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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

スポーツと社会

2017年6月 2日 02:14

無理にどこかの国に結び付ける必要はないのでは?

関脇・高安関の大関昇進が5月31日に正式に決まりました。今場所、高安関は11勝4敗で終え、大関昇進直近3場所の成績が目安となる33勝を超え、34勝となり大関昇進を決定付けました。

夏場所自体は、横綱・白鵬関が38度目の優勝を成し遂げました。

横綱は、優勝インタヴューで、10日目に寄り倒しで倒した高安関との取り組みを尋ねられ、「大きな壁があることこそ、素晴らしく強い力士が誕生しますし、彼のお母さんがフィリピン人でフィリピンの国民のみなさんにおめでとうと言ってあげたい」と答えています(日刊スポーツ、2017年5月28日)。

高安関は茨城県土浦市出身、お父様は日本、お母様はフィリピン出身の方です。ですから、もちろん、フィリピンに関係のある方です。

しかしながら、横綱が「フィリピンの国民のみなさんにおめでとう」と言われるのはどうなのでしょうか。

高安関は、茨城県土浦市育ちで日本国籍者です。外国籍で外国育ちの方とは異なるように思えます。

私は、高安関がフィリピン育ちはないことを指摘して、日本国籍者であることを強調するつもりはありません。

仮にフィリピン出身の力士が、大関、横綱になられるとすれば、大相撲の更なる多様化、国際化の観点からも喜ばしいことです。そして、フィリピンでも相撲人気が広がれば最高です。

しかしながら、茨城県出身の高安関の「コミュニティ」は、(日本というか)茨城にあるように思えるのです。

高安関の大関出身決定に際して、地元の土浦市役所では「祝 新大関昇進 高安関」と書かれた高さ10メートルの垂れ幕がつり下げられたそうです(毎日新聞、2017年6月1日)。JR常磐線土浦駅周辺では2カ所に横断幕が飾られ(同上)、高安関の母校・市立土浦第一中学校も祝賀ムード一色であったようです(朝日新聞、2017年6月1日)。

事実上の「国技」とされる大相撲は、何かと「国」が意識されます。それが日本的であれば、ある程、外国人力士も母国を意識せざるを得ないのでしょう。38回の優勝を誇る大横綱の白鵬関さえ同様かもしれません。

それはそれで仕方ないことですが。無理にどこかの国に結び付ける必要はないように感じます。

もちろん、高安関の活躍によって茨城とフィリピンが結びつくことになれば、それは素晴らしいことですが。

2017年4月15日 23:55

浅田真央選手の引退にただ思う

周知の通り、2017年4月10日、浅田真央選手(以下、敬称略して真央ちゃん)がご自身のブログで引退を発表しました。僅か数日前のニュースにもかかわらず、あっという間に国民に共有されたからか、随分前の出来事のようにも感じられます。

当ブログにおいて私は、何度か真央ちゃんに言及しています。
浅田真央選手に託したもの」(2014年2月22日)

そして、今回の真央ちゃんの引退をどのように文字化すれば良いのか、と悩む日々でした。時代が生んだ○○として浅田真央論を展開するのも陳腐なように思え...。

真央ちゃんの引退については、なぜ今なのか、もっと早く引退できなかったのか、が問われています。

なぜ今かを考えれば、直接的には2016年全日本選手権においてSP8位、フリーも振るわずトータル12位だったことが大きいと、ご本人も述べられています(産経ニュース、2017年4月12日)。

しかしながら、復帰後、成績が伸びなくてもなかなか引退できなかった理由は、浅田選手が引退したら大手広告代理店がフィギュアスケート界から手を引く可能性があったから(Business Journal, 2017年4月13日)、浅田選手の獲得するお金(試合の賞金、アイスショーの報酬、広告出演料、日本スケート連盟の補助金やスポンサーの賞金)の95%を日本スケート連盟やマネジメント事務所等が引き抜いており、彼らが浅田選手を辞めさせなかったという「大人の事情」があったと囁かれています(FOCUS-ASIA.COM, 2014年4月11日)。

いずれにしましても、ソチ五輪終了後、復帰は「ハーフハーフ」という言葉を残して休養していた真央ちゃんは、2015年10月に復帰したのです。

「大人の事情」は好意的に言い換えれば、多くの国民が復帰を求めたということでもあり、真央ちゃんはそれに答えようと本気で復帰を図ったのでしょう。それがお金のためではなかったからこそ、今回の引退が感動を呼ぶのではないでしょうか。

そして、真央ちゃんは引退しました。

元フィギュアスケート日本代表の渡部絵美氏は、「何よりも「浅田真央」というイメージが一度も狂うことなく、長い選手生活を終えたのも本当に素晴らしい」と言い、「普通の女の子なら、高校生や大学生になったら遊びたいとか冒険してみたいという気持ちが出てくるころです」と真央ちゃんが、真央ちゃんを演じきったことを賞賛しています(dot, 2017年4月11日)。

真央ちゃんは、今月12日の引退会見において結婚の予定について聞かれ「結婚のご予定は、ないです。お相手がいれば、その方と一緒に帰られたんですけど」と答えました(日刊スポーツ、4月12日)。

