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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年10月 1日 20:45

プロパガンダ映画を作るという恋愛映画: 映画『人生はシネマティック!』の洒落れた嘘っぽさ

プロパガンダ映画の制作過程が描かれる、リアルでかつ嘘っぽい恋愛映画です。

『人生はシネマティック!』(原題 Their Finest)
制作国  英国
制作年  2016年
監督 ロネ・シェルフィグ
出演 ジェマ・アータートン, サム・クラフリン, ビル・ナイ

あらすじ
【1940年、ドイツの空襲に苦しめられる英国ロンドン。男性の多くが徴兵され、女性の活躍の場が増えている。画家になる夢を諦めきれない「夫」と暮らすコピーライターのカトリンは、徴兵されたライターの代わりに書いた広告コピーが情報省映画局の特別顧問トム・バックリーの目に留まり、プロパガンダ映画の脚本家としてスカウトされる。当時、英国政府は国民を鼓舞するために戦意高揚映画の作成に着していた。カトリンの最初の作品は、双子の姉妹が父親の漁船で海にこぎ出し、「ダンケルクの戦い」でドイツ軍の包囲から撤退する英国兵士を救う物語だったが、情報省の上層部や軍部から様々な条件を突き付けられる。困難に直面しながらも、トム・バックリーと共同で何とか脚本を書き上げていくが、その過程で、カトリンとトムは徐々に惹かれ合うようになっていく(映画『人生はシネマティック!』公式サイト)】

プロパガンダ映画を作成する女性脚本家の物語です。

主人公カトリンが描く映画=作中劇はプロパガンダなのですが、この映画『人生はシネマティック!』フィクションです。原作はリサ・エヴァンスの小説『Their Finest Hour and a Half』(2009年)。

作品の中では、プロパガンダ映画を作る過程の詳細を描くことで、逆に作品の「リアリティ」が増していきます。

そして、プロパンガンダ映画の脚本を共同担当するカトリンとトムが、恋愛関係に落ち、(ネタバレですが)カトリンが売れない画家の「夫」との偽りの関係を清算しなければいけないことによって、恋愛映画としてはストレート勝負に入ります。

そのような意味で『人生はシネマティック!』はプロパガンダ映画ではないのです。

しかしながら、戦時下のロンドンであるにもかかわらず、悲壮感よりもコメディタッチであり、最後まで人をからかったような展開が続きます。

作中劇よりも、映画の物語のほうがドラマチックなのです(リアルなのですが、時に嘘っぽくもあります)。

そして、ビル・ナイ演じる「自意識過剰なベテラン俳優」アンブローズは、本作品のトリックスターとして、作中劇と映画作品(と現実)を自由に行き来し、プロパガンダ映画製作を描いたリアルだけど嘘っぽい恋愛映画作品を彩ります。とてもお洒落に。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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