QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

大震災/原発事故と日本

2017年10月11日 01:19

広島で知る大通りの「痛み」

先週末、学会があり、人生で初めて広島市を訪れました。

広島カープの2年連続のセントラルリーグ優勝に沸いている広島では、クライマックスシリーズ(CS)も始まっていないのにもかかわらず学会でお会いした広島出身の方の多くが、ソフトバンクとの日本シリーズを話題にしていました。何か悔しいのですが、対戦成績が阪神の10勝14敗で負け越しており、CSが行われる広島マツダスタジアムでは阪神が3勝しかしておらず、文句が言えないところです。

学会及び情報交換会が終了し、その後、「巴里食堂」という名のビストロで有志が集まって飲むと、良い時間になっていました。

月が輝く夜に広島の「平和大通り」を、1人で歩いているとかなり道幅が広いことに気付きました。ビジネスホテルに到着後、ネットで調べましたところ、第二次世界大戦後、「戦災復興都市計画」として整備された平和大通りは、別名「100メートル道路」と言われており、文字通り、その幅100メートルを誇るものでした。

この「戦災復興都市計画」では、全国115都市が震災都市として指名され、「100メートル道路」は、全国で24本計画されたそうです(「戦災復興 日本再生の記憶と遺産①」、2011年8月10日『日本経済新聞』朝刊)。

しかしながら、インフレ、資材不足、緊縮財政などによって「戦災復興都市計画」は再検討を余儀なくされます。結局、「計画」自体は、最終的に広島1本と名古屋2本が整備されたのみで終わり、現在に至ります(同上)。

その一つが広島の「平和大通り」なのですが、言い換えれば、広島は原爆の惨事の後の「戦災復興都市計画」が道を広くしたとも言えます。

翌朝も同じ、「平和大通り」を歩いて学会会場に向かったのですが、昨夜とは異なり、重い歴史があることを踏まえて歩むことになりました。

広島程ではなくとも、私が住む神戸市も道幅が広く、晴れた日など徒歩の通勤時が楽しみなのです。しかし、それも1995年の阪神・淡路大震災の影響もあると言えます(大塚慎也、福島徹「阪神大震災後の復興都市計画とその課題」『土木計画学研究・講演集』No.19.(1) 1996年11月)。

つまり、広い道がある都市、町は大きな犠牲の上に成り立っており、その「痛み」を考えて歩くべきなのかもしれません。

2016年5月 2日 15:03

熊本の「空き巣」は何かを意味しているのか?

タレントのビートたけしさんが、「ビートたけしのTVタックル」(4月24日放送)で、熊本地震の被災地で発生している空き巣被害について、「あいつら、射殺しろよ」と訴えたこと(SANSPO.COM、4月24日)が問題視されています。

堀江貴文氏は4月24日にツイッターで、被災地での空き巣は人間として最低の行為であるという前提の上で、「窃盗罪の処罰の最大限を適用しろって言うのは良い」が、「『射殺しろ』と社会的影響力がある人がいうのは問題がある」と指摘し、「今のたけしさんがいうとシャレでは済まないと思う」と続けています(日刊スポーツ、4月25日;Huffingtonpost, 4月25日)。

私は、東日本大震災の際、当ブログにて「なぜ日本では略奪行為が少ないのか」(2011年3月31日付)を記しました。そこで、私は仮説として「おそらく、従来、後進性と共に述べられてきた(相互監視を含む)「世間」的共同体が、最大限プラスに作用した結果なのではないか」と述べました。

今回の熊本地震では、空き巣被害が報じられています(産経WEST4月23日;朝日デジタル2016年4月23日;西日本新聞 4月24日)。1995年の阪神・淡路大震災の際は殆どなかったと言われていますが(当ブログ、2011年3月31日)、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と空き巣や増えているとすれば、何かが変化していると考えるべきでしょう。

このような震災時において暴動が生じるのは、欧米社会では珍しくないのですが(欧米ではミシェル・フーコーが言うところの政治権力による「監視のまなざし」が一時的に遮断されることによって生じると考えます)、この点でも日本は欧米化していっているのでしょうか。それとも、日本の独自の理由があるのでしょうか。

私の印象では熊本地震でも、(コンビニに整列する人々の姿からも)全体としては十分に秩序が保たれているように見られます。まだ、日本では災害時に効果的な「世間」の目があるように思えるのです(それはもちろん、良いことです)。

たけし氏の「殺害しろ」というコメントは当然、度を越えていますが、共同体の「世間の目」がなくなった時、代わりになる何らかが求められていくのかもしれません。

しかしながら、たけし氏の問題点は、文化人(映画監督)として許されることと、タレント・ビートたけしとして「毒」を吐き続けることに矛盾が生じているのかもしれません。(今回の言葉は受け入れられないとしても)子供の頃からビートたけしさんの愛に満ちた「毒」を見聞きして育ってきた世代の私としては、それはそれで、残念であるようにも感じます。

