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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本社会

2018年11月11日 00:01

英語を越えるグローバリゼーションが起こっている

先日、私が教える大学の学生と共に神戸市の消防局に見学に行きました。担当の方に大変丁寧にご説明頂きましたので、ここで文句を言いたい訳ではありません。

ただ、少し引っかかることがありました。

広報の担当の方が、近年、神戸市でも日本語ができない外国籍の住民の方が増えており、また観光都市で外国人旅行者も少なくないため、当局では、英語でも対応できるようにしておりますと話されました。

確かに「さすが国際都市・神戸」と言いたいのですが、実は、神戸で増えているのはベトナム人であり、ベトナム人の多くは英語はできないのです。そのことを質問させて頂きますと、「中国語、スペイン語、フランス語等の通訳の方とも契約しております」、「それで今までは問題はありませんでした」とお答えになられました。

ベトナム人がフランス語を習っていたのは数世代前であり、来日したばかりで日本語学校に通う多くのベトナム人は、緊急時に何語でヘルプを求めればいいのかと考え込んでしまいました。来年から外国人労働者も合法化されるようですが、日本語も英語もできないベトナム出身者が増加したらどうするのでしょうか。

神戸は国際都市であり、国際化という点においては全国でも先進都市であると存じます。しかしながら、それでも何か最新の(足元からの)グローバル化とは違う方を向いているようにも見えるのです。もちろん、これは神戸だけの問題ではないでしょうが。

確かに日本人にとって、英語は国際化の第一歩です。大学入試にしても、就職にしても、21世紀に英語なしの成功はないと言っても過言でないでしょう。事実、世界のビジネス言語は、英語なのです。

その上で、グローバル化を考えていきますと、グローバル化は英語よりも遥かに広範囲であり、英語だけでは事足りないのです。

私は英語を越えるグローバリゼーションという状況が、世界各地で散見されるように感じます。

先日、当ブログ(2018年11月 5日付)にて「外国人労働者の受け入れには、国民的合意(覚悟)が必要である」というタイトルで外国人労働者受け入れには覚悟(と準備)が必要なのではないかと記しましたが、外国人を受け入れる準備には言語問題の解決も避けて通れないでしょう。

外国人は皆、英語を話すと考えたり、国際化は英語だけで何とかなるという認識は正しくないのではないでしょうか。

2018年11月 3日 00:44

どうしたら、日本の大学生が勉強をするようになるのか?

1カ月ほど前に経団連の中西宏明会長が、定例記者会見(9月25日)にて「就活のあり方」に関連し、日本の大学生の勉強不足を指摘しました。

中西会長は以下のように述べています。

「現在の大学教育について、企業側も採用にあたり学業の成果を重視してこなかった点は大いに反省すべきである。学生がしっかり勉強し、企業がそうした学生をきちんと評価し、採用することが重要である」(「定例記者会見における中西会長発言要旨」日本経済団体連合会HP)。

「欧米のみならず、中国、シンガポール等のアジアのトップレベルの大学の学生の勉強量は日本の大学生の比ではない。日本の場合は、入学することに比べて、卒業することはさほど難しくない。企業の側もこの実態をそのまま受け止めてしまっている。こうしたことが私の問題意識の根本にある。学生がしっかり勉強するよう、大学には有意義な教育を実施してもらいたい」(同上)。

おっしゃっていることは、もっともなのですが、経団連会長から「もっと勉強しろ」という批判に対し、「企業の方だって大学生に対して早々から就職活動を強いている事だし、それほど大学での学業や学歴を重視していないご様子」などの反論もありました(Blogos, 9月28日; Mag2News, 10月2日)。実際、日本の企業は大学の成績をあまり考慮しないと、各大学の就職担当者が口癖のように言うものです。

確かに、欧米の大学生は日本の大学生よりも勉強します。それは何よりも企業が、大学の成績を重視するからです。

当ブログでも何度か指摘してきましたが、欧米の企業が、大学生を採用する際に4年間の成績(GPA)を求める傾向があります。

GPAとはGrade Point Averageの略であり、5段階評価で最上位のAを4.0とした成績の平均値です。

私が学んだ英国ではGPAを用いていませんが、以下のようにFirstやSecondという表現でGPA計算のようなことをします。

First(GPA3.68-4.00)
Upper Second(GPA3.33-3.67) 
Lower Second(GPA3.00-3.32)
Third(GPA2.50-2.99)
Ordinary Pass(GPA2.00-2.49)

First(GPA3.68-4.00)を獲得した場合、英国では多くの大学でFirst-class honours (首席卒、優等学位卒)と称されます。 

英国では、どこの大学を卒業したかと同じくらい(場合によってはそれ以上)、どの成績で卒業したかが問われます。それは就職の時にも、モノを言うのです。

具体的に説明しますと、A社はB大学のCさんに内定を出す際、卒業段階でLower Second(GPA3.0以上)の成績で卒業することを採用の条件とします。条件を満たさないと不採用になりますから、人生を賭けて猛勉強することになります(大学や人物によって条件は変化します)。

