QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年12月

2017年12月31日 14:40

2017年「分断される社会」の顕在化に直面して

私は、この数年、早稲田大学エクステンションセンターにて「国際時事問題入門」(ヨーロッパ)という講座を担当していますが、12月の最後の講義は、1年間の総括をしています。

政治、社会現象を(カレンダーイヤーで纏める)まるで年末特番のように語ることに抵抗はありますが、誕生日と同じように、事象を振り返るために何らかの「区切り」は必要ではあります。

2017年の欧米を中心とした国際情勢を一言で纏めると、「分断される社会」が世界的に顕在化した1年であったと考えます。

1月には、米国でドナルド・トランプ大統領の就任し、トランプ政権が発足しました。「米国社会の分断」を顕著に表すこの政権は、社会の亀裂を修復するかのように、北朝鮮や中東問題等、「外交」を重視したように感じます。しかしながら、山積する国内問題を、国際問題で解決できないことは歴史が証明しており、前途多難であることには変わりません。

今年のヨーロッパは、選挙の1年でした。

4月のフランス大統領選挙では、長らく政権を担ってきた二大政党(社会党、共和党)が敗北し、5月の決選投票では、エマニュエル・マクロン氏の新党と極右政党・国民戦線のマリーヌ・ル・ペン氏の一騎打ちとなり、マクロン氏が勝ちました。

9月のドイツの連邦議会選挙では、アンゲラ・メルケル首相のドイツキリスト教民主同盟が勝利し、メルケル首相は4選を果たしましたが、極右政党のドイツのための選択肢が得票率12.6%(94議席)を獲得し、大きな話題になりました。

6月に催された英国の総選挙では、政権与党の保守党が318議席、得票率42.4%、野党第一党の労働党が262議席、得票率 40.0%でした。両党で80%以上も得票したことは、フランスやドイツとは異なる現象ですが、2016年6月の国民投票によって、EUからの英国の離脱(ブレグジット)が決定しており、この総選挙の結果はその反動とも言えます。従って、総選挙で、二大政党が勢力を維持したことは、英国の社会的分断を露呈したブレグジット問題が解決に向かっていることを意味しないでしょう。

ヨーロッパにおいて極右政党の台頭は、2017年に始まったことではありませんが、この1年は、より可視化されてきたように思えます。

そして、秋以降のカタルーニャのスペインからの独立運動も、地域別の「格差化」と位置付けることできるかもしれません。同時に、「同国」において独立支持者が半数しか至らないことは、明らかにカタルーニャも社会的に分断されていることの証左となってしまうのです。

ホーム・グローン・テロリストによる、テロ行為も続いています。

各国・地域が社会的に一体感を失いつつある今日、私たちはどのように(複数の)集団的アイデンティティのバランスを保ち、平和な社会を再構築すべきなのでしょうか。

「個」に立ち戻って考えてみましょう、というもっともらしい提案を、講義中、述べることも躊躇するような1年でした。

それでも、社会も人生も続くとすれば、社会の「持続」を重視し、教育においては(他者を受け入れる)包摂的で重なり合う集団的アイデンティティを尊重し、その源となる「個」の重要性を、これからも語り続けるしかないのでしょう。

2017年12月27日 17:58

中国「トイレ革命」とは何か?: 中国の男性は「ペーパー」を持ち歩かなければいけない

先日、12月23日、12月24日に広東省広州市で開催された国際シンポジウム(12月23日、24日)に参加したことを記しました。

できれば、現地で「トイレ事情」を確かめたいと考えていました。

この数年、中国では「トイレ革命」が議論になっています。簡単に言えば、トイレを近代化(水洗化)することが掲げられています。

目的は、海外からの観光客対策と、国内の貧困(格差)対策の2つです。

前者に関しては、2015年から習近平・国家主席の号令の下、国家観光局による3年間の公衆トイレ整備計画が展開されており、今年、10月末までに全国の観光地で6万8千のトイレが新設、改善されたそうです(毎日新聞、12月4日夕刊)。

