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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年8月23日 23:53

ラオスのダム決壊事故と経済発展

ラオス南部のアッタプー県で7月23日、水力発電用ダムが決壊して大きな被害が出てから1ヵ月が経とうとしています。

ラオス政府が国連機関などと8月16日付で発表した被害状況は死者39人、行方不明者97人、緊急施設への避難者6千人、影響を受けた被災者1万3100人となっていますが(産経ニュース、8月23日)、当初、公式報道が二転三転し、どれくらいの被害なのか分かりませんでした。

決壊したダムは、韓国のSK建設と韓国西部発電、タイのラチャブリ電力、ラオスの国営企業による合弁会社が建設中だったそうで、決壊に関しては特に韓国企業の責任が大きいのではないかと批判されています(The New York Times, July 27)

当ブログ2016年1月23日付け東京福祉大学の渋谷淳一氏が述べている通り、近年、ラオスは近年、採掘が始まった鉱物と水力ダムによる隣国への電力送電によって著しい経済発展を遂げてきました。

いつのまにか、一人当たりのGDPは約2000ドル(2015年のラオス統計局によれば1,947ドル)に到達したと言われ、インドの1,709ドル(2016年:世銀資料)、ベトナムの2,385ドル(2017年、ベトナム統計局)と変わらない位置となっています。

もちろん、総人口が約649万人(2015年,ラオス統計局)であり、アジアの国としては比較的小規模なことが1人当たりのGDPを押し上げていることはあるにせよ、かつてアジアの最貧国の一国として見られてきた同国が、現在、経済分野において急成長していることは事実でしょう。

その原動力の一つが水力ダム開発であり、それが近隣諸国(特にタイへの電力供給)の需要を満たすための輸出産業となっていることは、研究者や関係者は当然かもしれませんが、一般には知られていないことなのではないでしょうか。

もし、一部で報じられているように欠陥工事に原因があるとすれば、今回のダムの不幸な事故は、ダム開発の暗部になりますが、同時に電力開発によって急激に発展しようとするラオスの現状をも映し出したとも言えます。

ダム開発と汚職と欠陥工事となると何か「古典的」なイメージもありますが、過ちを繰り返さないためにも、今、ラオスで何が起こっているのかを的確に把握したいところです

ちなみに、韓国企業の責任者は、SK建設の建設現場職員に避難完了を知らせた後、同8時ごろに大規模な決壊が発生し、多くの死者と行方不明者を出した」とし、「当局や現地住民の事故抑止意識の低さが大きな被害につながった」との見方を示しています(Record China, 8月1日)。

責任論はともかくも、防災教育も経済発展と共にしなければいけないのも確かです。もちろん、そうであったとしても、企業側が事故の責任を逃れることができることにはならないでしょうが。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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