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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本政治

2017年7月 5日 10:15

結局、「権力」と「支配」を受け入れるかは有権者次第

権力を持っている人は、自分が権力を担っていることを自覚しなければいけないと感じます。しかしながら、意外にも、無自覚な状態でいる人が少なくないことに驚きます。

東京都議会選挙中、稲田朋美防衛大臣が東京都板橋区内で開かれた自民党の都議選候補の集会に出席し、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言したことが批判されています(JIJI.com, 6月28日)。

選挙前において通常、特定の政党だけを批判することは許されないのですが、稲田大臣のルール破りは、結果的にマスコミ各社に自民党批判をさせることになり、選挙に大きな影響を与えることになりました。

言うまでもなく、稲田氏は防衛大臣ですから権力者であり、権力を用いて選挙に介入することは許されるべきではありません。線引きは難しいとは言え、政党人としての活動に限定されるべきであります。

海の向こうでは、米国のドナルド トランプ大統領が(自らの政権に批判的なケーブルテレビ放送局である)CNNのロゴになっている男性を自身がボコボコに殴っている動画をツイッターで投稿しました(Newsweek, 2017年7月3日)。大統領の「おふざけ」としては洒落にならないものがあります。

権力の定義は論者によって様々ですが、主要なところを繋ぎ合わせれば、権力とは「自己の意思を他人の行動に対して押し付ける可能性」(マックス・ウェーバー『支配の社会学』)とされ、権力者になり得る者が、権力資源を投入する意志があり、権力を受け入れる者によってそれが認識されて初めて「権力化」されると言われます(ハロルド・ラスウェル『権力と人間』)。そして、権力による「支配」の構造は、「支配者」と「被支配者」の相互作用(ゲオルク・ジンメル『社会分化論社会学』)ということになります。

つまり、受けて側も「権力」による「支配」(学問上の「支配」という表現は、一般にあまり分かり易い言葉ではないのですが)を受け入れなくてはいけないのです。稲田大臣やトランプ大統領の言動が、支配の「相互作用」の枠内に留まっているのかどうかは、結局のところ受け手側次第となります。

もし、それを拒否するとすれは、それは「被支配者」である選挙民の意思であり、少なくても稲田大臣に関しましては、私たちが大臣の権力による「支配の構造」を受け入れられるかどうかを、選挙等を通じて判断しなければいけないことになります。

2017年7月 4日 21:24

東京都議会選挙とフランスの国民議会選挙

東京都議会議員選挙が終わり、周知の通り、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が、55議席を獲得し圧勝しました。選挙前に小池支持を打ち出していました公明党が、23議席(第二党)、生活者ネットが1議席獲得しており、合計79議席で都議会の過半数を制しました。

森友学園、加計学園問題に、衆議院議員や大臣の失言、献金疑惑と自由民主党の「自爆的」な要素が強く、「都民ファーストの会」の勝利よりも自由民主党の敗北(57議席から23議席へ)が印象深い選挙となりました。

民進党も、自民党のマイナス議席を拾うどころか改選前の7議席から2議席減らして5議席に留まっており、共産党と公明党以外の既成政党は敗北したと言えます。

その理由は違うのですが、6月18日に行われたフランスの国民議会(下院)選挙の結果に似ています。

フランスの第二回投票では、エマニュエル・マクロン新大統領率いる「共和国前進」と協力政党が約6割に相当する350議席を獲得して圧勝しました。

政権を担ってきた二大政党の一つである社会党陣営は44議席(8割マイナス)、もう一つの共和党陣営137議席(半減)と惨敗でした。フランスの政治の主役であった既成政党にとっては大変厳しい結果です。

大統領選挙で話題となった極右の国民戦線は8議席に留まりました。日本の選挙でも右翼の台頭は現段階ではまだ見られません。

しかしながら、低い投票率は不気味な共通点です。

フランスの国民議会の第一回目の投票率は48.70%で、第二回目が42.64%でした。過去と比較し、高いとは言えない2017年5月の大統領選挙でさえ、第一回目が77.77%、第二回目が74.56%ですので、今回の国民議会選挙が、いかに国民にとって関心がなかったかが分かります。

マクロン大統領の「共和国前進」は、この低い投票率の中において得票率は半分以下(第2回目の得票率は43.06%)なのです。

さて、東京都議会選挙のほうも、投票率は51.28%でした。前回は、43.50%でしたので随分上昇したとはいえ、約半分です。その中で小池百合子知事の「都民ファーストの会」の得票率は33.68%だったのです。

