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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年6月17日 02:13

2017英国総選挙(3): メイ政権のDUP閣外協力が北アイルランドの更なる政治危機を招くのか?

6月8日の英国の総選挙は、与党・保守党は318議席の獲得に留まり、過半数割れとなりました。保守党が過半数を得るには326議席は必要であり、今回の選挙で10議席を得た北アイルランドの地域政党であります民主統一党(Democratic Unionist Party)と交渉し、同党が閣外協力することに合意しました(BBC, 13 June 2017)

この民主統一党と英国保守党は伝統的に友好関係にありましたが、北アイルランドから見れば、今回の閣外協力は折角、和平を構築してきた北アイルランド政治に大きな影響を与えるかもしれません。

周知の通り、北アイルランドでは、長年プロテスタント系住民とカトリック系住民が争ってきました。ジョン・レノンやU2の楽曲にもあります1972年1月30日の「血の日曜日事件」等、多くの犠牲者を生み出してきました。

1990年代に入り、英国、アイルランド政府の間で和平交渉が始まり、1998年にはベルファスト合意が成立します。同年、北アイルランド自治政府・北アイルランド議会が設立され、地元の当事者である社会民主党党首(カトリック穏健派)党首のジョン・ヒュームとアルスター統一党党首(プロテスタント穏健派)のデヴィッド・トリンブルがノーベル平和賞を受賞します。

しかしながら、和平はそれほど単純ではなく、上記の両党は2003年の総選挙では惨敗してしまいます。

第一党に躍り出たのが、上記のプロテスタント強硬派の民主統一党、第二党がカトリック強硬派のシン・フェインだったのです。民主統一党とシン・フェインは、長年、闘い合ってきた関係であり、北アイルランドは地方政府を構築できない状況に陥りました。

英国政府の直接統治を経て、2007年、ようやく、民主統一党とシン・フェインを中心に連立政権を樹立することに至りました。

それから約10年、両党を中心に、北アイルランド政府は運営されてきましたが、今年の1月、シン・フェインのマーティン・マクギネス副首相が辞任し、連立政権が崩壊します(マクギネス氏は3月21日に心臓病を悪化させて亡くなります)。

本年3月2日に行われた北アイルランド議会選挙では民主統一党が28議席、シン・フェインが1議席差の27議席となっており、また硬直状態が続いていたのです(BBC www.bbc.com/news/election/ni2017)。

このような時期に、国政において総選挙で保守党が過半数割れしてしまい、民主統一党はメイ政権に閣外協力することになったのです。

民主統一党はEU離脱に賛成です、しかし、アイルランド全土では、国民投票において離脱派は44.2%で負けており(離脱反対は55.8%)、民主統一党も北アイルランド政治の動向によっては、メイ政権とどこまで同調できるか分からないのです(BBC www.bbc.com/news/politics/eu_referendum/results)。逆に、メイ政権に寄り添えば、北アイルランド政治の停滞が続いてしまうかもしれません。

英国は北アイルランドに視点からも目が離せない状況になっています。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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