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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年10月 4日

2017年10月 4日 01:26

映画評論家バリー・ノーマン氏から学んだこと

研究仲間と映画評論の話題なり、私が尊敬する映画評論家がいることを語りました。

名前はバリー・ノーマン(Barry Norman)という方で、1972 年から1998年の間、BBCで「Film」という映画評論番組を担当されていました。

今は何をされているのだろうかと、ネットで調べたところ、本年6月30日に83歳で亡くなられていたことを知り("Film critic Barry Norman dies at 83", The Guardian, 1 July, 2017; "Film critic Barry Norman dies" BBC online, 1 July 2017)、大きなショックを受けました。

私は1990年後半から大学院修士課程と博士課程を英国で学び、毎週、ノーマン氏の番組である「Film」を見るのを楽しみにしていました。

ノーマン氏は、辛口の評論家であり、殆ど作品を褒めません。

どちらかといえば、シニカルに切り捨てる感覚なのですが、それでも、理論的であり、言葉に非常に説得力があるのです。言い換えれば、「本物」を教えてくれるのです。また、なぜか、ノーマン氏によって完膚無きまで批判された作品も、それを確認するために映画館に観に行きたくなるのです。

おそらく、それはノーマン氏が真摯に作品とその制作者に向き合っており、その結果として公正かつ建設的に批判しているからだと思ったものです。

映画は娯楽であり、どの映画が良くできていて、どの映画が良くないなどということは重要なことではないのかもしれません。しかし、業界に遠慮するのでも、配給会社に遠慮することもなく、公正に評論する姿勢に、何か英国の評論家精神をみたような気がしていました。

バーリー・ノーマン氏が亡くなられたというニュースを聞き、私は「Film」のオープニング曲だった1960年代のジャズの名曲I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free(Billy Taylor)を何度も聴きながら、いかに私が氏から影響を受けているかを改めて考えることになりました。

私は、ゼミ生からあまり褒めないと言われており、時々、頑張った学生を褒めると(それは、必ずしも結果ではなく、努力量が基本ですが)「先生、気持ち悪いからやめてください」と言われてしまうほどです。

私が褒めないことが良いかどうかは別として、学生たちに簡単に物事を肯定評価するのではなく、疑いながら「本物」を見極めて欲しいと考えていることもあります。ただ、他者や物事を批判するとき、批判のための批判ではなく、建設的批判も忘れないようにと言い続けています。

それは、何か、殆どノーマン氏が評論活動の中で行っていたことだったように感じます。

ご冥福を心からお祈りいたします。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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