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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年9月27日 00:00

2018年モンゴル訪問記(5):「学校には、まず、水洗トイレが必要です。」

神戸ユネスコ協会理事/日本経済大学ユネスコクラブ顧問として、9月2日~9月12日までモンゴルで国際交流とボランティア活動に従事してきました。学生8名、私を含めて神戸ユネスコ協会理事7名の合計15名の団体です。国籍別としては日本(6名)、ネパール(1名)、ベトナム(5名)、中国(2名)、モンゴル(1名)の5カ国に跨る多国籍チームでした。

【3日目後半】
9月4日の午後、貴重な体験を得て、モンゴル・ドントゴビ県フルド村の大自然(遊牧地)のゲルを出発しました。

私たちの目的の一つは、モンゴルの学校を視察するというものがあったのですが、ゲルから車で30分ほどのところにあるこの地域の唯一の学校「ドンドゴビ県フルド村小中学校」を訪問しました。

学校の入り口で校長先生に迎えて頂きました。この学校は、遊牧民の子供たちの教育を目的としており、現在、50人程の学生が学んでいます。

小学部の算数の授業に参加させて頂きましたが、子供たちはみな一生懸命勉強していました。昨日、「馬の刻印祭」で会った子供たちもいました。

Image_e8a5cd0.jpg

教室.jpg

さて、子供たちの家庭は遊牧民ですから通学が大変なのではないかと、早速、先生方に質問をしたところ、待ってましたとばかり「寮があります」と説明を受けました。そして、是非、「寮を見てください」と言われ、見学することになりました。

小学校に隣接している寮は、4人部屋でベットで机がありました。遊牧地から通学できない子供たちはこの寮で滞在して、勉強するそうです。

寮.jpg
学校に隣接している寮

寮のベット.jpg
寮は4人部屋で両サイドに二段ベットが2つある

温度計.JPG
寮の温度計は日本製でマイナス30度まで測れるものであった

校長先生に「子供たちの両親はそこまでして勉強することをどう思っているのでしょうか」「働き手がいないくなることを嫌がる親はいないのですか」と伺たところ、「そういう親は、この学校にはいないですね」と即答されました。一昨年訪れたカンボジアの貧困地域では、親が子供を働き手と考えていることが、小中学校の就学率の向上を妨害する最大の問題だったのです。しかし、モンゴルの遊牧民の親は、概して、子供の教育に熱心だそうです。

そして、政府も遊牧地域の教育に力を入れており、2021年までにキリル文字のモンゴル語のみならず、伝統的な縦書きのモンゴル文字を全児童が読めるようにすることを目標にしているとのことでした。

その上で、何よりも、この学校で校長先生が自慢されたのはトイレでした。是非、水洗トイレを見て欲しいと言われ、全員で見学させて頂きました。

S_8625440304011.jpg
校長先生自慢の水洗トイレ

校長先生が言われるには、最もこの学校で重要なのは「水洗トイレ」と「シャワー」だそうです。現在、トイレは完備されたので、シャワールームを作りたいと言われていました。

実は、その学校に隣接する土地に昨日、ゲルに泊めて頂いたバトジャルカルさんの「自宅」があり、学校の後、お茶に寄られて頂きました。バトジャルカルさんは、遊牧生活をしながら、この学校がある村の中心部にトイレもお風呂も完備した「自宅」を持っているのです。

【そもそも、バトジャルカルさんは、お子さんを米国に2人、日本に1人留学させている大成功した遊牧民です。日本に留学していた息子さんは、現在、日本の日本語学校に留学しており、大学進学を目指しています。私たちは「ご自宅」でSNSを通じて息子さんと会話しました。】

学校を後にして、私たちはまたチャーターしたミニバスで6時間近くをかけてウランバートルに戻りました。当然、途中は、草原の青空トイレしかありません。随分慣れてはきましたが、毎回、道路沿いの岩場を探しながら、校長先生が言われた「まずは、水洗トイレを作りたかった」という言葉が頭を巡りました。

青空トイレも慣れてくれば気持ちが良いものですが、誰も汲み取りはしません。紙は持ち帰られなければなりません。そのようなことを考えれば、衛生面においても限界はあると思います。水洗トイレは、今後、モンゴルの遊牧地においても求められていくのでしょうか。

近代化の波がモンゴルの遊牧地も包み込んでいます。そして、その近代化を巡る問題は、その時、私達が理解していたよりも肯定的なファクターばかりではないことを後に学びます。

更にこの夜、ウランバートルのホテルに戻りますと、WiFiが復活し、日本で台風21号が近畿や北陸地方を縦断し、各地に大きな被害を与え、関西空港が閉鎖されているというニュースが飛び込んできました。帰国は9日の予定でしたので、その時は、自分たちの旅程にも影響を及ぼす程の問題になるとは想像できませんでした。


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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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