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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本政治

2018年9月20日 23:59

社会が「とりあえずビール」ではなくなり、政治が長期政権化するのはなぜか?

自民党の総裁選が行われ、安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破り、連続3選を果たしました。

注目されながら直前まで態度を明らかにしなかった小泉進次郎筆頭副幹事長は、最終的には石破氏を支持しました。

政治ですので、誰を支持するかだけではなく、タイミング、その理由全てがポイントになってきます。

だれを支持するのかという点において、小泉氏は2012年の総裁選でも石破氏を支持しており、一貫性があるように思われます。また、それ自体には驚きはないでしょう。

タイミングに関しては、結果的に表明が遅れたことで安倍首相に有利な結果となったと分析されています。

映画監督の想田和弘氏は、「映画の公開が終わってから届いた推薦コメントっていう感じの風情ですな」と述べられていますが(J-CASTニュース, 2018年9月20日)、小泉氏も、そこ効果を計算済であるとすれば、安倍首相への配慮ということになるのかもしれません。

最後に、私がもっとも着目したのは、その理由でした。

小泉氏は石破氏支持の理由として「これからの日本の社会は、もっと多様な、選択肢のある、異なる存在や声を社会の強みに変えていける、そんな日本でなければならないという強い思い」と語られています(THE PAGE, 2018年09月21日)。

小泉氏の地元の神奈川で20人自民党の国会議員のうち19人が安倍首相への支持表明をしたことについても、「これはひとりくらい違っていいという思いはあった」とし、「自民党はいろんな声を飲み込む、節操ないといわれるが、現実主義に基づき、それすらみんながうなってしまうような。日本は、そんな多様な時代に突入する」(日刊スポーツ, 9月20日)と話しています。

更に、具体的には今、日本人が「とりあえずビール」と言わなくなったことを挙げて、「みんなが生ビールを頼むので、本当に好きなものを飲んでほしいから、わたしはハイボールにしましたと言ったが、そういうことです」(同上)と分かり易く説明されています。

全くその通りなのですが、自由民主党は1955年の結党以来、一貫してイデオロギー的に多様だったように思います。自由主義者も、民主主義者も、資本主義者も、保守主義者も在籍しており、更に、(本人は認めなくても)大きな政府と手厚い社会保障をモットーとする「社会主義者的」な政治家も少なからず含まれていたのではないでしょうか。

高度成長期の日本で、社会の価値が「今ほど」多様ではなかった時、自由民主党は「今より」多様だったのです。

「縛り」があったとすれば、イデオロギーではなく、政策とは別の派閥(派閥にはイデオロギー的な色は多少ありましたが)の文脈によるパワーの力学だったように思います。

言い方を変えれば、ビール派とハイボール派が、ポストのために乾杯し続けてきたような(ハイボール派も無理してビールを飲んだのかもしれませんが)状況だったのではないでしょうか。

小泉氏の分析の通り、社会は多様化しています。

しかしながら、グローバル化の中で政治的選択は限られてしまっているのも事実です(誰がやっても同じであるという無力感が有権者にはあるでしょう)。それが、各国で長期政権が誕生している一つの大きな理由なのではないかと考えます。そして、そのような人々の選択は、政治を急進化させない唯一の方法なのかもしれません。

2018年7月30日 00:28

英国がTPPへ参加する(参加を検討する)意味

2018年7月12日、英国政府が、欧州連合(EU)離脱方針の詳細をまとめた「白書」を公表しました。

EU離脱後もEUと「モノの自由貿易圏」を創設し、同時に他国と自由貿易を拡大する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加検討しているというのです(日本経済新聞, 2018年7月12日)。

報道されている通り、英国の保守党政権はEU離脱に対するスタンスの違いにより、7月にはいてからデイヴィッド・デービス離脱担当相やボリス・ジョンソン外相が辞任していました(「主要閣僚が続々辞任...イギリス政界にいま何が起きているのか」『現代ビジネス』, 2018年7月11日)。

英国政府のTPPへの関心の表明は、今回が初めてではなく、既に今年の1月にも行われていますが、その時はそれ程大きくは取り上げられませんでした("UK looks to join Pacific trade group after Brexit", 3 January 2018, The Financial Time)。

今回は、デービス離脱担当相やジョンソン外相が辞任し、与党保守党が分裂状態であるからこそ、このニュースも大きくなったのかもしれません。

いずれにしても、メイ政権は、EU離脱後も、何らかの形で自由貿易を推進する方向であることは分かります(それが、保守党内の亀裂の根本原因なのでしょうが)。

TPP加盟国にとってはどうかと言えば、周知の通り、2017年1月に米国のドナルド・トランプ大統領が、「TPPから永久に離脱する」とした大統領令に署名し、TPPを離脱しまいました。現在、残された11カ国での協定発効に向けた協議が行われているのですが、まだ現段階では発効されていません。

