QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本政治

2017年10月28日 01:15

「上から」の賃上げ要求を考える

安倍晋三首相は10月26日の経済財政諮問会議にて、「生産性革命をしっかり進める中で3%の賃上げが実現するよう期待する」と述べ、定期昇給とベースアップを合わせて約2%だった17年春闘の実績を上回る賃上げを求めました(JIJI.com, 10月26日)。

その上で、安倍首相は、賃上げに積極的に取り組む企業に対する税制面での優遇措置を検討することまでも表明しました(NHK News Web, 10月26日)。

安倍首相の組合顔負けの賃上げ要求は5年連続であり(日本経済新聞, 2017年10月26日)、すっかり定着してきています。

従来、賃上げ要求といえば、労働組合のイメージが強いものです。賃金は、そもそも、労使交渉で決まるものであるのですが、このところは、首相が介入するため、「官製春闘」とも揶揄されています(Reuters, 10月26日)。

ただ、私は、自由主義者が(もし、安倍首相がそうならば)、賃上げに賛成することはあると考えます。

そして、ただ、政府が「権力」によって賃上げを促せば、高付加価値に基づく競争力がない企業が淘汰されてくこともあるでしょう(それが目的だとは思えませんが)。

そもそも、高賃金政策は、「弱肉強食の理論」でもあると思います。

数年前、ユニクロの「世界同一賃金」が話題になりましたが、グローバル化は賃金もグローバル化していきます。単純に言ってしまえば、ある企業が、グローバル水準の高賃金政策を採るならば、その企業がグローバル水準の競争力がないと、持たないのです。

安倍政権も、もちろん、その点をフォローしており、政府は「生産性革命」を掲げています。具体的には企業の設備投資を促し、イノベーションを起こすことを目的としているとされます(日刊工業新聞, 2015年10月15日)。

「生産性革命」も、「革命」と言いながら、政府の政策ですので、言うならば「上からの革命」であり、企業がどこまでその趣旨を組んで、(国際)競争力を付けられるか気になるところです。

私は、企業がグローバル化すれば、自然に賃金は上昇していくと考えます。高度人材(ヒト)を集めない限り、グローバルマーケットにおいて持続可能な成功は難しく、そして、高度人材は安くはないのです(グローバル企業で、低賃金ならば、その企業からは「頭脳流出」が止まらないはずです)。

逆に、(国際)競争力が弱い企業は、必然的に低賃金になるでしょう。

そう考えますと、政府がどこまで賃上げに関与すべきかは悩ましいところです。

2017年10月26日 01:38

「排除の論理」を考える

今回の選挙前の報道では、「排除の論理」という言葉が繰り返し使われました。

そして、「希望の党」の票が伸び悩んだ理由として、この「排除の論理」を用いたことが挙げられています。

同党の小池百合子代表が、民進党の前原誠司代表と「民進党」の「合流」を前提として会合を持った9月29日、小池氏は「私どもの政策に合致するのかどうか、さまざまな観点から絞り込みをしていきたい。全員を受け入れるということはさらさらない」と語りました(毎日新聞, 2017年9月30日)。

具体的に、「希望の党」への合流は、「安全保障法制や憲法改正などへの賛同など、一定の条件を満たした候補者のみ合流を認める」とされ、それが「排除の論理」と称されていきます(同上)。

この「排除の論理」は非常に不評で、「希望の党」の敗北を受け、小池氏は10月25日、民進党との合流に際し、自らが持ち出した「排除の論理」について「多くの方々を傷つけてしまった。改めて謝りたい」と謝罪しました(産経ニュース, 2017年10月25日)。

私は、個人的には政治政党が、政策理念や最終目標によって党員や選挙候補者を「限定」(排除)しても何の問題もないと考えます。むしろ、政党はそうすべきなのです。

同じ目的や考え方の人間を、好き嫌いで追い出してしまうことが、本来の「排除の論理」であり、安全保障法制や憲法改正に関して、異なる意見の政治家を仲間に入れないことは、当然です。

むしろ、誰でも入れてしまうようなイデオロギー上、幅広い政党は、総選挙後に党内情勢によって基本政策が変わってしまう可能性があり、「民主的」ではないのです。ですから、小池氏がしようとしたことは間違っていないと認識します。

ただ、問題があるとすれば、「立憲民主党」がしたように政策を掲げて、「この指とまれ」にすれば良いところを、「排除」というネガティブな表現を用いたことで、選挙キャンペーン上、失敗してしまったことなのです。

躍進した「立憲民主党」は、むしろ、「排除」された人々が集まったので、意見の擦り合わせがやり易かったのかもしれませんので、そういう意味では、「立憲民主党」の躍進は、「希望の党」の稚拙なキャンペーンにあったというべきなのかもしれないのです。

いずれにしましても、「民進党」が分裂したことは、マイナス点ばかりではなく、分かり易さにおいては良かったのではないかと考えます。後は、与党も、もっと分かり易くなれば良いと思わざるを得ません。