後者の貧困対策としては、近代化の発展に伴い中国では都市部においてトイレの水洗化が進んできたそうですが、農村地では依然として、トイレの仕切りがなく隣で用を足す人の姿が丸見えになる「ニーハオトイレ」が多いそうです(同上)。「トイレ格差」を是正するためにも、「トイレ革命」が必要になってくるのでしょう。

今回、私が訪問した広東省広州市は中国で改革開放路線の先頭を走ってきたところですので、「ニーハオトイレ」を経験することができませんでした。

しかしながら、国際シンポジウムが開催された会場の男性トイレに、トイレットペーパーはありませんでした。また、便器は、いわゆる日本で言うところの「和式」しかありませんでした(区切りがありますので、「ニーハオトイレ」ではないです)。

中国人の男性研究者に伺ったところ、中国ではペーパーないのが普通だそうです。別の中国人の女性研究が、女性トイレには設置されており、さすがは広州と女性たちが話していたと教えてくれました。

「和式」とトイレに関しては、別の中国籍の院生から、「そもそも、便器に座る洋式よりも触れない和式のほうが、衛生的じゃないですか?」とも逆質問を受けました。

そうかもしれませんが、トイレットペーパーがなければ、結局、衛生的ではないような気もします。

正直、この数年、年に1度の間隔で、カンボジア、フィリピン、ネパール行き、ペーパーを「持参」してきたのですが、殆ど、使うことはなく、アジアの主要都市では不用になったと実感していました。

ということで、私はシンポジウムを抜け出し、トイレットペーパーを買いに走りました。観光客対策としてはトイレットペーパーも必要だと習・国家主席に直訴したいと思いながら。

ちなみに、中国では、「ペーパー」を身に着けていることが男性のマナーだそうです(女性にさりげなく「これ使っていいよ」と渡すのでしょうか?)。自分の必要も満たせない私は、中国では失格なのかもしれません。

2017年12月26日 14:41

そして、米国と日本は「クリスマス離れ」?

昨日、近年、盛り上がりを見せる中国のクリスマスについて言及しました。しかし、同時に、中国では地方を中心に「上」から「西側的」なクリスマスを批判するような声があがってもいます(共同通信, 12月18日)。

それは、中国人全体の意見を代表しているとは考えられませんが、「一部の若者がクリスマスなどの西側宗教の記念日に夢中になっている」(毎日新聞, 12月24日)という指摘は非常に興味深いものがあります。

しかしながら、面白いことに「西側」の代表格であるだろう米国では、「クリスマス離れ」が進んでいます。

調査機関「Public Religion Research Institute(PRRI)」が昨年行った世論調査によれば、「店や企業は顧客に対して(宗教色の強い)『メリークリスマス』の代わりに(宗教色の希薄な)『ハッピーホリデー』」と言うべきかという問いに対して、『ハッピーホリディ』派は回答者の47%で、『メリークリスマス』派の46%を上回っています(Newsweek, 2016年12月24日)。

その背景には、2001年の同時テロ以降の文化や宗教の多様性を認め合おうという米国の社会のポリティカルコレクトネスがあり、2001年以降に育った若者になる程、クリスマス離れが鮮明になっているとされています(猪瀬聖「「メリークリスマス」忌避なぜ」2017年12月24日)。

もう少し、グローバル化との関連など調査すべき点はありますが、米国のクリスマスが宗教色を薄めているのは確かでしょう。

それに対して、大ドナルド・トランプ大統領は、昨年の大統領選挙において当選したら「メリークリスマス」というと公約しており、大統領として初めて迎える今年のクリスマスでは、公約を実行し、「メリークリスマス」を連呼しています。結果として、米国のクリスマスの政治化に拍車が掛かっているのです。

もちろん、米国人の90%がクリスマスを祝い、46%がこの日を宗教的な祝日と、33%が文化的な祝い事と認識しており、クリスマスというイベントが米国から消えた訳ではないです(ワシントンタイムズ, 12月25日)。

それでも、多民族国家である米国のクリスマスは、政治化されながらも徐々に形を変えようとしているのです。

さて、日本です。

1980年代に恋人と過ごすイベントとして定着した日本のクリスマスも変容を遂げようとしています(堀井憲一郎「実録!日本のクリスマスが「女と男のイベント」に変わっていくまで」2017年12月1日)。

