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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年7月

2018年7月31日 09:30

SNSとバッシング

女優でモデルの剛力彩芽さんがバッシングを受けています。

報道によりますと、7月16日、お付き合いされている会社社長の前沢友作氏とサッカーW杯ロシア大会の決勝戦を現地で生観戦したことを、インスタグラムにて報告したことから始まります。

プライベートジェットを使って日帰りでロシア入りし、1人220万円といわれる飲食付き観戦チケットを購入したとされ、それがネットから批判されているのです(スポニチ、7月22日)。

ネットばかりではなく、マスコミでも「何でおおっぴらにしたいんだろう」「財力のある立場で浮かれた写真をネットにあげるのはどうなのか」といった声が相次ぎます(The Huffington Post Japan, 2018年7月26日)。 

剛力さんは、これに対し、過去のインスタグラムを全て削除して謝罪します。

そうなると反対に、剛力さんを肯定する意見も出てきます。お笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦さんは、「剛力さんはインスタを削除しなくてもいい」と言い切り、剛力さんへの批判は単なる「やっかみです」と擁護します(「剛力彩芽さん、いいと思う」You Tube, 2018年7月22日)。

デーブ・スペクターさんは7月23日のツイッターで、「剛力彩芽がそこまでバッシング受けるならパリスヒルトンやビヨンセ、カーダシアンみたいなハリウッドのセレブは全員即引退。前澤氏は自分で努力して作った会社から寄付もしている。贅沢=悪という思考は資本主義そのものを否定」と剛力バッシングは反資本主義的であると主張されます。更に別の論者は、剛力批判は、日本人の嫉妬深い国民性にあるとまで言い切ります(「剛力彩芽が叩かれる背景に、日本人の国民性」ITmedia, 7月31日)。

私は、基本的に剛力さんが誰とお付き合いし、どのようにお金を使うかは全くもって個人の自由であるし、お金持ちはどんどんお金を使って、お金を回してくれないと経済が回らないとは思います。

しかしながら、SNSに公開し、「公」にする必要があったかどうかは疑問の余地があります。SNSは、もう「公」の領域であり、そこで書くということは「公」化されるということを意味します。そのようなことを十分に理解した上で、お付き合いされている方とW杯決勝戦を見にロシアに行かれたことを書いても悪いことではないと思います(ただ、批判をされて削除するならば、最初から書かなければいいような気もしますが)。

SNSは、どうしても自己中心的です。他者の日常を組み込むことは殆どできません。自分がとても嬉しい時に、「嬉しい!」「やった!」と書き込むその瞬間、自分の友達が失恋したり、試験に落ちたりしているかもしれないのです。反対に、自分が挫折して落ち込んでいる時に、SNSで友達が「人生バラ色!」と書くかもしれないのです。

しかし、あまり目に見えない他者の苦しみを感じてしまうと、感情的なことをSNSに書けなくなってしまうのも事実です(何時に起きて、何時に寝たという事実関係だけのメモになってしまっても、当たり障りのない「営業トーク」でも面白くないでしょう)。

結局、影響力のある方は、他者の苦しみを「できる範囲」で想像ながら、(書くのなら書きたいことを覚悟して)書くということしかないのかもしれません。

2018年7月30日 00:28

英国がTPPへ参加する(参加を検討する)意味

2018年7月12日、英国政府が、欧州連合(EU)離脱方針の詳細をまとめた「白書」を公表しました。

EU離脱後もEUと「モノの自由貿易圏」を創設し、同時に他国と自由貿易を拡大する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加検討しているというのです(日本経済新聞, 2018年7月12日)。

報道されている通り、英国の保守党政権はEU離脱に対するスタンスの違いにより、7月にはいてからデイヴィッド・デービス離脱担当相やボリス・ジョンソン外相が辞任していました(「主要閣僚が続々辞任...イギリス政界にいま何が起きているのか」『現代ビジネス』, 2018年7月11日)。

英国政府のTPPへの関心の表明は、今回が初めてではなく、既に今年の1月にも行われていますが、その時はそれ程大きくは取り上げられませんでした("UK looks to join Pacific trade group after Brexit", 3 January 2018, The Financial Time)。

今回は、デービス離脱担当相やジョンソン外相が辞任し、与党保守党が分裂状態であるからこそ、このニュースも大きくなったのかもしれません。

いずれにしても、メイ政権は、EU離脱後も、何らかの形で自由貿易を推進する方向であることは分かります(それが、保守党内の亀裂の根本原因なのでしょうが)。

TPP加盟国にとってはどうかと言えば、周知の通り、2017年1月に米国のドナルド・トランプ大統領が、「TPPから永久に離脱する」とした大統領令に署名し、TPPを離脱しまいました。現在、残された11カ国での協定発効に向けた協議が行われているのですが、まだ現段階では発効されていません。

