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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2017年5月 8日 14:30

フランス大統領選挙の結果を考える

フランス大統領選の決選投票が5月7日にありました。大方の予想通り、エマニュエル・マクロン氏(無所属)が66.1%の票を集め、マリーヌ・ルペン氏(国民戦線)を破り、第25代フランス共和国大統領に選ばれました。

しかし、得票率を単純に捉えることはできません。

国民戦線のルペン氏は(得票率33.9%で敗北しながらも)第1回投票よりも10ポイント近く票を伸ばしました。

第1回投票では、極右のマリーヌ・ルペン氏は7,678,491票(21.30%)でしたが、対極でありながら政策が似ている、極左のジャン=リュック・メランション氏が4位ながらも、7,059,951票(19.58%)を得ていました。

当ブログ(2017年4月28日付)でも言及しましたが、私は、共産党を中心とするメランション氏の票が、極右のルペン氏へ流れることは難しいと感じていました。

実際、それは、12%という歴史的な白票の多さとなって顕在化しました(「フランス大統領選で無効票・白票が50年ぶりの多さ「どちらの候補も信条に合わなかった」の声」HuffPost France, 5月8日)。

投票者7,752人を対象にしたOpinion Wayの調査によると、第1回選挙でメランション氏に投票した25%、共和党のフランソワ・フィヨン氏に入れた21%が白紙投票あるいは無効投票を行ったとされています(同上)。つまり、マクロン氏にもルペン氏にも入れられない有権者が多く存在したということになります。

マクロン氏の得票率66.1%は、ルペン氏に対するアンチ票と考えられ、実際の支持率は15%程であり、マクロン氏の支持基盤は極めて脆弱であると報じられています(マクロン氏、フランス大統領選に勝利 しかし残る「敗北の後味」HuffPost France, 5月8日)。

一方、ルペン氏は、固い支持票の上に、決選投票ではプラス約300万票を獲得しました。

ルペン氏の300万票は、「排外主義を支持する右翼、既存システムを強く憎む中間層のほか、極左と呼ばれる人の一部までもが、ルペン氏を選んだことも示唆する」と分析されていますが(同上)、それでも、全体としてみれば、白票が多かったことからメランション支持者は今回の決選投票においてルペン支持にまでは至っていないと言えるでしょう。

マクロン氏は勝利宣言において「彼らも怒りや不安を表明しました。私はその声を尊重し、国民が今後、極右に投票しないで済むよう、できることはすべて実行します」(NHK, 5月8日)と述べています。

しかし、政策上の類似点を見ますと、今回の多くの白票を、近未来においてマクロン氏が集約すると考えるよりも、ルペン氏とメランション氏の「共闘」によって「動かされる」可能性のほうがより現実的なのではないでしょうか。

そうであったとしても、2017年のフランスの有権者が、第二の「トランプ」現象を阻止したことは事実です。

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プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学、バーミンガム大学博士課程に学ぶ。その間、ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生。国際政治学博士(PhD)。国連大学国際紛争研究所インターン、夏期講習クラスコーディネーター、法政大学国際日本学研究所客員研究員等を経て、現在、早稲田大学エクステンションセンター講師、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授。
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