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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年11月26日 04:57

天使が永遠の命を捨てる時: 映画『ベルリン・天使の詩』における「中年天使」の決断

天使が永遠の命よりも、瞬間の生を選ぶとすれば、その条件とは何なのでしょうか。

『ベルリン・天使の詩』(原題 Der Himmel über Berlin)
制作国 ドイツ
制作年 1987年
監督 ヴィム・ヴェンダース
出演 ブルーノ・ガンツ, ソルヴェーグ・ドマルタン

あらすじ
【1980年代の壁が東西を分離するベルリン。守護天使ダミエル(中年男性の恰好)は、人々の心の声が聞こえる。長年、人々の心に寄り添ってきたが、徐々に永遠の生命を放棄し、人間になりたいと思うようになる。そのような中、天使ダミエルはサーカスの舞姫マリオンに出会う。そして、映画撮影のためにベルリンを訪れていた(『刑事コロンボ』で有名な)米国の俳優ピーター・フォークは、元天使であり、ダミエルに人間になることを勧める。そして、ダミエルは、徐々にマリオンへの想いが強くなり、天使の親友カシエル(同じく中年男性の恰好)に人間になる決意を伝える。】

人間賛歌の作品です。

永遠の命を持つ天使たちは人間ドラマを何百年、何千年と観てきました。それらは、「美しい」ばかりではなく、「醜さ」も同居しています。

にもかかわらず、守護天使ダミエルは、サーカスの舞姫・マリオンに出会うことで人間として一度きりの人生を選択することになります。

永遠の命を持つ天使にとって、人間の生涯は一瞬にしか過ぎないでしょう。つまり、マリオンを愛して人間になるということは、死を選択するに等しいのです。それでも、ダミエルは、人間になります(人間中心主義的な見方と言えばそれまでですが)。

更に、この作品を彩るのは、『刑事コロンボ』のコロンボ刑事役の俳優ピーター・フォークの存在です。フォークは、元天使という設定です。

彼は、天使を辞めて刑事コロンボになった(役を演じている)という筋は、作品に厚みを持たせています。なぜか、この作品では天使は皆、中年男性の姿をしていますが、ピーター・フォークが元々天使だったというストーリーによって、主人公の選択が肯定されていくのです。

そして、映画は「全てのかつての天使、特に(小津)安二郎、フランソワ(トリュフォー)、アンドレイ(タルコフスキー)に捧ぐ」というクレジットで終わります。名映画監督と名俳優、まさに元天使たちと呼ばれて相応しい面々です。

でも、ダミエルが恋をしたのは有名人ではありません。どちらかと言えば、しがないサーカスで働く(美しい)女性です。

ダミエルは、本当の意味で、(普通の中年男性となり)普通の生活を送っても、幸せなのでしょうか。時に、天使のままであったらと懐かしみながら(時に、マリオンと喧嘩しながら)、でも、やっぱり、人間でよかったと思うような人生を歩んでいたら良いのですが。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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