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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年3月 7日

2018年3月 7日 03:21

「オリエント急行」はどこに私たちを導くのか?: 映画『オリエント急行殺人事件』の時を越える構造

名作のリメイクは必要なのかもしれません。

『オリエント急行殺人事件』(原題Murder on the Orient Express)
制作国 米国
制作年 2017年
監督 ケネス・ブラナー
出演 ケネス・ブラナー, ジョニー・デップ, ミシェル・ファイファー
あらすじ
【1930年代、エルサレムで事件を解決した名探偵のエルキュール・ポアロは、英国での事件解決を依頼され、豪華寝台列車オリエント急行に乗車する。ポアロは、車内で米国人富豪ラチェットから、脅迫を受けているからと身辺警護を頼まれるがラチェットの顔が嫌だと断る。その夜、雪崩で脱線し立ち往生してしまった車内でラチェットが何者かに殺害される。鉄道会社から捜査を頼まれたポアロは、乗客たち一人一人にインタビューを開始する。すると、乗客全員には完璧なアリバイがあることが判明する。ポアロは、証拠に基づく推測と推理によって、この殺人事件の全体の構造を明らかにするが、その結果、自分がどうしたら良いのかに迷うことになる。そして、最終的にポアロは乗客全員に事件の最終結末を委ねようとする(20世紀フォックス TOP映画『オリエント急行殺人事件』作品紹介を参照)。】

ご存知、アガサ・クリスティの名作『オリエント急行殺人事件』の豪華キャストでのリメイク映画です(前作は1974年のシドニー・ルメット監督作品)。ストーリーも有名で、誰もが「容疑者」で誰もが「犯人」というある意味「禁じ手」の結論さえも知れ渡っています。

しかし、本作品の主題は誰が犯人かを推理することではなく、犯罪の構造が分かった後にどうするかということが問われているのです。

ポアロは、突き詰めた本当の犯人(たち)がどうして犯罪に走ったかの理由を鑑みた上で、乗客の犯行説を別に提示します。そして、2つの説を乗客に選択させようとします。

つまり、この作品では犯人を見つけることが重要なことではなくなっており、その後の選択がテーマになっているのです(このような分析も定説のようになっておりますが)。

次に、豪華列車「オリエント急行」に豪華キャストという組み合わせも、時代を越えて受け入れられる要因でしょう。

上流階級の特権的な列車の中で、殺人事件が発生し、その列車が大雪で動けなくなり、何もない山間部で閉じ込められてしまうことで、急に社会から隔離された「牢獄」のようになってしまうのです。

舞台的な状況となり、有名俳優たちの見せ場が作れるのです。

最後に「オリエント急行」(the Orient Express)そのものに焦点を当てれば、「オリエント」(東洋)という響きが何とも「オクシデント」(西洋)に対する謎めいた雰囲気を醸し出しているのも事実でしょう。

21世紀になり、グローバル化が進む現在、原作が書かれた1930年代の「オリエント」(東洋)のイメージは、今日の欧州にもアジアにもあるとは言えないでしょう。むしろだからこそ、別世界に「オリエント急行」が導いてくれるような気分にさえなるのかもしれません。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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