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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

日本政治

2018年7月30日 00:28

英国がTPPへ参加する(参加を検討する)意味

2018年7月12日、英国政府が、欧州連合(EU)離脱方針の詳細をまとめた「白書」を公表しました。

EU離脱後もEUと「モノの自由貿易圏」を創設し、同時に他国と自由貿易を拡大する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加検討しているというのです(日本経済新聞, 2018年7月12日)。

報道されている通り、英国の保守党政権はEU離脱に対するスタンスの違いにより、7月にはいてからデイヴィッド・デービス離脱担当相やボリス・ジョンソン外相が辞任していました(「主要閣僚が続々辞任...イギリス政界にいま何が起きているのか」『現代ビジネス』, 2018年7月11日)。

英国政府のTPPへの関心の表明は、今回が初めてではなく、既に今年の1月にも行われていますが、その時はそれ程大きくは取り上げられませんでした("UK looks to join Pacific trade group after Brexit", 3 January 2018, The Financial Time)。

今回は、デービス離脱担当相やジョンソン外相が辞任し、与党保守党が分裂状態であるからこそ、このニュースも大きくなったのかもしれません。

いずれにしても、メイ政権は、EU離脱後も、何らかの形で自由貿易を推進する方向であることは分かります(それが、保守党内の亀裂の根本原因なのでしょうが)。

TPP加盟国にとってはどうかと言えば、周知の通り、2017年1月に米国のドナルド・トランプ大統領が、「TPPから永久に離脱する」とした大統領令に署名し、TPPを離脱しまいました。現在、残された11カ国での協定発効に向けた協議が行われているのですが、まだ現段階では発効されていません。

世界のGDPの約15%(IMF)を叩き出す米国の離脱は、TPP構想の根本を揺るがすものであったと言えるでしょう。

英国経済の世界のGDPシャアは3%にも満たなく、仮に英国がTPPに参加しても、米国の代りには到底なり得ません。しかしながら、政治的インパクトは小さくはなく、将来の米国の復帰も見据えて、TPP側にとっては英国のTPPへの興味はマイナスになることは何もないでしょう。

11カ国のTPPにおいて、特に日本は最大の経済力を保っており、英国との歴史的関係も深いこともあり、ここは日本の外交力の見せ所かもしれません(もっとも、日本においてもTPPに反対する反グローバリゼーションの急進勢力が、今後、政治力を強めていかないという保証はありませんが、差し当たってはTPPは日本のナショナリズムと矛盾しないのでしょう)。

しかしながら、TPPとはTrans-Pacific Partnership Agreement(環太平洋経済連携協定)なのですが、もし、英国が入ると名称も変えなくてはいけないのでしょうか。もちろん、名より実であり、名称などは二次的なことではありますが。

2018年7月 2日 02:24

宇都宮の人々はなぜ水餃子を食べるのか?

久しぶりに故郷の栃木県宇都宮市に戻り、いつもの通り餃子を食べました。宇都宮は餃子で有名なところです。

総務省の調査によれば、2017年の餃子に対する年間支出額(2人以上の世帯)において宇都宮市は4258円で全国1位に輝いています(Jタウンネット, 2018年2月3日)。

実のところ、2014年から3年間は浜松市が1位で宇都宮は2位でしたので、宇都宮としては面目躍如といったところです(総務省「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング」)。

それでは、なぜ、宇都宮が餃子の街になったのでしょうか。宇都宮市の説明では、戦時中、市内に駐屯していた大日本帝国陸軍第14師団が中国(満州)に出兵したことがきっかけになっています。満州で餃子を覚えた帰還兵が終戦後、宇都宮に餃子を「持ち帰った」とされているのです(「餃子のまち」宇都宮市公式Webサイト)。

私の祖父母も満州からの「引き揚げ者」であり、上記の説は正しいと考えます。ただし、味と作り方を持ち帰ったのは帰還兵ではなく、その家族と言った方が的確かもしれません。

これは私見ですが、宇都宮人が中国東北地方の餃子を「伝承」している証拠として水餃子が挙げられるように思います。

日本全国では餃子と言えば焼餃子であり、宇都宮餃子でも焼餃子が有名ではありますが、宇都宮人は水餃子も普通に食べます。

私自身、子供の頃から水餃子に親しんできたのですが、不思議なことに宇都宮以外では水餃子は流行っていません。

なぜだろうと思っていたのですが、中国・東北地方黒竜江省出身の留学生と餃子談義になった際、「先生、なぜ日本人は水餃子を食べないでしょか。私の故郷では水餃子こそが餃子なのです」と言われて、私の長年の疑問と同じであったことで「はっ」としたのです。

