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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

大震災/原発事故と日本

2016年5月 2日 15:03

熊本の「空き巣」は何かを意味しているのか?

タレントのビートたけしさんが、「ビートたけしのTVタックル」(4月24日放送)で、熊本地震の被災地で発生している空き巣被害について、「あいつら、射殺しろよ」と訴えたこと(SANSPO.COM、4月24日)が問題視されています。

堀江貴文氏は4月24日にツイッターで、被災地での空き巣は人間として最低の行為であるという前提の上で、「窃盗罪の処罰の最大限を適用しろって言うのは良い」が、「『射殺しろ』と社会的影響力がある人がいうのは問題がある」と指摘し、「今のたけしさんがいうとシャレでは済まないと思う」と続けています(日刊スポーツ、4月25日;Huffingtonpost, 4月25日)。

私は、東日本大震災の際、当ブログにて「なぜ日本では略奪行為が少ないのか」(2011年3月31日付)を記しました。そこで、私は仮説として「おそらく、従来、後進性と共に述べられてきた(相互監視を含む)「世間」的共同体が、最大限プラスに作用した結果なのではないか」と述べました。

今回の熊本地震では、空き巣被害が報じられています(産経WEST4月23日;朝日デジタル2016年4月23日;西日本新聞 4月24日)。1995年の阪神・淡路大震災の際は殆どなかったと言われていますが(当ブログ、2011年3月31日)、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と空き巣や増えているとすれば、何かが変化していると考えるべきでしょう。

このような震災時において暴動が生じるのは、欧米社会では珍しくないのですが(欧米ではミシェル・フーコーが言うところの政治権力による「監視のまなざし」が一時的に遮断されることによって生じると考えます)、この点でも日本は欧米化していっているのでしょうか。それとも、日本の独自の理由があるのでしょうか。

私の印象では熊本地震でも、(コンビニに整列する人々の姿からも)全体としては十分に秩序が保たれているように見られます。まだ、日本では災害時に効果的な「世間」の目があるように思えるのです(それはもちろん、良いことです)。

たけし氏の「殺害しろ」というコメントは当然、度を越えていますが、共同体の「世間の目」がなくなった時、代わりになる何らかが求められていくのかもしれません。

しかしながら、たけし氏の問題点は、文化人(映画監督)として許されることと、タレント・ビートたけしとして「毒」を吐き続けることに矛盾が生じているのかもしれません。(今回の言葉は受け入れられないとしても)子供の頃からビートたけしさんの愛に満ちた「毒」を見聞きして育ってきた世代の私としては、それはそれで、残念であるようにも感じます。

2016年4月25日 23:38

Remember Nepal: 神戸、福島、熊本を忘れないために

神戸にて私が教えている(中国、ネパール、ベトナム、モンゴルからの)留学生が、ゴールデンウィークに熊本に行きたいと言ってきました。熊本の被災者ために何かしたいというのです。

気持ちは理解しますが、何かすると言っても、日本語も完璧ではない留学生です。熊本に行って何ができるのでしょうか。

何か必要なモノを運ぶのはどうかと提案した留学生もいました。しかし、九州出身の日本人学生が、「場所によっては支援物資の食料品が余りすぎて破棄されている所もある」「適材適所に配布できるかも重要だよ」と注文を付けました。

多くの学生が熊本で何かをしたいと思っています(既にボランティアをされている方もおられるでしょう)。しかし、なかなか本当に被災者に必要な支援は見つけられません。自己満足ではかえって現地の被災者に迷惑になってしまいます。そもそも、学生はお金がありません。資金援助にも限界があります。

ここは発想の転換が必要かもしれません。

震災復興は大変長期に渡ります。福島の現状を観るまでもなく、東日本大震災から東北は完全に復興したとは断言できないでしょう。神戸も、阪神・淡路大震災が発生した1995年1月以前に原状回復したと言えるのでしょうか。

阪急電鉄が、阪神・淡路大震災で半壊した神戸三宮の「神戸阪急ビル東館」を再建する計画しており、震災復興を象徴する新たなランドマークと報じられています(神戸新聞、4月25日)、21年前の阪神・淡路大震災でさえ、その復興はまだ「途中」なのかもしれません。

長期的に(留)学生しかできないモノではない支援を考えていくべきなのではないでしょうか。

そのように考えると、他の見方も可能です。

今日(4月25日)は、ネパール地震からちょうど1年目に当たります。ネパールでは、少なくとも80か所で2万6000人余りが今もテントで避難生活を送っています(NHK News Web、4月25日)。まだまだ復興途中なのです。

