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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

スポーツと社会

2018年11月12日 23:59

FA宣言に対するアレルギー反応は、日本学的文脈から考えるべきか?

11月7日、プロ野球の広島・丸佳浩外野手が、国内フリーエージェント(FA)権を行使しました。

まだ、交渉が始まっていないのですが、マスコミでは「巨人が最低4年20億円以上で獲得へ」(日刊スポーツ, 11月8日)とか、ロッテが「広島・丸に4年20億円視野!球団幹部「最大限の誠意」」(産経スポーツ,11月8日)とか報じられています。

広島も、「広島の丸がFA宣言=球団は宣言残留容認」(Jiji.com, 11月7日)です。広島ではこれまで、FA権を行使しての宣言残留は基本的に認めてこなかったにもかかわらず、丸選手に関しては、「欠かせない戦力であることから異例の対応を取る」(産経スポーツ, 11月4日)というのです。

なるほど、広島は今までFA宣言するなら、もう出て行ってくれという姿勢だったのです。

広島がFA宣言後の残留を認めてこなかったのは、冷酷な球団であるからではなく、球団の資金面で限界があったからであるとされています(産経新聞、11月12日)。過去の例を見ますと、それだけではないような気もしますが。

結果として、OBでさえFAを宣言する選手に厳しいようで、広島OBで野球評論家の北別府学氏は10月7日のご自分のブログで、FA宣言をした丸選手について「育てあげたのは広島東洋カープだ」と書き、パワハラなのではないかと指摘されたほどです(日刊スポ―ツ, 11月8日)。

一部のファンも「裏切り者」といった言葉が出ているそうで(日刊スポーツ, 11月11日)、地元の銀行のCM契約を移籍を決意した丸選手が打ち切ったという怪情報も流れているそうです(東京スポーツ, 11月12日)。

私も阪神ファンなので、(鳥谷選手が巨人に行ったらと想像すれば)気持ちは分かるんですけど、やはり選手は第一にプロであることを認識しなければいけないのかもしれません。

米国でもメジャーリーグは意外に家族主義でウェットなところもありますが、それでもFAに対しては日本程、批判的な声が挙がりません(元古巣チームとの初対戦では、大きなブーイングが必ずありますが)。FAはプロ選手の当然の権利として受け止めるのが「普通」であるように思われます。

ロバート・ホワイティング氏の『菊とバット』に示されているように、Baseball は日本で日本文化と融合し、「野球」として発展していきました。FAはそのような文脈では、日本文化とは「異質」な制度ということになるのでしょうか。

ただ、FAで選手を受け入れてきた阪神を見続けている私から申しますと、FA選手の費用対効果は悪いと考えます。この場合、(1人の選手の個人成績を効果とするのではなく)効果を優勝、日本一として考えてみます。阪神を例にすれば、FAで人を集めても優勝や日本一に必ずしも結びついていないと言えるのです。

ですから、広島の皆さんも、是非気持ちよくFA選手を出してあげてください。もちろん、FA宣言後の再契約でも問題はありません。

2018年11月 6日 23:59

松坂投手と契約できたソフトバンクだからこそ、「甲斐キャノン」が誕生したのでは?

11月3日、プロ野球日本シリーズ第6戦が行われ、2-0で広島に勝利したソフトバンクが通算4勝1敗1分で2年連続日本一となりました。

阪神ファンの私は「当事者」ではないため、極めて冷静にテレビ観戦することができました。

そんな私も日本中の野球ファン同様、(このシリーズでMVPを獲得することになる)ソフトバンクの甲斐拓也捕手が6回連続、盗塁を阻止したプレーには熱くなりました。

広島は、今シーズン、セリーグで断トツの95盗塁を数え、走るチームなのです。その広島を、「甲斐キャノン」と称される強肩で刺す姿は、「凄い」の一言でした。ソフトバンクは、攻撃だけではなく、守りの時間も「キャノン」で攻めているのですから、そりゃ強いです。

そんな甲斐選手が、2010年のドラフト会議にて育成6位の指名で3軍から這い上がってきたことが着目されています。

今回、完全に機動力を封じ込められた広島の松田オーナーは甲斐選手を念頭に「いかに才能を漏らしているか痛切に感じた。ドラフト指名されていない選手が埋もれていると認識しなければ。掘り起こしてチャンスを与えてあげるのもいい」と発言されています(日刊スポーツ, 11月5日)。

しかしながら、産経新聞の特別記者・植村徹也氏は甲斐選手の育成、台頭はソフトバンクが「玉石混交」を甘受できる資金力にあると主張しています(産経新聞、11月6日)。

「玉石混交」という表現はともかくも、植村氏は、ソフトバンクが1,2、3軍制を敷き、育成枠だけでも23人を抱え、3軍の指導体制は他球団の1軍並みであり、支配下登録選手を合わせると100人近い選手と契約できているからこそ、層が厚いというのです(同上)。

