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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年8月 1日 19:33

誰もが変わってしまう可能性はある: 映画『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』の見方を変えてしまう主人公の描かれない半生

半生を描いた映画は、残りの半生次第で様々に解釈されてしまいます。

映画『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』(原題 The Lady)
制作国 英国, フランス
制作年 2011年
監督 リュック・ベッソン
出演 ミシェール・ヨー, デヴィッド・シューリス

あらすじ
【英国オックスフォードで主婦をしていたアウンサンスーチーは、1988年、母の看病で母国のビルマに帰国すると、同国の軍事政権が若者たちの民主主義運動を弾圧する光景を目の当たりにする。そして、父親が「ビルマ建国の父」ことアウンサン将軍であったことから、スーチーは民主化運動のシンボルに担ぎ上げられる。1990年5月27日に選挙が行われ、スー・チー率いる国民民主連盟 (NLD) は81%の得票率によって392議席を獲得した。しかしながら、軍事政権はNLD幹部を逮捕し、スーチーを自宅軟禁にする。そんな中、1991年10月、ノーベル財団はスーチーにノーベル平和賞を授与することを決定する。スーチーの夫マイケルと2人の息子は、何度かビルマを訪問してスーチーに会ったが、スーチーは二度と入国できなくなることを恐れてビルマを離れようとはしなかった。マイケルは、1997年前立腺がんと診断され、ビルマ行きが不可能となり、1999年英国で死去する。】

アウンサンスーチー氏の自伝的映画です。度重なる民主化運動への弾圧を繰り返し、スーチー氏は2010年11月に軟禁を解かれ、2012年4月1日のミャンマー連邦議会補欠選挙にNLDから立候補し、当選することで政界に復帰します。

その後は周知の通り、2015年11月8日に実施された総選挙において、NLDが圧倒的な勝利を収め、実質上の「スーチー政権」が樹立されます。

そして、現在、「スーチー政権」は、ミャンマーのイスラム系少数民族のロヒンギャへの弾圧で国際的に批判されています。

ロヒンギャへの弾圧を「スーチー政権」は否定しており、「事実」はどこにあるのか分かりませんが、少なくても、民主化のシンボルだったスーチー氏の国際的評価が落ちているのは確かでしょう。

実際、スーチー氏に与えられたノーベル平和賞を取り消す運動が起こっており、オックスフォード市は1997年にスーチー氏に授与した「市民の自由」称号を、ロヒンギャ問題への対応不足を理由に2017年に剥奪しています(AFP, 2017年11月28日)。

その上で、今、スーチー氏の半生を描いたこの映画を観ると複雑です。スーチー氏がかつての軍事政権と同じことをしているとは言えないまでも、映画で描かれる少数民族を大切にするスーチー氏は、今の政権を握ったスーチー氏とは大きく異なってしいるのです。

私は当ブログで、社会条件次第で、誰もが独裁者になる可能性がると書いてきました。スーチー氏を独裁者であるとは言いませんが(権力を握れば変質する可能性があります)、ノーベル平和賞受賞者だって例外ではないのです。

この記事へのコメント

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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