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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年11月 5日 23:07

外国人労働者の受け入れには、国民的合意(覚悟)が必要である

11月2日、外国人労働者の受け入れ拡大のための入国管理法改正案が閣議決定され、現在、国会で議論されています。

日本は今日まで、外国人労働者の受け入れを医師、弁護士、教授など「高度専門人材」に限定してきたのですが、今回の法案が通りますと、「非熟練の単純労働」にまで拡大することになります。

まず、最初に申し上げたいことは、私は外国人労働者の受け入れに反対ではありません。

しかしながら、外国人を受け入れるということは社会に大きな影響を与えます。そのことを、よく考え、国民が様々な事態が起こることを覚悟して、満を持して受け入れる必要があると考えます。具体的には、国民投票を行い人々のコンセンサスを得た方が良いと思います。

安倍首相は、「移民」ではないと説明していますが、第二次世界大戦後の人手不足から非熟練の外国人労働者を受け入れてきた欧州の例からも、一度、先進国に来た非熟練の外国人労働者は、簡単には帰国しません。結果的に「移民」となるのです。

繰り返します。私は「移民」だから受け入れるな、と申し上げている訳ではありません。

安倍首相は、今回の入国管理法案改正を「(人手不足が)成長を阻害する大きな要因になりはじめている」からとしています(産経ニュース、11月3日)。言い換えれば、人手不足を外国人労働者で賄おうとする考え方です。

これは第二次世界大戦後、欧州先進国が辿った道と同様です。それが悪いと批判するつもりはないですが、外国人労働者問題に関して欧州各国が直面している課題から日本は学べるはずです。

個人的には、日本の移民政策の大転換(反民族的な政策)を今まで「右翼」と称されてきた安倍首相が行おうとしていることに、アカデミックに大変興味はありますが、経済重視ならばそれはそれで良いのです。

ただ、この方針転換によってどのようなことが生じるのかを、はっきり国民が理解すべきであると思います。

大量の未熟練の外国人労働者を受け入れれば、基本的に「高度人材」しか受け入れないスイス型の高い国際競争力を持った高物価の国作りからは後退します。外国人労働者を受け入れれば単純労働を中心に、賃金は下がり、物価は下がるのです(一方、高度人材=クリエイティブ・クラスの賃金は世界中、殆ど変わらなくなろうとしています)。

しかし、それも悪いこと(だけ)ではありません。英国がロンドン五輪前に大量の(EU加盟国の)ポーランド人労働者を受け入れたように、それは政策としてありなのです。

ただ、その後の英国での反移民の声の高まりに見られるように副作用もあり、英国が国民投票の結果、EUから出なくてはいけなくなったことは記憶に新しいことでしょう。

最後にもう一度、繰り返します。

国として未熟練の外国人労働者を受け入れることは選択肢の一つです。しかし、外国人を受け入れるということは、それに伴って生じる様々な問題に対し、国民が真摯に向き合っていかなくてはいけないのです。

だからこそ、本当に国民的覚悟が必要なのです。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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