戦時中、満州に滞在していた宇都宮人は、水餃子と焼餃子を戦後、宇都宮に持ち帰ったのですが、何らかの理由で焼餃子だけが日本各地に伝わって行ったのではないでしょうか。

日本と中国は不幸な歴史があり、今も両国民が全体として親しいとは言えないかもしれません。しかしながら、美味しいものは美味しいのです。そして、美味しいものは国境を越えて広がっていきます。どこの食べ物とかレッテルも貼られずに。美味しいだけで、拡散するには十分なのです。

もしかしましたら、現在の中国東北地方の餃子と宇都宮の餃子(水餃子、焼餃子)は同じではないかもしれません。いつか、中国の東北地方を訪れることがあれば、宇都宮出身者として思いっきり調査してみたいと思います。

2017年10月28日 01:15

「上から」の賃上げ要求を考える

安倍晋三首相は10月26日の経済財政諮問会議にて、「生産性革命をしっかり進める中で3%の賃上げが実現するよう期待する」と述べ、定期昇給とベースアップを合わせて約2%だった17年春闘の実績を上回る賃上げを求めました(JIJI.com, 10月26日)。

その上で、安倍首相は、賃上げに積極的に取り組む企業に対する税制面での優遇措置を検討することまでも表明しました(NHK News Web, 10月26日)。

安倍首相の組合顔負けの賃上げ要求は5年連続であり(日本経済新聞, 2017年10月26日)、すっかり定着してきています。

従来、賃上げ要求といえば、労働組合のイメージが強いものです。賃金は、そもそも、労使交渉で決まるものであるのですが、このところは、首相が介入するため、「官製春闘」とも揶揄されています(Reuters, 10月26日)。

ただ、私は、自由主義者が(もし、安倍首相がそうならば)、賃上げに賛成することはあると考えます。

そして、ただ、政府が「権力」によって賃上げを促せば、高付加価値に基づく競争力がない企業が淘汰されてくこともあるでしょう(それが目的だとは思えませんが)。

そもそも、高賃金政策は、「弱肉強食の理論」でもあると思います。

数年前、ユニクロの「世界同一賃金」が話題になりましたが、グローバル化は賃金もグローバル化していきます。単純に言ってしまえば、ある企業が、グローバル水準の高賃金政策を採るならば、その企業がグローバル水準の競争力がないと、持たないのです。

安倍政権も、もちろん、その点をフォローしており、政府は「生産性革命」を掲げています。具体的には企業の設備投資を促し、イノベーションを起こすことを目的としているとされます(日刊工業新聞, 2015年10月15日)。

「生産性革命」も、「革命」と言いながら、政府の政策ですので、言うならば「上からの革命」であり、企業がどこまでその趣旨を組んで、(国際)競争力を付けられるか気になるところです。

私は、企業がグローバル化すれば、自然に賃金は上昇していくと考えます。高度人材(ヒト)を集めない限り、グローバルマーケットにおいて持続可能な成功は難しく、そして、高度人材は安くはないのです(グローバル企業で、低賃金ならば、その企業からは「頭脳流出」が止まらないはずです)。

逆に、(国際)競争力が弱い企業は、必然的に低賃金になるでしょう。

そう考えますと、政府がどこまで賃上げに関与すべきかは悩ましいところです。

2017年10月26日 01:38

「排除の論理」を考える

今回の選挙前の報道では、「排除の論理」という言葉が繰り返し使われました。

そして、「希望の党」の票が伸び悩んだ理由として、この「排除の論理」を用いたことが挙げられています。

同党の小池百合子代表が、民進党の前原誠司代表と「民進党」の「合流」を前提として会合を持った9月29日、小池氏は「私どもの政策に合致するのかどうか、さまざまな観点から絞り込みをしていきたい。全員を受け入れるということはさらさらない」と語りました(毎日新聞, 2017年9月30日)。

具体的に、「希望の党」への合流は、「安全保障法制や憲法改正などへの賛同など、一定の条件を満たした候補者のみ合流を認める」とされ、それが「排除の論理」と称されていきます(同上)。

この「排除の論理」は非常に不評で、「希望の党」の敗北を受け、小池氏は10月25日、民進党との合流に際し、自らが持ち出した「排除の論理」について「多くの方々を傷つけてしまった。改めて謝りたい」と謝罪しました(産経ニュース, 2017年10月25日)。