2017年10月23日 23:59

立憲民主党の躍進と急進化しない政治

第48回衆議院総選挙が終わりました。

与党・「自由民主党」は改選前の284議席を守り、マスコミでは「自民大勝」「圧勝」と報じられています(Bloomberg, 10月22日; JIJI.COM, 10月23日)。

確かに、連立を組む「公明党」の獲得議席数を加えると与党は3分の2の310議席を越え、313議席となっており、十分に「勝利」と言えるでしょう。

しかしながら、「公明党」は34議席から5議席減らして29議席に留まっており、内閣支持率は36%と低迷し、反対に不支持が42%と逆転しており(毎日新聞, 10月23日)、「大勝利」とまで言えるかどうかは微妙ではあります。

反対に「大敗北」とされた「希望の党」は、50議席を獲得しています。選挙前は57議席ですから「敗北」には違いませんが「公明党」もマイナス5議席、「共産党」が総選挙前の21議席から12議席まで9議席も減らしていますので、想定された「最悪の状況」ではなかったと考えます。

結局、完全な意味での勝者は15議席から3倍以上の55議席に増やした「立憲民主党」だけだったかもしれません。

それでは、「立憲民主党」はなぜ勝てたのでしょうか。

9月28日、「民進党」の両院議員総会において同党の前原誠司代表が、「民進党」から「希望の党」への合流を決定した際、枝野幸男代表が、(安保法制容認という踏み絵を拒否して)「立憲民主党」を立ち上げ、「筋を通した」ことにあるとされています(時事通信、10月17日)。

石原慎太郎・元都知事がツイッターで「筋を通した枝野は本物の男に見える」(産経ニュース, 10月16日)と表現している通り、大儀なく「希望の党」に移ろうとした元民進党の政治家よりも、主張を貫いたように見える枝野氏が(日本では珍しく)政治家らしく受け止められたのは事実でしょう。

結果として「立憲民主党」はリベラル派を結集したような形で、左派からの票を奪い、野党第一党になりました。特に前回、共産党を支持した層から多くの票が流れたと捉えられています。

なぜ、「立憲民主党」がリベラル票を集約できたのかは、今後の分析課題になりますが、少なくとも従来の左派・リベラル政党がその力がなかったことは確かでしょう。

私は、欧州各国あるいは米国の政治状況が急進化している状況から、中間層が弱体化している日本においても、政治が急進化するのではないかと考えてきました。しかし、今回の「立憲民主党」の躍進も欧米型ではないのです。

日本では潜在的な極右支持者が「自民党」に吸収されており、そして、潜在的な極左支持者も今回は「立憲民主党」に吸収されたように見えます。依然として、グローバル化、格差化等によって分断されている国民の実態が、政治において「見えない」のです。

しかしながら、「自民党」や「立憲民主党」が大きく有権者の期待を裏切った場合、分裂という形で更なる極右・極左政党が誕生する可能性も否定できないのではないでしょうか。

2017年8月 6日 23:59

「革命大臣」の誕生から時代の変化と言葉の意味を考える

8月3日に第3次安倍第3次改造内閣が公表されました。

官房長官として歴代1位の在職日数を記録更新中の菅義偉官房長官が、結果本位の「仕事人内閣」と言われています通り、ベテラン揃いの顔ぶれです(BLOGOS, 2017年08月06日)(確かに、安定感はあるのですが、それでは以前の内閣の人選は「仕事(人)」ではなかったのかと突っ込みが入りそうではあります)。

仕事人を集めた場合、「新しさ」には欠けてしまうのですが、今回は茂木敏充氏が兼務する「人づくり革命担当」が話題です。

当然のように、(被支配者と支配者の逆転を指す)センセーショナルな「革命」という言葉が、保守的与党の大臣の役職としてふさわしいかという議論が巻き起こっています(スポニチ、8月6日)。

綱領に「革命」を掲げる元祖「革命政党」の共産党は怒り心頭です。小池晃書記局長は、「『革命』とは、ある階級からある階級に政治権力が変わるような、社会科学の用語としても重い言葉だ」と定義し、「『革命』という言葉を軽々しく使わないでほしい」と不快感を示しています(産経ニュース、8月3日)。

安倍政権の「革命」の定義は、「人づくり革命」を掲げた以下の内閣基本方針「(1)復興の加速化(2)人づくり革命の断行(3)一億総活躍社会の実現(4)世界の中心で輝く日本」から読み取れます(日本経済新聞, 8月4日)。

ここで「革命」とは、強い意志を持って断固として「変革」をやり遂げるというような強調として使われる言葉のようです。少し強引に英語の「革命=revolution」に近づけて「ひっくり返す」というニュアンスを読み取れば、固定観念を打破するような意味合いもあるかもしれません。

