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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年11月 1日 00:27

そうか、君はピアノを捨てて、愛の言葉を信じるのか

ピアノを習っているある独身女性の知人から、ピアノを辞めたいのだけどきっかけがないと相談されました。

本当のところは相談ではなく、偶然、勤務校の学園祭で1年ぶりにお会いし、お茶をしながらたわいのない会話していたところ、脱線したのでした。

彼女は、特に音楽が嫌いなのではなく、漠然と好きだから続けてもいいのだけど、何となく続ける理由もないと言われるのです。

それでは、(私も音楽が好きなので)音楽が好きな理由を、共に考えようということになりました。

私は、極めて独断と偏見ながら、言葉よりも写真(映像)よりも音楽が信じられると申し上げました。

言葉は、瞬間において(嘘をついていなければ)真実なのですが、政治家の公約を観ても、会社のモットーを観ても、恋愛の告白をみても、長期的な有効性を見出すのは難しいように感じます。

長期的な約束をするには、何度も言葉で「契約更新」を図らなければならなく、語り続ける必要があるのです(言葉は続けるならば、信じられます)。

写真も、一瞬の真実ではありますが、ある場面は全体を映している訳ではありません。映画はドキュメンタリー以外、フィクションを前提として存在します。ドキュメンタリー映画は真実を描いていることになっていますが、作り手の「主張」が入り込むだけに、「主観的」ではあります。

一方、音楽は、「瞬間」ではなく、音楽が流れている「間」において、点ではなく、線として表現します。(大半の映画作品と同じようにフィクションですが)言葉と音楽の調和する「間」は、信じられるような気がするのです。

(ちなみに、ジョージ・ルーカスが言う通り、「映画というものは、それが幻想であるところに秘訣がある」のであり、それ故に、制作された時代や社会を反映することがあるのです。つまり、映画は時に、信じられない虚像に真実が宿るという逆説が成立します。)。

私は、知人の女性に、上記の極めて感覚的な話をして、ピアノは信じられるから辞めないほうがいいかもしれないと非常に軟らかく進言致しました。

私の長話を聞いておられた彼女は、「そうかもしれません。でも、結婚するなら、今すぐ、ピアノを辞められるんです」、「今のところ、相手はいないけど、辞められるように頑張ります」と返してきました。

そうか、君は音楽を捨てて、愛の言葉を信じて生きていくのか。If you want to be happy, be!

彼女は、「先生、また、来年会いましょう」と去っていきました。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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