私は、個人的には政治政党が、政策理念や最終目標によって党員や選挙候補者を「限定」(排除)しても何の問題もないと考えます。むしろ、政党はそうすべきなのです。

同じ目的や考え方の人間を、好き嫌いで追い出してしまうことが、本来の「排除の論理」であり、安全保障法制や憲法改正に関して、異なる意見の政治家を仲間に入れないことは、当然です。

むしろ、誰でも入れてしまうようなイデオロギー上、幅広い政党は、総選挙後に党内情勢によって基本政策が変わってしまう可能性があり、「民主的」ではないのです。ですから、小池氏がしようとしたことは間違っていないと認識します。

ただ、問題があるとすれば、「立憲民主党」がしたように政策を掲げて、「この指とまれ」にすれば良いところを、「排除」というネガティブな表現を用いたことで、選挙キャンペーン上、失敗してしまったことなのです。

躍進した「立憲民主党」は、むしろ、「排除」された人々が集まったので、意見の擦り合わせがやり易かったのかもしれませんので、そういう意味では、「立憲民主党」の躍進は、「希望の党」の稚拙なキャンペーンにあったというべきなのかもしれないのです。

いずれにしましても、「民進党」が分裂したことは、マイナス点ばかりではなく、分かり易さにおいては良かったのではないかと考えます。後は、与党も、もっと分かり易くなれば良いと思わざるを得ません。

2017年10月23日 23:59

立憲民主党の躍進と急進化しない政治

第48回衆議院総選挙が終わりました。

与党・「自由民主党」は改選前の284議席を守り、マスコミでは「自民大勝」「圧勝」と報じられています(Bloomberg, 10月22日; JIJI.COM, 10月23日)。

確かに、連立を組む「公明党」の獲得議席数を加えると与党は3分の2の310議席を越え、313議席となっており、十分に「勝利」と言えるでしょう。

しかしながら、「公明党」は34議席から5議席減らして29議席に留まっており、内閣支持率は36%と低迷し、反対に不支持が42%と逆転しており(毎日新聞, 10月23日)、「大勝利」とまで言えるかどうかは微妙ではあります。

反対に「大敗北」とされた「希望の党」は、50議席を獲得しています。選挙前は57議席ですから「敗北」には違いませんが「公明党」もマイナス5議席、「共産党」が総選挙前の21議席から12議席まで9議席も減らしていますので、想定された「最悪の状況」ではなかったと考えます。

結局、完全な意味での勝者は15議席から3倍以上の55議席に増やした「立憲民主党」だけだったかもしれません。

それでは、「立憲民主党」はなぜ勝てたのでしょうか。

9月28日、「民進党」の両院議員総会において同党の前原誠司代表が、「民進党」から「希望の党」への合流を決定した際、枝野幸男代表が、(安保法制容認という踏み絵を拒否して)「立憲民主党」を立ち上げ、「筋を通した」ことにあるとされています(時事通信、10月17日)。

石原慎太郎・元都知事がツイッターで「筋を通した枝野は本物の男に見える」(産経ニュース, 10月16日)と表現している通り、大儀なく「希望の党」に移ろうとした元民進党の政治家よりも、主張を貫いたように見える枝野氏が(日本では珍しく)政治家らしく受け止められたのは事実でしょう。

結果として「立憲民主党」はリベラル派を結集したような形で、左派からの票を奪い、野党第一党になりました。特に前回、共産党を支持した層から多くの票が流れたと捉えられています。

なぜ、「立憲民主党」がリベラル票を集約できたのかは、今後の分析課題になりますが、少なくとも従来の左派・リベラル政党がその力がなかったことは確かでしょう。

私は、欧州各国あるいは米国の政治状況が急進化している状況から、中間層が弱体化している日本においても、政治が急進化するのではないかと考えてきました。しかし、今回の「立憲民主党」の躍進も欧米型ではないのです。

日本では潜在的な極右支持者が「自民党」に吸収されており、そして、潜在的な極左支持者も今回は「立憲民主党」に吸収されたように見えます。依然として、グローバル化、格差化等によって分断されている国民の実態が、政治において「見えない」のです。

しかしながら、「自民党」や「立憲民主党」が大きく有権者の期待を裏切った場合、分裂という形で更なる極右・極左政党が誕生する可能性も否定できないのではないでしょうか。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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