もちろん、東京都議会選挙は国政選挙ではなく、総選挙になればどうなるかは分かりません。

ただ、フランスも日本も、選挙に行かなかった半数の人々の政治意識はどのようなものなのでしょうか。マクロン大統領の「共和国前進」や小池知事の「都民ファーストの会」を消極的であっても支持しているのでしょうか。

何かこれから大きな変化があるように思えてなりません。

2017年5月28日 01:15

忖度という「空気」のリアリティ

元文部科学事務次官である前川喜平氏が、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市(国家戦略特区)に開設する獣医学部の件について、記者会見(5月25日)を行いました。とても興味深く、考えさせる内容でした。

安倍首相と学校法人「加計学園」の理事長が親しいことから、記者が「大前提としてこのやりとりは加計学園、今治ありきだったのでしょうか」と質問したところ、前川氏は以下のように答えます。

「関係者の間の暗黙の共通理解としてあったのは確かだと思います。口に出して加計学園という言葉を使ったかどうかと、それは使っていない場合が多いと思う。しかし、この、国家戦略特区で議論している対象は今治市で設置しようとしている加計学園の獣医学部だという共通認識のもとで仕事をしていたと認識している」(「加計学園 前川氏会見詳報(3) 「行政ゆがめられた」証人喚問"参ります"」毎日新聞、5月25日)。

誰も「加計学園」という固有名詞を口にしなくても、皆、「加計学園」の獣医学部の件であると分かりながら語っていたというのです。
過去に何度か、当ブログでは書いてきましたが、まさに山本七平氏が言うところの日本独特の「空気」が作られ、物事が動いているのです(『「空気」の研究』文藝春秋、1977年)。

安倍晋三首相は、3月13日の参院予算委員会で、この問題について社民党の福島瑞穂副党首から「首相は理事長と長年の友人だ。政策がゆがめられているのではないか」と追及されています(JIJI.COM, 2017年3月13日)。その際、首相は「もし働き掛けて決めたならば責任を取る」と否定し、「安倍政権のイメージを落とそう、安倍晋三をおとしめようと質問するのはやめた方がいい」と反論しています(同上)。

安倍首相が本当のことを述べられているのでしたら、安倍首相の意向を周囲が忖度して「空気」を作り出し、なんとなく加計学園になっていったのかもしれません。

もっとも、前川氏は「総理のご意向」として加計学園の獣医学部の「30年4月開学」が進められ、「行政がゆがめられた」ことを告発しています(加計学園 前川氏会見詳報(2) "総理の意向"「対応に苦慮した」毎日新聞、5月25日)。

故に、「空気」を指摘することが記者会見の主な目的ではないでしょう。もし、首相が「御意向」を明確に示したならば、首相が明言しているように責任の所在がはっきりして分かり易いのです。

しかし、むしろ、「空気」が形成されるほうが、ある意味で「日本的」であり、リアリティがあります。同時に既視感をも覚えますが。

2017年5月 6日 05:58

憲法改正と吉田ドクトリン

5月3日は憲法記念日であり、憲法に関する様々議論が各地で行われました。

安倍晋三首相は、「第19回公開憲法フォーラム」シンポジウムにビデオでメッセージを送り、「憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です」とし、改憲への熱意を語りました。

特に「憲法9条」に関しては、「「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です」と主張し、9条の平和主義の理念を維持しながら「自衛隊を明文で書き込む」という考え方を提唱しています。

一方で、東京臨海広域防災公園では、憲法改正に反対する市民や団体による「5・3憲法集会」があり、約5万5千人(主催者発表)が集い、「憲法が大切にされる国に」などと書かれたのぼり旗やプラカードを掲げて「戦争反対。9条守ろう」などと訴えました(朝日デジタル、5月3日)。

同集会で演説された評論家のピーコさんは、自民党の草案では自衛隊が国防軍になっているとして「戦争はしない、という草案ではない」と語り、安保法制に反対する伊藤真弁護士は「憲法を壊すたくらみに声を上げ、戦い続ける覚悟を決めよう」と呼びかけ、集会では「武器を持たぬことを伝えた先人たちの声を永遠に語り継ぐのさ」と歌われたそうです(同上)。

震災時などにおける自衛隊の多大なる貢献に関しては、議論の余地はないと思いますが、自民党を立党以来の改憲の政党と見なして、同党に投票した人はどれ程いるのかと疑問に感じます。