世界のGDPの約15%(IMF)を叩き出す米国の離脱は、TPP構想の根本を揺るがすものであったと言えるでしょう。

英国経済の世界のGDPシャアは3%にも満たなく、仮に英国がTPPに参加しても、米国の代りには到底なり得ません。しかしながら、政治的インパクトは小さくはなく、将来の米国の復帰も見据えて、TPP側にとっては英国のTPPへの興味はマイナスになることは何もないでしょう。

11カ国のTPPにおいて、特に日本は最大の経済力を保っており、英国との歴史的関係も深いこともあり、ここは日本の外交力の見せ所かもしれません(もっとも、日本においてもTPPに反対する反グローバリゼーションの急進勢力が、今後、政治力を強めていかないという保証はありませんが、差し当たってはTPPは日本のナショナリズムと矛盾しないのでしょう)。

しかしながら、TPPとはTrans-Pacific Partnership Agreement(環太平洋経済連携協定)なのですが、もし、英国が入ると名称も変えなくてはいけないのでしょうか。もちろん、名より実であり、名称などは二次的なことではありますが。

2018年7月 2日 02:24

宇都宮の人々はなぜ水餃子を食べるのか?

久しぶりに故郷の栃木県宇都宮市に戻り、いつもの通り餃子を食べました。宇都宮は餃子で有名なところです。

総務省の調査によれば、2017年の餃子に対する年間支出額(2人以上の世帯)において宇都宮市は4258円で全国1位に輝いています(Jタウンネット, 2018年2月3日)。

実のところ、2014年から3年間は浜松市が1位で宇都宮は2位でしたので、宇都宮としては面目躍如といったところです(総務省「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング」)。

それでは、なぜ、宇都宮が餃子の街になったのでしょうか。宇都宮市の説明では、戦時中、市内に駐屯していた大日本帝国陸軍第14師団が中国(満州)に出兵したことがきっかけになっています。満州で餃子を覚えた帰還兵が終戦後、宇都宮に餃子を「持ち帰った」とされているのです(「餃子のまち」宇都宮市公式Webサイト)。

私の祖父母も満州からの「引き揚げ者」であり、上記の説は正しいと考えます。ただし、味と作り方を持ち帰ったのは帰還兵ではなく、その家族と言った方が的確かもしれません。

これは私見ですが、宇都宮人が中国東北地方の餃子を「伝承」している証拠として水餃子が挙げられるように思います。

日本全国では餃子と言えば焼餃子であり、宇都宮餃子でも焼餃子が有名ではありますが、宇都宮人は水餃子も普通に食べます。

私自身、子供の頃から水餃子に親しんできたのですが、不思議なことに宇都宮以外では水餃子は流行っていません。

なぜだろうと思っていたのですが、中国・東北地方黒竜江省出身の留学生と餃子談義になった際、「先生、なぜ日本人は水餃子を食べないでしょか。私の故郷では水餃子こそが餃子なのです」と言われて、私の長年の疑問と同じであったことで「はっ」としたのです。

戦時中、満州に滞在していた宇都宮人は、水餃子と焼餃子を戦後、宇都宮に持ち帰ったのですが、何らかの理由で焼餃子だけが日本各地に伝わって行ったのではないでしょうか。

日本と中国は不幸な歴史があり、今も両国民が全体として親しいとは言えないかもしれません。しかしながら、美味しいものは美味しいのです。そして、美味しいものは国境を越えて広がっていきます。どこの食べ物とかレッテルも貼られずに。美味しいだけで、拡散するには十分なのです。

もしかしましたら、現在の中国東北地方の餃子と宇都宮の餃子(水餃子、焼餃子)は同じではないかもしれません。いつか、中国の東北地方を訪れることがあれば、宇都宮出身者として思いっきり調査してみたいと思います。

2017年10月28日 01:15

「上から」の賃上げ要求を考える

安倍晋三首相は10月26日の経済財政諮問会議にて、「生産性革命をしっかり進める中で3%の賃上げが実現するよう期待する」と述べ、定期昇給とベースアップを合わせて約2%だった17年春闘の実績を上回る賃上げを求めました(JIJI.com, 10月26日)。

