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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年6月 3日

2018年6月 3日 01:19

腐敗の後に来る正義の怖さ: 映画『スミス都へ行く』のハッピーエンドが暗示すること

ハッピーエンドは、実は悲劇の始まりかもしれません。

『スミス都へ行く』(原題 Mr. Smith Goes to Washington)
制作国 米国
制作年 1939年
監督 フランク・キャプラ
出演 ジェームズ・ステュアート, ジーン・アーサー

あらすじ
【1930年代の米国。ある州の上院議員が急死する。その時、その州では新聞社を経営するジム・テイラーが、州知事や政治家を支配し、新規ダム建設に関する不正を行い、金儲けを企んでいた。計画を邪魔されたくないテイラーの一味は、新しい上院議員に素人の青年ジェファーソン・スミスを推薦した。スミスはボーイスカウトの団長をしており、子供たちから人気があり、その親からの票が望める、しかも、政治の素人なので、自分たちの言いなりになるとテイラーたちは考えたのである。そしてスミスは上院議員に選出され、首都ワシントンに向かう。列車の中で、スミスは上院議員の先輩であるペインと一緒になる。弁護士だったペインは、かつて小さな新聞社の社主をしていたスミスの亡き父と共に社会正義のために闘った仲間だった。理想に燃えるスミスは、少年のためのキャンプ場を建設する法案を提出するが、何とペインがスミスの法案に断固として反対し、壁にぶつかる。】

この作品は、ジェファーソン・スミスをどのように評価するか次第で見方が変わります。

非常にストレートに観れば、リンカーンに憧れた青年ジェファーソン・スミスは、上院での演説をし続ける行為(牛タン戦術)を用いて、腐敗に勝つのです。

(正確には、かつての社会派弁護士であり、現在は、テイラー一味に与するペインが、良心の呵責に耐えかねて、テイラーとスミスの戦いに終止符を打つのです)。

しかし、民主主義万歳とはならないところに、この映画の奥深さがあります。

京都大学の佐藤卓己教授がその著書『メディア社会』で指摘するように、青年スミスの英雄的行動が、何か「ファシズム」の匂いを醸し出してしまっているのです。

例として、スミスの演説に拍手喝采する「独裁国」の外交団や、洗脳されたかのようにボーイスカウトの少年たちがスミスのために運動する(新聞を印刷し配布する)シーンが挙げられます。

おそらく、ある程度はフランク・キャプラ監督が意図していたことが(後のゲイリー・クーパー主演の『群衆』から)推測できますが、むしろ、テーマとして全面に出していないことが怖いのです。

腐敗の後に来る正義の名の全体主義は、両大戦間期の風物詩でした。本作品はそこまではっきりとは描いていません。しかしながら、民主主義とカリスマ性を土台とする独裁の恐ろしい関連性を暗示してしまっているのです(スミスの正義は、英国のピューリタン革命のオリバー・クロムウェルを彷彿させるような何かなのです)。

ハッピーエンドなのですが、この続編は悲劇に繋がるのではないかと思わせる作品なのです。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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