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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年10月30日 19:29

年を経ても「青く」てもいいのでは?: 映画『ビフォア・サンセット』における「大人であること」の矛盾

年を経ても、カップルが学生のような会話を交わしても良い(状況もある)ような気がします。

『ビフォア・サンセット』(原題 Before Sunset)
制作国  米国
制作年  2004年
監督 リチャード・リンクレイター
出演 イーサン・ホーク, ジュリー・デルピー

あらすじ
【1995年、米国人青年ジェシーは、ブタペストからウィーンへの列車で偶然出会ったフランス人女学生セリーヌと意気投合し、翌日の帰国のフライトまで、ウィーンの街を歩き一夜を過ごす。半年後、ウィーンで会おうと約束しながら別れるが、2人の再会できない。9年後、米国で作家になったジェシーは、あの日の夜のことを小説として出版し、プロモーションでパリを訪問する。パリの書店での出版記念記者会見の場に、突然、セリーヌが現れる。2人はなぜ、1995年の半年後にウィーンで会えなかったのかから語り始める。】

当ブログ2017年9月12日付で記しましたが、前作『恋人までの距離』(原題 Before Sunrise)は、それ自体、作品として完結しているとして観るべきなのです。なぜならば、続編を作るならば、別れてから半年後、ウィーンで再会できなかったことからしか展開できないからです(会っていたら、「2人は晴れて結ばれました」で終わってしまいます)。

その上で、本作を論じるとすれば、2人の展開は、残念ながら「恋人までの距離」を詰めようとした前作の2人のようなときめき感には欠けると言わざるを得ません。

セリーヌは、ウィーンでジェシーに会って別れた後、自分は恋愛で失敗続きだったと語ります。ウィーンの一夜で自分のロマンティズムを全て使い果たしたと。結婚しているジェシーも恋愛関係ではなく、育児のパートナーとなった妻との関係を吐露します。

そして、ジェシーはセリーヌの部屋を訪れますが、その後、2人の関係がどうなったかまでは描かれません。おそらく、多分。

この流れは、むしろ自然かもしれませんが、もし、2人が過去に戻りたいと思うなら、もう一度、パリで、一夜を語り明かしても良かったような気がします。

もちろん、恋愛の形に「答え」はありませんが、前作の流れから考えれば彼らが求めているものは、「普通」の男女関係ではなく、時間の限定性の中で、いかに言葉で2人の距離を縮めるかであったように思えるのです。

前作で、2人はくどい程、語り合います。語って、語って語り尽くすのです。言葉で「距離」を縮める方法は、もしかしたら、男女関係においては、ある意味で「遠回り」かもしれません。でも、それが、あの2人を輝かせていたように思えるのです。

9年後、2人は9年の年をとります。だからこそ、もっと面白い大人の会話ができたのではないでしょうか。もしくは、ウィーンの一夜と全く同じような学生時代のような「青い」会話でも、それはそれで味が出たのではないでしょうか。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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