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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年7月 8日 21:27

家族の崩壊によって描く「家族愛」: 映画『万引き家族』の疑似家族性

「疑似」の関係であるからこそ、成立する物語があります。

『万引き家族』
制作国 日本
制作年 2018年
監督 是枝裕和
出演 リリー・フランキー, 安藤サクラ, 松岡茉優, 樹木希林, 城桧吏

あらすじ
【東京の下町。5人家族が小さな平屋で暮らしている。父・柴田治は日雇いの仕事をやったりやらなかったり、妻・信代はクリーニング店で働いているが薄給。2人には息子・祥太がいるが、贅沢はさせられない。同居する信代の妹・亜紀は風俗店で働くが、稼ぎは家には入れずに、家族は祖母・初枝の年金を当てにしているが、それでも生活には不十分である。そんな時、彼らは万引きをして生活を維持している。冬のある日、近所の団地の廊下で幼い女の子(ゆり)を見つけた治は、家に連れてきてしまう。一度は、元に帰そうともしたが、信代が娘として育てたいという。6人となった一家は、ある事件をきっかけにバラバラになってしまう。】

疑似家族がテーマです。

ネタバレですが、柴田家は疑似家族です。しかしながら、貧しいながら笑いが絶えず、「本当の家族」以上に家族らしいのです。

この設定では、家族は「血の繋がり」ではないことを学ぶことになります。家族とは、家族を作り、維持しようとする努力の賜物であり、故に、血が繋がっていなくても、家族の構築は可能なのです。

ただ、この作品の家族は、少し綺麗過ぎるような感じもします。不自然な程、良い(綺麗な)家族が、むしろ疑似性を強調するのかもしれません。

そして、この家族は崩壊します。そのきっかけは、この疑似家族(最後に加わった妹)を息子・祥太が守ろうとすることから始まります。本当の家族のように、妹を守ろうとする祥太の家族愛が、家族をバラバラにしていくのです。

もし、彼らが血の繋がった本当の家族だったらどうだったでしょうか。仮に万引きで捕まったとしても、窃盗以上において警察が介入することはないので、家族が崩壊にまで至ることはないでしょう。

つまり、疑似家族だからこそ悲劇が生じてしまうのです。

逆に家族が崩壊するまでの悲劇がなければ、家族愛をフォーカスすることはできなかったかもしれません。崩れるからこそ、家族とは何かが浮き出てくるのです。

万引きで食べていく家族は、現実に日本では例外でしょうし、そもそも犯罪です。しかしながら、万引きさえも、崩れ行く家族を映し出す手段にしか過ぎないのです。

映画を観終わった後、なぜか『サザエさん』が観たくなりました。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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