これからも、真央ちゃんの一挙一動が注目され続けてしまうことでしょう。しかし、私たちは、(寂しいけど)真央ちゃんの人生を真央ちゃんに返してあげるべきなのかもしれません。

2017年4月 2日 01:56

モンゴルに帰って貰っては、困ります。

大相撲春場所で新横綱・稀勢の里と優勝を争った大関・照ノ富士に対する場内のブーイングがヘイトスピーチに当たるのではないかと批判されています(The Huffington Post, 3月27日)。

当ブログ(3月26付)でも紹介しましたが、14日目、照ノ富士は関脇に陥落した元大関の琴奨菊と対戦し、立ち合いに大きく変化し、はたき込んで勝利しました。6敗目を喫した琴奨菊は、この敗北によって大関復帰を阻まれました。

場内は、重要な一番に変化をした照ノ富士へのブーイングに荒れ、次の取組ために横綱・日馬富士が土俵に上がってからも続き、日馬富士は「相撲を取るどころじゃなかった。集中してるけど耳に入ってしまう。次の一番に集中してる人のことも考えてほしい。大けがにもつながるから」と苦言を呈している程です(日刊スポーツ、3月25日)。

そのブーイングの一つがモンゴル出身の照ノ富士への「モンゴルへ帰れ!」という言葉であったとされています(スポーツ報知、3月26日;サンスポ、3月31日)。

まず、このような心無い言葉は、公の場で許されるべきでありません。

もっとも、NHKで解説していた北の富士勝昭さんが「(ブーイングは)当然、飛ぶでしょうね」と語っているように、身内の関係者には当然と受け止められたのかもしれません。

そもそも、稽古中など部屋ではよく投げつけられる言葉なのかもしれません。そこに「愛」があるかどうかということも重要で、師匠や同門の親方が照ノ富士に言った場合は、「真っ向勝負で頑張れ」という意味が含まれていることでしょう。

いうまでもなく、若貴ブームの後、大相撲を支えたのは外国人力士であり、特に朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜などの横綱を輩出したモンゴル勢なのです。そして、稀勢の里が横綱になり、また現在、起こっている大相撲ブームも、「敵役」としてのモンゴルの強豪が存在するから成立しているのではないでしょうか(もちろん、モンゴル勢を応援している日本人も沢山いますし、外国人の稀勢の里ファンも少なくないのでしょうが)。

モンゴル、ハワイ、ブルガリアとは文化が異なりますので、日本で何年も修行しても究極なところで勝負に関する価値観は異なるかもしれません。それでも、大相撲は、彼ら外国人力士に支えられてきたのです。

唯一の日本人横綱・稀勢の里には、どうしてもナショナリズムが結びつきます。逆説的ですが、それは、大相撲の国際化を意味しており、悪いことではないのです(横綱・輪島は石川県、横綱・北の湖は北海道のシンボルでしたが、両者の対戦においてどちらかが日本を代表することはありませんでした)。

しかしながら、「愛」のない「母国へ帰れ」はいけないのです。照ノ富士に帰って貰っては困るのです。モンゴル勢がいなくなれば国際性がなくなってしまいます(小錦さんが現役の頃、場所で土俵に上がると「ハワイ・オアフ島出身高砂部屋」というアナウンスが流れ、それだけで「遠くから来たんだなぁ」、「凄いな」と思ったことを記憶しています)。

照ノ富士関には、日本に留まって真っ向勝負で頑張って頂きましょう。

2017年3月26日 23:54

変化すること、変化しないこと

周知の通り、大相撲春場所は千秋楽に13勝1敗の大関・照ノ富士と12勝2敗の新横綱の稀勢の里が結び前の一番で対戦し、稀勢の里が「突き落とし」で勝ち、両者で争われた優勝決定戦においても稀勢の里が「小手投げ」で勝ち、2場所連続優勝を飾りました。

稀勢の里は、全勝で迎えた13日目に横綱・日馬富士に敗れて際、土俵下まで飛ばさせ、左肩付近を負傷して救急車で運ばれ、休場の可能性も報じられていました。

大相撲ファンの方々が、既に語りつくしているかもしれませんが、私は14日目の両者の相撲が大きな別れ目だったのではないかと感じました。

14日目、怪我をした稀勢の里は、結びの一番で横綱・鶴竜と対戦したのですが、勝負にならない状況で、鶴竜に寄り切りで敗れてしまいます。ただ、怪我に逃げない姿勢は、人々に感動を与えました。

その同じ、14日、12勝1敗で稀勢の里と並んでいた照ノ富士は、立ち合いの大きな変化によって関脇の琴奨菊をはたき込んで1敗を死守して単独首位になります。負けた元大関・琴奨菊は、先月、大関から陥落しながら大関復帰の10勝を目指していたのですが、この日の6敗目で復帰がなくなりました。

照ノ富士は勝ったにもかかわらず、場内はブーイングの嵐で「勝負しろよ」「取り直せ」と怒号が飛び、中には「モンゴルに帰れ」という心無い言葉まで投げつけられたようです(サンスポ、3月25日、スポーツ報知、3月26日)。