2016年4月25日 23:38

Remember Nepal: 神戸、福島、熊本を忘れないために

神戸にて私が教えている(中国、ネパール、ベトナム、モンゴルからの)留学生が、ゴールデンウィークに熊本に行きたいと言ってきました。熊本の被災者ために何かしたいというのです。

気持ちは理解しますが、何かすると言っても、日本語も完璧ではない留学生です。熊本に行って何ができるのでしょうか。

何か必要なモノを運ぶのはどうかと提案した留学生もいました。しかし、九州出身の日本人学生が、「場所によっては支援物資の食料品が余りすぎて破棄されている所もある」「適材適所に配布できるかも重要だよ」と注文を付けました。

多くの学生が熊本で何かをしたいと思っています(既にボランティアをされている方もおられるでしょう)。しかし、なかなか本当に被災者に必要な支援は見つけられません。自己満足ではかえって現地の被災者に迷惑になってしまいます。そもそも、学生はお金がありません。資金援助にも限界があります。

ここは発想の転換が必要かもしれません。

震災復興は大変長期に渡ります。福島の現状を観るまでもなく、東日本大震災から東北は完全に復興したとは断言できないでしょう。神戸も、阪神・淡路大震災が発生した1995年1月以前に原状回復したと言えるのでしょうか。

阪急電鉄が、阪神・淡路大震災で半壊した神戸三宮の「神戸阪急ビル東館」を再建する計画しており、震災復興を象徴する新たなランドマークと報じられています(神戸新聞、4月25日)、21年前の阪神・淡路大震災でさえ、その復興はまだ「途中」なのかもしれません。

長期的に(留)学生しかできないモノではない支援を考えていくべきなのではないでしょうか。

そのように考えると、他の見方も可能です。

今日(4月25日)は、ネパール地震からちょうど1年目に当たります。ネパールでは、少なくとも80か所で2万6000人余りが今もテントで避難生活を送っています(NHK News Web、4月25日)。まだまだ復興途中なのです。

ネパールで大地震が起こった1年後の今日だから、ネパールのことを忘れてはいけないように思うのです。それは、来年の4月に熊本を忘れていないことにも繋がります。

色々と抱え込んでも大変ですが、無理をせずにゆっくり被災地にコミットし続けながら「共に生きる」ことが「貧乏人」の最大の支援なのではないでしょうか。

何ができるかはこれからですが、神戸からも(神戸だからこそ)経験を踏まえて長期的に福島、ネパール、熊本に対して何かができると信じたいものです。

2016年4月20日 00:10

熊本地震現地報告(3)

【第3回】熊本出身で帰省中に熊本地震を体験された映像作家の堺浩一氏に、4月17日夜、Lineで現地の状況を伺いました。

安井:これは最初にご質問すべきだったかもしれませんが、現在、熊本で被災している人にとって、何が一番に不足している、何が一番に必要だと思われますか。

堺:まずは水、食料ですね。

安井:確かに報道でもそのような指摘がありました。

堺:あとは交通機能でしょうか。街中の状況で目立っていることの一つとして交通混雑があります。避難や必需品の買い出しなどで車の数が半端なく、渋滞が頻発しています。この点は、帰宅難民等を生む都市型震災と地方震災の違いかもしれません。

DSC_0167.JPG

夜中の渋滞 熊本市南区 4月20日(堺氏撮影)

安井:それは貴重な御指摘ですね。確かに、地震の後の車が引き起こす交通渋滞は地方震災の課題なのかもしれません。他に、熊本地震でお気づきになられたことが何かありましたら、是非、教えて下さい。

堺:被害状況には「格差」があるというのも大事な点で、凄惨、困窮、困難を極める人々がいる一方で衣食住に余裕があり、普段に近い生活が出来ている人々もいます。現地は必ずしもメディアが切り取る世界観だけではないことも留意すべき点です。

安井:確かにそれは重要な視点ですね。メディアは特に被害が大きかった地域を中心に報じますが、熊本市内の被災者に「格差」があることはあまり採り上げません。もちろん、余裕がある人も「比較的」というだけで、被災者ということでは変わりないことも事実ですが。

堺:そうですね。

安井:私が住む神戸でも、熊本地震の映像をニュースで見ると21年前の阪神・淡路大震災を思い出して、眠れないという人がおり、「被災者(熊本)」‐「非被災者(非熊本)」と単純化はできないのかもしれません。

安井:最後になりますが、熊本出身で東京に住む堺さんは、この地震をどのように感じますか。

堺:4月15日に偶然帰省予定だったのですが、予定を変更せずに熊本へ向かったのは、熊本人としてこの状況を熊本の人々と共有しなければという思いからです。その通り、この状況を現在ここの土地の人々と共有できています。ただ、時期がくるとここを離れていかなければならないという現実を考えますと、複雑な思いです。しかし、このような自分しかできないことを今後、考えていきたいです。

