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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年11月 4日

2017年11月 4日 17:19

君とお金のために結婚するのではない: 映画『静かなる男』における持参金というプライド

理想の「持参金」とは何かを考えさせられます。

『静かなる男』(原題 The Quiet Man)
制作国 米国
制作年 1952年
監督 ジョン・フォード
出演 ジョン・ウェイン, モーリン・オハラ

あらすじ
【1950年代のアイルランドの田舎村イニスフリー。その村で生まれ、米国で育った青年ショーンは、米国でボクサーをしていたが、引退し、村に帰ってくる。彼は自分の生家を金持ちの後家ティレーンから購入したが、その家を欲しがっていた隣接する地主レッド・ウィル・ダナハーの怒りを買ってしまう。そのような中、ショーンが一目ぼれした女性がレッドの妹メリー・ケイトであることが判明する。ジョーンは、意を決してメリー・ケイトとの交際と結婚を申し込むが、兄レッドに反対されてしまう。村人の協力があって2人は何とか結婚したが、レッドはメリー・ケイトの持参金を払わない。メリー・ケイトはショーンに力づくで、レッドと闘って欲しいが、レッドはボクシングの最後の試合で人を殺してしまい、以降、人を殴れなくなっていた。そんなことも知らないメリー・ケイトは、自分のために戦わないショーンを批判し、家をでる。】

米国を代表する俳優ジョン・ウェインと米国を代表する監督ジョン・フォードのコンビ作品です。2人はアイルランド系米国であり、アイルランドの田舎に帰る米国人ボクサーの物語を描きます。

この作品では、メリー・ケイトの結婚の際の「持参金」が需要な役割を担います。彼女は、ショーンと結婚するのですが、(家具と)「持参金」の支払いを兄が拒絶し、彼女自身も「結婚生活」を送れないと言い出します。

それに対し、米国育ちのショーンは、「君だけで十分だ」、「お金のために、君と結婚したいのではない」と彼の「米国的」価値観を語ります。

しかしながら、メリー・ケイトは、(家具と)「持参金」が自己の証明であり、自分と切り離すことができないと主張します。

そこには、自分にお金を付け足すようなネガティブさはなく、自分が自分の所有物を奪われているというような感覚なのです。

ネタバレですが、ショーンは「持参金」をレッドから奪い、その場で燃やしてしまいます。メリー・ケイトもそれを「勿体ない」と思わず、意気揚々と帰宅していくのです。

彼女にとって「持参金」とは、お金ではなくプライドであったことが分かります。それは、結婚するための不可欠な要素であり、一度、獲得すれば、燃やしてもいいのです。むしろ、兄がなかなかくれなかったことで、燃やしてしまったほうが、ジョーンやメリー・ケイトのプライドが満たされることにもなります。

「持参金」を燃やすことで、本当のプライドを持ち帰る姿に、(実際にアイルランド人がそのような選択をそうするかどうかは別として)米国人が想像する理想としてのアイルランド性があるのかもしれません。
プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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