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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本政治

2017年8月 6日 23:59

「革命大臣」の誕生から時代の変化と言葉の意味を考える

8月3日に第3次安倍第3次改造内閣が公表されました。

官房長官として歴代1位の在職日数を記録更新中の菅義偉官房長官が、結果本位の「仕事人内閣」と言われています通り、ベテラン揃いの顔ぶれです(BLOGOS, 2017年08月06日)(確かに、安定感はあるのですが、それでは以前の内閣の人選は「仕事(人)」ではなかったのかと突っ込みが入りそうではあります)。

仕事人を集めた場合、「新しさ」には欠けてしまうのですが、今回は茂木敏充氏が兼務する「人づくり革命担当」が話題です。

当然のように、(被支配者と支配者の逆転を指す)センセーショナルな「革命」という言葉が、保守的与党の大臣の役職としてふさわしいかという議論が巻き起こっています(スポニチ、8月6日)。

綱領に「革命」を掲げる元祖「革命政党」の共産党は怒り心頭です。小池晃書記局長は、「『革命』とは、ある階級からある階級に政治権力が変わるような、社会科学の用語としても重い言葉だ」と定義し、「『革命』という言葉を軽々しく使わないでほしい」と不快感を示しています(産経ニュース、8月3日)。

安倍政権の「革命」の定義は、「人づくり革命」を掲げた以下の内閣基本方針「(1)復興の加速化(2)人づくり革命の断行(3)一億総活躍社会の実現(4)世界の中心で輝く日本」から読み取れます(日本経済新聞, 8月4日)。

ここで「革命」とは、強い意志を持って断固として「変革」をやり遂げるというような強調として使われる言葉のようです。少し強引に英語の「革命=revolution」に近づけて「ひっくり返す」というニュアンスを読み取れば、固定観念を打破するような意味合いもあるかもしれません。

好意的に読み取ることはできますが、やはり、政治用語的にはミスマッチでしょう。

しかしながら、それでも「保守」であるとされる自由民主党政権が大臣職に「革命」という言葉を用いたことに時代の変化を感じます。

いくらなんでも、東側に革命政権、革命国家が存在していた冷戦時代では、「革命大臣」はあり得ない名称であったと考えるからです。

また、安倍政権は歴代の自由民主党の中では、その賛否は別として、「保守」よりも英国のサッチャー政権に似た「革命的右派」政権であるともいえるのかもしれません。

アカデミックにも、そろそろ、右(右翼)から、上(権力)からの「革命」という分析が、左から下からと同等に扱われても良いと考えますが、もちろん、その結果が肯定できるものになるかどうかも別です。

話は変わりますが、昨年、わが愛する阪神タイガースは「超変革」を掲げました。

しかし、「超変革」のプロセスは、まだまだ道半ばです。サンテレビのTV中継「サンテレビボックス席」(ゲームセットまで完全中継!)を日々、観ながら実感することは、組織を変えるということはキャッチフレーズ程、簡単ではないということです。ましてや、社会全体を変えるとなれば。

2017年7月31日 23:46

稲田大臣と蓮舫代表の辞任を考える

前々回の当ブログにて記しました通り、北朝鮮が弾道ミサイルを日本の排他的経済水域内(EEZ)に発射した7月28日、稲田朋美防衛大臣が辞任致しました。

辞めたのは稲田大臣だけではなく、その前日、野党第1党の民進党の蓮舫代表も辞任しています。

蓮舫代表は野党ですが、安倍政権は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げており(「すべての女性が輝く社会づくり本部」『首相官邸HP』)、防衛大臣や野党第一党の代表が女性であったことは女性が輝く社会建設にとっては肯定的すべき状況と言えたでしょう。

しかしながら、稲田大臣が辞任し、現安倍内閣では閣僚18人(防衛大臣は岸田文雄・外務大臣が兼任)のうち女性は丸川珠代・東京オリンピック・ パラリンピック競技大会担当と高市早苗・総務大臣の2人となりました。

女性の社会進出こそが少子化対策の重要な政策の一つであるとされて久しく、日本の深刻な少子化の要因の一つは、女性の社会進出の遅れであると指摘されています。先進国では、女性が社会に進出している率が高いほど、出生率が高いのです。

国会議員の政治家は、日本国民の代表であり、ここから女性の社会進出を促すのは当然です。

それでは、稲田大臣と蓮舫代表はどうして挫折してしまったのでしょうか。それは、お二方が女性だからと考えるべきではないでしょう。また、単純に政治家としての資質論にもすべきではないでしょう。

