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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年6月11日 01:19

2017英国総選挙(2): EU離脱問題は争点ではなくなり、故にスコットランドの独立問題も曖昧に

前回、6月8日の英国の総選挙で敗北したのは英国独立党(UKIP)なのではないかと記しました。

もう一党、大幅に議席を減らした政党があります。それは、スコットランドの独立を主張するスコットランド・ナショナル党(SNP)です。以下の通り、SNPは、今回、21議席も減らし、35議席に留まりました(以下、BBC, UK Political INFO)。

2017年英国総選挙  35議席 977,569票(得票率3.0%)
2015年英国総選挙  56議席 1,454,436票(得票率4.7%)
2010年英国総選挙  6議席    491,386票(得票率1.7%)
2005年英国総選挙    6議席    412,267票(得票率1.5%)
2001年英国総選挙  5議席    464,314票(得票率1.8%)
1997年英国総選挙    6議席  621,550票(得票率2.0%)
1992年英国総選挙    3議席    629,564票(得票率1.9%)
1987年英国総選挙  3議席    416,473票(得票率1.3%)

21議席を失ったとはいえ、SNPの歴史の中では2番目に議席数を獲得した国政選挙になりますので、スコットランドにおいて「SNPの時代」が終わったと言い切ることはできません。

実際、SNPは昨年のスコットランド議会選挙では、小選挙区において1,059,897票で59議席を獲得しており、比例代表では953,987票で4議席を獲得し、合計63議席で第一党になっています(過半数は65議席)。

ただ、2014年9月18日のスコットランド独立を問う住民投票では、独立反対が55.30%(2,001,926票)、独立賛成が44.70%(1,617,989票)で独立が否決されたとはいえ、150万人以上が、SNPが掲げるスコットランド独立を支持しているのです(BBC http://www.bbc.com/news/events/scotland-decides/results)。

そのように考えますと、今回の英国総選挙でSNPの得票数が100万票に届かなかったことは、少なくても現段階において独立への熱気が冷めつつあると言えるのでしょう。SNPは、もう一度、スコットランド独立を問う住民投票をすることを掲げていましたが、難しくなったと報じられています(ロイター、6月9日)。

私は、当ブログにて前回、6月8日の英国の総選挙においてEU離脱問題が争点にならず、保守党と労働党の二大政党が1990年代のようにEU問題を抱えてしまったと書きました。

メイ首相は、ハードブレグジットに臨むために権力基盤を高めたかったのですが、有権者がその「問い」自体を拒否してしまったかのように見えるのです(正確には、右傾化する保守党と左傾化さうる労働党がEUから恩恵を得られない人々の票を二分し、EU離脱の住民投票の時のように纏まらなかったことになります)。

SNPの敗北もこの文脈で把握できます。

スコットランドの英国からの独立はスコットランドのEU加盟が前提ですが、英国がEUから離脱しない限り、スコットランドはEUに単体で加盟できないのです。つまり、ブレグジットが曖昧になれば、スコットランド独立も現実味を失います(今のままでもスコットランドは英国の一地方としてEUの領域です)。

英国がEUからの離脱がどのような形になるかは、スコットランドの将来にも大きく影響を及ぼすのです。

SNPの党勢とスコットランド独立の可能性が今後どのようになっていくかは予断を許しません。英国のEU離脱問題と同様に。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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