好意的に読み取ることはできますが、やはり、政治用語的にはミスマッチでしょう。

しかしながら、それでも「保守」であるとされる自由民主党政権が大臣職に「革命」という言葉を用いたことに時代の変化を感じます。

いくらなんでも、東側に革命政権、革命国家が存在していた冷戦時代では、「革命大臣」はあり得ない名称であったと考えるからです。

また、安倍政権は歴代の自由民主党の中では、その賛否は別として、「保守」よりも英国のサッチャー政権に似た「革命的右派」政権であるともいえるのかもしれません。

アカデミックにも、そろそろ、右(右翼)から、上(権力)からの「革命」という分析が、左から下からと同等に扱われても良いと考えますが、もちろん、その結果が肯定できるものになるかどうかも別です。

話は変わりますが、昨年、わが愛する阪神タイガースは「超変革」を掲げました。

しかし、「超変革」のプロセスは、まだまだ道半ばです。サンテレビのTV中継「サンテレビボックス席」(ゲームセットまで完全中継!)を日々、観ながら実感することは、組織を変えるということはキャッチフレーズ程、簡単ではないということです。ましてや、社会全体を変えるとなれば。

2017年7月31日 23:46

稲田大臣と蓮舫代表の辞任を考える

前々回の当ブログにて記しました通り、北朝鮮が弾道ミサイルを日本の排他的経済水域内(EEZ)に発射した7月28日、稲田朋美防衛大臣が辞任致しました。

辞めたのは稲田大臣だけではなく、その前日、野党第1党の民進党の蓮舫代表も辞任しています。

蓮舫代表は野党ですが、安倍政権は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げており(「すべての女性が輝く社会づくり本部」『首相官邸HP』)、防衛大臣や野党第一党の代表が女性であったことは女性が輝く社会建設にとっては肯定的すべき状況と言えたでしょう。

しかしながら、稲田大臣が辞任し、現安倍内閣では閣僚18人(防衛大臣は岸田文雄・外務大臣が兼任)のうち女性は丸川珠代・東京オリンピック・ パラリンピック競技大会担当と高市早苗・総務大臣の2人となりました。

女性の社会進出こそが少子化対策の重要な政策の一つであるとされて久しく、日本の深刻な少子化の要因の一つは、女性の社会進出の遅れであると指摘されています。先進国では、女性が社会に進出している率が高いほど、出生率が高いのです。

国会議員の政治家は、日本国民の代表であり、ここから女性の社会進出を促すのは当然です。

それでは、稲田大臣と蓮舫代表はどうして挫折してしまったのでしょうか。それは、お二方が女性だからと考えるべきではないでしょう。また、単純に政治家としての資質論にもすべきではないでしょう。

しかしながら、それでも、衆議院当選4回の稲田氏と参議院当選3回の蓮舫氏が「リーダー」的役職に就いたのは女性であったことが、周囲にとって重要なポイントであったことは否定できないのではないでしょうか。

ちなみに稲田氏は、防衛分野は「専門外」であり、この分野の政策には通じておらず、首相から役職を告げられた際、思わず「自信がない」と口走ったと報じられています(朝日新聞、7月31日)。

専門性を活かすのではなく、シンボリックに「置かれてしまった」とすれば、任命責任のほうが大きいことになります。

女性の社会進出を重視するならば、女性だからという理由を優先して登用するのではなく、まずは、それぞれのエクスパートを育成することを優先すべきであるように思えます。まず、第一に女性だからではなく、各分野の専門家を女性の割合を増やしていく、結果的に専門職に女性が増えていくということが重要です。

最終的には女性か男性かという見方ではなく、専門性から「その人」を選んでも、半数が女性になっていくのが理想です。

結果ではなく専門家を養成するという観点から考えれば、大学、大学院の(女性の)教育は重視されるべきなのではないかと考えます。

2人の辞任を「女性だからダメだった」と単純化せずに考える必要があります。

 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12  |  13  |  14  |  15  |  16  |  17  |  18  |  19  |  20  |  21  |  22  |  23  |  24  |  25  | All 次へ >>

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
月別アーカイブ
2017年11月
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
カテゴリーアーカイブ
カンボジア (27)
スイス (26)
スポーツと社会 (115)
ネパール (26)
国際事情(欧州を除く) (225)
大震災/原発事故と日本 (29)
御挨拶 (13)
日本政治 (124)
日本社会 (262)
映画で観る世界と社会 (290)
欧州事情 (93)
留学生日記 (70)
英国 (96)

ページトップへ

カレンダー
<< 2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
どれ程、国が儲かっていても、格差がある限り政治は急進化する
甲子園で行われる試合は、多かれ少なかれ、自然から影響を受けることを前提としている
子供の頃の思い出も、大人になれば美化される: 映画『やかまし村の春・夏・秋・冬』におけるステレオタイプ
日本男子は、気持ちを言葉にしない!?
君とお金のために結婚するのではない: 映画『静かなる男』における持参金というプライド
最新コメント
はじめまして、書き込...
Posted by たか
あなたもまだお若い。...
Posted by 葵東
青春時代に見て感動し...
Posted by 小林 千三
私は韓国に住んでいま...
Posted by 七色無職
†講談社「週刊現代」...
Posted by 鈴木有介
最新トラックバック
この社会での性的魅力
from 哲学はなぜ間違うのか
ひとつ/長渕剛(Cover)
from 今日の天草