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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年6月12日 00:48

「正しくない」教師の魅力: 映画『ミス・ブロディの青春』が描く、信念と情熱の暴走

情熱的であったり、魅力的であることは、当然、正しいこととは異なります。

『ミス・ブロディの青春』(原題: The Prime of Miss Jean Brodie)
制作国 英国
制作年  1969年
監督  ロナルド・ニーム
主演  マギー・スミス

あらすじ
【1932年、スコットランド・エジンバラ。全寮制の伝統的な私立女子学校の教師をしているスコットランド人のジーン・ブロディ先生は、自由を尊び情熱的でロマンテックな女性教師だった。彼女は、2人の男性教師(美術教師と音楽教師)に交際を迫られるが、彼女は教育に全てを捧げるため結婚を捨てる覚悟でいる。このような彼女の態度は、多感な年頃の女学生に大きな影響を与え、いつしか、ブロディ組(サンディ、モニカ、ジェニー、メアリー)と言われるような親衛隊ができていた。ブロディ先生は、ファシズムやフランコニズムに共感し、彼女の影響を受けた女性徒がフランコ側に参戦し亡くなってしまう。ブロディ先生を解雇したいと考えていた保守的な校長はこの機会を利用することになる。】

学園もの映画の教師像は、『チップス先生さようなら』のチップス先生、『いつも心に太陽を』のサッカレイ先生、日本の金八先生にしても「正しい大人」として登場し、紆余曲折があっても学生を正しい道に導きます。

しかし、本作のブロディ先生は、正しくはないのです。正しくはないのに、その言動がとても魅力的な女性であるとされるブロディ先生は、その存在自体がとても厄介なことになります。

ブロディ先生は信念の人です。理想を持ち、ロマンテックで情熱的で(右翼的)革命家です。そして、親身の指導です。学生からの人気もあります。しかし、結果として学生は幸せにはならないのです。

ブロディ先生の対極に描かれる校長をはじめとする「保守的」な先生方は、無難です。何も変えず、時代の流れに身を委ねているだけです。学生の人気はありませんが、学生は進級、卒業し、学校は続くのです。

ブロディ先生に印籠を渡すのは保守的な校長ではありません。自分が全てを捧げた学生の1人であり、かつて親衛隊(ブロディ組)の一員だった女学生サンディが、彼女の大切なものを奪っていきます。

つまり、ブロディ先生は教育の結果、自滅したことになります。結局、この映画は教育現場の情熱と客観性のバランスを説いているのかもしれません。

しかしながら、若きマギー・スミス演じるブロディ先生には惹きつけられる「強さ」があります。正しいことを語る正統派のヒーロー先生よりも、信念故に「堕ちていく」強い教師は絵に映えるのです。

余談ですが、近年のマギー・スミスは(『ダウントン・アビー』の「バイオレット・クローリー伯爵夫人」もそうですが)、正しいことを言うけど、嫌われてしまう役が多いように思えます。いずれも、素晴らしい役柄です。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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