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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

スイス

2018年3月 4日 04:40

1個400円のスイスのチョコを食べれば、スイスの何かが分かる

私は、縁があってよくスイスに行くのですが、このブログの私の担当をして下さっているSさん(QuonNet)が、「スイスと言えば、チョコですよね。スイスのチョコといえば、『レダラッハ』(Läderach)ですね」とメールで書かれてきました。

「レダラッハ」は、1962年、スイス東部のエネンダという村で生まれたチョコレートです。トリュフやバラエティに富んだフレッシュチョコレート(板チョコ)が有名で、今ではスイス国内のみならず、銀座三越にまで進出しています。

気になるお値段は、銀座三越ではフレッシュチョコレートが「100グラムあたり本体価格 1,800円(税込1,944円)」と表示されています(http://www.kataoka.com/laderach/lineup/)。

スイスでは、450グラムで33.75スイスフラン(約3,800円)ですので、日本では2倍以上に跳ね上がっていることになります。高いです。でも、そもそも高い「生もの」を空輸していますから、仕方がない値段かもしれません。

「レダラッハ」は、日本でいえば、地方の発祥の高級和菓子店の高級お煎餅という感じでしょうか。「レダラッハ」が、スイスを代表するチョコ店なのかを検証することができませんが、代表する一つであることに疑いはないように思えます。

当ブログ2016年2月14日付で言及しましたが、私はかつて、私が勤務する大学の職員から、スイスに行ったら「シュプリュングリ」(Sprüngli)のチョコを是非、買ってきて欲しいと言われました。

「シュプリュングリ」は1836年創業で、「ヨーロッパにおける最も著名なチョコ専門店のひとつ」(Cool Swissスイス観光情報)とされています。

代表的な24個(285 g)の缶入りの「Sprüngli House Tin」は43スイスフラン(約4900円)。1g=17.2円。1個=204円で、こちらも負けずに高級です。もし、空輸すれば、「レダラッハ」同様の値段設定になってしまうでしょう(以下、写真は、同社HPから)。

spruengli-haus-dose-gross_5.png

実のところ、私がかつて住んでいたところは、スイスのフランス語圏のジュネーブであり、上記の2社はドイツ語圏の高級チョコでして(ジュネーブでも購入できますが)、ジュネーブを代表するチョコとは言えません。

ジュネーブで(特に日本人の間で)有名なのは、「ステットラー」(Stettler)です。雅子様が皇太子殿下にプレゼントしたことで知られる同店は、「ジュネーブの石畳」と名付けられているチョコ(以下、写真は同社HPから)が代名詞となっています。こちらは日本では1粒400円程で空輸販売されています。


欧州でチョコといえば、ベルギーかスイスですが、ベルギーチョコといえば、「ゴディバ」(Godiva)という圧倒的なジャイアンツがいる一方、スイスのチョコ界は王様がいません。

雅子様チョコとして知られる「ステットラー」も、「ゴディバ」が大企業ならば、家内制手工業的な中小企業なのです。その小さな会社が、極めて付加価値の高く、競争力のある芸術品のようなチョコを世界に送り出しているのです。

1個400円。時計産業も同様ですが、スイスの中小企業の力強さを見せつけられます。

「スイス・チョコを食べれば、スイスの何かが分かる」と言えば、言い過ぎでしょうか。

2017年8月18日 03:49

スイスでは、2000円で外食するのは難しい

スイスのジュネーブにお気に入りのファーストフード店がありました。ジュネーブを訪れるたびに寄っていましたが、この夏、訪れてみると閉店中でした。

名前はMike Wong。タイ風を中心にアジア系の料理を5分で作って出してくれます。テイクアウトもできます(むしろ、テイクアウトの人の方が多かったように思えます)。

値段は、1品1食、15スイスフランから20スイスフランの間です。1フラン=約110円ですので、2000円前後になりますが、マクドナルドのビッグマックメニューが13スイスフランの国ですので、マクドナルドプライスで食事ができたのです。

実際、Mike Wongもマクドナルドを意識しており、以下のようなトレードマークを(おそらくマクドナルドにもナイキにも許可を取らずに)使用しています。

IMG_2939.jpg

そのMike Wongが8月8日にスイスの警察によって閉鎖されました(以下、20 Minutes, 09 August 2017)。商標の問題ではなく、不法労働者(中国出身の調理人)が働いていたというのが理由です。

オーナーの話では、コックの労働許可を申請はしていたようですが、許可を待っている段階で働いてしまっていたようです。

このお店は比較的「安くて美味しい」ので、とても人気がありました。

スイスは物価が高く、賃金も高いです。

当ブログ2014年6月9日付で記しましたが。2014年にスイスで、時給22スイスフラン(当時、約2,500円)、週42時間のフルタイム労働で月給4,000スイスフラン(当時、約453,000円)の定最低賃金導入の是非を問う国民投票が実施されました。結果は、反対76%で否決されましたが、既にその際、スイスでは、給料が法定最低賃金を下回る労働者は、約33万人であり、労働者の10人に1人に過ぎなかったのです(Swissinfo.ch、 2014年4月10日)。