世界のGDPの約15%(IMF)を叩き出す米国の離脱は、TPP構想の根本を揺るがすものであったと言えるでしょう。

英国経済の世界のGDPシャアは3%にも満たなく、仮に英国がTPPに参加しても、米国の代りには到底なり得ません。しかしながら、政治的インパクトは小さくはなく、将来の米国の復帰も見据えて、TPP側にとっては英国のTPPへの興味はマイナスになることは何もないでしょう。

11カ国のTPPにおいて、特に日本は最大の経済力を保っており、英国との歴史的関係も深いこともあり、ここは日本の外交力の見せ所かもしれません(もっとも、日本においてもTPPに反対する反グローバリゼーションの急進勢力が、今後、政治力を強めていかないという保証はありませんが、差し当たってはTPPは日本のナショナリズムと矛盾しないのでしょう)。

しかしながら、TPPとはTrans-Pacific Partnership Agreement(環太平洋経済連携協定)なのですが、もし、英国が入ると名称も変えなくてはいけないのでしょうか。もちろん、名より実であり、名称などは二次的なことではありますが。

2018年7月22日 01:06

見えないところに何を見るのか: 映画『最強のふたり』が描かないことで考えるもの

背景を知ると見方が変わる作品もあります。

映画『最強のふたり』(原題 Intouchables)
制作国 フランス
制作年 2011年
監督 エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ
出演 フランソワ・クリュゼ, オマール・シー

あらすじ
【フランス、パリ。事故で全身麻痺になってしまった大富豪のフィリップは、金目当てや同情して近付いてくる人物に辟易しており、なかなか良い介護者を見つけられない。そんな中、フィリップは、生活保護の申請に必要な(職探しの形跡としての)不採用通知を得るためだけにやってきた黒人のドリスを採用することにする。貧困地域に育ったドリスは、服役歴もあり、フィリップの友人たちはいかがわしい顔をするが、良くも悪くも「普通」に接してくれるドリスにフィリップは友情を抱くようになる。】

この作品は当ブログ2018年1月31日付で「肌の色を越えながら、現実味に欠けるのはなぜか?: 映画『最強のふたり』における反転するステレオタイプ」というタイトルで論じました。

その時、私は、金持ちのクラシック音楽好きの身体障碍者の白人と、貧しいけどとても陽気な黒人という描かれ方が、(プラスであっても)ステレオタイプ過ぎるのではないかという考えに同意していました。

また、この作品は実話なのですが、オリジナルの人物は、黒人ではなく、アルジェリア系(移民系)のイスラム教徒の若者であることに違和感を抱きました。なぜ、実話がベースなのに、黒人のドリスという役を作らなくてはいけなかったのか理解できませんでした。

現段階でも同じように思いますが、早稲田大学エクステンションセンターの講義で同作品を採り上げ、改めて分析するともう少し深いようにも感じてきました。

まず、最初の黒人系移民のステレオタイプですが、メイキングドキュメンタリーを見たところ、黒人のドリスを演じた俳優オマール・シーは自らが貧民街(バンリュー)出身で、彼の意見を尊重して映画が撮影されたというのです。

ですから、ステレオタイプは、事実でもあったのです。

それから、なぜ主人公がアルジェリア系移民ではなかったのかですが、映画の最後で本物のフィリップとドリスのモデル役のアルジェリア系アブデルが登場しており、監督はアブデルがモデルであることを「見せて」いるのです。

ではなぜ、作品においてアルジェリア系にしなかったのか。憶測でしかないのですけれど、この作品の監督であるエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュは、ユダヤ系移民なのです。それが全ての理由ではないでしょうが、もしかしたら、彼らがイスラム教徒のアルジェリア系移民の姿を撮ることを避けたのかもしれません。

いずれにしましても、イスラム系移民が関わるイッシューはフランスの最も困難な社会問題の一つでしょう。見えないところに何かを見るとすれば、テーマが「重過ぎた」のかもしれません。

2018年7月21日 00:50

電車が動かないのにどうやって帰るんですか: 大学が大雨でも休講したくない理由

2018年7月6日(金)、関西地域は大雨で大きな被害がでました。

私の勤務する神戸にある大学は、朝から休講となりました。

先日、大きな地震もあり、大学で教務を担当している私は、できれば休講を避けたいと思いました。
休講が多くなると、補講をしなければならないのですが、補講日も上記の理由で補講日も既にギュウギュウだったからです。結果的には一部の職員が出勤できないこともあり、(私ではなく)「上司」の判断で休講となりました。

