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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年7月28日 11:34

様々な壁にぶつかり、「個」として自立する: 映画『インシャラー・ディマンシュ』が示唆する移民女性のマージナル性

フランスに移民したアルジェリア人は、フランスではアルジェリア人ですが、本国のアルジェリア人からみれば、もはやアルジェリア人ではないのです。この作品は、「マージナルマン」としてフランスのアルジェリア系・移民系女性の悲哀と希望を映し出しています。

『インシャラー・ディマンシュ』(原題: Inch'Allah Dimanche)
制作国 フランス
制作年  2002年
監督 ヤミナ・ベンギギ

あらすじ
【1970年代の北フランスの小さな町サン・カンタン。フランス政府は1976年、 「家族再会法」で一定要件の下、外国人移民労働者の家族を呼び寄せることを認める。アルジェリア人のズイナは、10年前にフランスに移民したアルジェリア人の夫に呼び寄せられ、3人の子供と義理の母と一緒にフランスにやってくる。しかし、夫は日常的に彼女に暴力を振るい、一緒に移民してきた義母は彼女を使用人のように扱う。近所の独り身のフェミニスト・ニコルは彼女に接近し、彼女を「解放」しようとするが、逆に夫や義母から罵倒されてしまう。孤独に苛まれ、ズイナはサン・カンタン内のアルジェリア系移民の女性を毎日曜日に探し始める。数週間後にやっと、その女性の自宅を見つけるが、夫に黙って来たと言うと、友情を拒否されてしまう。】

ベンギギ氏は、映画監督であり、フランスのフランソワ・オランド政権の外務大臣付在外フランス人・フランコフォニー担当大臣を務めた政治家でもあります。『インシャラー・ディマンシュ』は、ベンギギ監督の自伝的要素が強い作品であると言われています。

主人公のアルジェリア系移民女性のズイナは「マージナルマン」的存在です。

「マージナルマン」とは、二つ(以上)の社会集団に属し、一つのアイデンティティに固定されていない人間のことを指した米国の社会学者ロバート・パークが提唱した概念です。

ズイナは、アルジェリア人の義母程には保守的ではなく、ウーマンリブを地で行く近所のフランス人フェミニスト女性のニコル程、進歩的(革新的)でもないのです。

最終的に、ズイナは同じ町に住むアルジェリア人女性に「振られる」ことによって、自分1人で生きていくしかないと自覚します。

保守でも革新でもない自分自身の道を歩むことも、(個人主義の始まりであり)西欧化なのかもしれません。しかしそれでも、ズイナは、個として困難に立ち向かうことを覚え(本当の幸せを掴む希望を抱かせ)映画が幕を閉じるのです。

ちょっと、漫画チックな単純なストーリーですが、社会から冷ややかな目で見られる移民一家の中で、更に家庭内で差別を受けるズイナが「個」として自立していく姿は、見ごたえがあります。

いずれにしましても、移民問題を考える際、移民系住民を「マージナルマン」として捉え、彼らの居場所を考えることはとても重要であるように思えます。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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