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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年2月22日

2018年2月22日 01:43

雑貨店や手紙が心を捉えていた頃: 映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の今に活きる「ノスタルジー」

懐古主義は嫌いなのですが、この作品はスーッと受け入れてしまいました。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
制作国 日本
制作年 2017年
監督 廣木隆一
出演 山田涼介, 西田敏行, 尾野真千子

あらすじ
【2012年。養護施設出身で幼馴染の敦也、翔太、幸平の3人は、悪事を働き、1軒の廃屋に逃げ込む。そこはかつて悩み相談を受けることで知られていた「ナミヤ雑貨店」だった。今はもう廃業しており、誰もいない空き家になっているにもかかわらず、3人の前に、突然シャッターの郵便口から手紙が落ちてくる。なんとその手紙は32年前に書かれた悩み相談だった。敦也たちは戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くことになる。次第に明らかになっていく雑貨店の秘密と、相談者たちと敦也たちの共通点。彼らがこの雑貨店に忍び込んだのは偶然ではなかった。そして、敦也たちがある人物からの「最後の手紙」を受け取ったとき、彼らの運命は一変することになる(TOHO Cinemasの解説から)。】

東野圭吾氏のベストセラー作品の映画化です。

西田敏行氏が演じる「ナミヤ雑貨店」の店長・浪矢雄治は、昭和の後期から手紙で悩み相談を受け、その死まで返事を書き続けてきたのです。

実際にそのようなことをする雑貨店はなかったかもしれません。しかしながら、雑貨店や駄菓子屋は、(戦後)昭和の子供には不可欠の存在であったのは確かです。

100円玉を握りしめて駄菓子屋に行き、いくつかのモノを買えるのが駄菓子屋でした。毎日のように通えば、お店のおばちゃんやおじちゃんと顔馴染みになっていきます。

人生相談はしなくとも、田舎で育った私自身、雑貨店や駄菓子屋店を非常に懐かしく感じています(学校帰りは行ってはいけませんと先生に注意されていたこともあり、背徳的な感覚もありましたが)。

いつの間にか、雑貨店や駄菓子屋は店じまいし、子供も大人もコンビニに行くようになりました。コンビニはその名の通り、非常に便利です。

でも何かが違うんですね。

2015年、2017年とネパールを訪れた際、田舎の村に幾つもの雑貨店があることを発見して嬉しくなりました。

シディプール駄菓子屋.jpg
ネパールの村の雑貨店(2015年9月撮影)

私は、その際、ネパール人の村人に、「あなたは、どのお店でお菓子や飲み物を買うのですか?」と伺ったのですが、答えは、「毎回、違います」でした。「でも、商品はだいたい同じですし、値段もほとんど同じです」と村人。

だったら、なぜ異なる店に行くのかといえば、義理で色々なお店で(同じものを)順番に買い求めることで相互扶助機能を働かせているのでしょう。

ただ単にモノを売るのではなく、買う側も相互扶助を意識し、売り手も買い手もコミュニティの中に生きているのです。

もう一度、繰り返せば、「ナミヤ雑貨店」の店長・浪矢雄治のような人物は現実にはいないかもしれません。そして、雑貨店や駄菓子屋はコンビニ型の店に交替していくことが、(日本のみならず)グローバルな現象でもあるのです。手紙がメールに取って代わられたように、それは必然とも言えます。

しかし、本作品を観ると、雑貨店や駄菓子屋が子供で賑わい、手書きの手紙が幅を利かせていた時代も良かったと思わずにはいられません。おそらく、それは作品のテーマが単なる懐古主義ではなく、今日的な意味もあるからなのでしょう。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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