安井:堺さんは、もうしばらく御滞在とのこと、どうかくれぐれもお気を付けください。大変な時に、長時間、お付き合い有難うございました。

bb6ab843-2cf0-4a3b-931e-c359c15b159f.jpg
熊本県宇土市市役所 4月20日(堺氏撮影)

98951d37-750a-43e2-85a1-d4ef014ea0b8 (2).jpg
殆ど何もないスーパー 熊本県宇土市 4月20日(堺氏撮影)

2016年4月19日 01:45

熊本地震現地報告(2)

【第2回】熊本出身で帰省中に熊本地震を体験された映像作家の堺浩一氏に、4月17日夜、Lineで現地の状況を伺いました。

安井:16日の深夜(午前1時25分頃)の「本震」の後、家の外に出られたのはいつでしょうか。

堺:外へ出たのは朝の7時30分くらいでした。

安井:どのような様子でしたでしょうか。

堺:うちのあたりでは家屋倒壊は見当たりませんでしたが、家の中は、どの家も家具が倒れ、戸が外れ、メチャクチャという感じでした 。

安井:「本震」が発生した後の熊本市内はどのような感じでしたでしょうか。熊本市内に住んでいる私の妹が、コンビニは商品がないと言っていましたが、堺さんは買い物にお出かけになられましたでしょうか。

堺:店には食料関係、日用品等はほとんどなく(不思議と菓子、酒類はあるのです)、開いていない店もありました。開いていても店よっては店外販売で、購入点数に制限がありました。

安井:15日は開いていたのですよね。そうしますと、16日以降、激変したことになりますね。

堺:そう言えるでしょうね。

安井:堺さんは東京で東日本大震災も経験されておられますが、今回の熊本地震と比較するとどうでしょうか。町の様子とか、人々の受け止め方とか。

堺:元来、熊本は地震があまりこないところなので、皆、人生初に近い体験という実感だと思います。もしかすると、東日本大震災とはその辺が違うかもしれません。

安井:治安はいかがでしょうか。空き巣があるような報道もありますが。

堺:例外はあるかもしれませんが、全体として治安は良いです。

安井:20年前の神戸震災では、見ず知らずの人も協力して倒壊した家の中に閉じ込められた人を救出したりするようなこともあったようですが、熊本において共同体が機能していると言えるのでしょうか。

堺:地域にもよると思いますが、避難者同士で情報交換はあるようです。概して共同体は機能しているでしょうね。私の実家の周辺地域でも、それは感じます。

安井:熊本ご出身の堺さんは、よそ者ではないし、住民でもないですから、社会学で言うところの「マージナル・マン」のような存在ですよね。そのような立場でこの地震を経験されたのは貴重だと思います。

*「マージナル・マン」とは、二つ(以上)の社会集団に属し、一つのアイデンティティに固定されていない人間のことを指した米国の社会学者ロバート・パークが提唱した概念。

堺:確かにそうですね。住民であれば、それに則した動きをしていたでしょう。被災者としての視点と思考を重ねながらも、住民ではないです。

DSC_0150.JPG
16日、熊本市南区(堺氏撮影)

 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  | All 次へ >>

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
月別アーカイブ
2017年12月
2017年11月
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
カテゴリーアーカイブ
カンボジア (27)
スイス (26)
スポーツと社会 (116)
ネパール (26)
国際事情(欧州を除く) (228)
大震災/原発事故と日本 (29)
御挨拶 (13)
日本政治 (124)
日本社会 (268)
映画で観る世界と社会 (294)
欧州事情 (94)
留学生日記 (70)
英国 (96)

ページトップへ

カレンダー
<< 2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
ドラマ『カルテット』に思う(2): 白黒付けない「疑似家族」の一員として精一杯、今を生きること
ドラマ『カルテット』に思う(1):「こぼれる」瞬間を掴むこと
日本人のサービスとは?:「神様」に仕え、「神様」になること
なぜ、つくばエクスプレスの「20秒早発」の謝罪が、国際ニュースになるのか?
天使が永遠の命を捨てる時: 映画『ベルリン・天使の詩』における「中年天使」の決断
最新コメント
はじめまして、書き込...
Posted by たか
あなたもまだお若い。...
Posted by 葵東
青春時代に見て感動し...
Posted by 小林 千三
私は韓国に住んでいま...
Posted by 七色無職
†講談社「週刊現代」...
Posted by 鈴木有介
最新トラックバック
この社会での性的魅力
from 哲学はなぜ間違うのか
ひとつ/長渕剛(Cover)
from 今日の天草