大学の教育の質が一様ではないと言われるかもしれません(それは日本だけではないでしょう)。しかしながら、とりあえず、(日本を代表する企業の連合会である)経団連の企業から内定にGPAの条件を付けてみたらどうでしょうか。

日本の大学生にとっては迷惑な話かもしれませんが、グローバル化の時代です。日本の大学生だけが勉強しない訳にはいかないのです。

内定に成績条件が付けば、本当に学生も変わるし、大学も変わると思います。

経団連さん、いかがでしょうか。

2018年11月 2日 23:59

自己責任論と国益: 日本だけが紛争地域の情報を外電に頼っていいのか?

先月下旬、内戦下のシリアで2015年に武装勢力に拘束され、約3年4カ月ぶりに解放されたジャーナリストの安田純平氏が帰国して以降、安田さんに対する自己責任論が議論されています。

代表的な言葉を抜き出すと「あなたを助けるためにかかった諸々の費用はすべて負担してくださいね」、「行くなと言われている場所に自己責任で行った結果でしょ?」(Litera, 10月25日)というようなものです。

当事者である安田さんも、11月2日、日本記者クラブで記者会見して、このような自己責任論に対し「紛争地という場所に行く以上は、当然、自己責任と考えています」、「はっきり言って自業自得」と認めています。

ただ、その上で、個人の自己責任と政府がどう対応するかは別物だとして、「本人がどういう人かよって行政の対応が変わるとなると、民主主義国家として重大な問題です」とも言われています。

言い換えれば、紛争地に行って危険な目にあったり、場合によっては殺されてしまうかもしれない状況を招くのは自己責任であるが、国家(政府)はどんな人物であろうとも助けなくてはいけないということになります。

国家(State)は、領土、国民、主権の構成要素から成立しており、国民の命を守るのは、領土を守るのと同様に国家の義務であり、日本も独立国家ですので、当然と言えば当然の理屈です。

この話題を留学生たちと話していたところ、外国では自己責任論は殆ど聞かないということになり(事実、歴史を紐解けば、自国民保護を言い訳に外国に干渉することのほうがむしろ問題でした)「こんな自己責任論がでるなら、日本はフリージャーナリストを紛争地域に行かせないようして、BBCやCNN、もしくは欧米のフリージャーナリストの情報を買えばいいのではないでしょうか」「外国人ならば自己責任論にならないでしょうから」という声が挙がりました。

確かに傭兵ならぬ傭ジャーナリスト論は一理あるんですが、その前になぜ日本の大手メディアは紛争地取材に行かないのかという問題を片付けなくてはいけません。

この問題に関して週刊誌報道では「仮に政府の制止を振り切って1社だけが単独で現地スクープを連発したら、横並び意識が強い記者クラブの中で、そのメディアは居心地が悪くなるだけ。政府からも嫌がらせされるかもしれない」という説を主張しています。それ故に、日本の大手メディアはリスクを負わずに、安田氏のようなフリーランスジャーナリストに頼っているというのです(週刊実話, 11月2日)。

私は横並び主義であるかどうかよりも、社員を紛争地に行かせることに(湾岸戦争までは派遣しており、亡くなるようなケースもあったように記憶していますが)、社内のコンセンサスが得られないことにあるような気がします。

いずれにしましても、日本の大手メディアは紛争地取材には積極的ではないのです。その上、フリージャーナリストが紛争地に行かなくなりますと、日本人が日本語で得る情報が極めて限定的になる可能性があります(外電を買うにしても英語等の外国語から日本語に翻訳するタイムラグが生じるでしょう)。

上記の留学生の声のように「それでもいい」という考え方もありますが、私は各国のメディアがそれぞれの観方で紛争地を観ることは重要であるように思います。また、高度情報化社会において、世界中の「知られていない」情報を得ることは大切なことです。

そう考えますと、(何でもナショナリズムに訴えれば良い訳ではないですが)安田さんのような日本語ネイティブの日本人のフリージャーナリストの存在は国益にも適うことになるのではないでしょうか。

安田さんは「自己責任」で行かれたのですが、将来は誰かフリージャーナリストに(お願いして)行ってもらうことになるのかもしれません。

2018年9月19日 00:06

講義が始まっても、留学生が母国から戻ってこない!

