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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

スポーツと社会

2018年8月21日 23:58

連投、多投のエースを美化できなくなった夏: 高校野球が変わった第100回大会

第100回記念大会を終えた今年の夏の甲子園は、決勝で大阪桐蔭(北大阪代表)が13-2で金足農(秋田代表)に大勝し、史上初の2度目の春夏連覇を達成して幕を閉じました。

当ブログ2018年8月14日付にて、甲子園の応援ソングがあまり変わらないことに言及しました。

しかし、今回大きく変わったことが目につきました。それは、投手の投球数に対する警笛です。

8月12日、済美(愛媛県代表)と星稜(石川県代表)の試合は、延長13回までもつれ史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打で13-11で済美が勝利しました。この試合、済美のエース・山口直哉投手はたった一人で184球を投げました。

これに対し、スポーツライターの氏原英明氏は高校生にここまで投げさせるべきではなく、マスコミも「熱投」や「力投」と表現すべきではないとしています(「美化すべきでない異常な球数」ベースボールチャンネル、8月13日)。その上で、同校の監督が「(山口本人には)何かあったらすぐに言って来いよと、『行けるか?大丈夫か?』と話していました」とコメントしたことに対し、学生からは断れず、実質、壊れるまで投げろという状況を作り出していると監督のマネイジメント能力までを批判するのです(同上)。

準決勝の金足農(秋田代表)―日大三(西東京代表)で始球式をしたPL学園OBの桑田真澄さんは、金足農の吉田投手が秋田大会から一人で投げ抜いていることについて問われると「どこか痛いところが出ればすぐに声を出して欲しい」と述べ、「高校生は体全体を使った投球フォームを身につけて欲しいし、我々大人は投球制限を設けるなどルール作りが必要だと思います」と語っています(スポニチアネックス、2018年8月20日)。

専門家ばかりではありません。元大阪府知事の橋下徹氏は済美の山口投手の184球について「投球数制限は直ちに導入すべき。こんな不合理・非科学的なことをやり続ける国は、前近代的野蛮国家だ」(サンスポ、8月14日)と手厳しく非難しています。

元宮崎県知事の東国原英夫氏は「(球数は)制限するべきではない。本人の意思を尊重すべき」と反論していますが(サンスポ、8月17日)、全体としては甲子園の名物だったエースの連投や多投に対して否定的な声が大勢を占めているように感じられます。

このような甲子園での投球をゴールにせず「キャリア全体、人生全体でスポーツキャリア考えるべき」(橋本氏)(デイリー、8月16日)という考え方は今に始まったわけではないです。

しかし、今大会は、それが規範として社会的に拡散されたように思えるのです。それが、甲子園の優勝投手はプロで大成しないという説の影響なのかは定かではありませんが(The Page, 2018年8月21日)、100回大会に顕在化したのは事実なのではないでしょうか。

2018年7月15日 22:31

FIFA:試合中に「魅力的な女性」を接写するのはいけない

国際サッカー連盟(FIFA)が、ワールドカップ(W杯)開催中の7月11日、各国の報道機関に対し、試合中にカメラで「魅力的な女性」を接写するのを止めるよう警告したというニュースがありました(BBC, 7月13日)。

なぜ、ダメなのかと言えば、若い美しい女性にフォーカスすることが「性差別」に繋がるからであるとされています(同上)。

このニュースを見た際、7月7日に行われました決勝トーナメント準々決勝(スウェーデン対イングランド)を思い出しました。

結果は、スウェーデンがイングランドに0-2で敗れ、敗退が決まったのですが、1人の美しいスウェーデン・サポーターが話題になりました。

0-2とリードされた後半34分の場面で、米国のスポーツ専門局「FOX Soccer」公式ツイッターがスウェーデンの黄色のユニホームを着て、客席からピッチを眺める若い女性の写真を報じたのです。その顔は「ウェーブのかかったブロンドのロングヘアからのぞく眉間にしわが寄り、心なしか目を赤らめながら物憂げな表情を浮かべている」と形容されています(THE ANSWER, 7月8日)。

その後、この写真に対して、
「私には彼女を慰める義務がある」
「スーパーモデルではないスウェーデン女性はいるのか?」
「彼女は超かわいいね!」
「しかし、しかし少なくとも彼女は美しい」
「どうして美人にこんなことができるんだ!?」
「泣きたくて肩が必要なら、僕のが空いているよ」
「僕のヨーロッパ旅行に今、スウェーデンが加わった」

