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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年2月 3日 02:41

「なりすまし」と「人種差別」の構造

先月、「ダウンタウン」の浜田雅功氏が、大晦日に放送されたTV番組『絶対に笑ってはいけない』にて、米俳優エディー・マーフィーに扮して、肌を黒くメイクしたことが「人種差別」であると国内外から批判されました。

制作した日本テレビは「ダウンタウンの浜田さんがあくまで映画『ビバリーヒルズ・コップ』で俳優のエディー・マーフィーさんが演じる主人公「アクセル・フォーリー」に扮したもので、差別する意図は一切ありません」(AbemaTV)と釈明しています。

この番組を見直しても制作側が意図的に差別をしたことは感じられません。しかし、受け手側(国内にいるとは限りません)が差別であると見なせば、差別になってしまうのです。以下、この番組のあのシーンが「人種差別的」であることを前提に、その背景を考えていきたいと思います。

テレビプロデューサー兼タレントのデーブ・スペクター氏は、「昔に知らずにやっていたのはいいとして、ただ、今は危機管理上やるべきではなかった。想定しなければいけなかった」(1月5日 TOKYO MX『バラいろダンディ』)と指摘していますが、 そうすると、ここでは、なぜ想定できなかったのかが問われてきます。

この件において、日本在住の黒人作家バイエ・マクニールさんが、「黒人キャラが欲しいなら日本語を話す黒人を雇え。ブラックフェイスはやめろ」と批判しているのですが、これは上記の「なぜ」を解くカギになるかもしれません(J-Cast News, 2018年1月5日)

私はこの問題を目にした際、昨年、米国の雑誌『VOGUE』3月号で、「芸者」風スタイルの写真が掲載された白人モデルのカーリー・クロスさんが批判を浴びた件を思い出しました。クロスさんはTwitter上で「日本の文化を盗用した」ことを謝罪することになったのですが、日本人からは、「それほどおかしくない」と擁護する声もあがりました(The Huffington Post, 2017年2月16日)。

日本人は、他の民族の(他の肌の色の)人によって日本人になりすまされたとしても、何とも思わないという人が多く、故に逆に、何人にもなりすましてしまうのです。そして、今回の番組は結果的に「人種差別」と見なされてしまったことになります。

欧米社会は、非常に強いアイデンティティ規範が存在します。肌の色や民族の文化等は、個人やその集団の尊厳に結びついており、テレビや映画で用いる時は、細心の注意や覚悟が必要です(ただ、それは民族間や人種間の対立を反映していることも看過できません)。

日本は民族(ethnic group)的に同一性が高く、少数民族や在留外国人は存在しても、民族的「他者」を意識する機会が多くはないことがあると考えます。しかし、国際化、グローバル化している今日、批判を「想定してなかった」では許されないのです。

そして、これからはなりすまして(結果的に)差別することも、同時になりすまされて(結果的に)差別されることも許されなくなっていくことでしょう。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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