レオパレス21社が、クリスマスシーズンを目前に、全国のひとり暮らしをしている20~30代の社会人男女計600名を対象に調査したところ、今年のクリスマスをひとりで過ごす予定であった人は65.0%であり(昨年度の同調査結果は、52.2%)であり、更にそのうちの69.5%が、1人でいることを「寂しいと思わない」(69.5%)と回答しています(PR TIMES, 2017年12月11日)。
.
米国と日本は、それぞれ別の理由でクリスマスを「卒業」するかのようです(前述の通り、その理由に関しては、より深い考察が必要ですが)。

良し悪しの問題ではないでしょう。ただ、私は中国で観たクリスマスを「昭和」ぽくて、懐かしいと感じたのも事実です。

2017年12月25日 23:24

盛り上がり、かつ批判される中国のクリスマス

クリスマス前に中国、広東省広州市で開催された国際シンポジウム(12月23日、24日)に参加しました。

初めての広東省で、実質、2日間の短期でしたが、クリスマス前でしたので、彼の地のクリスマスを観察することになりました。

中国はキリスト教徒が主流の国ではなく、日本同様、クリスマスは商業的な形として顕れます。滞在先のホテルの従業員がトナカイ・ルックをしたり(小悪魔のかわいい角のように見えていた)、商業施設にクリスマスツリーが飾られたりです。町の商店街には若者のカップルも目立っていました。

IMG_3824.jpg
広州市内のショッピングセンター「広州太古汇」

IMG_3827.jpg
広州白雲国際空港インフォメーションセンター
微妙な「サンタ」の歓迎

IMG_3826.jpg
白雲国際空港のクリスマスツリー

以前、アジア各地のクリスマスについて、このサイトでも言及しましたが(2016年1月10日; 2016年1月23日)、東南アジアではクリスマスの規範が必ずしも各地に到達しているとは言えないのです。

中国のクリスマスを観察すると、その商業主義が「日本的」でさえあります。

もちろん、広東省の現象をもって中国全土を語ることはできないでしょうが、徐々に地方に広がっているのも確かなようです。

そして、むしろ、その中国の地方において、この商業主義的なクリスマスを批判するような声があがっています(共同通信, 12月18日)。

遼寧省の瀋陽薬科大学は、「一部の若者がクリスマスなどの西側宗教の記念日に夢中になっている」「西側宗教文化の浸透への抵抗」を呼びかけ、湖南省衡陽市公安局は共産党員や公務員に対し、家族を含めクリスマス行事に参加しないように要求したと報じられています(毎日新聞, 12月24日)。

クリスマスが西側宗教なのかどうかに関しては、議論の余地があります。日本のようにキリスト教徒が数パーセントしか存在しない国でも、季節のイベントとして定着していますので、多くの国・地域において、クリスマスは宗教とは(意識的に、もしくは無意識に)別に解釈され、発展し、豊さの象徴のような形式で受け止められているようにも思えます。

中国共産党中央は何もコメントを発しておらず、黙認しているようですが、やはり、経済発展に付随する現象として認識しているのでしょうか。

もっとも、今回のように12月23日、24日に国際シンポジウムを開催することも、欧米の大学ではありませんし、中国ならではかもしれません。私が去った翌日の25日も「普通」の月曜日だったようす。

香港経由の夜行フライトで帰国しますと、日本も12月25日は「普通」の月曜であり、大学は通常授業でした。いつも通り講義をしながら、アジア各国にクリスマスがあるのか、ないのかについて思いを巡らせました。

2017年12月18日 00:52

名曲「キセキ」の心地よさ: 映画『キセキ あの日のソビト』の挑戦と安定

映画のタイトルにある「ソビト」とは、GReeeeNによる造語であり、自由に新しいことに挑戦していく人のことを意味するそうです(GReeeeN Official Website, 2016年6月3日)。