などと世界中の(おそらく)男性からリアクションが出てくるのです(同上)。

悪いとは言い切れないのですが、金髪の美女が悲しむ姿が、スウェーデンの敗北を象徴するとすれば、あまりにも典型的なシンボルなのです。

米国のスポーツ専門局「FOX Soccer」だけがステレオタイプを作り出したのではなく、リアクションを取った男性たちとの「共犯関係」にあるのでしょう。

実はこの報道は、日本のテレビの地上波でもW杯の話題として放送されていました。そこにFIFAが懸念する「性差別」に対する配慮はありませんでした。

このような報道等が差別に繋がるのかどうかは、今後の(国際)社会が決めることかもしれません。この文脈ですと、高校野球のチアガールの接写もいけないことになります。

W杯は基本、国対抗であり、どうしてもステレオタイプが目立つのも事実です。しかし、グローバル化が進み、移民が増加すれば各国の代表も多様化しています。ステレオタイプがいけないという規範が生み出されるのもW杯からなのかもしれません。

2018年7月10日 21:21

巷におけるW杯GK論は、高次元のサッカーの国民化に繋がるか?

今回のワールドカップは、様々な話題を提供してくれましたが、その一つは、ゴールキーパー(GK1)に関する良し悪しでした。

日本の正GKの川島永嗣選手は、日本の第一戦となったコロンビア戦の最初の失点シーンで批判を受けます。これはコロンビアのFKが日本の「壁」の下を通り、ゴールに入ったものでした。そして、第二戦のセネガル戦も最初の失点が続きます。セネガルの選手のシュートを川島選手がパンチングをするのですが、それが相手のフォワード選手に当たり跳ね返ってゴールに入ります。

この二試合が終わって川島選手へのバッシングがピークを迎えます。以下にみるように批判の根拠の多くが、海外での評価からきます。

国際サッカー連盟(FIFA)公式サイトの速報において、(川島の失点は)「日本守備陣にとって災害だ」と指摘するとともに、「間違い続きの喜劇」と酷評されていると報じられました(日刊スポーツ, 6月25日)。

更に、フランスのサッカー専門誌『フランス・フットボール』は、「コロンビア戦でやらかしたカワシマが再びミスをした。どういうわけかボールをマネに渡してしまい、ゴールが生まれた」と書き、英国営放送『BBC』は、川島を「poor goal Keeping(お粗末なゴールキーピング)」と揶揄したとされます(SOCCER DIGEST Web, 6月26日)。

しかしながら、日本が決勝トーナメントで敗北してから時間が経つと、川島選手を擁護する論調が出てきます。

準々決勝が始まる前の段階で、スポーツのデータ分析を手がける『Opta』がGKセーブ率ランキングを発表したところ、3位に日本代表のGK川島選手がランキングされたのです(フットボールチャンネル, 2018年7月6日)。

その流れで、日本の失点で川島選手のミスと言えるのはセネガル戦の1点だけであり、川島選手の異常なバッシングは、サッカーでGKやる子供を無くしてしまうのではないかとまで懸念する声が挙がります(「川島永嗣へのW杯異常バッシング、専門家警鐘」J-Castニュース, 2018年7月 8日)。

こき下ろしたり、持ち上げたりすることがいいことではありませんが、W杯です。正直、本当のところは、その技術的な問題に関しては、専門家ではないと分からないでしょう。素人では正確な判断はできなく、人々はマスコミの論調に影響されてしまう傾向があると思います。

しかしながら、それでも、かつてこれ程、巷で「GKとは何か」という議論が日本で交わされたがあったでしょうか。そして、何よりもこの議論が、サッカーの国民化に役立っているように感じるのです。

サッカーをやっているプロやセミプロだけがサッカーを語っているならば、国民的スポーツではありません。誰でも言いたい放題であるからこそ、国民的なのです。

例えば、野球は、実際にはやっていない人も語ることが許されるスポーツです。特に、関西では女性も野球(主に阪神)を語ります。私は、関西出身のプロ野球選手が多いのは、野球経験のない「おかん」が野球のルールを熟知していることにあると見ています。

経験していない人は、その分野に語るべきではないということを言う人がいます。確かに、経験者が語るプロの議論は必要でしょう。しかし、素人談義も、無駄ではないような気がするのです。

今回のW杯のGK論は、そのような観点から(GKを子供がやらなくなるのではなく)日本のサッカーのより高いレベルでの国民化に寄与しているとは考えられないでしょうか。

2018年7月 9日 00:05

誇るべき「クリーン・ナショナリズム」とその国際的背景

ワールドカップ・ロシア大会において日本代表に負けず劣らず注目されたのは、試合後、自主的に掃除をするサポーターたちでした。

海外でその行動が評価されているというニュースが、日本でも多数流れています。

初戦のコロンビア戦の後、英国の大衆紙「ザ・サン」は、「コロンビアに勝利した後、日本のファンはスタジアムを掃除していた」「2014年のブラジル大会でやっていたのと同じように、スタンドを掃除するというスタイルで勝利を味わっていた」と描写されています(ゲキサカ, 2018年6月20日)。