なぜ、スイスではこれ程、賃金が高いのか。基本的にスイスは、単純労働目的の労働者を受け入れてはいません(それでも入ってきているので、今回の事件になるのですが)。

こんなスイスで、安く外食をしようとすると苦労します。

数少ない安くておいしいお店が、不法労働者を雇っていたとなるとそれはそれで問題です。ランチでも2000円以下で外食することが難しいという現状を受け入れなくてはいけないことになります。

単純労働を目的とした多数の移民労働者を受け入れれば、物価は下がりますが、当然それに伴い、平均賃金も下がります。

平均的に賃金が高く、同時に平均的に物価が安い国はないのです(個人としてのお金持ちは物価を問わず、世界中にいますが)。

残念ながら選択はどちらかでしかないことを、改めてMike Wongのニュースは教えてくれました。

2016年5月18日 02:36

スイスでUberに乗ってみました

ゴールデンウィーク、スイス・ジュネーブ滞在中に、米国から始まり何かと話題のUber「タクシー」に初めて乗りました。

昨年の12月31日の1日だけで世界で約200万人が利用したというUberですが、そのシステムとしては、スマートフォンの専用アプリを活用し、「車」を呼ぶだけです(東洋経済online「配車サービスUberにタクシー業界が「待った」」、2016年1月16日)。

私もスマホを通じて「車」を呼びますと、「タクシー・ドライバー」の男性の顔名前と写真が出てきます。そして、5分ほどで普通の自家用車が現れました。

ジュネーブ市内の中心地からジュネーブ空港までの15分ほどの距離でしたが、「タクシー・ドライバー」の男性と話をすることができました。

スイス人の20代の彼は、Uberと7ヶ月前から契約しているそうです。

前職はパートタイムのジュネーブ空港職員で、パートタイムで別の会社のタクシー・ドライバーをしていたそうです。Uberのほうが、効率が良く、収入が良いと言っていました。

「お客さんも安くタクシーが乗れて、ドライバーも儲かるんだから、いいシステムだよ」
「おそらく、数年以内に世界中の先進国では、Uberの一人勝ちになってしまうと思うよ」

と「タクシー・ドライバー」の彼は、御自分の見通しを教えてくれました。実際料金に関しましては、30%ぐらい安くなっていました。

良いことばかりのようなUberですが、問題もあります。

各国の既存のタクシー業界から猛烈な反発があるのです。

自家用車を用いるUberは正式には「配車サービス」という業態で事業を行い、タクシー業者に課される規制や要件を満たしていないため、「脱法行為」であると批判されています。

それ故にUberの拡大はタクシー業界の弱体化を意味します(東洋経済online、2016年1月16日)。各国にとってもタクシー業界への規制自体が意味が無くなってしまい、裁判に持ち込まれるケースが後を絶ちません(同上)。

かつて、米国デューク大学キャシー・デビッドソン教授は、ニューヨークタイムズ紙のインタビューで「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と述べました(2011年8月)。

約15年後に無くなってしまう現在の仕事の多くは、その業界のIT化によって変容するとされています。現段階ではまだUberが、世界のタクシー業界にどのようなインパクトを与えるか予断を許しませんが、業界を大きく変えてしまう可能性があるのかもしれません。

ちなみに、このUber、日本では提携したハイヤー・タクシーの配車サービスに留まっており、本格的に事業展開していません(日経ビジネスonline、2015年11月10日)。

様々な障壁があるのですが、仮に許可されたとしても、高齢化社会の日本では、プロのタクシードライバーの方々も高齢化しており、IT化できるでしょうか。アマチュアドライバーを探すにも、若者の自動車離れも指摘されています。IT化が前提のUberに日本のプロ・アマ「ドライバー」が、どれほど「乗れる」のかが問われるような気もします。

2016年5月11日 02:22

空港におけるコントラスト:搭乗手続きの完全機械化とセキュリティチェックの人手増

ゴールデンウィークを利用して、スイスのジュネーブに行きました。

帰国便はスイス・インターナショナル・エアラインズ(Swiss)を利用しました。すると、ジュネーブ空港から機内に乗り込むまで(荷物検査の空港職員以外は別として)誰とも話をしませんでした。

まず、パソコンで「オンライン・チェックイン」を済ませていました。それ故に、ジュネーブ空港では荷物を預けるだけです。

過去においてジュネーブ空港では荷物を預けるカウンターには人がいましたが、今回は無人の「セルフバッグドロップ」になっていました。スーツケースを「セルフバッグドロップ」の測りに置いて、搭乗券をスキャンして、バッグタグを取り付けて終わりです。

