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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年6月18日 00:28

「もしも」ではない今日性: 映画『If もしも....』の反抗とテロ

全ての映画作品は多かれ少なかれ作られた時代の社会を反映しているものですが、時に時代を越えて、別の文脈で学べることがあります。

『If もしも....』(原題 If....)
制作国  英国
制作年 1968年
監督 リンゼイ・アンダーソン
出演 マルコム・マクダウェル

あらすじ
【英国の500年の歴史を誇る全寮制の私学男子校(パブリックスクール)。Sixth Form(16-18歳)のミック、ジョニー、ウォレスの三人組は厳しい校則と監督生である上級生からの体罰に嫌気が差している。彼らは、コーヒー・ショップの女店員や下級生を巻き込み、学校、教師、上級生に対する反抗を企てる。そして、父兄や地域の有力者が集う、学校の500周年記念行事に3人は軍事的犯行を試みることになる。】

『If』というタイトル通り、「現実」なのか「現実」ではないのか定かではない、幻想的なストーリーです。

しかし、同作品は、1969年のカンヌ映画祭パルム・ドール(最優秀作品賞)を獲得しており、この『If』という仮定が、先進国を中心に世界的に学生運動が起こっていた1960年代後半の時代を反映していたことになります。

ただ、本作は単純に学生(子供)と教員(大人)というような二項対立ではなく、学生同士の上下関係(英国のパブリックスクールにおける「タテ社会性」)を描いている点において、深みがあります。

舞台はパブリックスクールです。監督のアンダーソンも、パブリックスクール(チェルトナム・カレッジ)出身であり、映し出される閉塞感には(幻想的ながらも/幻想的故に)リアリティがあります。

しかしながら、これを当時のパブリックスクールだけの現象と見なすべきではないでしょう。ロンドンの公立小学校が舞台となった1971年の英国映画『小さな恋のメロディ』でも、やはり、最後は学生たちの革新的反抗(武力行使)で終わっており、私立でも公立でも、時代的な共通性があったと考えられます。

もっとも、そこには今日的課題を見つけることもできるかもしれません。

現在、テロに苦しんでいるヨーロッパですが、2016年に欧州でテロに関連した容疑で逮捕され1002人のうち、9割が40歳未満であり、未成年が実行役として関与するケースは増加傾向にあるそうです(「欧州テロ:容疑者9割が40歳未満」、毎日新聞、6月17日)。

彼らが、「ホームグローン・テロリスト」であるとすれば、もう一度、英国の教育から見直してみれば、意外に効果的なテロ対策になるかもしれません。

もちろん、1960年代と2010年代の英国社会が同じではあるとは言いませんが、『If もしも....』のラストシーンにおいて、(ネタバレですが)英国人同士が殺し合っているシーンを見ると、今日の移民とテロの問題を思い浮かべざるを得ません。

しかしながら、今日は仮定の『If』ではなく、現実にテロが毎月発生しているという、より残酷な状況です。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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