ネパールで大地震が起こった1年後の今日だから、ネパールのことを忘れてはいけないように思うのです。それは、来年の4月に熊本を忘れていないことにも繋がります。

色々と抱え込んでも大変ですが、無理をせずにゆっくり被災地にコミットし続けながら「共に生きる」ことが「貧乏人」の最大の支援なのではないでしょうか。

何ができるかはこれからですが、神戸からも(神戸だからこそ)経験を踏まえて長期的に福島、ネパール、熊本に対して何かができると信じたいものです。

2016年4月20日 00:10

熊本地震現地報告(3)

【第3回】熊本出身で帰省中に熊本地震を体験された映像作家の堺浩一氏に、4月17日夜、Lineで現地の状況を伺いました。

安井:これは最初にご質問すべきだったかもしれませんが、現在、熊本で被災している人にとって、何が一番に不足している、何が一番に必要だと思われますか。

堺:まずは水、食料ですね。

安井:確かに報道でもそのような指摘がありました。

堺:あとは交通機能でしょうか。街中の状況で目立っていることの一つとして交通混雑があります。避難や必需品の買い出しなどで車の数が半端なく、渋滞が頻発しています。この点は、帰宅難民等を生む都市型震災と地方震災の違いかもしれません。

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夜中の渋滞 熊本市南区 4月20日(堺氏撮影)

安井:それは貴重な御指摘ですね。確かに、地震の後の車が引き起こす交通渋滞は地方震災の課題なのかもしれません。他に、熊本地震でお気づきになられたことが何かありましたら、是非、教えて下さい。

堺:被害状況には「格差」があるというのも大事な点で、凄惨、困窮、困難を極める人々がいる一方で衣食住に余裕があり、普段に近い生活が出来ている人々もいます。現地は必ずしもメディアが切り取る世界観だけではないことも留意すべき点です。

安井:確かにそれは重要な視点ですね。メディアは特に被害が大きかった地域を中心に報じますが、熊本市内の被災者に「格差」があることはあまり採り上げません。もちろん、余裕がある人も「比較的」というだけで、被災者ということでは変わりないことも事実ですが。

堺:そうですね。

安井:私が住む神戸でも、熊本地震の映像をニュースで見ると21年前の阪神・淡路大震災を思い出して、眠れないという人がおり、「被災者(熊本)」‐「非被災者(非熊本)」と単純化はできないのかもしれません。

安井:最後になりますが、熊本出身で東京に住む堺さんは、この地震をどのように感じますか。

堺:4月15日に偶然帰省予定だったのですが、予定を変更せずに熊本へ向かったのは、熊本人としてこの状況を熊本の人々と共有しなければという思いからです。その通り、この状況を現在ここの土地の人々と共有できています。ただ、時期がくるとここを離れていかなければならないという現実を考えますと、複雑な思いです。しかし、このような自分しかできないことを今後、考えていきたいです。

安井:堺さんは、もうしばらく御滞在とのこと、どうかくれぐれもお気を付けください。大変な時に、長時間、お付き合い有難うございました。

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熊本県宇土市市役所 4月20日(堺氏撮影)

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殆ど何もないスーパー 熊本県宇土市 4月20日(堺氏撮影)

2016年4月19日 01:45

熊本地震現地報告(2)

【第2回】熊本出身で帰省中に熊本地震を体験された映像作家の堺浩一氏に、4月17日夜、Lineで現地の状況を伺いました。

安井:16日の深夜(午前1時25分頃)の「本震」の後、家の外に出られたのはいつでしょうか。

堺:外へ出たのは朝の7時30分くらいでした。

安井:どのような様子でしたでしょうか。

堺:うちのあたりでは家屋倒壊は見当たりませんでしたが、家の中は、どの家も家具が倒れ、戸が外れ、メチャクチャという感じでした 。

安井:「本震」が発生した後の熊本市内はどのような感じでしたでしょうか。熊本市内に住んでいる私の妹が、コンビニは商品がないと言っていましたが、堺さんは買い物にお出かけになられましたでしょうか。

堺:店には食料関係、日用品等はほとんどなく(不思議と菓子、酒類はあるのです)、開いていない店もありました。開いていても店よっては店外販売で、購入点数に制限がありました。

