズを訪れた際は、ネパール語の避難訓練書を学生たちと一緒に作ってもっていき、小学校、中学校、高校で避難訓練をしました。現地の子供たちは、真剣に私たちと「逃げ方」を練習しました。日本人の当たり前の常識が、ネパールでは当たり前ではないのです。

実のところ、現地では赤十字のマニュアルもありましたが、学校で使われずに置きっぱなしになっていました。やはり、一緒に訓練しないとダメなのです。

私が教える留学生たちは、将来、母国に帰るかもしれませんが、地震の怖い経験だけではなく、「地震の知識」、「地震対策」も持ち帰って欲しいと願っています。

2018年6月13日 19:55

ドラマ『おっさんずラブ』が描く「誰もが」の可能性

ドラマ『おっさんずラブ』が6月2日の放送で最終回を迎えました。

このドラマの面白さについては、当ブログ2018年5月19日付で既に言及しましたが、放送終了後も、その人気はすさまじいものがあります。

第6話と最終話となった第7話の放送直後には、2週連続でTwitter世界トレンドランキング1位を獲得します(Real Sound, 6月4日)。

最終回放送後、『おっさんずラブ』のBlu-ray/DVDが10月5日に発売されることが発表されると、同商品の予約受付を開始した「テレアサショップonline」がアクセス集中により、一時的にサイトが繋がり難くなってしまい(ニコニコニュース, 6月5日)、無料動画配信サービス「テレ朝キャッチアップ」での見逃し配信の再生回数は、121万2000回を突破し、同局の史上最高記録となっています(毎日新聞, 2018年6月11日)。

ネタバレですが、最終回は、不動産会社の営業をする主人公の33歳の男性・春田は、上司の55歳の部長・黒澤は男性と25歳の後輩の牧・男性の間で揺れ動きながら、牧のところに戻っていきます。

予想通りであるところもありますが、最終回から考えると、春田と牧のカップルを「普通」に見せるために吉田鋼太郎さんが演じた黒澤部長はトリックスターとしてコミカルに存在する必要があったことが分かります。逆に言えば、このドラマの「リアリティ」は黒澤部長にかかっていたことになるのでしょう。

その成功は、登場人物の黒澤部長の名前で投稿されているInstagramアカウント「武蔵の部屋」のフォロワーは50万人を越えていることからも分かります(Real Sound, 6月4日)。

それでは、妻帯者で既婚歴何十年の55歳の男性が、ある日、部下の男性を好きになることはあるのでしょうか。そして、女性が恋愛対象のその部下が、男性を恋するようになるのでしょうか。

おそらく、それを面白おかしく、しかし、「あり」にできるかどうかがドラマのポイントだったかもしれません。

ところで、ある日突然、恋愛対象の性が変わることが、本当にあるのでしょうか。

2015年4月の「電通ダイバーシティ・ラボ」による調査では(全国69,989名を対象)同性愛者を含むLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の割合は、7.6%とされています(dentsu「電通ダイバーシティ・ラボが『LGBT調査2015』を実施」, 2015年4月23日)。

7.6%は生まれつきLGBTであった方々と捉えるべきなのでしょうか。そういう方もおられるかもしれませんが、ある環境や条件によって、異性愛者でも誰もがそうなる可能性を100%は否定ができないのかもしれません。

誰もがと考えると、ドラマ『おっさんずラブ』はコメディとは言えなくなっていきます。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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