『キセキ あの日のソビト』
制作国 日本
制作年 2017年
監督 兼重淳
出演 松阪桃季, 菅田将暉

あらすじ
【厳格や医師の父親に育てられながら、兄・ジンは音楽好きであり、仲間と共にバンドを組み、プロデビューする。弟・ヒデも兄同様に音楽の世界に憧れながら、両親の期待に応えるべく、1浪の後、歯科大学を受験し、合格する。プロデビューした兄はヒットに恵まれず、父親との関係は悪化。そんな中、弟は歯科大学でバンドを組み、ライブを行うと大成功となり、兄がプロデュースする形で弟のバンドもプロデビューすることになる。ヒデは父親との対立を抱えたまま、曲を書き続け、7枚目のシングル「キセキ」が大ヒットすることになる。やがで、父も、自分の患者が「キセキ」を聞いて励まされていることを目撃し、音楽に理解を示すようになっていく。】

人気バンド「GreeeeN」の自伝的映画です。

物語は、シンプルです。父親は、エリート医者であり、医者のような人のためになる職業の道を2人の子供たちにも進んで欲しいと考えています。一方で、子供たちは、音楽が好きで、音楽活動を通じて人を癒すこともできると思っています。しかし、父親にとって、音楽は、遊んでいるようにしか映らないのです。

「医者=エリート」観は、ステレオタイプであり、「音楽=遊び」観も、同様に違いありません。

結局、「キセキ」の大ヒットが全てを解決してくれます。人々は、曲を口ずさみ、病人は勇気を貰い、バンドは、経済的成功と満足度を得ます。

成功しなかったら、ヒット曲に恵まれなかったら、彼らの選択は間違っていたのかと考えてしまいますが、とにかく、ハッピーエンドで終わります。

非常に単純なのですが、それでも、名曲「キセキ」が流れるシーンは嵌ります。

予定調和であり、先が見えているにもかかわらず、「キセキ」は心地よいのです。それが名曲の力だと言ってしまえば、それまでですが、本作品が、この曲を流すために作られた映画であることが分かります。

そう考えますと、ステレオタイプの設定も、「キセキ」を強調するための演出であるとさえ思えてきます。

ただ、「キセキ」が野球ドラマ『ROOKIES』の主題歌であり、トヨタのCMに使われたりしたことは、ステレオタイプの向こう側にあるイメージで、この曲が、社会的に消費された訳ではないようです。

主人公も医者の父親を尊敬し続けており、ステレオタイプの否定ではなく、(音楽で人々の心を癒すという表現にもみられるように)部分的に継承する形で「新たな挑戦」が描かれています。とすれば、ある種の安定性(保守性)の中の「革新性」こそが、この曲(この映画)の心地良さなのかもしれません。

 1  |  2  |  3  | All 次へ >>

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
月別アーカイブ
2018年11月
2018年10月
2018年9月
2018年8月
2018年7月
2018年6月
2018年5月
2018年4月
2018年3月
2018年2月
2018年1月
2017年12月
2017年11月
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
カテゴリーアーカイブ
アジア事情 (34)
カンボジア (27)
スイス (27)
スポーツと社会 (141)
ネパール (26)
国際事情(欧州を除く) (236)
大震災/原発事故と日本 (30)
御挨拶 (14)
日本政治 (128)
日本社会 (308)
映画で観る世界と社会 (349)
欧州事情 (100)
留学生日記 (95)
英国 (100)

ページトップへ

カレンダー
<< 2018年05月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
最新記事
誰もが大学に行くようになった時、社会は大学の学費をどうするればいいのか?
なぜ、人は嘘をつくのか?: 映画『ソフィーの選択』の選択と嘘と友人の関係
FA宣言に対するアレルギー反応は、日本学的文脈から考えるべきか?
英語を越えるグローバリゼーションが起こっている
多様であることを理解する重要性: 映画『パラダイス・ナウ』にみるパレスチナ側の論理の非単一化
最新コメント
A fascinating discus...
Posted by America’S Leading Corporate Advisory Firm
A fascinating discus...
Posted by America’S Leading Corporate Advisory Firm
A fascinating discus...
Posted by America’S Leading Corporate Advisory Firm
A fascinating discus...
Posted by America’S Leading Corporate Advisory Firm
I've been surfing on...
Posted by The Twilight Zone The Complete Series Boxset dvd release date
最新トラックバック
この社会での性的魅力
from 哲学はなぜ間違うのか
ひとつ/長渕剛(Cover)
from 今日の天草