人は成功したことばかりに目が行きますが、総合的に考える必要があるでしょう。

今シーズン、ソフトバンクから松坂大輔投手が中日ドラゴンズに移籍し、11試合に登板して6勝4敗、防御率3.74で復活を果たしました。しかし、松坂投手は3年(2015年~17年)12億円の大型契約とされたソフトバンク時代は、1勝もできずに退団しているのです。

甲斐選手を見つけ、育てたソフトバンクを絶賛し、1勝もできなかった松坂投手と12億円契約をしたソフトバンクを批判するのは、フェアなのでしょうか。

私には松坂投手に12億円を払えるソフトバンクだからこそ、「甲斐キャノン」の甲斐選手も生み出せたと考えるほうが、しっくりくるのです。

日本シリーズ第1戦、中日の松坂投手がテレビ中継のゲスト解説をしていました。9回裏、甲斐選手が、盗塁を刺したシーンで松坂投手は「もちろん、知っていますけど、凄いですね」とコメントしていました。

凄いのはソフトバンクなのかもしれません。

でも、広島にはお金ではない方法で、第二の甲斐選手を見つけてほしいような気もします。阪神には...。

2018年10月13日 23:59

私が甲子園の最終戦を観に行かなかった理由

10月10日、水曜日。夕方、今シーズンの甲子園での最終戦となる「阪神タイガース対横浜DeNAベイスターズ」の25回戦を観に行こうか迷いました。

試合前の段階では、来シーズンも金本知憲監督は続投と報じられており、コーチ陣の入れ替えも微調整に留まるだろうと予想されていました。

今シーズン、阪神は10日の試合前において60勝79敗2分という成績で最下位、特に甲子園では、20勝39敗2分けという惨敗ぶりでした。

言うまでもなく、3年前、金本監督は、大きな期待を背負って登場しました。

「超変革」と称した1年目は、夢に溢れていました。年間成績は64勝76敗3分と負け越し、勝率457は、暗黒時代と称された野村監督の頃に遡る程の低成績でしたが、それでも、希望があったのです。

キャッチフレーズを「挑む」とした2年目は78勝61敗4分の成績で着実に力を付けてきたように見えました。

そして、「執念」となった3年目の今年、成績はワーストを記録し、勝率440はまさに暗黒時代の再来を暗示しているように思われても仕方のないものでした。

私は阪神ファンとして、上記の数字を最終戦で甲子園で実感し、来シーズンに臨むべきだと思いました。

しかしながら、三宮で雨が降り出し、帰路に就くことにしました。スケジュール上、どんな雨でも試合決行であることは分かっていましたが、負け試合になった時、雨の中で自分が耐えられるか自信がなかったのです。今年の阪神は、甲子園で1勝2敗の割合で負け続けてきましたので、甲子園には多分負けるだろうと覚悟をもって行くことになりますが、でも雨に打たれながら1年を振り返るのは辛すぎます。

そして、翌10月11日、金本監督の辞任が伝わりました。驚きはなかったのです。監督を変えれば全て解決するものではないですが、監督は、最終的に勝負の結果を(フィールドにおいて)引き受けなければいけない存在です。3年目の結果が1年目であったなら、もしくは2年目であったなら、また違った見方もできたかもしれません。

阪神ですから、外からでは分からない内側のドロドロとした問題もあったかもしれません。阪神ファンは、それでも、それさえも「兄貴」ならば乗り越えてくれるのではないかと願っていたのです。

10月13日の土曜日、阪神は名古屋ドームでビジターとして今季の最終戦を迎えました。

延長の末、3-2阪神が勝利し、金本監督の最終試合を白星で飾りました。

試合終了後、名古屋の阪神ファンは、金本監督に対して、現役時代の応援歌を合唱し、お別れしました。私はテレビ観戦でしたが、何となく金本監督としてではなく、金本選手へ送られた餞別の歌であるかのように聞こえてきました。

2018年8月21日 23:58

連投、多投のエースを美化できなくなった夏: 高校野球が変わった第100回大会

第100回記念大会を終えた今年の夏の甲子園は、決勝で大阪桐蔭(北大阪代表)が13-2で金足農(秋田代表)に大勝し、史上初の2度目の春夏連覇を達成して幕を閉じました。

当ブログ2018年8月14日付にて、甲子園の応援ソングがあまり変わらないことに言及しました。

しかし、今回大きく変わったことが目につきました。それは、投手の投球数に対する警笛です。

8月12日、済美(愛媛県代表)と星稜(石川県代表)の試合は、延長13回までもつれ史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打で13-11で済美が勝利しました。この試合、済美のエース・山口直哉投手はたった一人で184球を投げました。

