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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年10月 2日

2018年10月 2日 01:39

2018年モンゴル訪問記(9): 大自然の「ゲル」、都会の「ゲル」、そして、理想の「ゲル」に帰る

神戸ユネスコ協会理事/日本経済大学ユネスコクラブ顧問として、9月2日~9月12日までモンゴルで国際交流とボランティア活動に従事してきました。学生8名、私を含めて神戸ユネスコ協会理事7名の合計15名の団体です。国籍別としては日本(6名)、ネパール(1名)、ベトナム(5名)、中国(2名)、モンゴル(1名)の5カ国に跨る多国籍チームでした。

【5日目後半】
9月6日の午後、DVを受けた子供たちのシェルター「魔法の城」(Id shidiin ordon)を後にする前に、職員の人が、シェルター内にある「ゲル」を見せてくれました。なぜ、シェルターに「ゲル」があるのかといえば、「ゲル」が、理想の家のシンボルであり、モンゴル人として忘れてはいけないものだからだそうです。

Day4 シェルター_181010_0059.jpg
シェルター「魔法の城」のシンボリックな「ゲル」

シェルターでは、心理学や幼児教育学を専攻した職員が、「家族」になり子供たちの世話をしています。彼らは子供たちにとって他人なのですが、他人でも(他人だからこそ)シンボルとして、「ゲル」が必要なのでしょう。

私たちは、2日目と3日目に大草原で遊牧民の「ゲル」に滞在しました。予想通り(いや、それ以上に)、素晴らしい「ゲル」でした。そこで、遊牧民のバトジャルカルさん一家が本物の「ゲル」の生活を体験させてくださりました(私たちがボランティアで来ていることもあり、バトジャルカルさんは1トゥグルクも求めず、完全なお客様として迎え入れてくれました)。

私たちが観た「ゲル」の生活は単なる草原生活ではなく、太陽光によって電気を使い、冷蔵庫もありました。

しかし、前述の通り、ウランバートルの貧困地域にも沢山の「ゲル」があります。都市に流れた遊牧民の多くが、家に住めずに「ゲル」をウランバートルに作り住んでいるのです。酷い言い方ですが、スラムに近いのです。

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ウランバートル貧困地域の(シェルターに隣接する)「ゲル」

Day4 シェルター_181010_0019.jpg
シェルター「魔法の城」はウランバートルの貧困地域にある

シェルターの「ゲル」は、大自然の「ゲル」でも、スラムの「ゲル」でもありません。それは、無理な都市化によって崩壊した「ゲル」(家庭)を、人工的に(他人が)再構築しようとするものです。

コミュニティの再構築が世界中で問われています。近代化、産業化、グローバル化どのような言葉を用いるにしても、世界中のローカルコミニティは多かれ少なかれ、変質していっているのです。

そんな中、モンゴルでは、たとえ人工的であっても、最後は「ゲル」が必要であるとすれば、それはそれで十分理に適っているように思えたのです。

そして、シェルターの「ゲル」が理想の家庭のメタファーだとすれば、ヨーロッパ各国でも、日本でも米国でも、「ゲル」が必要なのかもしれません。

【7日目、私たちはウランバートル郊外のジンギスカンのテーマパークを訪れ、13世紀からのゲルの歴史を観ました。「ゲル」を語るとすれば、上記のような社会的変遷だけではなく、歴史としての「ゲル」の史的発展も考えなくてはいけないかもしれません。】

「魔法の城」からホテルに帰ると、台風21号の影響で関西空港への帰りの9人分の北京経由の中国国際航空のフライトがキャンセルされていました。それから夜まで、何時間も同航空のコールセンターに電話して帰国の方法を探したのですが、羽田着しかありませんでした。しかも、帰国予定日の9月9日着のフライトは3人しか再予約できない状況で、残りの6人は9月12日の羽田着のフライトしか取れませんでした。結局、私も含め6人は、プラス3日間のウランバートル滞在を余儀なくされることになりました。


プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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