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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年2月18日

2018年2月18日 01:35

最下位なのにエディが「鷲のように飛んだ」と言われたのはなぜか? : 映画『イーグル・ジャンプ』の偉大な「発見」

かつて、冬季五輪のスキージャンプ競技で最下位だったにもかかわらず、「鷲のように飛んだ」と賞賛された選手がいました。

『イーグル・ジャンプ』(原題 Eddie the Eagle)
制作国 英国, 米国, ドイツ
制作年 2016年
監督 デクスター・フレッチャー
出演 タロン・エガートン, ヒュー・ジャックマン

あらすじ
【英国の少年エディ・エドワーズは、近眼でスポーツは得意ではないにもかかわらず、小さい頃から五輪に出場することに強く憧れていた。1987年、23歳のエディは偶然見たスキージャンプにおいて、英国に有力選手が誰もいないと知ると、スキージャンプで五輪を1988年のカルガリー五輪への出場を目指すことにする。まず、ドイツの雪山での大会でキャリアを積もうとしたが、70メートル級ジャンプの飛び方が分からない。そこで、偶然知り合った酔っ払いの元五輪代表選手ブロンソン・ピアリーにコーチを依頼する。最初は拒否していたピアリーは、何度、転倒してもジャンプを諦めないエディに根負けし、着地の仕方を教えることにする。エディは、40メートル台を飛び英国の記録保持者となったが、英国五輪委員会は61メートルという条件を付けて「素人」のエディのカルガリー行きを妨害しようとする。】

英国では有名人。1988年カルガリー五輪のスキージャンプ英国代表のエディ・エドワード(エディー・ジ・イーグル)の伝記映画です。

スキージャンプ経験がないエディ・エドワードはなぜカルガリー五輪にでられたのか?もちろん、映画に描かれるようなエディの努力もあるでしょう。

しかし、それでも大きな理由は、エディがスキージャンプの英国代表が誰もいないことを「発見」したことにあるでしょう。

カルガリー五輪でエディは70メートル級ジャンプで、1本目は55メートル、2本目も55メートルで58人中、最下位。90メートル級ジャンプは、1本目が71メートル、2本目が67.0メートルで最下位です。

圧倒的敗北にもかかわらず(圧倒的敗北だったからこそ)、エディは世界中の人々の心を掴み、カルガリー五輪の主役の1人になってしまいました。

よく「オリンピックは参加することに意義がある」と言われますが、まさにエディは参加することを目標にして、成功したのです。

しかしながら、その後、このようなエディの試みは許されなくなりました。

1990年に国際オリンピック委員会(IOC)は後に「エディ・ジ・イーグル・ルール」と称されるエディ(あるいは第二のエディ)を締め出す規則を作りました。それは、五輪に出場するには国際大会において上位50人もしくは上位30パーセント以内に入ることが条件となり、エディは以降、2度と五輪に出場できなくなりました。

特定の種目において自国が弱いから(誰もやっていないから)という理由だけで、素人が挑戦することができなくなってしまったのです。誰もやっていないことを見つけることは偉大な勝利の始まりなのに。

ここで考えてみたいのは、カルガリー五輪で最下位の彼が「鷲のように飛んだ」と賞賛されたのは、どうしてだったのかということです。それは、おそらく(多少の冷やかしもあったでしょうが)彼の「発見」が、世界の「普通」の人々にとって、自らの夢と繋がって見えたからなのではないでしょうか。

五輪が開催されるために、帰化選手が話題になります。その遠因となっているのは自国の「素人」を締め出した「エディ・ジ・イーグル・ルール」なのかもしれません。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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