その上で、安倍首相は、賃上げに積極的に取り組む企業に対する税制面での優遇措置を検討することまでも表明しました(NHK News Web, 10月26日)。

安倍首相の組合顔負けの賃上げ要求は5年連続であり(日本経済新聞, 2017年10月26日)、すっかり定着してきています。

従来、賃上げ要求といえば、労働組合のイメージが強いものです。賃金は、そもそも、労使交渉で決まるものであるのですが、このところは、首相が介入するため、「官製春闘」とも揶揄されています(Reuters, 10月26日)。

ただ、私は、自由主義者が(もし、安倍首相がそうならば)、賃上げに賛成することはあると考えます。

そして、ただ、政府が「権力」によって賃上げを促せば、高付加価値に基づく競争力がない企業が淘汰されてくこともあるでしょう(それが目的だとは思えませんが)。

そもそも、高賃金政策は、「弱肉強食の理論」でもあると思います。

数年前、ユニクロの「世界同一賃金」が話題になりましたが、グローバル化は賃金もグローバル化していきます。単純に言ってしまえば、ある企業が、グローバル水準の高賃金政策を採るならば、その企業がグローバル水準の競争力がないと、持たないのです。

安倍政権も、もちろん、その点をフォローしており、政府は「生産性革命」を掲げています。具体的には企業の設備投資を促し、イノベーションを起こすことを目的としているとされます(日刊工業新聞, 2015年10月15日)。

「生産性革命」も、「革命」と言いながら、政府の政策ですので、言うならば「上からの革命」であり、企業がどこまでその趣旨を組んで、(国際)競争力を付けられるか気になるところです。

私は、企業がグローバル化すれば、自然に賃金は上昇していくと考えます。高度人材(ヒト)を集めない限り、グローバルマーケットにおいて持続可能な成功は難しく、そして、高度人材は安くはないのです(グローバル企業で、低賃金ならば、その企業からは「頭脳流出」が止まらないはずです)。

逆に、(国際)競争力が弱い企業は、必然的に低賃金になるでしょう。

そう考えますと、政府がどこまで賃上げに関与すべきかは悩ましいところです。

2017年10月26日 01:38

「排除の論理」を考える

今回の選挙前の報道では、「排除の論理」という言葉が繰り返し使われました。

そして、「希望の党」の票が伸び悩んだ理由として、この「排除の論理」を用いたことが挙げられています。

同党の小池百合子代表が、民進党の前原誠司代表と「民進党」の「合流」を前提として会合を持った9月29日、小池氏は「私どもの政策に合致するのかどうか、さまざまな観点から絞り込みをしていきたい。全員を受け入れるということはさらさらない」と語りました(毎日新聞, 2017年9月30日)。

具体的に、「希望の党」への合流は、「安全保障法制や憲法改正などへの賛同など、一定の条件を満たした候補者のみ合流を認める」とされ、それが「排除の論理」と称されていきます(同上)。

この「排除の論理」は非常に不評で、「希望の党」の敗北を受け、小池氏は10月25日、民進党との合流に際し、自らが持ち出した「排除の論理」について「多くの方々を傷つけてしまった。改めて謝りたい」と謝罪しました(産経ニュース, 2017年10月25日)。

私は、個人的には政治政党が、政策理念や最終目標によって党員や選挙候補者を「限定」(排除)しても何の問題もないと考えます。むしろ、政党はそうすべきなのです。

同じ目的や考え方の人間を、好き嫌いで追い出してしまうことが、本来の「排除の論理」であり、安全保障法制や憲法改正に関して、異なる意見の政治家を仲間に入れないことは、当然です。

むしろ、誰でも入れてしまうようなイデオロギー上、幅広い政党は、総選挙後に党内情勢によって基本政策が変わってしまう可能性があり、「民主的」ではないのです。ですから、小池氏がしようとしたことは間違っていないと認識します。

ただ、問題があるとすれば、「立憲民主党」がしたように政策を掲げて、「この指とまれ」にすれば良いところを、「排除」というネガティブな表現を用いたことで、選挙キャンペーン上、失敗してしまったことなのです。

躍進した「立憲民主党」は、むしろ、「排除」された人々が集まったので、意見の擦り合わせがやり易かったのかもしれませんので、そういう意味では、「立憲民主党」の躍進は、「希望の党」の稚拙なキャンペーンにあったというべきなのかもしれないのです。

いずれにしましても、「民進党」が分裂したことは、マイナス点ばかりではなく、分かり易さにおいては良かったのではないかと考えます。後は、与党も、もっと分かり易くなれば良いと思わざるを得ません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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