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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年6月 2日

2018年6月 2日 02:04

「指示」なのか?「空気」なのか? その両方なのか?

日本大学のアメリカンフットボール部が関西学院大学との定期戦において、反則タックル問題を行った「事件」について、関東学生アメリカンフットボール連盟は5月29日に記者会見を行いました。

そして、日大の内田正人・前監督と井上奨・前コーチの2人は「除名」、森琢ヘッドコーチは「資格剥奪」(登録抹消)という最も厳しい処分が下されました。

問題視されていました(危険なタックルを行った)日本大学の宮川泰介選手へ、監督、コーチから反則をするようにという指示があったかどうか、という点においては、内田前監督、井上前コーチは否定していましたが、関東学生連盟では「指示があった」と断定しました。

これはこれで、一つの「結論」であると考えられます。

しかしながら、宮川選手の5月22日の単独記者会見では、宮川選手と記者の気になるやり取りがありました(「日大加害選手の"懺悔"会見全文(下)」AERA dot., 5月22日)。

記者:ご自身の部内でのあり方についての監督の存在とはどういうものだったか、教えてください。

宮川:(15秒ほど考え込んでから)「日本代表に行くな」と言われたときもそうですし、「なぜですか」と意見を言えるような関係ではなかったと思います。

(中略)

記者:日本代表の発言があったときに「行くな」と言われて、何も答えられなかった、「はい」としか言えなかった。日頃から監督に対しては、そういった指示に対しては、否定をできないという空気だったんでしょうか?
 
宮川:そうですね。基本的に監督と直接お話する機会はあまりないんですけど......意見を言えるような関係ではなかったですね(同上)。

ここでは内田監督は絶対的な存在であるとされ、そうすると内田監督の場合、指示を下さなくてもコーチや選手は忖度して、「空気」を読んでしまう可能性もあったのかもしれません。もちろん、そのことは内田監督の責任問題を回避することには全くなりません。

でも、内田監督の「御意向」を井上コーチが忖度して宮川君に指示をしていたとすれば、それはそれで独裁体制の一面を見るようで怖いのです。

何よりも、もし内田監督からの直接の指示がなかったのならば、それは日本大学アメフト部だけの問題に留まらない可能性もでてきます。

山本七平氏が70年代後半に日本を支配する「空気」を指摘してから約40年が経ちましたが(『「空気」の研究』文藝春秋、1977年)、未だに「空気」が日本の組織(スポーツ界)を支配しているとすれば日本学的な文脈になってきます。

もう一度、繰り返します。日本大学アメフト部の問題は、それだけで調査すべきであり、「空気」の存在が、その罪を軽減すべきではありません。でも、「空気」は「空気」で考えていかなければいけない問題なのです。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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