ただ、JR線、阪神線、阪急線は動いておりましたので、通常通りに開講しても学内規定上は問題がなかったかもしれません(現実的には安全性の問題は生じたと考えます)。

そのような中、「【検証・豪雨被害】大学はなぜ避難勧告の中、休講にしなかったのか」という記事(Business Insider Japan, 7月10日)を読み、大変痛いところを突かれたように思いました。

7月6日、大阪大学では、大雨の中、講義が続けられていたそうです。大阪大学だけではなく、多くの大学では、主要の鉄道が運休しない限り、休講にはなりません。そして、この日、運休が決まった時は、大学に残っている(授業を聞いている)学生たちは鉄道が動かず帰宅できなくなってしまったのです。

同記事では、「運休してから、休講と言われても」、「電車が動かないのにどうやって帰るんですか」とツイッター上などで、学生から休講判断に疑問の声が相次いだとされています。

当然ですが、「主要鉄道の運休=休講」は大学に来る前の段階ではないと意味がないのです。

なぜ、大学が休講をしたくないのかについても、大阪国際大学の谷口真由美・准教授が的確に説明されています。
「大学には休講に関するマニュアルがあるので、それにのっとらないと休講にできない。さらに前期の授業は15回と決められている。地震による休講もあり、休講する授業が増えると、お盆まで補講をしなければいけなくなる」(同上)。

こちらは、まさにおっしゃる通りであり、定期試験後のお盆時期に補講などは避けたいのです。

しかしながら、それでも、何よりも学生の安全第一で考えるべきであり、ルールを杓子定規に捉えることも良いことではないでしょう。15回と補講、そして、鉄道の運休というルール遵守に拘るばかりに、判断を誤ってしまってはいけないのです。

多くのことを反省し、考えさせられる大雨となりました。

2018年7月15日 22:31

FIFA:試合中に「魅力的な女性」を接写するのはいけない

国際サッカー連盟(FIFA)が、ワールドカップ(W杯)開催中の7月11日、各国の報道機関に対し、試合中にカメラで「魅力的な女性」を接写するのを止めるよう警告したというニュースがありました(BBC, 7月13日)。

なぜ、ダメなのかと言えば、若い美しい女性にフォーカスすることが「性差別」に繋がるからであるとされています(同上)。

このニュースを見た際、7月7日に行われました決勝トーナメント準々決勝(スウェーデン対イングランド)を思い出しました。

結果は、スウェーデンがイングランドに0-2で敗れ、敗退が決まったのですが、1人の美しいスウェーデン・サポーターが話題になりました。

0-2とリードされた後半34分の場面で、米国のスポーツ専門局「FOX Soccer」公式ツイッターがスウェーデンの黄色のユニホームを着て、客席からピッチを眺める若い女性の写真を報じたのです。その顔は「ウェーブのかかったブロンドのロングヘアからのぞく眉間にしわが寄り、心なしか目を赤らめながら物憂げな表情を浮かべている」と形容されています(THE ANSWER, 7月8日)。

その後、この写真に対して、
「私には彼女を慰める義務がある」
「スーパーモデルではないスウェーデン女性はいるのか?」
「彼女は超かわいいね!」
「しかし、しかし少なくとも彼女は美しい」
「どうして美人にこんなことができるんだ!?」
「泣きたくて肩が必要なら、僕のが空いているよ」
「僕のヨーロッパ旅行に今、スウェーデンが加わった」

などと世界中の(おそらく)男性からリアクションが出てくるのです(同上)。

悪いとは言い切れないのですが、金髪の美女が悲しむ姿が、スウェーデンの敗北を象徴するとすれば、あまりにも典型的なシンボルなのです。

米国のスポーツ専門局「FOX Soccer」だけがステレオタイプを作り出したのではなく、リアクションを取った男性たちとの「共犯関係」にあるのでしょう。

実はこの報道は、日本のテレビの地上波でもW杯の話題として放送されていました。そこにFIFAが懸念する「性差別」に対する配慮はありませんでした。

このような報道等が差別に繋がるのかどうかは、今後の(国際)社会が決めることかもしれません。この文脈ですと、高校野球のチアガールの接写もいけないことになります。

W杯は基本、国対抗であり、どうしてもステレオタイプが目立つのも事実です。しかし、グローバル化が進み、移民が増加すれば各国の代表も多様化しています。ステレオタイプがいけないという規範が生み出されるのもW杯からなのかもしれません。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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