これに対し、スポーツライターの氏原英明氏は高校生にここまで投げさせるべきではなく、マスコミも「熱投」や「力投」と表現すべきではないとしています(「美化すべきでない異常な球数」ベースボールチャンネル、8月13日)。その上で、同校の監督が「(山口本人には)何かあったらすぐに言って来いよと、『行けるか?大丈夫か?』と話していました」とコメントしたことに対し、学生からは断れず、実質、壊れるまで投げろという状況を作り出していると監督のマネイジメント能力までを批判するのです(同上)。

準決勝の金足農(秋田代表)―日大三(西東京代表)で始球式をしたPL学園OBの桑田真澄さんは、金足農の吉田投手が秋田大会から一人で投げ抜いていることについて問われると「どこか痛いところが出ればすぐに声を出して欲しい」と述べ、「高校生は体全体を使った投球フォームを身につけて欲しいし、我々大人は投球制限を設けるなどルール作りが必要だと思います」と語っています(スポニチアネックス、2018年8月20日)。

専門家ばかりではありません。元大阪府知事の橋下徹氏は済美の山口投手の184球について「投球数制限は直ちに導入すべき。こんな不合理・非科学的なことをやり続ける国は、前近代的野蛮国家だ」(サンスポ、8月14日)と手厳しく非難しています。

元宮崎県知事の東国原英夫氏は「(球数は)制限するべきではない。本人の意思を尊重すべき」と反論していますが(サンスポ、8月17日)、全体としては甲子園の名物だったエースの連投や多投に対して否定的な声が大勢を占めているように感じられます。

このような甲子園での投球をゴールにせず「キャリア全体、人生全体でスポーツキャリア考えるべき」(橋本氏)(デイリー、8月16日)という考え方は今に始まったわけではないです。

しかし、今大会は、それが規範として社会的に拡散されたように思えるのです。それが、甲子園の優勝投手はプロで大成しないという説の影響なのかは定かではありませんが(The Page, 2018年8月21日)、100回大会に顕在化したのは事実なのではないでしょうか。

2018年7月15日 22:31

FIFA:試合中に「魅力的な女性」を接写するのはいけない

国際サッカー連盟(FIFA)が、ワールドカップ(W杯)開催中の7月11日、各国の報道機関に対し、試合中にカメラで「魅力的な女性」を接写するのを止めるよう警告したというニュースがありました(BBC, 7月13日)。

なぜ、ダメなのかと言えば、若い美しい女性にフォーカスすることが「性差別」に繋がるからであるとされています(同上)。

このニュースを見た際、7月7日に行われました決勝トーナメント準々決勝(スウェーデン対イングランド)を思い出しました。

結果は、スウェーデンがイングランドに0-2で敗れ、敗退が決まったのですが、1人の美しいスウェーデン・サポーターが話題になりました。

0-2とリードされた後半34分の場面で、米国のスポーツ専門局「FOX Soccer」公式ツイッターがスウェーデンの黄色のユニホームを着て、客席からピッチを眺める若い女性の写真を報じたのです。その顔は「ウェーブのかかったブロンドのロングヘアからのぞく眉間にしわが寄り、心なしか目を赤らめながら物憂げな表情を浮かべている」と形容されています(THE ANSWER, 7月8日)。

その後、この写真に対して、
「私には彼女を慰める義務がある」
「スーパーモデルではないスウェーデン女性はいるのか?」
「彼女は超かわいいね!」
「しかし、しかし少なくとも彼女は美しい」
「どうして美人にこんなことができるんだ!?」
「泣きたくて肩が必要なら、僕のが空いているよ」
「僕のヨーロッパ旅行に今、スウェーデンが加わった」

などと世界中の(おそらく)男性からリアクションが出てくるのです(同上)。

悪いとは言い切れないのですが、金髪の美女が悲しむ姿が、スウェーデンの敗北を象徴するとすれば、あまりにも典型的なシンボルなのです。

米国のスポーツ専門局「FOX Soccer」だけがステレオタイプを作り出したのではなく、リアクションを取った男性たちとの「共犯関係」にあるのでしょう。

実はこの報道は、日本のテレビの地上波でもW杯の話題として放送されていました。そこにFIFAが懸念する「性差別」に対する配慮はありませんでした。

このような報道等が差別に繋がるのかどうかは、今後の(国際)社会が決めることかもしれません。この文脈ですと、高校野球のチアガールの接写もいけないことになります。

W杯は基本、国対抗であり、どうしてもステレオタイプが目立つのも事実です。しかし、グローバル化が進み、移民が増加すれば各国の代表も多様化しています。ステレオタイプがいけないという規範が生み出されるのもW杯からなのかもしれません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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