これだけ批判された翌日の千秋楽に、照ノ富士は稀勢の里に連続して敗れます。

照ノ富士は変化はできず、また手負いの稀勢の里に思い切って当たることもできない精神状態だったかもしれません。

逆に稀勢の里にとっては、照ノ富士との一番に「変化」が許される状況が出来上がっていたと言えるでしょう。前日、照ノ富士が琴奨菊と真っ向勝負していたら、琴奨菊に負けていたかもしれませんが、同時に千秋楽の結果は変わっていたかもしれません。

完全に悪役になってしまった照ノ富士ですが、照ノ富士もNHKの『アスリートの魂』というドキュメンタリー番組では、白星が大切と言いながら、「力強い相撲で勝ったほうが自分も気持ちいい」、「いい相撲を取って勝ちたい」と語っています(NHK BS1、「理想の"型"を求めて 新大関 照ノ富士」2015年8月1日)。

そう考えますと、照ノ富士は自らの「変化」に負けたとも言えるのかもしれません。

今後、照ノ富士が変化をすることを人々が許さないようにも思えます。もう、「いい相撲を取って勝つ」しかなくなってしまったのではないでしょうか。

そうなると、照ノ富士関も強くなられるかもしれません。今場所、国民的英雄になった横綱・稀勢の里関も、つい最近まで「ここ一番での勝負弱さ」を指摘されていたのです。本当の意味で人が「変わる」ことはあります。

次の場所が楽しみになってきました。

2017年3月 9日 23:54

本当のファンは球場にいる:「だから野球を嫌いにならず、またグラブを持って応援に来てほしい」(山田選手)

ワールド・ベースボール・クラシック (WBC)が開幕し、3月7日の日本代表の初戦となったキューバ戦は、様々なドラマがありました。

特に1対1の同点で迎えた4回裏の日本代表の攻撃では、ヒットで出塁した松田宣浩選手を2塁において、1番打者の山田哲人選手の打席。2ボール1ストライクからの4球目ストレートを山田選手は、フルスイングし、レストスタンドへホームラン性の当たりが飛びました。

ホームランかと誰もが思ったところ、審判団は2塁を回った山田選手を止め、ビデオ判定に移りました。何と、山田選手の打球は、フェンス最前列でグローブを持った少年にキャッチされ2塁打に訂正されてしまったのです。

何度も繰り返された映像を見ましてもはっきりしません。少年がボールを取らなければ、ホームランとなり、日本のリードは2点差になっていたかもしれません。あるいはフェンスに当たり、グラウンドに跳ね返ってきたかもしれません。

いずれにせよ、結果は2塁打となりました。日本代表ファンは納得できない人は多かったと思います。カメラに映し出された少年は中学生だったとのことですが、球団関係者から口頭注意を受け(即ネット上でも批判され)、その後は、最前列で観戦した仲間とともに試合中、青ざめた表情でフードを目深にかぶったままだったと報じられています(「山田の打球"キャッチ"の中学生、青ざめた表情」日刊スポーツ、3月8日)。

キューバ戦は5回に打線が爆発しまして、11対6で日本代表が大勝しましたが、それでも幻のホームラン少年事件は、大きな話題となってしまいました(負けていたら非難・批判は倍増していたでしょう)。

球場の外野に観客がグローブを持ち込むなという意見もありますが、現場の選手からは外野のグローブに対して寛容な声が多いようです。

昨年、同じように広島―中日戦(9月17日)で外野フェンスぎりぎりまで飛んだ打球を、客席のカープファンが手を伸ばして取ろうとしたことで、ビデオ判定となってしまいました。激怒したかファンも多かったようですが、辛口の野球評論家の江本孟紀氏は「お客さんは(打球が)そばに来たらグローブを持って、ボールが欲しくてしょうがないんですよ」、「だから、手を出すっていうのはしょうがないと思うんですね」と擁護しています(トピックニュース、2016年9月20日)。

今回の当事者である山田選手は、「僕は全然気にしてない。だから野球を嫌いにならず、またグラブを持って応援に来てほしい」とコメントし、少年が丸刈り頭であり、野球をしている可能性が高いとして、「これも何かの縁だし、将来プロ野球選手になって、一緒に『あんなことがあったね』と懐かしい話ができるように頑張ってほしい。僕も完璧な本塁打を打てるように頑張ります」(日刊スポーツ、3月9日)と少年を救っています。

山田選手や江本氏はなぜ、こんなにグローブ持ち込みファンに優しいのでしょうか。

私も、年に何回か甲子園に足を運びますが、本当の野球ファンは球場にいるように思えるのです(球場がない地域に住まれている方は仕方ないですが)。時に、ファンは酷いヤジを投げかけたり、酔っぱらったり、泣いたり、喜んだり、怒ったりしますが、選手たちは、お金を払って自分たちのプレーを観に球場に来てくれる人が「ファースト」であると考えているのではないでしょうか。

山田選手が語る通り、自分のホームランが2塁打になることよりも重要なことがあるかもしれません。

そもそも、アクシデントがあってこそ野球なのでしょう。第一回のWBCにも不可解な判定がありました。そして日本は世界一に。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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