しかしながら、それでも、衆議院当選4回の稲田氏と参議院当選3回の蓮舫氏が「リーダー」的役職に就いたのは女性であったことが、周囲にとって重要なポイントであったことは否定できないのではないでしょうか。

ちなみに稲田氏は、防衛分野は「専門外」であり、この分野の政策には通じておらず、首相から役職を告げられた際、思わず「自信がない」と口走ったと報じられています(朝日新聞、7月31日)。

専門性を活かすのではなく、シンボリックに「置かれてしまった」とすれば、任命責任のほうが大きいことになります。

女性の社会進出を重視するならば、女性だからという理由を優先して登用するのではなく、まずは、それぞれのエクスパートを育成することを優先すべきであるように思えます。まず、第一に女性だからではなく、各分野の専門家を女性の割合を増やしていく、結果的に専門職に女性が増えていくということが重要です。

最終的には女性か男性かという見方ではなく、専門性から「その人」を選んでも、半数が女性になっていくのが理想です。

結果ではなく専門家を養成するという観点から考えれば、大学、大学院の(女性の)教育は重視されるべきなのではないかと考えます。

2人の辞任を「女性だからダメだった」と単純化せずに考える必要があります。

2017年7月29日 20:20

北朝鮮の弾道ミサイル発射が照らし出したこと

7月28日の23時半頃過ぎ(韓国軍によると23:41)、北朝鮮がミサイルを日本海に向けて発射しました(NHK News web, 7月29日 2時46分)。

防衛省によればミサイルは1発で、ICBM級(大陸間弾道ミサイル級)であり、午前0時28分26秒に北海道積丹半島の西およそ200キロ、奥尻島の北西およそ150キロの日本海の日本の排他的経済水域内(Exclusive Economic Zone)に落下したと推定されています(NHK News web, 7月29日 5時03分; 7月29日 6時14分)。

28日は日中、破棄したとしていたPKO部隊の日報を陸上自衛隊が保管していた問題で、稲田朋美防衛大臣が辞任致しました。大臣のみならず、陸上自衛隊トップの岡部俊哉陸幕長、防衛省の黒江哲郎事務次官も引責辞任しました。北朝鮮は、結果的に日本の防衛トップ3人が交代するという「隙」を狙ってミサイルと発射したことになります(ミサイルを発射するプロセスを考えれば、全くの偶然かもしれませんが)。

菅義偉官房長官は29日未明の記者会見において、稲田氏の防衛相辞任直後のタイミングだったことに関しては「安倍晋三首相は安全保障に一刻の空白もあってはならないとの思いから、岸田文雄外相に防衛相を兼務してもらった」と答えています(日本経済新聞, 7月29日, 2:06)。

政府としてはそう答えるしかないでしょうし、実際、問題がなかったのかもしれません。しかしながら、やはり、現場の3人の責任者が辞めた直後にミサイルが飛んできた時事は、国民の不安を煽るのも事実です。

もし、ミサイル発射を予期していたら昨日の辞任はなかったでしょう。つまり、日本政府が北朝鮮動向について分析し切れてしないことも露呈してしまったように見えるのです。

アンフェアな表現になるかもしれませんが、失礼ながら野党党首が辞めることと、防衛大臣、陸上自衛隊陸幕長、防衛省事務次官が同時に辞めることは重さが違うのです。

もちろん、ことの発端でありますPKO部隊の日報事件も、重要な問題です。しかし、北朝鮮がミサイルと発射するという有事と比較すれば、今、どちらがより優先すべき事項かは明らかです。他国からのミサイルは、直接的に国民の安全に係わるのです。

政治は、常に優先順位に基づいて選択決定しなければなりません。

そのような意味で、日本のガバナンスの弱点を北朝鮮のミサイルが照らし出してしまったようにも思えます。

2017年7月 5日 10:15

結局、「権力」と「支配」を受け入れるかは有権者次第

権力を持っている人は、自分が権力を担っていることを自覚しなければいけないと感じます。しかしながら、意外にも、無自覚な状態でいる人が少なくないことに驚きます。

東京都議会選挙中、稲田朋美防衛大臣が東京都板橋区内で開かれた自民党の都議選候補の集会に出席し、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言したことが批判されています(JIJI.com, 6月28日)。

