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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年4月29日 23:50

難民化したエイリアンとの友情: 映画『第9地区』が示す「人間-エイリアン」関係論

2018年4月21日付けの当ブログで、映画『アバター』(2009年)を論じました。『アバター』の主人公ジェイクは、「アバター」となり、地球から遠くはなれた星の衛星の「原住民」の社会に入り込むのですが、この作品にも共通性があります。

『第9地区』(原題District 9)
制作国 米国, 南アフリカ共和国
制作年 2009年
監督 ニール・ブロムカンプ
出演 シャールト・コプリー

あらすじ
【1982年、南アフリカ共和国。謎の惑星から来た宇宙船がヨハネスブルクの上空に浮いたまま停止する。人類が宇宙船に乗り込むと栄養失調の多くの宇宙人(エイリアン)たちがいた。「難民」と化したエイリアンは、ヨハネスブルクの地上に降ろされ、ヨハネネスブルク市内の居住区「第9地区」にて「保護」されることになる。そして、28年後、エイリアンたちは人間から「エビ」と呼ばれて差別され、「第9地区」はスラム化してしまう。エイリアン問題を担当する民間企業「マルチ・ナショナル・ユナイテッド社」(MNU)はエイリアンの強制移住を決定し、同社はヴィカスという男を現場責任者に指名する。ヴィカスは意味が分からないエイリアンたちから、無理やり移住承認のサインを得ようとし、歯向かうエイリアンはその場で射殺する。ところがある小屋を調査している際に、ヴィカスは謎の液体を浴びてしまう。するとヴィカスは、左腕から次第に身体がエイリアン化してしまう。】

南アフリカ共和国を舞台した同作品は、アパルトヘイト時代に起きたケープタウン第6地区からの強制移住政策を意識し、南アの歴史を色濃く反映したものになっているとされています。

ただ、描かれるテーマは人間とエイリアンの「友情」です。エイリアンの強制移住を推進する民間企業「MNU」に勤務する、ヴィカスは不本意ながら「事故」でエイリアン化してしまいます。

会社仲間、友人、親戚からも見捨てられたヴィカスは、「第9地区」に逃げ込み、地球名クリストファーというリーダー格のエイリアンとその息子と親交を結びます。

彼らとの「友情」も紆余曲折があるのですが、いずれにしても、人間なのにエイリアン化することで、社会学で言うところの「マージナルマン」となるのです。

【「マージナルマン」とは、二つ(以上)の社会集団に属し、一つのアイデンティティに固定されていない人間のことを指した米国の社会学者ロバート・パークが提唱した概念です。】

そして、徐々にヴィカスは心もエイリアン寄りになっていきます。

この作品の中では様々な人間が描かれます。私企業MNUの醜い人間たち、エイリアン相手に商売する人間ギャングたち、そしてエイリアンに理解を示すヴィカスと少数の人々。

しかしながら、エイリアン側の「人間模様」は映し出されません。地球名クリストファーというエイリアンとその息子だけが、人格化されているだけなのです。

エイリアンにも派閥があるような気がするのですが、そこまで描くとあまりにもエイリアンが「人間的」過ぎてしまうのでしょうか。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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