日本のサポーターの清掃は、勝った試合だけではありません。負けたベルギー戦の後も、日本のサポーターは「いつも通り」に清掃をしました。それを、USA TODAY紙は「負けても彼らの素晴らしい精神は無くならなかった」と称したことが伝わってきます(The Huffington Post Japan, 7月3日)

このようなW杯のサポーターによる掃除は、今大会、日本から他国のサポーターに広がりを見せています。日本と対戦して敗北したコロンビアのサポーターも、自主掃除をし、ウルグアイとサウジアラビアの一戦いでは、勝ったウルグアイ・サポーターも、サウジアラビア・サポーターも試合後ゴミを拾ったそうです(The Huffington Post Japan, 6月21日)。

日本人場合はサポーターばかりではなく、代表選手までに広がり、日本代表は決勝トーナメントにおいてベルギーに敗北した後、ロッカーを綺麗にしてロシア語で『ありがとう』とのメモ書を置いて去ったと報じられました(朝日Digital, 7月4日)。

このような「クリーン・ナショナリズム」とも言えるような日本人の行動は、評価されるべきでしょう。

吉田麻也選手は以下のように語っています。
「僕たちのロッカーは、試合後はおそらく、イングランド・プレミアリーグのロッカーと比較するときれいだと思います。ファンの皆さまの行いに対しては僕たちも非常に感銘を受けています。スタジアムでの皆さんの行いは、世界中で見られていると思います。世界にたたえられるのは非常にうれしい。これが派生して、違う国のファンの方々も同じようなことをしてくれているというニュースを見ました。非常に誇らしいと思う」(産経ニュース, 2018年6月23日)。

英国のプレミアリーグ、サウサンプトンFCで活躍している吉田選手の言葉は重いです。英国サッカーはフーリガンを生み出したことでも有名です。清掃どころか、破壊行為を繰り返すファン。それはそれで根底に社会問題があり、単純に日本とは比較はできませんが、秩序を守る日本ファンは素晴らしいのです。

ただ、欧州のサッカーファンがあまりにも酷いということも、多少、日本サポーターへの海外マスコミの大絶賛へ繋がっていることもあるような気もします。

2018年7月 4日 23:56

ベスト16だからこそ、客観的分析と批判を受け入れる「強さ」が求められる

周知の通り、日本代表のワールドカップ・ロシア大会はベルギーに2-3で敗れ、終焉しました。

私は、試合中、欧州から日本への長距離のフライトに乗っており、機内の弱いWiFiでこまめに速報を更新しながら試合を「観戦」していました。

同じようなことをしていた他の乗客が、「でも、頑張った、頑張った」と自分を慰めるように独り言を発していました。

確かに、通算成績1勝2敗1分けの今大会、強豪(FIFAランク上位)との闘いを楽しませて頂きました。

帰国すると、日本のマスコミも、日本凄い!良くやった!という労いの言葉に満ちていました。

しかしながら、(おそらく)唯一、評論家のセルジオ越後氏だけが「(1次リーグ第1戦のコロンビア戦で)10人の相手に1勝して、あと2敗1分けのチームが強いって根拠はどこにあるんですかね」(サンスポ, 2018年7月4日)、「負けは負け。負けたときに厳しくやらないと」(スポニチ、2018年7月3日)、「強い国は負けたら慰めはない、日本は負けても慰めるから、やっぱり強くないということです」(スポーツ報知, 2018年7月3日)と辛口批評を展開しています。

全くおっしゃる通りです。もちろん、下馬評では、全敗とも予想されていたFIFAランク61位の日本代表でしたので、決勝トーナメントに進出してベスト16に名乗りあげただけで評価されるべきではあります。

それでも、肯定的評価を前提に、次のW杯により上位を目指すためにも、ベルギー戦とポーランド戦の敗因を的確に分析する必要があるように感じます。評論家の方は、時には厳しいことも指摘しなければならないかもしれませんが、耳障りの良いことばかりを言って結果として弱体化するよりは正しい選択なのではないでしょうか。

特に「強い国は負けたら慰めはない」というのは本当でしょう。

かつて、戦後の高度成長期に日本人は日本を批判する言説を好みました。欧米に比較して日本社会が遅れているという論調は、確かに(後に自虐史観と言われるのですが)問題も孕んでいました。しかし、日本の近代史において「Japan as Number One」と称された高度成長期からバブル経済崩壊までの間が、日本が経済的にもっとも強かったのも事実です。

何でもかんでも否定する必要はありません。でも、ベスト16に勝ち上がったからこそ、負けた理由を分析し、厳しく指摘し、受け入れる「強さ」があるべきなのかもしれません。

それはサッカーだけではないようにも思えてきます。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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