しかしながら、空港を利用する場合、皆、多かれ少なかれどこの空港でも経験されていると思われますが、ジュネーブ空港でも(長時間、列を作った後)手持ちの機内持ち込みの荷物は、空港側のセキュリティチェックで厳しく調べられます。時間がかかります。職員は精一杯頑張っているのでしょうが、どうも人手不足のように見えてしまいます。

セキュリティチェックが終わりますと、出発ボードに明示されている航空会社のゲートに向かい、そこで待ちます。

搭乗時間がきますと、航空会社の人からのアナウンスがあり、(最終的に彼女は距離を保って見守るのですが)自分でチケットのバーコードをゲートのカウンターで読み込ませ、ボーディング・ブリッジ(搭乗橋)入口の「バー」を開け、通過するのです。

S__8519683.jpg
ジュネーブ空港ゲートA9

こうして、航空会社の人とは誰とも接することなく飛行機に乗ることになりました。もちろん、機内にキャビンアテンダントはいますが、登場手続きがここまで自動化されていることに正直驚きました。

米国の経済学者タイラー・コーエンが、著書『大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか』で語るように、コンピューターを軸とする機械化は、それに影響されない仕事を持つ者とそうではない(機械化で仕事を失う)者に二極化していくとされています。

その様な意味では、航空会社の地上勤職員は数を減らしていると考えるべきでしょう。

これに反比例するように、テロ問題を抱えるヨーロッパの各国の空港のセキュリティチェックは厳しくなっています(こちらは人手が更に必要な事態に陥っていると理解できるでしょう)。

単純には、機械化に伴う経済の二極化が格差の問題を生み出し、それがホームグローン・テロリストに繋がり、空港セキュリティを厳格化させているとは言えませんが、空港における搭乗手続きの機械化とセキュリティの強化のコントラストは、先進国の「今」を反映しているように思えてなりませんでした。

2016年3月 7日 07:37

メトロスイス計画:欧州大都市間の地下を走る高速リニア鉄道の夢

スイスで物流のシステムが大きく変わる可能性があります。

先月、スイスのCargo Sous Terrain (CST)が地下物流網を建設することを発表しました。

まず、スイス国内の大都市に物流拠点(ハブ)を作ります。そして、ハブとハブを地下鉄道で結ぶのというのです("Connecting cities - Underground transport tube in Switzerland planned", ECOURBANLAB, 31 January 2016)。

具体的には、地下50mに直径6mのトンネルを掘り、小型貨物鉄道を走らせます(日経ビジネスonline「スイス発!地下を利用する自動物流網構想の衝撃」2016年2月24日;Yahoo ニュース「衝撃!スイスは地下版ドローンで物流を激変させようとしている」2月25日;財経新聞「スイスにCargo Sous Terrainなる地下物流システムを張り巡らす構想」3月1日)。

地下に貨物が下がりますと、自動的に貨物機がスイス中に巡らされたハブからハブまでモノを鉄道が運んでいきます。

まずは、2030年までにハーキンゲンからチューリヒまでを結ぶ70キロメートルの建設を目標とするようです。総工費は約4000億円と報じられています("CST wants to transport parcels underground" Ecommerce News, February 16, 2016)。

これはこれで壮大な計画のように感じられますが、かつてスイスにはもっと大きな旅客目的の地下開発構想がありました。将来は、スイス各都市からローマ、フランクフルト、マドリッド等、欧州の主要都市の地下を「浮上しながら走る」高速リニアモーター鉄道で結ぶという案まで計画されていたのです(「環境に優しい欧州地下鉄計画」Swissinfo.ch、2000年10月18日;Pro Swiss Metro http://www.proswissmetro.ch/start.php)。

それは、「メトロスイス」計画と呼ばれるもので、まずはスイスの南北・東西の主要都市間を完全真空の地下トンネルで結び、最高時速500キロ(ちなみに東海道新幹線の最高速度は時速285キロ)に到達する鉄道を走らせるというプロジェクトです(Swissinfo.ch、2000年10月18日)。これによって、ベルン-チューリッヒ間は60分から12分へ短縮されるはずでした。

スピードのみならず、航空機より少なくとも5倍環境保護に役立つとされ、従来のドイツのICEやフランスのTGV等の高速鉄道の半分の燃料を使うだけで済み、地下を走るため騒音公害もない、開発のために景観を損ねることもないと言われていましたが(同上)、現在、財政上の問題で頓挫しています。

もし、この地下を走るリニアモーターカー「スイスメトロ」計画が実行されていましたら、CST地下物流網よりも遥かに衝撃的であったでしょう。

そう考えますと、もしかしましたら、CST地下物流網の構築は、「スイスメトロ」計画復活の第一歩かもしれないと思えてきました。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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