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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年9月30日 23:16

2018年モンゴル訪問記(8): 都市化と暴力

神戸ユネスコ協会理事/日本経済大学ユネスコクラブ顧問として、9月2日~9月12日までモンゴルで国際交流とボランティア活動に従事してきました。学生8名、私を含めて神戸ユネスコ協会理事7名の合計15名の団体です。国籍別としては日本(6名)、ネパール(1名)、ベトナム(5名)、中国(2名)、モンゴル(1名)の5カ国に跨る多国籍チームでした。

【5日目後半】
9月6日の午後は、今回のメインイベントでありますDVを受けた子供たちのシェルタ―に行きました。

「魔法の城」(Id shidiin ordon)と名付けられたその施設は、外国に滞在しているモンゴル人(主に留学生)がお金を出し合って建てられました。私のゼミ生であるモンゴル出身のエナさんは、その1人であり、その縁で、神戸ユネスコ協会青年部として今回、訪問させて頂くことになりました。

Day4 シェルター_181003_0089.jpg

その施設は、ウランバートルの貧困地域にあります。中心街から渋滞の中、約1時間車に乗ると、中心部とは異なり、遊牧民のゲルも目立つようになってきました。

当然、「なぜ、遊牧民のゲルが、都会にあるのか?」と思われるでしょうが、それは、ある意味でモンゴル社会の根本的な課題に通じるのかもしれません。

モンゴルは急激な都市化が社会問題となっています。遊牧を辞めた元遊牧民が、ウランバートルのような大都市にやってきて、空き地にゲルを立て住むのです。皮肉なことに、モンゴル遊牧民の伝統のシンボルであるゲルは、都会では貧困を顕しているのです。

都市貧困層の増加は、治安の悪化に繋がっています(今回の滞在中も、学生の1人が携帯電話をすられてしまいました)。そして、都市貧困層の増加と共に、アルコールの飲みすぎによって引き起こされる暴力事件も増えているそうで、家庭にフォーカスすればDVとなります。

「魔法の城」はそんなDVを受けた子供のための避難施設です。現在、約100人の子供が滞在しています。両親から暴力を受けた子供たちを守るのですが、親の再教育もしているそうです。

私たちは貧困地域の小高い丘に建てられたオアシスのような「魔法の城」に到着し、まず、施設の案内を受けました。そして、神戸ユネスコ協会からの支援物資として日本から持ってきた防犯ベル130個を贈呈しました。

Day4 シェルター_181002_0068.jpg

本来、現地の経済への影響を考え、できるだけ何かを贈与する時は現地で調達しているのですが、今回はモンゴルの防犯ベルが非常に手に入り難く、高価であるという情報を得ており、日本で調達しました。

そして、その後、私たち(神戸の学生たち)は施設の子供たちと楽しい時間を過ごしました言葉は全くと言っていい程、通じないのですが、バスケットや鬼ごっこ等を夢中になって遊びました。一部は、昼寝をしている3歳以下の子供たちの部屋に行き、起きている子供をあやしました。

Day4 シェルター_181002_0040.jpg

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私たちのこれらの活動が、正統なボランティアかと問われれば、そうではないのかもしれませんが、私はこれでいいのではないかと思っています。

たった1週間の滞在ですから、ボランティアと言っても何もできません。無理はせず、「思い出」や「繋がり」を作り、また再訪し、支援したくなるような旅になればそれでいいのではないでしょうか。カンボジアやネパールでもそうですが、訪問はきっかけに過ぎません。帰国後、どうするのかがより重要になっていくのでしょう。

私は学生たちが「ボランティア活動」に励んでいる時、この施設の代表のChadraabal Ganjavkhlan氏にご挨拶させて頂き、上記にある都市化とDVの問題、環境問題など、多岐に渡ってお話しさせて頂きました。

氏の説明では「魔法の城」は学生たちが始めた運動だったそうです。お金だけではなく、実際の建設に多くのモンゴルの学生が携わっているそうです。彼らは大学や高校で学びながら、社会を変える「魔法」になることを願って「魔法の城」を建設し、運営しているのです。学生だから未熟なことも沢山あったそうですが、単に、社会に不満を口にするだけではなく、建設的な一歩を踏み出したことは賞賛されるべきでしょう。

「城」の入り口には、皆が製作したオリジナル・マスコットが立っていました。子供を守るシンボル・キャラだそうです。小さいけど、彼の双肩にかかっているものは大きいように感じました。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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