改憲運動を推進される中曽根元首相が「現行憲法によるこの70年は確かにわれわれの生活に豊かさをもたらした」(98歳・中曽根康弘元首相「国民自らがつくる憲法へ奮起を」産経ニュース、5月1日)と述べられていますが、平和憲法を戦略的に用いた「吉田ドクトリン」はまさに戦後の自民党政権の外交と内政の指針であり、多くの国民も経済重視政策を支持していたのではないでしょうか。

改憲を反対する人たちにも矛盾があるように思います。北朝鮮の脅威を持ち出すまでもなく、日本の現行憲法における「武器を持たぬ平和」というのは、日米安全保障条約という「軍事同盟」があってこそ「軍隊ではない自衛隊による平和」が維持できたのでしょう。

例えば、一国で永世中立を貫くスイスでは、徴兵制を採り、高額な防衛費と共に強力な軍隊を配置し、その上で、万が一のために家でも職場でも公園でも国民が避難できる核シェルターの建設を義務付けてきました。そして、隣国リヒテンシュタインはそのスイスに防衛を依存する形で「武器を持たない平和」を体現しています。

日本の場合も、日米安保の下の「一国平和主義」でした。もちろん、日米安保があるが故に、戦争に巻き込まれる可能性もあったと言えますが、「吉田ドクトリン」(平和憲法)を掲げれば、最小限の軍備で経済重視の原則に回帰できたのです。

1990年代以降(日本を取り巻く)国際情勢の変化によって、この経済重視の「吉田ドクトリン」が機能しなくなっているところに、憲法問題があるように思えます。

しかしながら、NHKの世論調査「日本人と憲法2017」では、「国の政治に優先的に取り組んでほしいこと(3つまで回答)」の項目において、1位は、62%で社会保障や福祉政策であり、2位は55%で景気・雇用対策でした。憲法改正は9番目の最下位で、6%でした。

人々は、いまだ「吉田ドクトリン」の中にいます。

2017年5月 5日 10:19

なぜ、GWに約10万人の観光客が韓国に向かったのか?

JTBの調査によれば、このゴールデンウィークに日本から韓国を訪れている(訪れる予定の)観光客は9万6千人となっています(Travelvision, 2017年4月6日)。昨年よりも微減ながら、海外旅行者の総数が59万人であることから、相当数の日本人が韓国に足を運んでいることになります。

国会では朝鮮半島の有事の際、韓国に滞在する約3万8千人の在留邦人(「海外在留邦人数調査統計平成28年要約版」外務省領事局政策課)をいかに救い出すかが議論されてきたのですが、その最中に、更に10万人近い日本人観光客が現地に向かっているのです。

北朝鮮と韓国の間に軍事衝突があった場合、(最終的には在留邦人は米軍に救われるにせよ、数が少ない方がよく)「こんなときに観光に行くべきでない」という批判の声もあります(『アゴラ』2017年04月14日)。

それでは、なぜ、人々は韓国に行くのでしょうか。

まず、計画していたからというのが第一の理由かもしれません。長年、韓国は、日本人にとって時間的にも料金的にも手軽に行ける人気の観光地であり、国内観光地とほぼ同様に特別の理由はいらないとも言えます。

どちらかといえば、なぜキャンセルしなかったのかということを考えるべきなのでしょう。

そして、キャンセルしなかった理由は、「行けたから」なのでしょう。

外務省は日本人にとっての当該国の安全性を4つのカテゴリー(レベル)で表し、HPで公開しています。
【レベル4は最も強く「退避勧告」、レベル3は「渡航中止勧告」、レベル2は「要不急の渡航は止めてください」という段階であり、レベル1は「十分注意してください」です。】

現在の韓国は、レベル1でさえもなく、「現在,危険情報は出ておりませんが,北朝鮮との関係において,朝鮮半島情勢は,引き続き予断を許さない状況にあります。最新スポット情報,安全対策基礎データ,在韓国日本国大使館/総領事館のホームページや報道等から常に最新の情報を入手し,安全対策に心がけてください」と追記されているだけです。

少なくても外務省は、朝鮮半島情勢をそれ程の有事であると捉えていないことになります。

安全ならば、安全で良いのですが、それならば、なぜ国会で有事の際について議論してきたのでしょうか。もちろん、万が一について考えておくことは悪いことではないですが、「万が一」であることを強調する必要があります。

もしくは、外務省の分析のほうが間違っているのでしょうか。

もっとも、観光客も国際政治のアクターと捉えれば、10万人の観光客そのものが抑止力になるのかもしれません。抑止力として機能することを、ご認識されての御渡航ではないと考えますが、「国際政治における観光の影響力」は、もう少し考察しても良い視点かもしれません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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