私が勤務しております大学は、神戸にあります。

ベトナム、中国、ネパール、モンゴル、バングラデッシュ等アジア各国からの留学生が非常に多いのですが、今週から後期の講義が始まったにもかかわらず、一時帰国していた少なからずの学生たちが神戸に戻ってきておりません。

その第一の理由は、台風21号で大きな被害を受けた関西空港のターミナル1が9月13日まで閉鎖さてており、部分的に復旧した9月14日以降も発着が制限されているからです。

実は、私も9月2日~9月9日の予定で、神戸ユネスコ協会主催のモンゴル国際ボランティアに参加し、モンゴルに出かけていました。関西空港発着で中国国際航空を利用したのですが、現地滞在中の9月6日に(9月9日発の往路)フライトがキャンセルされました。

それではということで、即、航空会社に電話しまして9日以降の東京(成田、羽田)着や名古屋着のフライトを再予約しようとしたのですが、既に9月9日~9月11日は満席で、結局、9月12日の羽田着のフライトで帰国しました。

即電話しても、このような状態ですので、1日遅れれば、帰国の便が、もう数日遅れてしまったことでしょう。

もちろん、別ルートで(帰国便は日本各地にどこでも良いという条件で)新しい航空券を購入することはできるでしょうが、多くの学生はお金がありませんので、買い直すことはしないでしょう。

更に、格安航空券の場合、他の航空会社に代えての変更はできないことが多く、ひたすら購入した航空会社(関空以外の空港へのフライト)の空きを探すしかないことになります。結果として、予定よりも1週間とか10日遅れての帰国になることもあるでしょう。

留学生ばかりではなく、観光客もビジネスマンも関西空港が制限されているために大きな影響を受けており、経済的なマイナスは計り知れないように感じます。

報じられています通り、関西空港、伊丹空港、神戸空港は近距離にあり、急遽、伊丹と神戸に国際線を含む増便の受け入れ態勢が整備されましたが、結局、国際便は就航しないことになりそうです。

しかしながら、また台風は来ます。

空港関係者の話では、冠水直後、関西空港ターミナル1では魚が泳いでいたそうですが、地盤沈下している関空の滑走路が、またいつ魚の道になるのか分からないのです。

長期的な視野に立って、この機会に両空港に(せめて神戸だけでも)国際線の定期便を移行し、常に関西空港のバックアップができるようにすべきであるのではないでしょうか。

私は神戸に住んでいるにもかかわらず、神戸空港を利用したことが数回しかありません。多くの国際線が関西空港発だからのですが、神戸空港を関空の第三、第四ターミナルのような位置付けで捉えていったほうが良いように思います。

2018年9月16日 23:59

悲しい今夜は「林檎殺人事件」を歌いたい

先日、『ちびまる子ちゃん』の原作者であるさくらももこさんが亡くなられたことを記したばかりなのですが、続いて樹木希林さんが亡くなられました。

殆どの日本人が、人生のどこかで樹木希林さんが出演されておらるCM、ドラマ、映画を目にしてきたのではないでしょうか。

私は小学校に入ったばかりの頃、大人気であったドラマ『ムー』(1977年)を大人たちに隠れ覗いていた記憶があります。そして、なぜか、いつも隣に亡くなった祖母がいたような記憶があります(番組が最後になる前に寝かしつけられていたからかもしれません)。

そして、『ムー』の続編『ムー一族』(1978年)から出たヒット曲「林檎殺人事件」は、何十年も口ずさんできました。

希林さんが演じた『ムー』や『ムー一族』のかねたさん、そして、当時、流れていたた希林さんと岸本加世子さんのフジカラーのコミカルなCM(「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに映ります」)の希林さんのイメージは、その後、何十年も一貫していたような気がします。

もちろん、作家・井上靖さんの母親役(映画『わが母の記』、2012年)、どら焼き屋の職人役(映画『あん』2013年)、映画『万引き家族』(2018年)のお祖母ちゃんも、役は違うのです。しかしながら、皆、少し希林さんが入っているのです。

ちょっと、『ムーミン』の「ミー」のような意地悪な、でも本当は心優しいお祖母さんという一貫性は、多くの人々に愛されてきました。

しかしながら、希林さんは孤高を愛する個人主義者でした。事務所も個人で全て一人でやられてきたと報じられています(サンスポ、2015年12月31日)。

亡くなられたことが公にされてまだ数時間なのに訃報を受けて、多くの著名人がコメントを発表しています。そして、その中で希林さんは以下のように表現されています。

「神々しい」(是枝裕和監督)(毎日新聞、2018年9月16日)、「美しく、凛々しく」、「憧れ」(斉藤由貴さん)(日刊スポーツ、2018年9月16日)、「あまりにも大き過ぎる存在」(福山雅治さん)(朝日デジタル、2018年9月16日)。

映画『あん』の監督である河瀬直美さんは、希林さんが同映画で扮した徳江さんの最期の言葉を送っています(日刊スポーツ、2018年9月16日)。

「私たちはこの世を見るために、聞くために、生まれて来た。だから、何かになれなくても、私たちには、生きる意味があるのよ」。

私にとっては希林さんは「かっこ良い」という表現が一番しっくりきます。皆、希林さんのように、ぶつぶつ言いながら、かっこよく生きたいんです。

私はカラオケは行かないのですが、今日に限っては「林檎殺人事件」をかっこよく歌いたい。

樹木希林さんのご冥福をお祈りいたします。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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