選挙前において通常、特定の政党だけを批判することは許されないのですが、稲田大臣のルール破りは、結果的にマスコミ各社に自民党批判をさせることになり、選挙に大きな影響を与えることになりました。

言うまでもなく、稲田氏は防衛大臣ですから権力者であり、権力を用いて選挙に介入することは許されるべきではありません。線引きは難しいとは言え、政党人としての活動に限定されるべきであります。

海の向こうでは、米国のドナルド トランプ大統領が(自らの政権に批判的なケーブルテレビ放送局である)CNNのロゴになっている男性を自身がボコボコに殴っている動画をツイッターで投稿しました(Newsweek, 2017年7月3日)。大統領の「おふざけ」としては洒落にならないものがあります。

権力の定義は論者によって様々ですが、主要なところを繋ぎ合わせれば、権力とは「自己の意思を他人の行動に対して押し付ける可能性」(マックス・ウェーバー『支配の社会学』)とされ、権力者になり得る者が、権力資源を投入する意志があり、権力を受け入れる者によってそれが認識されて初めて「権力化」されると言われます(ハロルド・ラスウェル『権力と人間』)。そして、権力による「支配」の構造は、「支配者」と「被支配者」の相互作用(ゲオルク・ジンメル『社会分化論社会学』)ということになります。

つまり、受けて側も「権力」による「支配」(学問上の「支配」という表現は、一般にあまり分かり易い言葉ではないのですが)を受け入れなくてはいけないのです。稲田大臣やトランプ大統領の言動が、支配の「相互作用」の枠内に留まっているのかどうかは、結局のところ受け手側次第となります。

もし、それを拒否するとすれは、それは「被支配者」である選挙民の意思であり、少なくても稲田大臣に関しましては、私たちが大臣の権力による「支配の構造」を受け入れられるかどうかを、選挙等を通じて判断しなければいけないことになります。

2017年7月 4日 21:24

東京都議会選挙とフランスの国民議会選挙

東京都議会議員選挙が終わり、周知の通り、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が、55議席を獲得し圧勝しました。選挙前に小池支持を打ち出していました公明党が、23議席(第二党)、生活者ネットが1議席獲得しており、合計79議席で都議会の過半数を制しました。

森友学園、加計学園問題に、衆議院議員や大臣の失言、献金疑惑と自由民主党の「自爆的」な要素が強く、「都民ファーストの会」の勝利よりも自由民主党の敗北(57議席から23議席へ)が印象深い選挙となりました。

民進党も、自民党のマイナス議席を拾うどころか改選前の7議席から2議席減らして5議席に留まっており、共産党と公明党以外の既成政党は敗北したと言えます。

その理由は違うのですが、6月18日に行われたフランスの国民議会(下院)選挙の結果に似ています。

フランスの第二回投票では、エマニュエル・マクロン新大統領率いる「共和国前進」と協力政党が約6割に相当する350議席を獲得して圧勝しました。

政権を担ってきた二大政党の一つである社会党陣営は44議席(8割マイナス)、もう一つの共和党陣営137議席(半減)と惨敗でした。フランスの政治の主役であった既成政党にとっては大変厳しい結果です。

大統領選挙で話題となった極右の国民戦線は8議席に留まりました。日本の選挙でも右翼の台頭は現段階ではまだ見られません。

しかしながら、低い投票率は不気味な共通点です。

フランスの国民議会の第一回目の投票率は48.70%で、第二回目が42.64%でした。過去と比較し、高いとは言えない2017年5月の大統領選挙でさえ、第一回目が77.77%、第二回目が74.56%ですので、今回の国民議会選挙が、いかに国民にとって関心がなかったかが分かります。

マクロン大統領の「共和国前進」は、この低い投票率の中において得票率は半分以下(第2回目の得票率は43.06%)なのです。

さて、東京都議会選挙のほうも、投票率は51.28%でした。前回は、43.50%でしたので随分上昇したとはいえ、約半分です。その中で小池百合子知事の「都民ファーストの会」の得票率は33.68%だったのです。

もちろん、東京都議会選挙は国政選挙ではなく、総選挙になればどうなるかは分かりません。

ただ、フランスも日本も、選挙に行かなかった半数の人々の政治意識はどのようなものなのでしょうか。マクロン大統領の「共和国前進」や小池知事の「都民ファーストの会」を消極的であっても支持しているのでしょうか。

何かこれから大きな変化があるように思えてなりません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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