安井:15日は開いていたのですよね。そうしますと、16日以降、激変したことになりますね。

堺:そう言えるでしょうね。

安井:堺さんは東京で東日本大震災も経験されておられますが、今回の熊本地震と比較するとどうでしょうか。町の様子とか、人々の受け止め方とか。

堺:元来、熊本は地震があまりこないところなので、皆、人生初に近い体験という実感だと思います。もしかすると、東日本大震災とはその辺が違うかもしれません。

安井:治安はいかがでしょうか。空き巣があるような報道もありますが。

堺:例外はあるかもしれませんが、全体として治安は良いです。

安井:20年前の神戸震災では、見ず知らずの人も協力して倒壊した家の中に閉じ込められた人を救出したりするようなこともあったようですが、熊本において共同体が機能していると言えるのでしょうか。

堺:地域にもよると思いますが、避難者同士で情報交換はあるようです。概して共同体は機能しているでしょうね。私の実家の周辺地域でも、それは感じます。

安井:熊本ご出身の堺さんは、よそ者ではないし、住民でもないですから、社会学で言うところの「マージナル・マン」のような存在ですよね。そのような立場でこの地震を経験されたのは貴重だと思います。

*「マージナル・マン」とは、二つ(以上)の社会集団に属し、一つのアイデンティティに固定されていない人間のことを指した米国の社会学者ロバート・パークが提唱した概念。

堺:確かにそうですね。住民であれば、それに則した動きをしていたでしょう。被災者としての視点と思考を重ねながらも、住民ではないです。

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16日、熊本市南区(堺氏撮影)

2016年4月18日 01:26

熊本地震現地報告(1)

【第1回】熊本出身で帰省中に熊本地震を体験された映像作家の堺浩一氏に、4月17日夜、Lineで現地の状況を伺いました。

安井:今、熊本市内の御実家に御滞在とのことですが、熊本市のどちらですか。

堺:熊本市南区の有明海沿いです。主震源の益城町からは車で一時間ほど離れています。14日の「前震」は震度6弱、16日の「本震」も震度6弱でした。

安井:それでは、まず、14日の21時半の地震から伺いたいのですが、何をされておられましたか?そして、地震の揺れはどのようにお感じになられましたか。

堺:この時、私はまだ東京だったのですが、両親によると、16日の「本震」程ではなかったようですが、とにかく長く感じたそうです。うたた寝していた父は、思わず起きてしまったそうです。

安井:最初の地震の後、電気や水道、ガスなどのライフラインはどうでしたか?

堺: 私が来た15日夜の時点ではまだライフラインは繋がっていましたが、その後の本震以降は止まりました。

安井:そうしますと、14日の夜の地震の後は、余震は続いていても、基本的な生活は可能だったのですね。

堺:私は15日に熊本入りしたのですが、その夜は、熊本市内のラーメン屋でラーメンを食べられるくらいでした。

安井:15日に熊本入りされたのですか。

堺:はい。

安井:どのような交通手段で東京から来られましたか。飛行機ですか。

堺: 15日の21時15分くらいに飛行機で熊本に着きました。もともと帰省する予定があり、福岡経由で熊本入りする予定でしたが 、14日の地震の後、福岡から陸路での熊本入りは不可能だったので、便を替えました。

安井:そうですか。それは何かが堺さんを引き寄せたのかもしれませんね。その後、熊本空港が閉鎖されたため熊本出身者は帰りたくても帰れないのです。

堺:本当にそうだと思います。

安井:そうしますと、帰省して数時間後に「本震」(午前1時25分)を経験されたわけですね。

堺:そうです。ちょうど入浴し、寝ようとしていた時です。

安井:どのように感じられましたか。

堺:巨大生物が地下を走り抜けてやって来ているような感覚となり、直後に大きく揺れました。

安井:直ぐに避難されたのですか?

堺:避難はせず(強い余震も続きましたし)、家の中でモノが飛び散ったり、転倒したりする可能性のある場所を避けて隠れるような形でした。その後、津波警報も出て避難の必要性も現実味を帯びてきましたが、ほどなく解除され難を逃れました。専門的な見解ではありませんが、外海ではなく内海の有明海であることで被害拡大を防いだのかもしれません。

安井:そうですか。その後も余震が続いていたかと思いますが、眠れなかったのではないでしょうか。

堺:朝方までは寝ているどころではありませんでした。

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4月16日熊本市南区(堺氏撮影)

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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