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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2018年2月 2日

2018年2月 2日 22:34

眺めを見逃してはいけない: 映画『眺めのいい部屋』に映し出される女性の意志と時代の変化

ちょっと恣意的なメタファーであっても、受け入れてしまうことはあります。

『眺めのいい部屋』(原題 A Room with a View)
制作国 英国
制作年 1986年
監督 ジャームズ・アイヴォリー
出演 ヘレナ・ボナム=カーター, ジュリアン・サンズ, マギー・スミス, ダニエル・デイ=ルイス

あらすじ
【1907年。英国の中産階級の令嬢ルーシー・ハニーチャーチは、年配の独身の従姉シャーロットをと一緒にイタリアのフィレンツェに旅行にきた。しかし、宿泊先のホテルの部屋は、アルノ川が見える眺めのいい部屋ではなく、不満を述べていると、同じ英国からやってきて偶然、同じホテルに宿泊しているエマソン親子(父と息子)が部屋を交換してくれると言う。しかし、シャーロットはエマソン氏(父)の態度が紳士的ではなく、成金のように感じられ、そのオファーを断ってしまう。しかし、ルーシーは、街の広場で気を失っているところを、エマソンの息子ジョージに助けられ、数日後のピクニックでキスをする。2人はお互いに相手を意識しながらも、英国に帰国。英国の故郷で、ルーシーは富裕層で教養豊かなヴァイス氏からプロポーズされ、戸惑いながらも受けることになる。】

簡単に申し上げれば、20世紀初頭の英国社会に生きる中産階級(アッパーミドルクラス)の女性ルーシーが、意志をもって結婚する話です。

そして、ネタバレですがルーシーとエマソンの息子ジョージは最終的には結ばれます。もっとも、意志をもって結婚すると言っても、労働者階級の男性を選ぶのではなく、下層から中産階級に成り上がった家の息子と、イタリアのフィレンツェで恋に落ちるだけです。

ただ、それがフィレンツェを舞台に非常に美しく描かれているのです。故に、ここでは階級性よりも「美しさ」がテーマになっていきます。そして、メタファーとして「眺めのいい部屋」とは、ルーシーの自由意志を意味するのでしょう。

20世紀初頭、女性が「眺め=美しさ」を求める時代が(富裕層に限定的ながら)始まったことは、この映画において、女性の裸のシーンが皆無なのにもかかわらず、男性たちが裸のシーンが映し出されていることにも反映しているのでしょう(このシーンは日本公開時カットされました)。

その結果、主人公ルーシー(最後のシーンに出てくるルーシーのような女性たち)が、どうなっていくのかまでは、映画では映し出しません。しかしながら、その「瞬間」の「眺め」が美しいのは確かです。であるなら、その瞬間(「美しい部屋からの眺め」=自由を求める瞬間)を見逃してはいけないことになります。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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